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転職魔王の勇者討滅録  作者: 先祖代々貧乏
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協力者

遅くなりました(´;ω;`)。




 ヒューゴの関係者に遭遇した後、俺達は早々に海を引き上げて予定よりも早く宿屋に来ていた。

 あんなことがあった後では、悠長に遊んでいる訳にもいかない。マリアナへの入国は今日の出来事だと言うのに、まさか既に監視の目がついているとは思わなかった。

 この世界にはプライバシーって言葉がないのか。



 「ねえシンヤ、聞いてる?」

 「ん? ああ。早ければ明日にでもヒューゴが接触してくるだろうな。問題はどう始末するかだ。いつ来るかが分かってたところで、不意打ちで死んでくれるようなタマではないだろ」

 「えっ? シンヤ君、それってどういう事?」

 「あっ……」



 思考を止めて視線を戻すと、ファナが真剣な表情でこちらを見ていた。

 ノルの非難するような目を見て、自分の失態に気付くが、もう遅い。



 「シンヤ君。ヒューゴってこの国の勇者様の事よね? まさか、暗殺なんて考えているの!?」

 「あー、いや。まあ、これには色々な事情があってだな……」

 「事情って……大事過ぎて笑えないわよ」

 「ふむ。シンヤ、少し耳を貸すのじゃ。こっちへ来よ」

 「ノルも来てくれ。ファナ、少し待ってくれるか」

 「ええ、それはいいのだけど……」



 話をまとめるため、一時退室。

 やはりフロストは頼りになるなーとか考えていたら、左右に思い切り頬を引っ張られてしまった。



 「全く、何を腑抜けておるのじゃ。心配せずとも今のシンヤならば勇者などに後れを取ることはないじゃろうに。しっかりせんか」

 「いはいいはい、ほめんほめん!」

 「シンヤ。そんなに落ち着かないなら、キスしてあげる……はむ」

 「んんっ!?」

 「待つのじゃノル! 妾はそんな羨ま……けしからん事を許可した覚えはないぞ!」

 「むぅ……フロスト、無理やり引き離さないで。これからだったのに」

 「そんなこれからがあっては堪らぬわ……! まあよい、聞くのじゃ。この際だから、ファナというあの娘に、全て話してみるのはどうかと、妾は考えておる」

 「それは危険だと思う。賛成できない。いい人であっても信頼できるかは別だし、第一シンヤの周りに女の人を増やしたくない……」

 「ノルは本音が分かりやすいのう……その意見には妾も同意するが、今回に限っては別の狙いがある。今後動くにあたって、人間の協力者がいたほうが都合がよいであろ? 一般人かつ、そこそこ人脈がありそうで、かつ表裏のなさそうな人間が理想とすると、あの娘はそれに近いのではないかと思うてな」

 「協力者か……なるほどな。それって俺達の正体も明かすことになるのか? 勇者しか知らないから何とも言えないが、知ったとたんに裏切られることも充分あり得ると思うが」

 「なに、さほど大きな問題にはならぬじゃろう。一人の人間がこちらの正体を知った程度では、さほど大きく揺らぐことはないであろうし、情報が行く先の勇者はこれから消す予定なのじゃ。こちらから身を隠せば何とでもなると思うぞ」

 「そうか。なら、ファナには話してみるか。ノルもそれでいいか?」

 「不承不承だけど、許す」

 「分かった。それで行こう。フロスト、ありがとうな」



 今度、時間を作ってフロストにもきちんと労わなければ。

 軽く頭を撫でると、フロストは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 あ、ヤバい。フロストが怒ってしまった。少し軽率だったかも知れない。

 深呼吸一つして、ファナの待つ部屋へと戻る。



 「お帰りなさい。それで、どうなの?」

 「ああ、待たせてごめん。全て話してもいいんだが……その前に言っておきたいことがある」

 「そう、重要な話なのね。返答次第では私も殺されちゃうのかしら」

 「お、おう。別に殺しはしないけどな。似たようなもんだ。それでも本当にいいのか?」

 「ええ、いいわ。その代わり、私のお願いも聞いてもらうわよ」

 「俺にできる範囲でならな。じゃあ話すぞ……」



 ピリピリとした緊張感が広がる中、ここまでの経緯やヒューゴとの敵対理由に関して、包み隠さず全て話した。この世界の一般人に対して話が通じるのか不安だったのだが、予想に反してファナは真剣に話を聞いてくれていた。



 「……と、いう訳だ。だから、ノル達を脅かす勇者を許す訳にはいかない。ファナがどう思ったかは別にして、話を聞いた以上は協力するか敵対するか。どうする?」

 「……そういうことだったのね。いいわ、協力してあげる」

 「ま、普通はそうなるよな……って、今なんて言った?」

 「だから、協力するって言ったのよ。それにしても二人とも、辛い思いをしてきたのね……何だかやるせない気分になってきたわ」

 「即答されると逆に怪しいんだが。何か狙いでもあるのか? 言っとくが、スパイだとか寝首を掻こうだなんて考えても無駄だぞ」

 「失礼ね。そんなこと微塵も考えていないわ。ただ、私にも少し勇者に思うところがあるだけよ。そう……少しね」



 遠い過去に思いを馳せているのか、ファナの瞳には強い憂いの色が浮かんでいる。

 藪蛇になってもいけないので余計な詮索はしないが、ファナも勇者の被害者なのかもしれない。

 もしこれで演技だなんて言われたら、人間不信が極まってしまいそうだ。

 しかし、これは好都合でもある。

 他人の不幸を喜ぶ趣味は無いが、言葉だけを信用すれば、ファナは俺達が求めている人物像にぴったりだからだ。

 「一般人かつ、そこそこ人脈がありそうで、かつ表裏のなさそうな人間」というのはフロストの受け売りだが、ぴったりじゃないか。



 「分かった。ファナも色々あったんだな」

 「あまり聞かないのね?」

 「聞いて欲しいなら聞くぞ?」

 「今は止めておくわ。シンヤ君のこと、まだ今のところは信用しているけれど、まだ信頼はできないもの」

 「そうだな。それはお互い様だ。取り敢えずは別行動だから安心してくれ」

 「そう。私は何をすればいいの?」

 「今は特にないな。時期が来たらこちらから連絡する」

 「了解。じゃあ、シンヤ君は後で水着の製法教えてね」

 「あれ、ファナの条件ってそんなことでいいのか?」

 「そんなことって何よ。商人なら利益になる話を黙って見過ごすなんてヘマはしないわ」

 「そうか……水着の作り方自体は簡単だから、あとでまとめておくよ」

 「ありがとう。じゃあ私はこの辺で失礼するわね」



 ファナが出て行ったところで、その場の空気が弛緩する。

 途中でノルやフロストが一言も発しなかったのも、相当緊張していたからだろう。かくいう俺も体に変な力が入っていたせいか、体がだるいような気がする。



 「一先ず成功と言えるのか……?」

 「怪しさは拭えぬがな。しばらくは様子を見るしかないじゃろ」

 「私も緊張した。ちょっと疲れた……かも」

 「ノルもフロストもお疲れさん。特にフロスト、ありがとうな。俺じゃこんなこと絶対に思いつかなかったし、側にいてくれるとやっぱり心強いな」

 「う、うむ。まあ妾はシンヤに恩もあるからの。妾としてもシンヤの側にいることはやぶさかでもないとでもいうか……うむ、もっと妾を褒めても良いのだぞ?」

 「ありがとう。愛してるよ」

 「シンヤ!?」

 「あっ……あい……シンヤが、妾を愛して……きゅん」

 「あ、いや、待て待てノル、早まるんじゃない。だからそんな怖い顔で刀向けないで……ヒェッ」

 「私の目の前で、浮気……どういうことか説明して」

 「いいいいや、あのー、そう親愛! 親愛的な意味で言っただけで他意はない!」

 「本当に?」

 ((こくこく!!))

 「私のこと、好き?」

 「もちろん。他の誰が何と言おうと、俺はノルが一番好きだよ」

 「じゃあ、私のこともちゃんと愛して」



 俺の横に移動してきたノルがしなだれかかってくる。フロストはなぜか、両手で顔を覆って悶えていた。ノル曰く、放っておけば大丈夫らしい。



 「んっ……!」

 「ノルは甘えん坊さんだな」



 求められるままに軽いキスを交わし、いつもより少し強めに抱きしめる。

 上機嫌に蕩けたノルの表情とは反対に、深夜の表情は眼光鋭く固い決意に満ちたものだった。

 決して、放すことの無い様に。

 二度と、奪われないために。

 勇者ヒューゴとの対面は、もうすぐそこまで迫っていた。

打倒ヒューゴ! と思ってその下準備的な話を書こうと思って書きました。が、

どうしてこうなった・・・・・・


面白かった! 続きが見たい!


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