第三話 せっかく転生したのだから今の自分を確認したい。
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苦しみの中、俺は必死にもがいた。
もがいて、もがき続けて、そして誰かの手によって引き上げられる。
「が! ごほっ ごほっ」
俺は体に入った水を吐き出す。
そして、やっと息ができるようになると、意識を手放したのだった。
目を覚ますと小さな部屋のベッドの上だった。
お決まりの言葉を言ってみる。
「知らない天井だ」
周りを見回す。
「知らない部屋だ」
そして、窓から外を覗いてみる。
そこにはどういうわけか太陽が三つあり。
更には蝙蝠のような翼を持った蜥蜴が人をのせて飛んでいた。
「知らない世界だ」
確実にここが俺の知る世界でないことは理解した。
思わず頭をかく。
俺が途方にくれたり、解決方法が分からなかったりするとでる俺の癖だ。
元々介護士の三十九歳。
恋人いない歴イコール年齢のさえないおっさん。
死んで転生した。
ちゃんと俺は俺らしい。
だが、それと同時に俺はボルヴァ―ドという少年の記憶も持っていた。
捨てられていた赤ん坊の俺をこのハーキスタ伯爵家の夫人リシャリア・ハーキスタ様に拾われて育てられた。
今は従僕として働いている。
「まあ、実際はお嬢様の遊び相手みたいなものだが」
ここのお嬢様、リリシア・ハーキスタ様は俺と同い年で八歳だ。
半年ほど前までよく一緒に庭を走り回っていた。
だが、半年前の王都での新年パーティーの帰りに事件は起きた。
お嬢様はこのファロンタランド王国の第二王女様と仲がいいらしいのだが、その王女様が飲まれるはずだったジュースを飲んでしまう。
だが、ジュースには毒が入っていた。
すぐに解毒されて命はとりとめたが、嗅覚と味覚を失い。
更に壊死した左ひざより下を失ってしまったのだった。
時折激しい頭痛があり。
今は魔動車椅子で過ごされている。
「ボルヴァ―ドの記憶では庭の散歩中なぜかお嬢様の車椅子が暴走して、俺は止めようと車いすの前に出る。そして、後ろに飛ばされた。たぶん後ろに噴水があったはずだからその中に着水したのだろう」
それで苦しかったのか。
一人納得して俺はうなずいた。
「じゃあ次は俺のステータス確認だな」
鑑定〈人間〉発動!
ボルヴァード エルフ/ドワーフの混血 8歳
状態:衰弱
ステータス
HP2/10
MP3/3
筋力 8
知力 20
魔力 2
スキル
介護 介助 配薬 救急対応 夜間行動 鑑定〈人間〉
体術 歌唱魔法 魔法適性
おっと、腕の色からすこし肌の焼けてる子供だと思ったら、まさかのエルフとドワーフの混血でしたか。
まあ、捨て子という時点でなにかしらあるとは思ってたが。
しかも、エルフとドワーフ!
「ファンタジーだね~」
転生時、知的生命体としか絞ってなかったので最悪人種外になることも覚悟していたが、これならあたりを引けたと思って大丈夫だろう。
むしろ、ドキドキする!
転生前に種族によって覚えられるスキルがあるって言ってたし、エルフとドワーフ両方覚えられるかも!
「みなぎってきた!」
俺はさっそく起きようとするがうまく立てない。
「そういえば状態が衰弱になってたっけ」
子供が溺れてすぐの状態ではいろいろと弱って当然だろう。
そういえば、スキルの介助や介護でどうにかならないだろうか?
介助 発動!
何も起こらない。
身体も怠いままだ。
介護 発動!
これも、何も起こらない。
身体は怠いままだった。
「スキルの発動して何も起きないのはおかしい。発動の仕方が悪いのか、何かしらの条件があるのか?」
分からないが、とりあえず動けないならゆっくりと休むとしよう。
俺はベッドに横になろうとした時だった。
「入りますよ」
そう言って入ってきたのはメイド長のセシアさんだった。
初老の女性で俺をこの家で実際に育ててくれた方だ。
口調は厳しいし、怒るととても怖いが基本やさしい。
この世界で母のように思っている。
「おはようございます、セシアさん」
「起きていたのですね」
セシアさんは一緒に持ってきたスープをベッド横に備え付けられていた机の上に置く。
そして、俺をやさしく抱いてくれるのだった。
「ルヴァン、よく頑張りました。あそこであなたが止めずにいたら、お嬢様が噴水で溺れていたでしょう。今の弱ったお嬢様では死んでいたかもしれません」
「セシアさん」
確かに、健康児だった俺が溺れてこんなに弱ったのだ。
お嬢様が溺れていたら大事になったのは火を見るよりも明らかだろう。
「もう一度言います。よく頑張りました」
「ありがとうございます」
「しばらくは休みなさい。スープは飲めそうですか?」
「はい」
俺はセシアさんに頭を撫でられながらスープを飲むのだった。