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国を捨てて自由を掴む  作者: 神谷アキ
1、『ブックカフェ ラーシャ』
5/53

5




「ん? なんだこれ?」


「あ、やっと気づいた?それがサービスよ」


「これが!? これってあのチョコだよな? まあ、さっきまではあの色食べたくなかったけど、食べてみると普通にうまいな」


「でしょ? そうだと思った! だから見えないように入れてみたの。そしたら味の感想をもらえるかなと思って」


「俺は実験台かよ!」



 ビートがそう叫ぶと店内に笑い声が起こる。他のお客さんも聞いていたようだ。少し恥ずかしくなって、キッチンへ引き返そうとすると



「はは! お嬢さん面白いね」



 カウンター席で本を読んでいたお客さんに声をかけられた。前髪を斜めに下ろしている、20代くらいのおしゃれな若者だ。



「どれ、せっかくなら私も食べてみようかな。チョコアイスを1つ頼む」


「は、はい!かしこまりました」



 声をかけられてびっくりしたけど、チョコアイスを頼んでくれて嬉しさが広がる。さっきまで全く注文がなかったから、溶けたアイスでまた魔法の練習台になるかと。


 そう思いながら、アイス生地にチョコを混ぜ合わせる。しっかり混ざったら手をかざし、手の平に魔力を集める。ポワァっと力がでるイメージがしたら完成だ。

 そしてできたアイスに、今度は忘れずにスプーンを添えてお客さんに手渡す。



「お待たせしました! チョコレートアイスです!」


「うん、ありがとう。それじゃ、食べてみようかな」



 つい心配でお客さんの反応を見てしまう。

 いや、でもビートは美味しいって言ってたし。うん、大丈夫だ。実際、目の前の人は美味しそうに味わって食べている。



「うんうん、微かに苦味があって美味しいよ。思ったより甘くないんだね」


「はい、そうなんです。カカオ濃度を高くしてビターな感じに仕上げてみました。それなら甘いのが苦手な方でも美味しく食べていただけるかな、と」


「なるほど。お嬢さん、今度私の友人にもこれを振る舞ってもらえるかな?」


「もちろんです! お店に来ていただければいつでも!」


「ありがとう。じゃあ今日はこれくらいにして、お勘定頼もうかな」


「はい、ただいま」



お勘定を終えたお客さんを出口まで見送る。



「またのお越しをお待ちしています」


「ごちそうさま。美味しかったよ。私はエリオールだ。お嬢さんは?」


「サラといいます」


「サラさんか。また今度ね」


「はい」



襟を正し、カランカランと鈴を鳴らしながら帰っていった。



「エリオールか……」


「エリオールさんがどうかしたの、ビート」


「なんか聞いたことある名前だと思ってよ……」


「そう?また今度来たときに聞いてみたら?」


ビートはまだ思い出そうとしているのかウンウン唸っている。その様子を横目に見ながら食器を下げ、机の片付けを始めた。


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