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転職魔王の勇者討滅録  作者: 先祖代々貧乏
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さらなる力を求めて

 この話はしっくりこない人がいるかも知れませんが、作者的にはこれしか無かったと思います。


 更新がバラバラで、大変申し訳ありません。現実世界は色々と忙しいのです(´;ω;`)



 レギナ王国の「覇王」との会談を終えた後、俺に付いてきた三人は転移で送り返した。

 ここからは単独行動になる。

 誰にもバレる訳にはいかない。



 「……すぅー、はぁああー」



 深呼吸を一つ、決意を固める。



 これが間違った行動であることは重々承知だが、手っ取り早く力を得るには、これしか方法が無い。

 【ステータス開示】で勇者を視た反動は、痛みや気持ち悪さだけではなかった。

 圧倒的なまでの無力感は、ガザルにノルを拐われた日を思い出させる。

 あの後悔の苦さは、もう二度と味わいたくない。

 ノルもフロストも、俺の中の大部分を占める程大切な存在だ。その二人を失うなど、考えただけで心臓が止まりそうになる。



 星の血管とも呼ぶべき、脈動するオレンジ色の輝き。

 膨大なエネルギーの奔流たる竜脈。



 目には目を。歯には歯を。怪物には怪物を。

 ノルやフロストを守る為なら、俺は怪物にもなる。



 ──そっと、触れる。



 一瞬の爽快感の後、血管がぐらぐらと煮えたぎるような感覚に襲われる。体温が狂ったように乱高下し、節々の至るところが激痛に悲鳴を上げた。

 バキボキと、身体が砕けていくような音と共に、意識が混濁していく。

 このまま呑まれたら終わりだ。

 力ずくで手を引き剥がすと、反動で吹き飛ばされ、数百メートル先の岩壁に激突して崩れ落ちた。



 周囲は暗闇のただ中で、照明の魔法術を点ける。

 意識は希薄で四肢にも力は入らないものの、まだまだ動ける範囲ではある。

 ガンガンと痛む頭を抑えようと無意識に手を伸ばして、そこにあった突起物に手が触れる。

 魔法術で自分の姿を確認すると、額に小さな黒い角が生えていた。



 力に適合する形で身体が変質すると、フロストに聞いた通りだ。角とは言っても、サイズが小さいので鉢巻なんかを付ければ簡単に誤魔化せるだろう。

 この程度の変化で強化できるなら安いものだが、残念ながらまだ力が足りない。



 しばらく経って身体が慣れたらまた、竜脈に触れる。



 今度は額の角が二本になった。

 再び触れる。

 全身の皮膚が硬質化した。

 繰り返す。

 背中から小さな羽が生えた。

 繰り返す。

 背中の羽が肥大化して翼へと変わった。

 繰り返す。

 嗅覚、聴覚が強化された。

 繰り返す。

 血液が強力な毒へ変質した。

 繰り返す。

 繰り返す……etc.



 竜脈に触れる毎に何かしらの部分が強化され、力を増していくのが感じられた。

 反動として襲ってくる痛みもどこかへ押し流す、能力が上がった時の強烈な爽快感は、まるで薬物のようである。変化する見た目を気にしなくなった辺りからは、中毒者のように力を求めていった。



 「汝、小さき者。我の竜脈(いのち)を以て何を求める?」



 竜脈に触れるのも何十回目か、数えることも忘れた頃、不意に見知らぬ声がした。

 少年とも少女ともつかぬが、幼くとも落ち着いた声である。

 既に俺の身体は、かろうじて原型だけは残っているような状態だ。力だけなら「覇王」にも届きうるだろうが、他四天王も併せて五対一になることを想定して竜脈を吸収し続けていた所だ。

 ついに幻聴が出たかと思ったが、どうも違うように思える。



 「勇者を、滅ぼすためだ。ノルとフロストを守らなければならない」



 思わず口に出して答えてしまった。

 こっちは五感も六感も超強化されていると言うのに、周囲には誰の存在も確認できない。



 「それは重畳。汝が原初の【魔王】とは。竜脈(いのち)の件、初犯に免じて許そう。だが、竜脈(いのち)に手を出す事は許さぬ。これは毒である」

 「毒でもいい、頼む。勇者に勝つにはこれしか無いんだ」

 「ならぬ。しかし、その強い意志に免じて代わりに器を調整しよう。警告する。二度目はない」

 「その調整で、勇者は倒せるのか?」

 「我が与えし物は可能性のみ。全ては汝、己の努力次第だ」

 「そうか……あなたの名前は?」

 「我は──星渡ル威光ノ龍帝。今はそう名乗っておこう、原初の【魔王】」



 声が止んだ。

 同時に、身体からどんどん力が失われていく。強制的に変化していた部分も逆再生のように消えていき、身体に残ったダメージだけが残る。

 足腰に力が入らず、力なくその場に倒れ込んだ。



 「近道はない、か……」



 勝てない相手を前に、焦りすぎていたのかも知れない。



 「こんな所におったのか、シンヤ」

 「フロスト……そんなにすぐにはバレないと思っていたんだがな」

 「隠密の三人だけが帰還したからの。必死に探したのじゃ。シンヤは放っておくと先走るかもしれぬからの」

 「心外だな……でも、正解だ。失敗したよ」

 「そんなにボロボロになるとはの。竜脈にでも触れたか?」

 「ああ。注意されていたのに、ごめん」



 怒られるかと思ったが、フロストは案外落ち着いていて静かだった。

 それどころか、身体に障らないよう、優しく起こして膝枕してくれるおまけ付きだ。



 「むっ。額に角が生えているではないか」

 「……本当だ。まあ、鉢巻か何かで隠せるだろう」



 一番最初にできた黒い角が残っていた。

 先程話した、俺にも加護を与えている龍帝からのメッセージだろう。「忘れるな」という戒めも込められているに違いない。



 「心配いらぬぞ、シンヤ。この程度なら妾でも治せる」

 「治せるって……そんなことが出来るのか?」

 「少し待っておれ」



 俺を地面に優しく寝かせたフロストが、竜脈の露出している岩壁に向かって手をかざした。

 オレンジ色に発光していた竜脈の色が淡い青に変色し、フロストの手元へゆっくりと吸い込まれていく。

 ドラゴンは竜脈から力を得ていると言うが、それが目の前で行われている光景なのだろう。青く光る竜脈には、触れても反作用が無いようだ。

 しばらく竜脈に触れた後、フロストが戻ってきた。



 「待たせたのじゃ。……その、妾とでは嫌かも知れぬが」

 「どういうことだ?」



 若干頬を赤らめたフロストが、目線を逸らしながらにじり寄ってきて、俺の上体を起こすと自分の唇を俺のに重ねてきた。

 くらくらする程の甘い匂いが、鼻腔をふわりと刺激してくる。何とも表現ができないが、フロストの纏う香りは凄く安心感がある。

 数秒の口づけの後、フロストは味わうように唇を啄んでくる。やや粗い吐息と、しっかり伝わってくる熱と柔らかい唇の感触が、畳みかけるように俺の脳内を侵蝕してくる。

 それからフロストは、中々唇を放してはくれなかった。



 「ぷはっ……そうだ、シンヤ。角は取れたぞ」

 「あ、ありがとうフロスト」



 今思い出したかのように、フロストは額から取れた角を差し出してきた。

 何を思っているのか、やや罰が悪そうに下を向いている。



 「……すまぬな、シンヤ。理性では駄目じゃと思いつつ、我慢できなかった」

 「キスのことか? 必要なことなら、ノルも許してくれると思うけどな」

 「本当はする必要も無かったのじゃ。角だけなら一瞬で取れた」

 「じゃあ、今のは……」

 「最近ノルとシンヤが仲睦まじくしている所を見ると、妙な胸騒ぎがしてな。別に悪いこととは思わぬが、寝食を共にしているのに、妾だけ仲間外れのような気がするのじゃ」

 「そんなことは……いや、確かにノルといる方が多かったか。ごめんな」

 「恋人とは、羨ましいのじゃ。妾がどれだけシンヤを愛していても、シンヤはノルのモノだ」

 「全然気付かなかった。経緯も経緯だし、フロストは、人間好きじゃないだろ?」

 「うむ……醜い嫉妬じゃ。でも我慢できなかった」



 そう言いきると、フロストは涙目で俯いた。

 涙を見せるなんて、それは反則技だ。弱々しい姿が見ていられず、思わず抱き寄せる。



 フロストはあんな事を言っているが、俺にはもう、フロストのいない生活など考えられそうにもない。

 実際の所、フロストにはもう惚れていると言っても差し支えないレベルで好きだ。キスをされても、嬉しさしか無かったぐらいに。

 ノルの許しがあれば、二人とも恋人にしたい。

 我ながら、欲深い人間だと思う。



 「なあ、フロスト。俺はお前も愛したい」



 その言葉を皮切りに、フロストの顔が真っ赤に染まる。

 そして俺達は、二度目の口付けを交わした。

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  今後とも、転職魔王の勇者討滅録を宜しくお願いします!!

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