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第三十四話 せっかく異世界に来ても知りたくないことはある。

よろしくお願いします!


アルマルデ様たちが調査に出た次の日、テルマリリ様の代わりに俺が加わった三人で洞窟の調査が行われた。

殆どの荷物はガシェルさんが持ってくれている。

そして、洞窟の中は極寒という事で、源泉近くまで入った後俺たちは厚着に着替えて奥の探索に入った。


「もっと優しく持ってください」


「すまんすまん」


俺は二人の探索スピードについていけるはずもなく。

ガシェルさんに抱えられながら探索を行っていた。

中は迷宮のようになっているとは聞いていたが、実際何度も分岐点があり、しかも似ているような分岐点が数多く存在していた。

何度もここは先ほど通ったのではないかと錯覚するほどだった。

地図が無ければほぼ最奥への到着は無理だろう。

むしろ、昨日迷った末に戻ってこられた三人を素直にすごいと思う。


「次は右から二番目です」


そして、俺は地図を見ながらナビゲーションしていた。


「右からな」


「そっちじゃない! こっちが右から二番目だよ!」


ガシェルさんはまた違う道に行こうとしていた。

ここまでの道のりで何回かあった。

右と左を間違えたり、暗がりの小さな道を数え忘れたりなどミスによるものだった。

昨日の探索がどれほど大変だったか想像に難くなかった。


「奥もそこそこ明るいんですね」


もちろん暗がりはある。

だが、前世で観光用に整理された洞窟並みに明るかった。


「この発光石はこの洞窟特有の石でね。でも、調査の為に洞窟の外に持ち出すとただの石に戻っちまうんだよ。それに、こんな大きな洞窟だったらふつうは魔物が巣くったりするもんだが、昨日も今日も生き物一匹すら見ない。ここが聖地なんて言われる所以なんだろうね」


「あ、次は一番左端へ行ってください」


「おう」


どんどん奥へ入っていくにつれて寒くなっていく。

そして、どういうわけか奥になるにつれて発光石が増えていくのだ。


「クリスタル? いや、氷か」


奥になるにつれていたるところから氷の塊も見るようになってきた。

そして、少しずつその氷が溶けていたのだった。

これが源泉の水を作っているのだろう。


「もうすぐです」


「まだ、ここまで一時間だね」


そして、最奥に着くのだった。

洞窟の最奥は部屋が全面氷に覆われていて、発光石の光が氷で乱反射していた。

一見すると神秘的ではあるがそれ以上の極寒でありがたみも何も感じなかった。


「こっちだよ」


ガシェルさんに運ばれながら更に奥へ進んでいく。

そこには、大きな氷の塊が鎮座していた。

前世でのそこそこ大きなビルくらい大きい。

俺はガシェルさんに下ろしてもらい実際に触れてみる。

だが、他の氷と形や色は変わらないはずなのに冷たくなかった。

むしろ、氷の周りは少し暖かいくらいだ。


「それで、あれがそうなんですね」


「ああ、ルヴァンには何に見えるかい?」


「俺も『人』に見えますよ」


大きな氷の塊の頭頂部、ここからではぎりぎり何かが見える。

それについて、アルマルデ様は『人』ではないかと疑問を持っていたのだ。

そして、それはかつての聖女様なのではないかと。

その理由として、聖女はアルマルデ様のように魔王の討伐や天災があった時に派遣されることが多いのだとか。

その為、歴代の聖女の中には生死不明になった人もいたようだ。

もし、聖女なら弔ってあげたい。

だが、他の何かだった場合開放するわけにはいかない。

そこで、〈鑑定〈人間〉〉を持った俺がここに連れられていきたのだった。


「僕はマンティコアに見えるけど」


「そうですか」


マンティコアが本当にいるのかは知らないがそれは無いだろう。

距離がありすぎて特徴までは分からないが、どうみても人のような手足があるように見える。


「今度目にも〈介助〉をかけておきますね」


「うん」


ガシェルさんは満足そうにうなずいた。

無駄話をしている間アルマルデ様はずっとそれを見つめていた。


「いいですか?」


「頼むよ」


「分かりました。〈鑑定(人間)〉発動」


一瞬名前と職業が見える。

だが、次の瞬間強い痛みが全身を襲った。


「ぎゃああああああああああああああ!」


「る、ルヴァンくん!?」


「ガシェル! ルヴァンの視線を隠しな!! 早く!」


「お、おう」


ガシェルさんの身体が俺と氷の塊の間に入り、鑑定が中止される。

間一髪俺は意識を失わずに済んだ。


「大丈夫かい、ルヴァン!」


「ダメだ」


アルマルデ様に伝えなくてはいけない。

あれは聖女ではなかった。

あれは。


「助けちゃ、ダメです」


「やはり、人間種だったんだね。あれは何だったんだい?」


「ガフマルノディル って名前の女性。種族は魔族。天職は魔王Lv1288」


「「!?」」


この名前に俺は全く聞き覚えがなかったが二人は何なのかを知っているようだ。

だが、まずいのはそれだけでなかった。


「状態は昏倒です」


そう、あの魔王はまだ息があるのだ。


「あれが、生きているのかい?」


「年齢は三千オーバーでしたよ」


「そうか」


「どうする、アルマルデ」


ガシェルさんが神妙な面持ちでアルマルデ様に問いかける。

しばらくアルマルデ様は考えた後に小さなため息をついた。


「忘れよう」


「それって」


「最奥までの地図があるのにこのことを聖女である私にすら今まで教えたことは無かった。つまり、シューラン猊下はずっと隠していた。後ろにいるのは教会だけだったらまだいいが、王国が関与してるなんてことになったら消されかねない。バルバドのクソじじいにな!!」


「バルバドって?」


「知らないのかい? バルバド・キングレオ。キングレオ王国の四十二代目国王様だよ」


そうなのか。

つか、王国の名前すら初めて知ったぞ。


「でも、ここに来たことはバレてるぞ」


「大丈夫だよ。この子が天恵スキルで〈鑑定(人間)〉があるのを知っているのは伯爵家の人間だけだ。勝手に口にすることもないだろう。それに、バレたら最悪出来なかったことにすればいい。現に鑑定したら痛がってたじゃないか」


「そうだな。そうしよう」


とんでもないことになってしまった。

だが、知っておきたいことがある。


「ガフマルノディルって、どんな魔王だったの?」


「そうか、教えておかないと」


「好奇心に駆られて、調べでもしたら怪しまれるしね」


確かに教えてもらえなかったら俺は自分で調べてしまってたかもしれない。

アルマルデ様は「教えるがすぐに忘れな、そして決して口にするな」と前置きして話し出した。


「まず、魔王は魔族の長としての天職で主に魔族から生まれる。高い知力と魔力を備えていることが特徴的な職業。でもって普通は意思疎通ができるから、戦争になれば別の話になるが、基本一国家の王様として扱われることが多い。だが、あたしが倒した魔王のように自分の力に酔ったバカや強大な力を制御できなくなる魔王がたまに生まれる」


アルマルデ様は氷の上の彼女を見つめて言う。


「ガフマルノディルは第六代目魔王にして天災の魔王、災厄の魔王と呼ばれている。彼女は後者の魔王で自分の力を制御できずに訪れた場所を全て焦土と化した。そして、当時の勇者に討たれたことになっていたんだよ」


「それじゃあ」


「ああ、生きてるなんて話が世界に出回った日には世界が混乱に包まれるだろうね」


俺は事の重大さに身震いするのだった。








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