冒険者ギルドでありがちなイベントに遭遇
◇冒険者ギルド 受付 AM09:15
「サトウさんの仮登録が完了しました、これから能力値の確認後、ランクの選定及び試験に挑んでいただきます」
まだ仮か、まぁ仕方ない
「ランクって全員最下級からじゃないんですか?」
「基本的には最下級のGランクからのスタートが一般的ですが、能力値や試験結果で優遇措置が適用されGランク免除のケースも有ります」
「なるほど、あ、作業を中断させて申し訳ないです」
「お気になさらず、それでは能力値の確認を行います・・・・え?」
「ん?」
「あ、あのサトウさんは元高ランク冒険者ではないですよね?」
「違いますけど?冒険者登録は今日が初めてですし」
「ですよね、登録履歴も無いですし、失礼しました、そうすると・・・サトウさんはどちらかで英才教育を受けたり、高名な方の弟子だったりしますか?」
「いや学校には行ってましたけど、特別英才教育は受けて無いですし、誰かの弟子でも無いですよ」
なんだ?この質問の意味は?
「そうですか、ちょっと上司に確認が必要なので少々お待ちください」
「わかりました」
何かマズイ点でもあったかな?
◇ギルド支部長室
『コン、コン、コン』
「失礼します、新規登録の方で支部長に確認をしていただきたく伺いました」
「ん?新規登録者?わかった入ってくれ」
「失礼します」
「それで、新規登録がどうしたって?判断に困る犯罪歴でもあったか?」
「いえ、犯罪歴は有りません、実は能力値に関して私では判断がつかなく支部長に確認が必要だと思いまして」
「そうか、それで能力値を教えてくれるか?まさか新人でオールB以上とか言わないだろうな?」
「そのまさかです」
「はぁ?本当か!?冗談で言ったんだがな、新規登録の時点で一つでもB以上なら有望株、二つ有れば即戦力、三つ有れば天才だぞ、何者だ?」
「それと、職業が警備員となっているんですが、私の知らない職業でして、支部長はご存知ですか?」
「警備員?どこかで、、、あ!イバンの奴が面白そうなのがいたとか言ってたな、確かそいつが警備員とかいう、聞いたことがない職業だったはずだ!」
「あのイバン様が・・・・間違いなく逸材ですね!」
「よし、俺が直々に相手をしてやろう」
「・・・支部長、顔が悪人みたいです」
「うるせぇ、行くぞ!」
遅いな、早く来ないかな
「おう!待たせて悪かったな!ここからは俺が対応する!」
これまたキャラの濃そうな人だな
一言で言うならスキンヘッドボディビルダー
年齢は五十後半くらいか?
なんか周りは「あ!支部長だ!」「何かあったのか?」とか騒いでる
「いえ、お気になさらず、こちらに何か不備があったんでしょうか?」
「不備なんか無いわい、おっと自己紹介がまだだったな、俺は支部長のエイクだ!お前さんはサトウだったか?早速訓練場に移動して軽く試験をやるぞ!」
「あ、はい」
有無を言わさずって感じだな
◇冒険者ギルド 訓練場
「よし説明するぞ、試験は簡単だコイツと闘ってもらう、勝てれば上々負けても冒険者になれるから気楽にやってくれ」
「よろしく、僕はオール、支部長に急遽対戦相手に指名された可哀想な冒険者だ」
自分で可哀想って
見た感じ同い年くらいかな?
見学者も何人かいるな
「私はサトウです、よろしくお願いします」
「僕はこの訓練用の剣を使うけど、君はどうする?」
「じゃあ私はコレで」
「ん?短い黒い棒?そんなので良いのかい?」
「ほぉう」
支部長が何か頷いてる
「ええ、コレでお願いします」
「よし武器は決まったな、それじゃあ、さっさと始めるぞ!」
距離は10m位離れるのか
「それでは、始め!!」
まずは警戒棒を素早く振り下ろす
『カチッ』よし準備完了
「なっ!伸びた?」
軽く驚かせられたかな?
まず、警備員は基本自分から攻勢に出ない
一定の距離を保ちなが相手の出方を伺う
構えはフェンシングのような半身
「変わった構えだね、武器が伸びたのには驚いたけど、攻めて来ないのかい?それじゃあ僕から行くよ」
来た!早い!だけど見える!
まずは相手の武器を捌く
『ガキン』『ガキン』『ガキン』『ガキン』
「ほぅ、やるね!速度を上げよう」
早い早い!コレはヤバイかも
でもまだ食らいつける!
動きを最小限に!
相手の動きから軌道を予測!
『ガキン』『ガキン』『ガキン』
「なっ!?コレにも対応出来るのか!面白い!ならこれならどうだい?」
なんだ?オールの周囲が蜃気楼みたいに歪んでる
ヤバいアレは絶対にヤバい!本能が囁いてる
たぶん止めれて一撃
二撃目は厳しい気がする
・・・試験だけど負けるなら全力だ
気合いを入れろ!力を込めろ!集中しろ!
ん?なんだ?この感じ?力が漲ってくる?
『シッ』
オールの姿が一瞬ブレた?
「なっ?」
もう目の前に!
「これで終わりだね」
剣が斜め下から迫ってくる!
反応しろ俺!
『ガギィィィン』
「ハハハ、僕の負けか、サトウだっけ?君凄いね」
オールの負け?
あ、駄目だクラクラする
『ドサッ』
◇そのままマモルは意識を手放した
「おいおいマジかよ」
「オールさんの剣が・・・」
「何者だアイツ?」
見学者が騒ぎだす
「おし、試験は終了!部外者は帰った帰った!」
「サトウはどうします?僕が運びましょうか?」
「俺が運ぶから大丈夫だ、で、どうだった?お前から見てサトウは」
「異質ですね、武器に構え、何より僕に対してではなく武器に対して集中的に攻撃するスタイルは今で出会った事がない、しかもスキルの使い方を心得ていない点も不可解ですね」
「確かに変わった奴だな、お前の大人気ない最後の攻撃まではスキルを使った気配が無く、最後だけ何らかのスキル、おそらく能力強化系スキルを限界を越えて発動させた結果、訓練用とは言え鉄の剣を砕き、自分はぶっ倒れるんだからな」
「大人気ないとか言わないで下さいよ、楽しくてつい力が入っただけですから、仮にBランク程度の冒険者なら2段階目で決まったと思うので、彼は凄いですよ本当に」
「楽しいからか、なるほどな、確かにお前を楽しませらる奴は早々いないだろうからな、お前がたまたまいて良かった、他の奴だと普通に負けてだろうからな」
「そうですね、今は時期的に高ランクはダンジョンか帝国の武闘会に出てますからね、それじゃあ僕は帰りますね、サトウが目覚めたらコレを渡しておいて下さい」
「ほぅ、コレは・・・本当にサトウを気に入ったみたいだな!わかった渡しておく、今日はありがとうな!報酬は帰りに受付で受け取ってくれ」
「わかりました、失礼します」
「さてと医務室に運ぶか、それにしても本気じゃないとはいえ、閃斬のオールが負けるとはな、しかもオールに気に入られやがった!本当に面白い奴だ!」
警戒棒術は相手の武器を落とす(逸らす)ことに特化しているらしいです。
仮に鉄の剣と全力で打ち合ったら普通は警戒棒が折れるか曲がります、マモルが使っているのは二段式警戒棒で伸ばすと70cm位、収納時は半分より長い位だと思ってください。
因みに警備員が攻勢に出ないのは警備業法上、警備員は特別な権利が無い為です。
つまり一般人と同じってことなので、不審者とかいても、現行犯か正当防衛以外では武力行使は出来ない訳です。