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第三十五話 せっかく異世界に来たんだから騙されたくない。

昨日は更新できずにすみません。

よろしくお願いします。


洞窟から出ると俺たちは湖畔の教会に戻った。

外はしっとりと熱く、その気温差に少し体がだるくなった。

教会に入るとアルマルデ様たちはシスターに報告をしに行くとの事で、教会の奥に入っていった。

俺は疲れたため、本堂の長椅子に腰を落ち着かせる。


「おかえり」


しばらくくつろいでいるとアクアくんが出迎えてくれた。


「ただいま」


「どうだった? 洞窟の中は」


俺の隣に座ってアクアくんは聞いてくる。

まあ、慣れ親しんだ場所の異常なのだ気になるのだろう。


「詳細は分からないけど、洞窟内の氷が溶けるのが早くなったのが原因だ。そのせいで水が入れ替わるスピードが速くなって源泉の水の温度が落ちたんだと思う」


「そうなんだ。大変だったね」


そう言って彼は笑った。

でも、ふと思った。

アクアくんの笑顔がぎこちない?


「そう言えば、洞窟の地図ってどこにあるの?」


「え? ああ。俺が持ってるよ」


「なら、ぼくがシスターに返しておくよ」


「そうか。なら、たのも「ルヴァン!」


俺が鞄から地図を取り出そうとすると、呼び止められる。

声の方を向くとアルマルデ様が怖い顔をしてこちらを睨んでいた。

何かしてしまっただろうか?


「すみま(ッヒュン)


俺が謝ろうとした瞬間、いつの何かアルマルデ様の横にいた。

瞬間移動かと思ったが、ガシェルさんに抱えられてるので連れ去られただけだろう。

本当にこの人は化け物染みている。

だが、俺ののんきな考えとは裏腹に教会内の空気は徐々に冷えていく。


「アルマルデ様?」


俺は問いかけるが返事は無い。

ただ一点を見つめるだけだった。


「あんたは誰だい?」


アクアくんにアルマルデ様は問いかける。

そう言えばアクアくんとは初対面だったな。


「アクアくんはここの教会の子供ですよ」


「ルヴァンは黙ってな」


「はい」


俺はアルマルデ様の指示に従い黙る。

そして、アルマルデ様はアクアくんを睨みながら言った。


「あんたはここの教会の子でもない、テルマリリの連れでもない。もちろんあたしだってあんたを知らない。あんたは誰だい?」


「僕はボルヴァードくんの友達のアクア、じゃ駄目ですか?」


アクアくんがそう言って不気味に笑った。

俺がその顔に驚いているとガシェルさんが耳打ちをしてくる。


「あんまり、子供の交友関係には口出ししたくないんだが」


「なら、敵意をむき出しにするのはやめませんか?」


どこか飄々とするアクアは俺の知るアクアとは違っていた。

そりゃそうだ。

名前も年齢も何もかもが違った。



メギド エルフ族 37歳 暗殺者Lv54


HP1255/1301

筋力3071

知力2809


これが本当のアクアだった。


「あ、鑑定しちゃったんだ」


俺が鑑定でアクアの本性を覗いたことに気づいたようだ。

そして、どこからともなく大きなナイフを取り出した。


「ああ、ボルヴァードと友達ってのも楽しかったけど」


アクア。

いや、メギドはナイフを手の上で遊ばせて不気味に笑う。


「もう飽きたよ」


その瞬間、俺の顔の横をナイフがかすめていった。

ガシェルさんが俺を乱雑に後ろへ投げる。

すると、何かにぶつかり止まった。


「大丈夫かい?」


そこにいたのはテルマリリ様だった。


「ミドリちゃんは?」


「ここのシスターと一緒に逃がしてきた」


テルマリリ様をよく見るとその手には剣が握られていた。

そして、ガシェルさんと一緒に前に出る。


「体がなまってないといいのだけど」


「それを言うなら僕は一度身体を壊してるからね。僕よりは頑張ってくれよ」


「善処します」


「随分余裕だね!」


メギドはナイフを構えて走り出す。


「え?」


テルマリリ様にたどり着く前にメギドの体にガシェルさんが拳を入れる。

そして、体をきしませながら吹き飛ぶ瞬間、テルマリリ様がその吹き飛ぶ威力を利用して剣で叩き切ろうとする。

それを体を逸らして直撃を免れたメギドだが足にその剣が入ったようだ。

床の抉られ具合からテルマリリ様も相当化け物染みているのが分かった。


「さすが、元勇者パーティーに剣の聖女様だ」


「あんたこそ随分余裕じゃないかい? 元気な年寄り三人の相手なんだ。気張っておくれよ」


アルマルデ様が光魔法の〈ビーム〉を幾重にも織りなしながら、逃げるメギドに追撃を与えていく。

そして、その誘導の先に待ち構えていたガシェルさんが拳を放つ。

本堂の椅子を巻き込みながら吹き飛ばす。

だが、メギドは手をかざしてガシェルさんの拳を何かで防いだのだ。


「まだまだ、行きますよ」


しかし、テルマリリ様が死角から剣の突きでメギドの身体を刻んでいった。

メギドの血が教会に飛び散る。

それに苦悶の表情を浮かべるのだった。

傍から見ればいじめと疑われるレベルで戦力差がありすぎた。

メギドはギリギリで急所は逸らすもののガシェルの攻撃を殺しきれず、ダメージを受けたその隙にテルマリリ様の追加攻撃が襲う。

逃げようとすればアルマルデ様の魔法攻撃が待っており。

運よくガシェルさんに傷をつけられてもすぐに回復させられてしまう。

完璧すぎる連携に正直敵であるメギドには同情すら覚えた。


「なんで、ジジイとババアがこんなに強いんだよ」


「鍛え方が違うんだよ、鍛え方が」


満身創痍のメギドの言葉にガシェルさんは嬉しそうにそう言ったのだった。

一瞬気が緩んだその時、メギドがポケットの中に手を入れたのだ。


「ルヴァン! 地図を始末しな!」


「え、え!? ど、どうすれば!!」


でも、メギドはもうすでに何かを手に持っている。

一刻もない俺は地図を燃やす火もない、破くには時間がかかりすぎる。

そこで、丸めた地図を飲み込んだのだった。


「……は!?」


メギドは驚きの表情を隠せずにいた。

そして、お年寄りの皆様は苦笑いをするのだった。


「っち! 欲しいもんがないなら、僕はこれで帰らせてもらうよ」


「ガシェル、取り押さえろ!」


アルマルデ様の言葉にガシェルさんはメギドのもとへ駆け出すが、手に持っている玉のようなものを床にたたきつけると、教会内が煙で満たされた。


「〈ウィンドウ〉!」


ガシェルさんがそう叫ぶと強い風が煙を巻き上げて教会の外に追いやる。

そして、視界が開けた時にはメギドはいなく。

アクアくんという幻想となった友達に俺は肩を落とすのだった。













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