建国宣言
説明はまた後日
「シンヤ、おかえりなさい!」
「うむ、待っておったぞ!」
帰って早々、俺はノルとフロストに両側から抱き付かれもみくちゃにされていた。
随分と心配されていたようで嬉しくもあるが、俺も俺で勇者の襲撃があったことに気が気でなかったので安心した。
別に苦しい訳でもないし、むしろ柔らかい身体が惜しげなく押し付けられているので幸せだとも言える。
「勇者に襲われたって聞いたけど、大丈夫だったか?」
「大丈夫。ドラゴンバスターとか名乗ってたけど、あんな雑魚みたいな勇者には負けない」
「それにしても季節ごと変わってるし……結構ギリギリだったんじゃないのか?」
「何、少し遊んでやっただけよ。シンヤもドラゴンを軽く見てはおらぬか」
「それは無い。フロストには何回やられたかも分からないしな。それと、この寒さは何とかならないのか?」
「それはソルが何とかする」
ノルが指差した先では、淡い光に包まれたソルが地に膝をつき祈るように手を組み合わせている。
興味深くそれを見つめていると、重い雪を降らせていた曇天が割れ、太陽の強烈な光が大地に降り注いだ。
極寒の冷気を塗り替えるように暖かな風が吹き抜け、瞬く間に凍結した世界が生気を取り戻していくのが分かる。
「凄いな……光の精霊って。これじゃあまるで季節の早送りだ」
「ん。日の精霊とも言われているだけある」
「そうだったのか?」
「精霊とはよく分からぬものよな」
何事もなく元に戻ったように見える周囲の風景を見つめながら、俺はキツネにつままれたような気分になった。
フロストも結構派手にやっただろうに、周囲への被害は大丈夫なのだろうか?
「む。何じゃ、シンヤよ。何か言いたげな顔じゃな」
「あぁ……いや、ここに襲ってきた勇者はどうなったかと思って」
「安心せい、拘束して転がしておるぞ」
「そうか……それは良かった」
「あの勇者、想像以上に弱かった」
「そ、そうだったか……」
話を聞いている限りだと、城への勇者の襲撃は余裕で撃退できたっぽい。
俺の方に来た勇者が四天王の【韋駄天】であり、さらに行動を誘導してまで二分作戦を考えていたくらい慎重に作戦を考えていた割には役者不足を感じる。
まあ結果良ければ全て良しという事で。
ソルの作業も終わったようで、エルと一緒に戻ってきた。
全くこの金髪コンビは、並んでいるだけで光輝いて見える。俺なんかとは大違いだ。
「シンヤくん、ちょっといいかな」
「ん、おお。何だ?」
「建国宣言した方がいいんじゃないかと思ってね」
「建国宣言?」
「そう。レギナの四天王を相手にしたからには、流石に僕達の存在が今まで通り軽薄でいることはできないだろう?」
「まあ、目はつけられるだろうな」
「だからこそ、個人的に狙われるのは面白くない。国際問題に発展させれば少しでも敵の出を遅れさせられると思うんだ」
「それで建国か……でもどうやるんだ?」
「専用の魔法がある。準備するよ」
ニヤリと笑ったエルが、次の瞬間には口を結び、真剣な表情で目を閉じる。
何かを唄うような言葉にならない言葉を発するエルの周囲に、魔力に似た雰囲気の何とも表現のし難い不思議なエネルギーが集っていく。
その重々しく伝わってくる波動の力は、まるで竜脈を前にしているような緊張感がある。
そのエネルギーは徐々に集束していき、やがてエルの手のひらの上でひとつの形を取った。
「何……これ。マイク?」
「この魔法に向かって建国の宣言をするんだ」
「……マジ?」
「マジだよ。さあ」
息を飲む。
俺は今から、本物の【王】になるのだ。
息を吸った。
「種族差別の無い国をここに作る事を誓う。国名は……魔王国・ノルだ」
すみません




