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転職魔王の勇者討滅録  作者: 先祖代々貧乏
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招待状

 もっと話を進めたかったのですが……私用で時間を空けてしまいました。

申し訳ございません(´;ω;`)



 勇者ヒューゴ打倒から一週間が経った。



 あの後、俺達は元ヒューゴの部下で、今はファナの奴隷である黒装束改め隠密七面の助言に従いながら、戴冠式を行い周辺諸国に使いを送りと慌ただしい日々を過ごしていた。



 ヒューゴは、言動こそクズだったが国の運営はきちんと行っていたらしく、内政部分は少し税金が高めな事を除けば完璧に近いと言えた。

 余計な手直しや面倒な改革が必要ないようで何よりである。



 国が潤えば自分の懐も潤うからだろうとか考えた俺は、少々穿ち過ぎだろうか。勇者絡みはどうしても偏見の目で見てしまいがちでいけない。



 「ファナ様、商業取引に関する税の是正の件ですが」

 「ゼスト、その件はあなたに一任しているわ。進捗に問題が無いならそのまま進めなさい」

 「ファナ様、西部の視察の件ですが、準備が整いました」

 「ご苦労様、ギメル。午後から出発するわ」

 「ファナ様、関所の建設ですが、外部の商人の反発が強く……」

 「ジオウは馬鹿なのかしら? 反発が出るのは説明した通りだわ。そういった手合いの言葉は無視するものよ」

 「ファナ様、紅茶をお持ちしました」

 「あら。ありがとう、イルワ」



 さっきから隠密七面の連中がしきりに出入りを繰り返し、まるで嵐のように報告に次ぐ報告をしている。

 働き者なのは結構だが、こいつらのファナへの忠義の高さが疑問だ。ヒューゴへの忠誠心はどこに行った。

 奴隷にしてからの短期間に、ファナは一体どんな手を使ったと言うのか。

 情報処理も速く、政務まできっちりこなしている。絶対、ただの商人だった人間にできる芸当ではない。



 「シンヤ様。レギナ王国より、書状が届いております。新たなる勇者シンヤ様に接見を求めての内容だと思われます」

 「お前は……ジオウか。面倒だな。断れないのか?」

 「それは……厳しいかと。マリアナはレギナ王国の属国であり、様々な支援及び比護を受けているのです。反感を買えばこの国に未来はありません」

 「ふーん、仕方ないな。なら行くか」

 「はっ。半刻ほどで準備を整えて参ります!」



 大国の勇者にに媚びへつらうのも政治か。

 非常に気に入らないが、しかしそれを覆す程の実力が無いのが現状である。個々の勇者を相手するのに精一杯な状況では、世界に喧嘩を売るなど自殺行為だ。

 権力争いが激しそうなこの世界で、五大国にも数えられるレギナ王国の勇者なら相当な実力者だろうし、ノルやフロストを連れていくのは危険過ぎる。

 レギナの王都へは、馬車で約1ヶ月。

 俺一人だけなら数日で済むのだが、外交的な場面で部下の一人も連れていないのは不自然だろう。少なくとも2、3人は付いてきて貰わないと困る。



 「転移するにも行ったことがないし……ノルが言うには通常はできないらしいし、ホイホイやって見せるのも考えものか」



 ノルやフロスト達には悪いが、今回はお留守番だ。帰りは一瞬で転移するにしても、1ヶ月も会えないのは酷い。

 ……やはり勇者は駄目だ。滅ぼさねばならん。



 「シンヤ、ちょうど良かった。ちょっと手伝って」

 「ん、おお。俺もノルに会いたかったんだ」



 考え事をしている間にふらふら歩いていたら、ノルの元まで辿り着いた。

 ノルから頼み事とは珍しい。

 何事かと身構えていると、誰も使っていない空き部屋に案内され、ブラシとタオルを手渡された。



 「何、これ?」

 「……翼の手入れ。一人だと届かないから」

 「分かった。どうやればいい?」

 「やり方は教える。少し待って」



 ノルが、ぱちんと指を鳴らす。

 いつも着ている深紫のワンピースが解けるように消え、ノルが下着姿になった。

 バッ……っと、空気の破裂するような音と共に、いつもは縮めている漆黒の翼が一気に大きく広がる。

 同時に、数枚の羽が宙を舞った。



 正に、絶景と呼ぶにふさわしい。

 シミ一つない真っ白な肌と、それを包む深紫の下着と、堕ちたる憐憫の如き印象を与える、漆黒の翼のコントラストが、一つの美術作品を象っているかのようだ。



 ノルのあまりにも予想外な行動に、俺は反応もできずに呆然としてしまう。

 しかし、停止された思考とは別に、本能的な部分がこの美しい光景を目に焼き付けようとしていた。

 数泊遅れて戻ってきた理性によって、俺の目線は逸らされた。



 「……よし、これで大丈夫」

 「い、いやいや、大丈夫じゃないだろ……その、色々と見えてるぞ?」

 「わざと。だから、平気」

 「平気って……顔、真っ赤だぞ」

 「……嫌?」



 上目遣いに瞳を潤ませ、こてん、と首を傾げる。

 効果抜群なその破壊力に、思わず黙り込んでしまう。胸の鼓動が速くなり、急激に体温が上がると同時に、顔が熱くなる。

 自分以上に顔を赤くした俺を見て満足したのか、ノルが蠱惑的な微笑みを浮かべる。



 「そ、そうだ。翼の手入れだったよな。どうやるんだ?」

 「ふふ。シンヤ、動揺してる」

 「ノルが可愛いからな」

 「そういうの、惜しげもなく言う所、ずるい」



 ブラシは羽の向きに逆らわず、ゆっくり丁寧に。

 その後、翼を濡らしたタオルで綺麗に拭いていく。

 使っていない部屋だから、誰かが来る心配はない。

 日が暮れても姿を見せない俺とノルを心配したフロストが乱入してくるまで、思う存分ノルといちゃいちゃして過ごした。

 これで、1ヶ月は耐えられそうだ。



 因みに、フロストには小一時間くらい説教された。

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