屈辱
今回はいつもの半分位で短いです。
自分が選んだ女性が、忌まわしき精霊だった。
一国の王であり、勇者の称号まで手にいれた男ともあろう者が、卑しい精霊ごときに騙される等許されるはずもない。
行き場の無い怒りが精神を侵食し、暴力的な衝動として溢れてくる。
「クソッ………!!畜生がァ!!!」
月明かりがうっすら照らすような暗さのなか、誰も居ない寝室でガザルは自身の失敗を否定するように暴れまわった。壁に穴を空け床をも踏み抜き、手に取った物は全て粉砕した。
それはさながら思い通りに行かないことに駄々をこねる子供の癇癪のようだ。
ひたすらに暴れまわった後、疲労感に襲われるままガザルは床に仰向けで倒れこむ。
(どうする………どうすればいい?婚約はもう公の事実となってしまった。既に各国にも招待は送った後で、だからといって精霊一人も見抜けなかった等という醜態を晒す訳にもいかん)
幸い、周囲に伝えたのはガザルが婚約パーティーを行う旨のみ。冷静に考え抜いたガザルだったが、結局は代理を急いで見繕う事だけだ。
だが代理と言っても貴族等、欲望の塊でしかない。権力の為に娘を我先にと押し付けて来るような貴族のやり方はガザルも嫌っている。
そういった手合の女は見てくれが良くても心が死んでおり 、中途半端に教育を受けているせいで妙に賢しく、また一つ一つの仕草や動作にも形式ばった堅さがある。
枠に収まり縛られた中での付き合いなど、息苦しくて何の面白みも無い。
一通り悶々と懊悩し、答えが見つからないままガザルは代理人の検討を放棄した。
(自分の伴侶もままならない………全てあの精霊のせいだ。
クソッ、あのシンヤとか言うガキ、何処まで俺に不幸を持ってくれば気が済むんだ?
あれから捜索は続けているが、目撃情報も無い。一体どうなっている?
………まぁいい、それよりもあのノルとか言う精霊。悔しいが見た目は完璧だ。
出来ることなら夜伽の相手にでもさせれば………。
どうせ人間ではないし、使い潰して壊れても惜しくは無い。
表だって責任を求める事は出来ないが、ならばせめて少しづつ、ゆっくり絶望を味わせてやろう。
ハハハハ、あの気の強そうな表情が歪んでいくと思うと中々滾る物がある。
そうだ、精霊を捕獲したとでも言えば、俺の権威も上がるし、あのシンヤも現れるかもしれないな。
我ながら良い考えだ。どうなるかとも思ったが、何の事は無い。勇者なのだ。大抵の事はどうにでもなる)
気分も落ち着いたガザルは立ち上がると、城の地下へ向かった。
アルトイラの城の地下はその大半が牢獄となっているが、そこに犯罪者などは収容されていない。
万が一脱獄などがあった場合、すぐ上が王城というのは警備上の問題がある。
主に収容されているのは、戦闘用に調教しているモンスター達だ。
特殊な薬液を使用してモンスターの脳を麻痺させ、簡単な命令をこなすよう、専門の調教師が日々訓練を行っている。
そんな牢獄の中でガザルが目指すのは、その中でも一番大きな檻だ。
ここの牢獄だけは特殊で、拘束具には周囲の魔力を分散させる物質が使用されているため、実力行使は絶対に不可能となっている。
もはや檻とも呼べず、何重もの扉で閉ざされた部屋と言うのが正しいその場所には、大喰らいと畏れられる強大な存在が幽閉されており、精霊であり厳重注意が必要であるノルもまたそこへ収容されていた。
壁際に鎖で繋がれ、足元には拘束具と鉄球の重りが繋がれたノルの元へとガザルは歩み寄った。
「勇者ガザル………殺すなら早く殺せばいい」
「物騒なことを言う。悪いな、精霊ノル。君には死んでもらうつもりは無い。せいぜい、俺の玩具として楽しませてくれ」
ノルが目を見開き、驚きに溢れた反応を見せる。その瞳の奥では、ガザルの言葉に対する恐怖が混じっていた。
そんなノルの反応にガザルは満足そうな笑みを浮かべると、ノルの髪の毛をひとすくい手に取り、その香りに浸る。鼻腔をくすぐる甘い香りがガザルの興奮を掻き立てた。
「ヒッ………嫌………!」
「駄目じゃないか。もっと命を大切にしないと。自害は良くない」
辱しめを受ける位なら、と舌を噛もうとしたノルの口内に布が押し込まれ、自害は出来なくなった。
布を吐き出されないよう、口元を縛りつけたガザルは、完成された人形のようなノルの肢体を勿体振るようにまさぐり始めた。
「~~~~~!!!」
「ハハ、そんなに拒絶されると少し悲しいな。だが、俺の悲しみはもっとだ。愚かにも精霊なんぞに騙されたせいで、俺は伴侶すら自由にならん。この苦しみ、貴様には分からんだろうがな。ならば精々、俺を愉しませてくれよ」
声にならない悲鳴を上げて暴れまわるノルを気にするでもなく、ガザルは暗い笑みを浮かべながらその身体を弄り、玩ぶ。
「そうだな。精霊が人間の真似事など許される訳がないな。兵士達にわざわざ着せられた様だが、この服も必要ないな。」
「~~~!!~~~~~~!!!」
布が力ずくで破られる音が牢獄内に響く。
止めどなく涙を溢れさせ、絶望すら通り越したノルの表情はますますガザルを満足させ、その行為はさらにエスカレートしていく。
その拷問は夜通し、朝日が昇りきる時間まで続いた。
「ではな、精霊ノル。今夜、また来る」
牢獄を去るガザルの後ろ姿を、ノルは光を失った目で見送る。
声も涙も枯れ、もはやこみあげる感情も無い。視界はぼやけ、焦点も合わない。
ノルの精神は擦り切れ、崩壊の寸前にあった。
また、内容など直すかもそれません。
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