はやぶさ19号
心機一転頑張ります。
突然だが、トウホクについて思い浮かべて欲しい。
東北じゃなくて「トウホク」。
そんなのカタカナとひらがなの違いだろ、と思った人。
違うんだな、これが。東北とトウホクは同じであり、違うものだ。
余計に意味がわからなくなったことだろう。
まあ、まだ意味がわからなくても構わん。この先を読み進めればきっと、わかるだろう。
ああ、最後に一つ、くれぐれもこの事を誰かに話さないようにな。話したとしても責任はとれねえよ。
前置きはこの辺までにしといて…と。じゃあ、またどこかでな…
「まもなく21番線ホームより11時20分発はやぶさ19号仙台行き発車いたします。ご乗車の方はお急ぎください。」
独特の符丁のアナウンスが終わり、けたたましい発車ベルが鳴り響く。
空気の音を立て、ドアが喧騒のホームから車内を断絶した。
そして、はやぶさ19号仙台行きは定刻通りに東京駅21番線ホームを抜けた。
発車してすぐに6号車のドアが開き、中からスーツを着た青年が出てくる。
「えっと…4番のA席は…と、あ、こっちか…」
狼狽えながら席を探す青年。着ているスーツは少しシワができている。
ようやく席を見つけると、ドサッと座り込んだ。
机を出し、コンビニの袋を置く。中からビール(190円)とコンビニ弁当(220円)を出し、広げる。
そして、ビールのプルトップに人差し指をかけた時、腹に振動が伝わる。スマホにメールが来たらしい。
チッと低く舌打ちをしてスマホを起動する。
「送り主: 石田
用件: 助けてくれ
この前の失敗した取引の責任が俺に回って来たんだ。
やれって言ったのは部長だぞ、俺は悪くないのにさっきから俺にばっか怒鳴ってる。
このままだとヤバいから助けてくれ!」
石田、入社2年目の新人社員だ。一応俺の部下になるが、はっきり言って使えない。
書類を無くす、時間を間違える、仕事は超がつくほど適当、そのくせ給料上げろと俺の目の前で堂々とほざきやがる。あの石田ならしょうがない、まあ頑張れと心の中で(皮肉を込めた)エールを送る。
折角の休暇なのに初っ端から気分が悪い。プルトップを開け、ビールを一気に飲み干す。
冷えていたビールは少しだけぬるくなっていた。
「次は大宮、大宮です。」
窓の外に少しだけ目をやる。まだ外は都心の風景だ。コンビニ弁当をそっと袋に戻し、
俺は目を閉じた。