トットコ・ダッシュ
8月の更新、できるかできないか際どい……頑張りますが、出来なかったら申し訳ない……
【不落の鉄壁要塞】が封じられている今では高度な魔法術が使えず、魔法による探知も自力で制御・把握しなければならない。
使えるのは簡単な魔法術と、肉体強化のみである。
素早さにステータスを極振りしたような勇者相手に、果たしてどれほど通用するのやら。
「さて、ひとまずは……【ステータス開示】」
この前、レギナの【覇王】を視た時は頭痛が酷かったものの、【韋駄天】一人だけなら問題無く閲覧できるようだ。
俺の目には全部で二十の「神器」の文字と、頭が痛くなりそうなステータスの群れが見えた。
細かすぎて見きれないので、簡易表示に切り替える。
☆
【トットコ・ダッシュ】 性別:男
体力:100000 (勇者の加護+80000)
知力:100000 (勇者の加護+80000)
筋力:300000 (勇者の加護+210000)
敏捷:999999
頑強:100000 (勇者の加護+80000)
【韋駄天】
常時発動。 肉体強化・速度極限上昇・瞬間加速・限界突破・バッドステータス無効
【勇者の加護】
常時発動。 基礎能力上昇・保有魔力量増加
【勇者の祝福】
封印・魔力燃料化・金剛化・神剣顕現
☆
「いや、名前……ってか敏捷カンストかよ。流石は韋駄天か」
「私の真名を知っている……? いやまあ、これから消すのだ、問題は無い」
一番下に書いてあった封印のスキルの詳細を見てみると、ランダムに相手のステータスを封印するらしい。
俺の【不落の鉄壁要塞】を封じているのはこれだ。
自分のステータスも確認してみると、【不落の鉄壁要塞】の他に転移・転送が封じられていた。
全スキル封印ではないのは救いだが、厳しい戦いになるだろう。
「速度は、重さだ。私の超瞬足には格別の破壊力がある。先ずは小手調べと行こうか」
──ドンッッ!!!
隕石でも衝突したかのような爆発音と共に、韋駄天の姿が一瞬の残像を残して消える。
あまりの速度に衝撃波が発生し、立っているのもやっとな程の暴風が辺りを支配した。
視界の隅でブレ動く影を確認し、本能で腕を向けると強烈な打撃を感じた。
相手の姿を確認する余裕もなく、次から次への猛攻に対応するのに精一杯だ。
一瞬でも手を抜くと即死しかねない攻撃の中、注意深く【韋駄天】のクセを確認していく。
後、左、前、右、後、後、前、後──
こちらを持て遊んでいるのか、背後に回りたがっているように思う。
また、速度が速すぎて攻撃が大振りになっている。
背後に回るタイミングを見極め、振り向き様にクロスカウンターを放った。
「見切ったッ!」
「……! 金剛化!!」
俺は拳の打点をずらし肩で受けたが、【韋駄天】にはモロで顔面に直撃した。
肩が軋むと同時に、拳の接触面からは硬いゴムを殴ったような感触が伝わる。
今の一撃の反動だけで、俺の右腕は使い物にならなくなった。
「ック……防衛が間に合ってそれでもこの威力なのか。とても神器一つの勇者とは思えん……!」
「速度は重さなんだろう? その速度でわざわざ俺の拳に当たりに来てるんじゃねえのかよ」
「愚か者め! 私が私の速度で被害を被る訳がないだろう!」
鼻血を流しながら激昂する【韋駄天】。
……成る程。【韋駄天】のステータスにあったバッドステータス無効とは、自身の動きによるデメリットを打ち消しているのか。
ただ、本人は否定しているがそれにも適用範囲があるのだろう。
俺の攻撃が届いたのはそのためだ。
俺が腕に受けた傷は超速再生で既に完治しているが、【韋駄天】は回復系スキルを持たないようだ。
少しだけ、勝機が見えてきた気がする。
「速度を上げましょう。まさか、神器一つでここまで実力を昇華させるなど、敵ながら見事です」
「やべえな……【肉体強化:基礎身体能力補正値七百パーセント】!!」
「何をしても無駄だ! 私の速度には、【覇王】ですら敵わない!」
「ぅおっと、危ねぇ!」
まるで人間砲弾のように突っ込んでくる【韋駄天】の腕を掴み、遠心力をクッションに無造作に投げ飛ばす。
肉体強化で引き上げられた、異常な力の成せる業だ。動体視力も上がっているお陰で、【韋駄天】の速度にもまだ付いて行けている。
二回、三回と激突を繰り返しているが、俺のカウンターを警戒してか、大きく隙のできるような攻撃は仕掛けてこない。
この戦闘の余波による、風圧とか衝撃波などにも気を配らないと、馬車に居るファナやヘイルにまで被害が出てしまう。
少しずつ押されていくように、距離を取って馬車から遠退く。
「何故だ……何故この速度に反応している!? 貴様は一体何者だ!」
「俺は俺だよ……残念ながら、意地でも負けるわけには行かねーんだ!」
「仕方がない……魔力を使おう。誇るがいい、四天王と戦う時以来だ」
言うが早いか【韋駄天】が己の魔力を高め始める。脚部に集束させているようだ。
変身中は待つのがお約束だと言うが、とてもそんな余裕は無い。
「──させるかッ!」
「金剛化!!」
腹部を思い切り蹴り飛ばしたはずだが、まるで岩壁でも相手にしているように硬く動じない。
余裕が無くて見落としていたが、金剛化というスキルに、短い間だけ防御力が超上昇する効果があった。
「準備完了。魔力燃料……点火!」
ジェット機のごとき爆発的な超加速。
地面が陥没する程の踏み込みに巻き込まれ、俺の体勢が崩れた。
それを見逃さず、【韋駄天】の影が迫る。
──非常に不味い!!
「ふん、終わりだ。大地穿つ隕石級の一撃で葬ってやる」
──【韋駄天】の足が俺の首を捉える
──ゴキリ。
視界が、意識が、脳が揺れる。
肉がねじ切れ、首がひしゃげる気持ち悪い感覚と共に、視界が暗転した。
「ノ……ル……、フロ、スト……」
「無駄な足掻きを。直にお前は死ぬ」
──ブツリ。
意識が途絶えた。




