第二十六話 せっかく異世界に来たんだから王都に早くついてほしい
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「ふっ、ふっ、ふっ!」
ディートンの町を出て六日が経った。
その間、俺はガシェルさんの治療を行っていた。
それに並行して、光魔法や回復魔法の練習でMPもだいぶ上がってきたと思う。
「ふっ、ふっ、ふっ!」
それと、いつのまにか〈成長促進〉のスキルも手に入れていた。
嬉しい誤算である。
さて、そんな最近俺はとても困っていることがあるのだ。
「ふっ、ふっ、ふっ!」
「ガシェルさん。何度も言いますが、鍛錬を止めてください」
「それは、出来ん!」
馬車の休憩時間。
俺はランニングしているのだが、その隣で歩行練習をしているのだった。
俺は数日をかけて姿勢を矯正しただけなのだがガシェルさんは驚異的な回復を見せたのだ。
最初は骨と皮しか無かったのに少しづつではあるが筋肉が戻ってきていた。
年を取ればとるほど筋肉をつけ辛くなる。
その為、前世では機能保存、つまり今ある能力を落とさないようにする方法が取られるのが普通だった。
でも、ガシェルさんは「鍛錬がしたい。しないと死ぬ」との事だったので歩行練習を進めたのだ。
足腰を鍛えることは生活能力を一気に上げる。
本人の自信にもつながればなおいい。
最初は杖をつかいながら、カーシャさんの支えありで何とか歩ける程度だった。
それでも、歩けることがうれしかったのだろう少し長めに練習していた。
その後も、俺とカーシャさんが代わるがわる練習に付き合っていたのだが、なんと練習を始めて四日目とうとう杖を突きながら一人で歩けるようになったのだ。
「すごい」の一言だった
だがガシェルさんはカーシャさんの言う通り鍛錬バカで目を離すとすぐに練習を始めてしまう。
練習のし過ぎは体に負担がかかりすぎる。
下手をすれば骨に負担をかけすぎて骨折をし、また動けなくなってしまうだろう。
「危ないですから」
「いいんだ。俺には〈鍛錬〉の天恵スキルがある」
そう言って俺の話を聞いてはくれなかった。
危ないのは皆にも説明しているはずなのにどういうわけかだれも止めることは無かった。
「またやってるのかい」
お昼を済ませたアルマルデ様が俺たちの様子を見に来たのだ。
「アルマルデ様からもガシェルさんに言ってください」
俺は藁にも縋る気持ちでアルマルデ様にお願いをする。
だが、アルマルデ様は両手を上げて首を横に振った。
「そいつに何を言っても無理だよ。それに〈鍛錬〉のスキルがあると練習すればするほど筋力が上がるだけじゃなく、練習中でのけがをしに難くなる能力がある。あんたは逆に心配し過ぎだと思うよ」
「そう、でしょうか?」
「ルヴァンくん! 君はむしろさっきから走る速度が落ちてきているぞ! もっと、気合を入れなさい!」
「はい!」
俺はガシェルさんの指示通り速度を上げるのだった。
ガシェルさんは横で俺が鍛錬をしているとその練習方法ではいけないと色々と助言をしてくれたのだ。
しかも、言う通りにすると筋力の上りがよく、魔法ばかり練習していた俺がとうとう筋力 50に到達したのだ。
「お待たせ、今日の鍛錬するぞ」
カーシャさんが休憩中の見守りを終えてやってきた。
彼女は時間ができるとガシェルさんと一緒に体術の稽古をしてくれるのだ。
ガシェルさんは歩行練習を止めてアルマルデ様の横に座り俺たちの練習の指示を出してきた。
「それじゃあ、昨日と同じくルヴァンくんはカーシャの技をよけながら一発でも入れれたら勝ちそれでいいね」
「「はい」」
ガシェルさんの「始め!」の合図で稽古は始まった。
「やっ!」
「ふっと!」
俺はカーシャさんの拳をギリギリで避けながら隙を探す。
この練習をやっていて気づいたのだが、俺の〈体術〉のスキルは主に回避と受け身によって構成されたもののようだ。
おかげで、カーシャさんの攻撃を避ける、受け流す程度はなんとかできたのだった。
さすがは天恵スキル様様である。
でも、カーシャさんは魔物相手の戦闘ではもっと素早く動いているので、かなり手を抜いているのだろう。
天恵スキルがあってもカーシャさんの足元にも及ばない。
それが悔しかった。
「ルヴァンくん、集中しなさい!」
「はい!」
ガシェルさんの指導が入る。
俺は近づこうとするが、カーシャさんは絶妙に距離を取りながら離れていく。
この練習で俺がカーシャさんに意図的に近づくのは至難の業だった。
もし、運よく近づいて攻撃をだせてもカウンターが待っていた。
距離を取っては攻撃が入らない。
俺の勝利はほど遠いようだ。
「はい!」
「ぐっ」
カーシャさんの一撃が入る。
俺は地面に転がされるがうまく衝撃を逃がしてすぐに起き上がった。
ダメージはそこまで大きくない。
俺は次の一手に走り出す。
そんな事を繰り返し、数分もするとHPが尽きて倒れこむのだった。
もちろん、一本も取れなかった。
「おいおい。次は俺の調合の授業があるのに大丈夫か?」
調合師のおっさんが心配して俺に話しかけてきた。
息も絶え絶えでなんとか声を出そうとする。
「だ、だいじょ、ぶ」
「まあ、お前は手先が器用だからな。腕さえ動けば問題ないだろう」
そう言っておっさんは俺を馬車の中に運び入れるのだった。
「それじゃあ、教えたように好きな物を作ってみろ」
「はい」
俺は調合を始める。
最初はアルマルデ様はおっさんから教わるのを許してくれなかったのに、ディートンの町を出た頃からなぜか調合を習うのを許可されたのだ。
おっさんからも調合についていろいろと教えてもらった。
すると調合はするのは意外と簡単だったのだが、調合するための物質を抽出する方が大変だという事に気づいた。
調合に必要なのは大きく三つ。
調合に必要な知識と物質抽出。
細かい調節のための器用さとセンス。
完成させるまでのMPと根気である。
「お前って本当に手先が器用だな」
俺が抽出した薬草の原液を見ておっさんはそう言った。
今回はポーションを作っているが作るには薬草を絞った原液ときれいな水が必要なのだ。
この絞ったときにうまく原液を抽出できるかどうかでこの後調合されたポーションの出来に大きく関わってくるのだ。
次に原液ときれいな水を混ぜながらMPを加えていくのだ。
この時にMPを入れすぎると二つの物質がうまく混ざらないし、少なすぎるとただの草汁になってしまう。
しかも、普通のポーションでも作るのに十五分はかかる。
根気がなければ集中力は途切れあっという間に失敗してしまう。
そんなこんなでやっとの事、ポーションができたのだ。
一回の調合で今の俺が作れる量は小さな瓶二本分。
もっと、MPと細かい調節ができれば一度に何本も作れるのだろうが、今はこれが限界だ。
午前中も光魔法の練習をしていたし、この調合が終わるころには俺のMPは空っぽだった。
「おつかれ、今日もいい出来だ。これなら、調合師で食ってけるぞ」
「そうですか?」
「もう調合の仕方について教えることはほとんどない。後はどれを調合すると何ができるかを頭に叩き込めばいい」
「そうですか」
俺は自分のスキルを確認すると〈調合〉のスキルレベルがLv3になっていた。
今までで一番スキルレベルの上りがいい。
おっさんの言う通り調合で食ってくのもありだな。
俺の授業が終わりおっさんは酒を飲み始めたのだった。
「そういえば聞いたか」
俺が調合の片づけをしているとおっさんが話し出す。
「なにをです?」
「明日には王都に着くってさ」
一月半かかってやっと目的地に着くようだ。




