王子の一生
俺の前世は『安川治朗』―― 神様の手違いでトラックに轢かれて死んだが、転生して再び命を得ることができた。
今世の俺の名前は『村田王子』―― 王子と書いて何故か【カイザー】と読む……
カイザーなら漢字は『皇帝』だろ！ せめて読みは『プリンス』にしろよ！
否、どっちにしろ頭を抱えたくなるキラキラネームだ。折角チートをもらったというのに、この名前のせいでマイナスにならないか心配だ。
子供にこんな名前をつけたＤＱＮな親だから、碌な家庭じゃないだろうと思ったが、意外にもそこそこ裕福だった。
神の奴―― 名前以外はなかなか良い仕事をしたようだ。
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２度目の人生はイージーモードだ！
何せ俺には前世の知識がある。回りの幼児共とは、人生経験が違うのだ！
お前らが今期の『プリ●ュア』のキャラ名を上げる間に、俺は前作はおろか前々作のキャラ名も余裕で上げられるのだ。
当然俺は『神童』と持て囃され、人気者だ。
前世も含めて、生まれて初めて母親以外からバレンタインチョコを貰った。それも『３つも』だ！
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小学校に上がってからも俺の天下は続いた。
テストはほぼ満点ばかり。ゲームをしても、俺の右に出るやつなんて誰もいない。
当然周りからは『天才』扱いされて人気者だった。
ところが、高学年に上がった頃から状況が変わってきた。
ゲームやアニメの知識溢れる俺に、女子共が『キモイ』と言い出すようになったのだ。
更にスポーツのできる男子からは『オタク』扱いされるようになり、人気は凋落しだした。
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中学は私立の中高一貫の学校に入学した。
中学の授業は、前世で高校を卒業している俺にとっては簡単なものだった。
小学校までは周りが低レベルすぎて、本気で友達を作る気はなかったが、中学になるとそこそこ出来る奴もいるし、そろそろ友達でも作ろうかと思ったが、なかなか上手く行かなかった。
名前のせいでバカにされたりして、気付いたら俺は周りからハブられていて、家と学校を往復するだけ―― 時々ゲーセンに寄って遊ぶくらいの、退屈な毎日を過ごすようになっていた。
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高校にはそのままエスカレーター式で入学した。
流石に高校でも『ぼっち』では辛いと感じた俺は、如何にも…… という感じの『漫画研究部』という実質同好会のようなクラブに入部した。
そこは俺にとって【パラダイス】だった！
他の部員も世間の風当たりの冷たさに辟易して、現実から目を背け、『夢』という名の妄想を語り合うという、全く生産性のないヘイトを溜める毎日を送っていた。
それでも俺は楽しかった。俺と同じような『努力なんてくそ食らえ』という考えの連中がいることが嬉しかった。
でも、俺はコイツらとは違う！
俺にはチートがあるから、いつでもこの状況から抜け出せるんだ！
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俺は大学受験に失敗した。
受験票を握りしめながら、トボトボと歩道を歩いていた。
そんな俺の目の前を黒猫が横切って、車道に飛び出していった。タイミング悪く、トラックが猛スピードで走ってくる……
俺はそれを『チャンス』と信じて、黒猫を追いかけるように車道に向かって走り出していた！
