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転職魔王の勇者討滅録  作者: 先祖代々貧乏
46/68

新拠点

1週間遅れてしまった_(:3 」∠)_

ごめんなさい(´;ω;`)




 当面の脅威であった勇者は排除した。

 最後の方で駆けつけた、ヒューゴの部下らしき四人の黒装束は、気絶させた後に手枷足枷と猿轡で縛ってある。

 こんな特徴的な格好をしているくらいだから、特殊な訓練を受けた人間なんだろうが、やはり勇者の神器を持たない相手では話にもならなかった。



 「よし──帰るか」



 勇者ら五人を麻袋に詰め込み、二人の待つ宿へと歩く。龍脈で強化された身体に肉体強化術さえあれば、人を数人抱えようが荷物と言うほど重くもない。



 初めて歩いた深夜の街は、何もかもが眠ったような静けさが支配していた。

 昼間は大勢の人々で賑わう通りも、今では誰一人としてすれ違うことなく、まるで自分がひとり世界に取り残されたようだ。

 しばらくして宿に着いたものの、やはり物音ひとつしない。辺りはシン──と静まり返っている。

 流石に少しおかしい。もしや、新たな勇者が──



 「おかえり、シンヤ!!」

 「うむ、その様子だと無事にヒューゴを打破してきたじょうじゃな」

 「えっ……あぁ、うん、ただいま。それより二人とも無事でよかった。勇者とかが襲撃してきたとかはないか?」

 「ん。黒い格好の人間が三人くらいで襲ってきたけど、返り討ちにした。今は宿の部屋の中に拘束してる」

 「マジで襲撃されたのか!? 怪我はないよな?」



 心配になって、ノルの身体をあちこち触って確かめていると、後ろからフロストに殴られた。解せん。



 「勇者でもない人間相手にやられておったら、今頃ドラゴンも精霊もとっくに消えておるわ」

 「いや、二人の強さは疑ってないけど、鳥の声も聞こえないくらい異様に静かだったから、何かあったのかと」

 「それは大丈夫。目撃者が出ると面倒だから私がここ一帯を停滞させてるだけ」

 「安心する所なのか、ノルの規格外な所に驚くべきなのか分からないな。それも闇の力ってやつ?」

 「そう。私が街を眠らせて、フロストが黒い人間を倒した」

 「襲撃してきたのは勇者の駒じゃな。昼に接触してきた奴が混じっておったわ」

 「ありがとう。二人とも、早速で悪いけど勇者の根城へ向かうぞ。フロストはファナを連れてきてくれ」

 「了解じゃ。妾は先に行くぞ」



 さて、最後の一仕事と行こうか。

 緩む頬を押さえながら、俺は勇者ヒューゴの拠点であった朧城と呼ばれる建物へ向かった。



 ◆



 一面に薔薇の咲く庭園を歩く。

 あちこちに点在する噴水は月夜によく映え、屈指の絶景スポットと言っても差し支えないほどだった。



 「人間は無駄に贅を凝らすのが好きじゃの」

 「癪だけど、景色は綺麗」

 「ま、勇者とか名乗っても一国の王だからな。こういう所で権威でも表しておかないといけないんじゃないか?」

 「シンヤ君の言うとおりね。権力の誇示ってヤツよ。少なからず自分の趣味も入っていると思うけど」



 フロスト達とは城の前門辺りで合流した。

 朧城とは名ばかりかと思っていたが、その疑念は城内に入ってみて納得に変わる。



 「何じゃこりゃ?」

 「……霧でいっぱい」

 「これは驚きじゃ。侵入者防止のためか?」

 「朧城の中は霧で溢れているっていうのは噂にはなっていたけど……本当の事だったのね」



 ノルの言葉通り、城内にもうもうと立ち込める靄が視界を遮り、数メートル先を見渡すのも難しい。



 「どうするのじゃ? このままでまともに進めぬぞ」

 「仕方ないな。黒装束を起こすか」

 「どうせなら昼に接触してきた者にしてはどうじゃ?」

 「覆面のせいで誰が誰か分からん。こいつか?」

 「そうじゃ、それじゃ」



 イルワとか名乗ってた昼間の男を引っ張り出して床の上に転がしておく。

 起こすのはノルだ。



 「えいえい」

 「往復ビンタ……痛そうだな」

 「──ふがッ⁉︎ うぐぐッ……何者だ!」

 「怒った?」

 「いや、怒ってなどは──精霊ッ⁉︎」

 「名前はイルワで間違いない?」

 「私を拘束するなど無駄だ。精霊など下賤な種族如きに吐く情報などない」

 「おいコラてめぇノルに向かって何て口の利き方しやがる殺すぞ?」

 「ストップ、シンヤ君ステイ!」

 「放せファナ、俺はコイツを殴らなければならないんだッ!」



 一通りごちゃごちゃとやりあった後、最終的に折れたイルワの案内により玉座の間へたどり着いた。

 現在、俺達はヒューゴの部下だろうと思われる七人の黒装束の男と対面している。

 顔も見えない相手とは話したくないので覆面は取り払った。各々の表情は固く、ノル達に鋭い目線を向けている。

 逃げられないよう拘束しているとはいえ、明らかに殺意のこもった視線を向けられると落ち着かない。



 「さて、本題に入ろうか。俺らが五体満足でここにいる時点で察しが付いているとは思うが、勇者ヒューゴは死んだ」

 「バカな……あり得ない」

 「不謹慎にも程がある!」

 「今すぐその口を閉じろ!」

 「黙れ騒々しい。現実を見ろ」



 ヒューゴの遺体を取り出すと、黒装束達は言葉を失ったように口がパクパクと動かし、静まった。俺を襲撃してきた四人は覚悟していたのか、沈痛そうな面持ちで項垂(うなだ)れている。

 こいつらの心は折れただろうか?

 いや、変な復讐心を持たれては困る。



 「これで分かったな。ヒューゴはもう死んだ。仮にも俺は勇者だ。何もしなければこちらから干渉することも無かっただろうが、襲われたのでは仕方がない」

 「し、しかしシンヤ殿」

 「何が言いたい。話し合いの体で近づき、話が決裂した途端に戦闘を始めたのはヒューゴだ。殺しに来ている相手に慈悲をかけるほど俺は甘くない。それとも何か、俺を雑魚とでも思って簡単に勝てるとでも思っていたのか、俺の預かり知らぬ所でならノルやフロストを暗殺できるとでも考えたのか?」

 「「「「「「「決してそのような事は」」」」」」」

 「ふん、なら宿への襲撃は誰の指示だ。ヒューゴか?」

 「それは……私達の独断だ。ヒューゴ様はシンヤ殿を引き込んでから始末をつけると仰せになられたが、精霊ごときにヒューゴ様の手を煩わせる訳にもいかないと思ったのだ」



 苦虫を噛み潰したような顔でイルワが答える。

 最初は威勢の良さそうな態度だった黒装束達も、すっかり意気消沈している事だし、ここらが潮時だろうか。



 「もういい。俺は悠々と放浪していたかったんだが、ヒューゴを殺したからにはその国を放置する訳にもいかないだろう。よって、この国は俺が貰い受ける」

 「シンヤ君、こいつらの処遇はどうするつもり?」

 「微妙だな。国の運営に使おうと思ったがこいつら、忠誠心が高すぎる。こりゃ無理だろ」

 「そう。なら奴隷にすればいいじゃない。私が作業するわよ」

 「奴隷って、鎖で繋いでるだけだと意味ないんじゃないか?」

 「シンヤ君は奴隷紋を知らないのかしら。鎖で繋ぐなんてもう古いわ。大丈夫、反抗のハの字も出させやしないわよ」

 「ありがとう、ファナ。お願いしてもいいか?」

 「任せなさい!」


 

 案外思ったよりすんなりとまとまった。

 黒装束達も大人しくしていたし、勇者という隠れ蓑はこういう話の時に使いやすくて助かる。



 「慣れたものじゃな。感心したぞ」

 「ふふん、シンヤなら当然」

 「ま、今回のは一方的に話すだけだったから簡単だったよ」

 「これからどうするの、シンヤ君」

 「国の運営かな。でも俺には政治の知識とか無いし、取り敢えずこの国はファナのものって事でよろしく頼む」

 「ええ──って、ええぇぇぇっ!?」

 「ま、別行動ってこの間言った通りだ。まあこの中で一番動きやすそうだし。という訳でよろしくな、()()()()()

周囲が忙しい。ぴえんぴえん

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