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第四十二話 せっかく異世界に来たんだからデスクワークはほどほどに

よろしくお願いします。


「それじゃあ、行ってくるよ」


そう言ってアルマルデ様は次の日の早朝に出ていった。

アルマルデ様の護衛にはカーシャさんが同行していった。

そして、アルマルデ様がいない日が始まった。

前世でもそうだが、いなくなってからその人の偉大さに気づくことが多い。

アルマルデ様が出張に出られて三日目の今日。

俺は頭を抱えていた。


「どこに」


俺の目の前には山積みになった書類。

その山が一つや二つではなく、この書斎を埋め尽くさんとばかりにたまっているのだ。

さて、俺みたいな子供に書斎なんてもらえるわけなく、ここはシューラン猊下の書斎である。

頭を抱えている今もまた一つ、二つと山が増えていく。


今日から猊下修行を付けてくれると言われてガシェルさんの修行の後、昼頃に猊下の書斎に来た。

奴のデスクには「後はよ・ろ・し・く」の手紙。


「どこに行きやがったシューランのクソじじい!!」


俺は思わず咆えた。

そして、教会中を駆け回り探し出そうとしたが、見つけることはできなかった。


「あれを探し出せるのはアルマルデだけですよ」


見つからず仕方なく書斎に戻ってくるとテルマリリ様が一枚ずつ書類を処理していた。


「なぜ、テルマリリ様が」


「猊下がいなくても下からの報告書が無くなることはありません。そして、上が処理を怠ると困るのは下です。どこかで誰かがやらなくてはいけないのです」


前世の記憶をふと思い出した。

上司は定時で上がるくせに終わらなかった仕事を中間である俺に投げていったあの日々を。

やらなかった次の日下の職員たちがどうすればと、戸惑っていたあの日を。


「もう、猊下は見つけられないのですよね」


「私には無理です」


「誰かがやらなくてはいけないのですよね」


「そうです」


「俺に出来るでしょうか?」


テルマリリ様は筆を止めて言う。


「やれるかやれないかではないのです。やるしかないのです」


そして、それ以降何も言わずテルマリリ様は筆を走らせた。

でも、お世辞にも早いとは言えない。

俺は空いているデスクに腰を落とした。

ひたすら読み進めるが、誤字脱字が多い。

どう見ても計算ミスがあると分かるのもそのままにされている。


「あれ? ボルヴァードくんもここにいたんだ」


ミドリちゃんがテルマリリ様にお茶を持ってきていた。


「ボルヴァードくんは書類の整理できるのか? 子供の僕らがあまり邪魔するのはよくな「ミドリ」


ミドリちゃんは振り向く。


「彼は自分の仕事をするのです。邪魔はやめなさい」


ミドリちゃんをテルマリリ様が止める。

俺がテルマリリ様の仕事をまねて遊んでいるようにでも見えたのだろうか。

だが、これでも現場だけでなくデスクワークもこなしてきた。

伊達や酔狂でケアマネージャーをやってなかったのだよ。


「ミドリちゃん。赤いインク持ってきてもらってもいい?」


「え? 分かった」


持ってきてもらった赤インクで書類を走らせる。


「なにをやって!」


「ここ書類は不備が多すぎる。書斎の前に書類を出しなおすよう張り紙でもして置いといて」


更に俺は不備のない書類を斜め読みし、再考の余地があるものはテルマリリ様へ。

承認が必要なものは猊下のデスクに積み上げていく。

どれくらい時間が経ったか、書類の山を幾つか処理し終えたころにまた新たな山が積まれる。

いつの間にかいれていれていたお茶をの飲み干すと再度机の書類と格闘を始めたのだった。


「まるで、アルマルデ様のよう」


書類を持ってきたシスターが呟く。

だが、そんなことを気にしている暇はない。

俺は一日書類と格闘するのだった。


「今日はもう終わりにしよう」


まだ、部屋の半分以上未処理の書類が残っている中でテルマリリ様が就業の言葉を発した。

その言葉に俺は思わず気を緩めた。


「お疲れ様」


「テルマリリ様もお疲れ様です」


いつの間にか時間は夕方になっていた。

こんなにデスクワークをしたのは前世以来初めてだった。

だが。


「意外と覚えてるものだな」


処理が終わった書類を見る。

そこにはいくつもの書類の山があった。


「あれ? 前からこんなに処理できてたっけ?」


集中して処理していたせいで、どれくらいやっていたのかまでは気づいてなかった。

だが、前世でもこんなに書類の処理はできてなかったはずだ。

できてもこの十分の一にも満たなかったはず。


「それはボルヴァードくんのステータスが上がったからですよ」


そう言えば全ステータスが何十倍にもなっていたのを思い出す。

そして、俺が先ほどまで握っていたペンを見る。


「やばっ」


鉄製のペンが俺の指の形がついてしまっていたのだ。

いくらするんだろう。


「ボルヴァードくん」


「すみません」


怒られる!

だが、それを見てもテルマリリ様は「経費で落とします」と言うだけだった。


「それよりも、行きますよ」


「どこにですか?」


「今日は外でご飯にしましょう」


「やったー!」


テルマリリ様の言葉にミドリちゃんが喜んだ。

そう言えば、俺は教会の外にはあまり出ないので、王都の店を知らなかった。

それに外食と言えばちょっとした贅沢だ。

ミドリちゃんほどではないが少しうれしくなった。

外に出る準備をした後、俺はテルマリリ様に連れられて教会を出ようとした時だった。


「どこにいくのですか?」


声の方を向くとそこにはセシアさんがいた。


「ちょっと外に食事をしてきます」


「そうですか。なら、私もついていきます」


いいのだろうか?

俺がテルマリリ様の顔を見ると頷いた。


「好きにどうぞ。優秀な護衛さん」


「うぐっ」


何かあったのだろうか?

その言葉にセシアさんは苦しみだした。


「次は、次こそは!」


こんな荒れたセシアさんを見るのは初めてだった。




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