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転職魔王の勇者討滅録  作者: 先祖代々貧乏
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夜の会食

奇跡的に体力が持って更新。



 勇者シンヤと、そのお付きの女は帰った。



 重鎮達が退室した後の誰も居ない部屋で、会議の片付けを終えたフォークスは静かにほくそ笑む。



 会談を見ていた感触からすると、勇者シンヤは恐らく政治には疎い印象だ。

 その勇者シンヤが受け持っているマリアナという国も、相当な人手不足に違いない。

 身内だか知り合いだか分からないが、女を国の運営に登用するくらいだ。ファナとか言ったあの女も、資料を確認するのに精一杯の様子だった。

 国政とは、女が出しゃばって来る場所ではない。



 アルトイラの歴史を、ガザル様の残した功績を、一番長く一番近くで見ていたのは自分である。

 氷のドラゴンと、ガザル様が捕らえた精霊についての報告書は未だに金庫の中だ。

 忌々しくも二体とも逃がしてしまったが、勇者シンヤが囲んでいるという情報を得たのは好都合だった。

 正に、渡りに船。

 ガザル様を殺害した因縁深き勇者と、異種族を同時に始末できるチャンスは一石二鳥と言える。



 既に計画は立てており、歯車は既に動き始めている。

 忌々しいドラゴンを殺す役目は、その道の専門家であるドラゴン狩りの勇者、リ・メイに依頼してある。最近姿を見せなくなったドラゴンに相対できるとあってか、二つ返事で快諾して貰った。

 そしてあの勇者シンヤだが、ドラゴンや精霊を飼うなど、完全に異端者そのものである。

 四天王である【韋駄天】様が来られた際に密告した所、調査を挟むとの回答だったが、異端者だと割れればこっちの物である。



 「フッハハハハハ、待っていろ……勇者シンヤ。ペットのドラゴン共々、地獄へ落としてやるぞ」



 暗い会議室の中で、フォークスの高笑いが響き渡る。

 コンコン、と入り口がノックされた。今日はここに重鎮達は来ないから、部下だろう。

 ニヤケる顔をスッと抑え、フォークスは表情を整える。



 「何の用ですかな?」

 「フォークス様。馬車の準備ができました。護衛も待機させております」

 「影武者はどうかね?」

 「は。既にご用意しております」

 「よろしい。すぐに行く」



 今日はドラゴン狩りの勇者リ・メイと、レギナ王国の【韋駄天】を交え、三者伴って会食の席を用意してある。その後はリ・メイの城へ訪れる予定だ。



 アルトイラ城を出て、馬車で揺られること数分。

 下町にある大衆向けの店だが、貴族区画に引けを取らない料理を出す店がある。

 今回はそこを集合場所に指定した。

 最近販売し出した白い具入りソースを使った料理が人気らしい。

 フォークスが店内に入ると、勇者リ・メイと【韋駄天】は既に席へついていた。



 「いらっしゃい」

 「ああ、ここの大将か。名物の串焼きと、話題の新作料理を出してくれ」

 「了解!」



 店の大将は愛想よく返事をすると、厨房の奥へと消えていった。

 それを見届けてから、フォークスは二人の勇者が待つ席へと腰掛ける。



 「待たせてしまって申し訳ない。アルトイラの指導者、フォークスと申します」

 「ふん、遅いネ。私はドラゴン狩り一族のリ・メイ。よろしく頼むネ」

 「レギナの四天王、【韋駄天】の名を頂いております」

 「ええ、よろしくお願いします。ドラゴン退治は頼みましたよ、リ・メイ殿」

 「詳しい話は城で聞かせて貰うネ。まあ、ドラゴン討伐なら百パーセント失敗は無いネ」

 「それは心強い。それで、【韋駄天】殿。勇者シンヤについての調べは出ましたかな?」

 「ええ。勇者シンヤが異端である可能性を、私は限りなく黒に近いと判断しました」

 「確証は取れなかったのですかな?」

 「ええ。朧城は侵入対策が完璧なので。私が確認したのは、精霊の微弱な霊力のみ。ですが、それで十分でしょう」



 誰からともなく、三人で水を呷る。

 唇を濡らしたフォークスは、もうすぐに全てが終わると仄暗い笑みを浮かべた。



 「お待ちどお。注文の品だぜ」



 何でもないように、自然な流れで大将が料理の乗った大皿を三人の座る丸テーブルへと運ぶ。

 一目見て美味しいと分かる、丁寧な仕事が成された料理だった。



 噂を裏切らない料理の完成度に喜んだフォークスだったが、ふと目の前の勇者達が戦慄した顔でいることに、首を傾げる。



 「リ・メイ殿、【韋駄天】殿。どうかされましたかな?」



 フォークスに声を掛けられたことで、リ・メイと【韋駄天】は正気を取り戻したかのように慌てて料理へ向かった。

 両者共に、緊張から来た冷や汗をお絞りで拭っている。



 「フォークス、ここの店主は何者ネ」

 「確かに、それが気になる所だ。私でも敵わない、ただ者ならざる気配を感じた。それに、この私が隣に立たれるまで気付けなかった」

 「な、何を言いますか。ここは、大衆向けの串焼き屋ですぞ。冗談は止していただきたい」



 勇者両名の真剣な眼差しに耐え兼ねたフォークスが、全身から吹き出した汗を拭う。



 「私にも知らない世界があったネ……」

 「これは一大事です。後で調べなくては」



 (や、止めて欲しいものですな……)



 漂う不穏な気配と、拭いようのない不安感にフォークスは身を震わるのであった。



   **************


 「ここも、もう店仕舞いか」


 全ての客が捌けた後の、閑散とした静かな店内で、串焼き屋の親父は呟いた。


 「ちと名残惜しいが……次は、マリアナにでも行くか」

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 今後とも、


『転職魔王の勇者討滅録』


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