レギナ王国の勇者
遅くなりました(´;ω;`)
これからもよろしくお願いします!
ガラガラと、二頭立ての馬車がテンポよく揺れる。
現在、俺は小国マリアナの新たな勇者として、レギナ王国からの、ほぼ命令に近い要請を受けて挨拶に出向いている。
メンバーは俺と、隠密七面の中から、ヘイル、キィロス、ベルグットの三人。
マリアナの王城から一ヶ月程かけて馬車に乗り、今やっとレギナ王国の王都へ踏み入れた。
「ケツ痛い、クソ遅い、疲れた帰りてぇ……」
「まあまあ、シンヤ様。もう王都に入ったことですし、到着はもうすぐですよ。何とか抑えて下さい」
「あのなあ、ベルグット。そうは言っても一ヶ月だぞ。レギナの伝令は一週間だったじゃねえか」
「ハハ、伝令を伝えられたのは勇者様ですぞ」
「ん? レギナ王国の勇者が直々に来ただと?」
1ヶ月も経ちながら、俺が知らなかった新情報だ。
先程までのだらけきった態度からは一変、馬車内に剣呑な雰囲気が流れる。
同乗者の部下三人は、緊張した面持ちで身体を硬直させている。
特に、事の発端となったベルグットは、殺気を向けられて顔が青白くなっている。冷や汗も止まらないようだ。
「この退屈な一ヶ月の間、俺はお前らに勇者についての情報を洗いざらい吐かせたと思うんだが。何のためだか分かるよなァ?」
「の、ノル様とフロスト様を勇者から守る為、です」
「正解だ、キィロス。それでお前ら、特段動揺もしていない様だが……まさか全員知っていましたとかほざくつもりじゃないだろうな?」
「「「大変、申し訳ございません……」」」
「オイオイ、マジかよ。で、その勇者は何者なんだ」
「はい。韋駄天と呼ばれる勇者です」
ファナの奴隷であり、子分でもある隠密七面のメンバーには、ノルとフロストの正体を伝えてある。
隠密七面の面々は、ファナの刻んだ奴隷紋によって厳しい制約がかかっている為、情報が漏れ出る心配はない。こちら側に対しては嘘も吐けないようになっているから、話にも信憑性が持てる。
さて、そんな彼らの話によると、使者としてやってきた勇者は「韋駄天」と言うらしい。
「韋駄天」とは、亡き勇者ヒューゴの「隠密」と同じような、勇者の能力を象徴としてつけられた称号のようなものだ。なんでも、地上最速の勇者だとか噂されているらしい。
レギナ王国には、勇者が五人在籍していると言う。
王である一人の勇者を筆頭に、四天王を名乗る取り巻きの勇者が四人。
王は「覇王」、四天王はそれぞれ「韋駄天」「破壊者」「守護者」「暗殺者」という称号を持っている。
流石は大国と呼ぶべきか、武力の誇示も堂々としているようで隠す気もないらしい。
例え攻めてきても真正面から叩き潰せるという自信の表れだろう。
(そんな大国が、たかが小国相手に勇者まで派遣してくる、か……。となると、勇者ヒューゴは案外大物だった説があるな。折角呼ばれているんだし、敵情視察といくか)
今回の使者派遣には、何らかの深い意図が隠されていると見える。
そうと分かれば、今回の目標はレギナ王国の戦力調査とマリアナの立ち位置の確認だ。
「お客様、到着しました。レギナ王城でございます」
御者から声がかかった。
運賃を払って外に出ると、使用人と思われる人達が、道の左右にずらりと並んで道を作っていいる。
今まで見たものとは比にならない大きさの宮殿だ。使用人たちにもよく教育の行き届いていると思われ、金のかける場所が違うなと思う。
目的地に着いたことによって話が逸れたと思ったのか、隠密七面の三人がホッと胸をなでおろしている。
こいつら……帰ったらきちんと追及させてもらおう。
「ようこそいらっしゃいました。マリアナの新たな勇者、シンヤ殿」
「出迎えご苦労。レギナ王の元まで、案内をしてくれ」
「かしこまりました。どうぞこちらへ」
出迎えの先頭に立っていた老紳士が、直角に腰を曲げて丁寧なお辞儀をする。
王宮に続く道を、使用人の視線に囲まれながら案内される。圧迫面接を見ている雰囲気だ。威力誇示の一環という側面もあるのだろう。
後ろをついてくる三人は、完全に委縮してしまっている。格上には弱いタイプなのだろうか。
この程度の圧力など、元・現代社会人の俺からすればぬるいほどである。
「こちらでございます、シンヤ様」
レッドカーペットの敷かれた王宮の中を歩くことしばし。
最上階に位置する最奥の部屋に、その部屋はあった。
白塗りの大きな扉で、金の装飾が施されている。【ステータス開示】を使って鑑定してみると、本物の金でできていた。
案内してくれた老紳士は、扉を開放するとジェスチャーで中へ入れと誘導してくる。
「よく来たな、勇者シンヤ。まずは挨拶しておこう。余は「覇王」、レガリオ・レギナ二世だ」
「は。呼び出しに応え、参上しました。マリアナの勇者シンヤと申します。恐れ入ります、陛下」
「レガリオでよい。新たなる勇者の誕生、嬉しく思うぞ」
ざっと室内を見回してみる。
左右には花を生けた壺が等間隔で並べてあり、白い大理石でできた玉座を、それより一回り小さな四つの座席が囲んでいる。
中央に座るのが「覇王」であり、皇帝であるレガリオ・レギナ二世。
小麦色の肌をした美丈夫で、歳は三十過ぎくらいに見える。全身を豪奢な装飾品で固めており、ひとつ間違えば成金のようにも見えなくない。
他の四つの席に座っている者達は、勇者の四天王と思われる。
(さて、戦力調査といくか)
かすれるような小さな声で【ステータス開示】と、呟く。
(……ッ⁉ ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!)
目の前の「覇王」を直視した瞬間、吐き気と頭痛が襲ってくる。
かろうじて確認できたステータスは、視界いっぱいに映った「神器」の文字だけだ。パッと見えただけで数十、もしくは百に届くほどの数の神器が、ステータスとして表示されていたのだ。
こんな相手、戦うまでもない。挑むだけ無謀であり、「戦い」と呼べるモノに発展する以前に捻りつぶされてしまうだろう。
視界の端に捉えた四天王のステータスについてもそうだ。
誰がどの称号を持っているのかを確認できたのは上々だが、皇帝と同じくやはり複数個の神器を所持している。
【ステータス開示はたった今プロテクトされました】
目の前に、ステータスとは別の文字が浮かんでくる。
「ハッッハッハ、君は優秀だね。表情を繕うのが上手い。それで、何か視えたかね?」
「いえ……私のような若輩者では、実力差がありすぎて何も確認できませんでした。過ぎた無礼を、どうかお許し下さい」
めちゃめちゃ普通にバレていた。
どうにか首の皮が一枚つながったようで、安堵の息を漏らす。
「いや、良いのだ。これで余も安心というものよ」
「ありがたき幸せにございます」
「して、ヒューゴの後を継ぐわけだが。実はヒューゴには我々の依頼で諜報活動に動いてもらっていたのだよ。当然、君にもお願いしたいのだが」
「賜りました。謹んでお受けいたします」
「ああ、あと君はアルトイラも落としていたと聞いているよ。そこの領地も併合して管理するといい。使いを出しておこう」
「は。ありがたく」
レギナ王国の勇者「覇王」との会談は、そこで終了した。
今回の目的は、十分に果たされたと言ってもいいだろう。
マリアナが小国でありながら重要視されていたのは、子飼いの諜報員として利用していたで、レギナ王国に所属する勇者の戦力は十分に確認できた。
問題があるとすれば、勇者たちの強さが異常なレベルで高いことだ。
アレでは、今の俺では対処しきれない。完全に見誤ったというか、アレを本物の基準にしたほうが良さそうだと分かった。
今までのは、お遊びのような相手だったのだ。
力が、圧倒的に足りない。
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