第一話 せっかく転生するから前世を思い返したい。
第一話です。
よろしくお願いします。
俺の人生を評価するのであれば可もなく不可もなく。
点数で表すのであれば六十点といったところだろう。
内訳として。
学生の頃に関して。
俺の家はそこそこ裕福だった。
両親ともに働いていたが、二人とも国立大のエリートで収入だけはすごかった。
その反面、休日などほとんどなく小学校の頃授業参観に来たのもたったの一回だけだった。
寂しくはあったが行きたい学校にも行かせてもらえた。
出来る範囲でわがままも聞いてもらった。
愛されているのも分っていた。
それに、学生の頃に歌唱部の部活動も頑張ってた。
友達もいたし、就職後も毎週集まってゲームをする程度には仲もよかった。
欲を言えば彼女が欲しかったが。
こればかりは縁の問題だから仕方ない。
それ以上に両親よりも先に逝ってしまったことを心苦しく思う。
以上の事から五十点満点中二十点。
大学卒業後の仕事に関してして、俺は介護職をしていた。
毎日、じっちゃん、ばっちゃんをベッドから起こしたり、移動を手伝ったりと思いの外重労働ではあったが、そこそこ楽しくはあった。
たまにぎっくり腰になるのはご愛敬だろう。
もちろん楽しいことばかりではなかった。
老人を相手にしているということは別れの時に死が付いてきたことは少なくはなかった。
また、認知症の老人相手にするのは精神的にもきつかった。
でも、しっかり社会人として恥ずかしくない人生を送れたと思う。
そこで五十点満点中四十点。
以上の事から俺の人生に百点満点中六十点を付けることにした。
さて、なんでこんな事を考えているかというと、先ほどもなんとなく言ったが俺は死んだのだ。
死因はたぶん病死。
最後の記憶が体調の悪さにおぼつかない足取りで病院に行こうとした所までだ。
その後の事を覚えていない。
そして、気づけばこの真っ白な世界に来ていたのだった。
「何もない」
白い世界には何もなかった。
よく異世界転生ものではここで神様やら天使やらが出てきてくれるものなのだが。
「もしかして、ここが天国?」
だとすればなんともつまらない場所である。
真っ白な世界がどこまでも続いているだけ。
壁があるのではと歩いてみたがいつまで歩いても壁はなかった。
しいて言えばあるのは床ぐらいだろうか。
「みんな死ぬとここに来るのかな?」
暇でもう一度死ねそうだ。
更にいくらかの時間が過ぎた頃だった
≪はい、おまたせしました≫
膝を抱えて座り、何もない空間を見上げているとそこから女性が現れた。
リクルートスーツを身にまとった彼女は、たくさんの書類を抱えている。
天使というよりはOLのそれに似ている。
≪まあ、自分で天使だなんて思ったことは無いですが≫
いつの間にか現れた机の上に書類を置いた彼女は深いため息と共に椅子に座った。
その目元はクマができており、瞳も濁っていた。
≪いつまでも体育座りしていないでこちらの椅子に座ってください≫
「はい」
椅子に座ると彼女はまたため息をついた。
≪それでは転生面接をさせていただきます≫
「よろしくお願いします」
≪まず、あなたは前世でなくなりました。そして、生き返ることはできません。そのことはご了承ください≫
「はい」
≪そして、これから転生するにあたって今まで生きてきた世界であなたが世界に貢献してきたポイントを消費して転生していただきます≫
「それって、どういう?」
≪はい、説明します。世界に貢献してきたポイントとはそのままで、例えば死ぬまで、または定年まで働いていた、ボランティアを何回したなどでポイントが入ります。逆に犯罪を犯した、自殺したなどの項目に対してポイントが減ります。ここまではいいですか≫
「自殺で減るなら、生きるという行為にポイントは入りますか?」
≪入りません≫
「ついでに自分のポイントの内訳とか見れますか?」
≪見れますが、膨大ですよ≫
「なら、大丈夫です。すみません」
≪では、次にポイントの消費に関して説明します≫
そう言って彼女は一冊の本を取り出した。