神器回収
短めですわ~
何かが起こるかもしれないとは予想していたものの、まさかレギナの四天王と争う羽目になるとは想像もしていなかった。
何もない荒野にある一本道だったから、周囲への物損的な被害は無いが地形には多大な影響が及んでいる。草木が根こそぎ掘り起こされ捲り上げられた地面には、あちこちにクレーターが出来ていたり、周囲と比べて地表が数メートル陥没している所まである。
「うわぁ、レギナの四天王って強いのね……まだ息があるわよ」
「マジか……どんだけタフなんだコイツは。ふざけた名前の割に強すぎるだろ」
「言いたい気持ちも分かるけど、早く神器を回収しないと。目覚められたら厄介だよ」
どこから取り出したのか、金属製の細い鎖で勇者の身体を縛っていたエルが、苦笑しながら手荷物を漁っている。
確か、【ステータス開示】で確認できた神器の数は二十個だったはずだ。
「【不落の鉄壁要塞】再起動」
【システム展開。
魔力循環を開始。
消費魔力の補填。
周辺探知を再開。
自動防衛システム起動。
各種アクセス権の連結を開始。
未更新データ共有、情報の同期を開始。
全行程終了、異常無し。通常運行再開。】
スキルの封印は既に解かれており、【不落の鉄壁要塞】を起動させるとシステムメッセージが脳内に響いた。
魔王になったと同時にスキル化されていたこの元魔法術だが、どうやら俺の知らない内に色々と魔改造されているっぽい。
「神器を取り上げれば大丈夫なのか」
【ステータス開示】で確認しながら、気絶して倒れている【韋駄天】から神器を回収していく。
その神器は俺と同じように指輪であったり、あるいは古代の象形文字で書かれたような謎の書物であったりと様々な形をしていた。
所持品として身に付けると、試験的な何かをクリアすれば強い力が手に入るという知識しか無いが、本当に神器とは何なのだろうか。
「これで全部かな……まだありそうな雰囲気があるけど」
「これが【神器】なのね……ふぅん……こんなものが……」
「ファナ、どうした?」
「いえ、何でもないわ」
「そうか。神器は十九個……あと一つ足りないけど、これは回収出来ないな。こいつ、最後の神器は飲み込んでる。腹を切る訳にも行かないし放って置くか」
「神器を飲み込むか……僕は絶対にそんなことしたくないなぁ」
「そうだな。あっちの事も気になるし、取り敢えず帰ろう」
馬車は完全に破損してしまっている。馬だけを連れて、俺達はマリアナの朧城へ転移した。
一瞬の浮遊感があったかと思えば、今度は突き刺すような極寒の風が襲いかかってくる。
マリアナの気候は常時暖かいんじゃ無かったのか?
「……どうしてこうなった?」
「た、多分フロストさんだね……森羅万象、何者に於いてもこれより一切の干渉を禁ずる──【無敵の空間ディメンションルーム】」
「ナイスだ、エル。俺は火をつける」
「し、死ぬかと思ったわ……反応も出来なかったから本当に自分が凍ったのかと思ってヒヤヒヤしたわ」
「まあ冗談はさておき……エル、この空間ごと動けるか?」
「出来るけど……その必要は無さそうだよ」
エルが空間の外を指差す。
目を向けると、激しい光を放つ何かがとんでもないスピードでこちらへ向かってきていた。眩し過ぎて直視できないから、何が起きているのかが分からない。
【警告!! 高速で接近する物体を感知。迎撃準備を開始……「却下だ!」……中止】
「安心してくれ、シンヤくん。あれはソルだ。ソルは光と同化して、とてつもない速度で移動することが出来るんだよ。眩しいからほぼ確実に他人の目に止まるのが難点だけどね」
「そうなのか……いや、光の精霊だもんな」
流星の如く降り注ぐ光が、俺達を包む空間の外へ着地する。不思議なことに、地響きだとか衝撃は全く無かった。
光が弱まった後には、光精霊ソルと、ノル、フロストの愛しい二人が立っていた。




