第十九話 せっかく異世界に来たんだから夜更かししたい。
遅くなってすみません。
今日、もう一話更新します。
よろしくお願いします。
〈トーチ〉と呟くと小さな光がともった。
それを見て、夜の番をしていた冒険者とリアちゃんが感嘆の声を上げたのだった。
やっと〈トーチ〉明るさ調整ができるようになったのだ。
そして、光魔法がLv2になった。
周りを見るとすっかり暗くなっていた。
練習に没頭しすぎたらしい。
既にアルマルデ様もセシアさんも寝ている。
そして、今日はイアンも夜の番ではないので冒険者用のテントで休んでいるのだった。
一方で俺は前日に睡眠をとってしまい、今日は眠れないでいたのだった。
暇だ。
「リア、もうすぐ寝ないと体に悪いですよ」
「もうちょっとだけルヴァン君の魔法を見てから寝る」
リアちゃんはそう言って寝るのを嫌がった。
そして、リアのお母さんが俺を見る。
「ルヴァン君もこんな遅くまで起きてちゃダメでしょ。早く寝なさい」
寝たくても寝れないのだが。
「す、すみません」
そう言って頭を下げるのだった。
しばらく、光魔法の練習をしているとリアちゃんが首を傾げていった。
「私も魔法が使えるようになるのかな?」
やっぱり、子供が魔法に憧れるのは仕方ないことだろう。
だが、転生の時も聞いたが魔法を使うには〈魔法適性〉が必要になる。
それがないと、どんなに頑張っても魔法は使えないのだ。
「そうだね。大きくなったら使えるかもね」
でも、子供に説明しても分からないだろうし、なんとなく使えないかもしれないと教えるのは小さな子供には酷なように感じたので適当に濁しておくことにしたのだった。
「そうなの? なら、お姉さんも使える?」
「え!? あ、その。いや~」
一緒に俺の魔法を見ていた冒険者のお姉さんにリアちゃんはそう言って無邪気に笑った。
すみません、お姉さん。
とんでもない方に飛び火してしまいました。
リアちゃんと一緒に目を輝かせてみていたのだ。
使えるわけもないだろう。
「そ、そういえば、この辺の森ではたまにアンデッドが出るって」
「そうだぞ! 悪い子の前には、こわーいアンデッドがやって来るぞ」
「あ、アンデッドやだ」
そう俺たちが言うとリアちゃんは怖がってお母さんの元に戻っていくのだった。
どの世界でもお化けが出るぞという脅しは子供には大変効果があるようだ。
前の世界でも甥っ子を寝かせるのに使ったな。
ただ、次の日におねしょ率が高くなったのはいただけなかったが。
「君も寝なくていいのかい?」
「イアンにも説明したけど、俺には〈夜間行動〉があるから寝れないんです」
「そうなんだ」
「それに、夜襲があった時回復要員がいるのは助かると思いますよ」
「それもそうだね」
そう言って、お姉さんはデバミ茶を飲んだ。
デバミ茶は眠気覚ましのあるお茶だ。
夜の番をしている冒険者たちはよくそれを飲んでいた。
「はい、ルヴァン君」
俺も一杯頂いた。
味的にはあったかいウーロン茶のような味だ。
嫌いではなかった。
「温まりますね」
「もう、闇風の月になるからね。水の月に入るともっと寒くなるよ」
「そうなる前に王都に付きたいです」
キャンプは冷えるのだ。
残念ながら前世のようなキャンピングカーやテントのように完全に密閉した空間を作れるわけもなく、隙間風とかで馬車の中でもかなり寒いのだった。
王都に付けば少なくとも宿などがあり、馬車の中での寝泊まりよりは幾分かましだろう。
「そういえば、あのドラゴンって見ましたか?」
「ああ、街を出る時のね」
俺は初日に見たドラゴンを思い返していた。
その体は真っ黒で鉱物のような光沢があったように見えた。
「だとするとリヴォルバードラゴンかもね」
「なんですか、そのドラゴン」
「何百年も前にどっかの国が作ったドラゴンなんだって。基本は火竜みたいに火を吐くドラゴンなんだけど、吐く火に鉄の塊が一緒に出てくるとか。形は火竜そのものなんだけど、黒くて鉄みたいに光ってるって」
「ついでにリヴォルバーて、意味わかりますか?」
「知らない」
って、ことは転生者がかかわってるな。
銃はあるかもしれないが、銃を英語でリヴォルバーというのは前世だけだろう。
「でも、君はあのドラゴンを知ってるものだと思ったよ」
「なんでですか?」
確かに子供はこの手の動物が好きだ。
かくいう俺も好きだ。
だが、残念ながらこの世界の簡単な文字しか読めないので、伯爵家の本を読む事はできなかった。
「だって、君の名前はどう考えてもリヴォルバードラゴンから来てるでしょ。ルヴァンって」
「そうですね。それと、ルヴァンって俺の愛称で、本名はボルヴァードです」
「なら、なおさらだね」
そう言って、デバミ茶をお姉さんは飲んだ。
夜の静寂が訪れる。
「「暇だ」」
お姉さんと俺の声が重なったのだった。
冒険者たちは三人で夜の番をする。
そして、一時間に一回二人で巡視をのだが、何かあった時ようにもう一人が待機する。
その待機する一人はものすごく暇なのだ。
イアンさんとかは途中で筋トレや武器を磨いていたりしていたが、お姉さんは何もせず俺の魔法を見ているだけだった。
「お姉さんは「カーシャね」
「?」
「私の名前はカーシャ。さっきからお姉さんってしか私を呼ばないから知らないんじゃないかなって」
「そうですね。すみません」
「いいのよ」
「それで、カーシャさんは筋トレとか武器を磨いたりしないんですか?」
「しないよ。私は武闘家の天職だから武器は籠手くらいだし、筋トレはするけどつけすぎるとスピードが落ちるから必要以上はしないの」
「そうなんですね」
まえにアルマルデ様が言っていたが、ステータスに振り回されないって事なのだろう。
筋力を上げて攻撃力が上がっても、スピードが落ちては武闘家のヒットアンドアウェイの戦い方には致命的になるのだろう。
「皆さん早すぎて戦ってる姿が見えないですし」
「何年も頑張ってきたしね」
みんな努力を重ねてきた末にあるって事なのだろう。
俺にはできるのだろうか。
前世では努力が苦手で合った。
今、魔法を頑張れてるのも魔法を使うのが好きだからだ。
「俺も強くなれるかな?」
戦うのは怖いし、嫌だ。
でも、セシアさんが戦闘に出る時。
イアンさんたちが傷だらけになって帰ってきて回復魔法をかける時、すごく不安になるのだ。
次の戦いではもっとひどいけがをするのではないか。
もしかすると戻ってこないのではないかと。
こんな危険な世界に来たのは間違っていたのではないか。
バン!
「イタッ!」
「うじうじするな。悩むくらいなら体を動かせ!」
カーシャさんはそう言ってなぜか反復横跳びをしだした。
「少なくともルヴァンが敵から逃げるくらいの力があれば、君を守りながら戦わなくても大丈夫になる。そうすれば他の誰かへの負担も少なくなる」
「そうですね」
「よし、ならまずは走れ!」
「い、今からですか!?」
「考えるな感じろ!」
「なんですか、それ!」
結局、カーシャさんに言われるがまま走ることになったのだが、一時間もしないうちに疲れて倒れるのだった。




