第一頁 ようこそ、理想郷へ
目の前に広がるのは、ホームページで見た壮大な景色と全く同じ景色。
神ゼウスからの説明を聞き終え、俺はアポリプシィの世界に立っていた。
えっ? 最初の重要イベント『神との会話』はどうしたかって?
いや、skipだよ。あのおじいさん、話が無駄に長いから、要点を着実に纏めてたんだよ。
因みに、そのときは他の人も居たんだけど今は全く見当たらない。THE・ボッチ。
事前登録者は十万人近く居たんだけど、実際にあの場に居たのは僕含め十人だけだった。
一つの大陸につき、一人の計算で抽選したらしい。
いや、少ないくないかって? うん、だよね。
あの場に居た内の一人が聞いたらね、「あんまり人を転移させたら不味いんじゃよ」だそうだ。
まあ、運が悪かったということだな。
一先ず、神ゼウスに言われたことをやりますか。
「システム起動」
青白いモニターが複数展開される。
その中でも目の前にあるメインモニターに目を向ける。
◇
【名前】アイリ
【種族】人族
【年齢】不老
【性別】男性
【職業】指揮官Lv1
【スキル】指揮Lv2 錬金術Lv4
【特性】攻撃できない
【賞罰】無し
◇
ホームページで設定した通りだが、特性というものが加わっているな。
攻撃できない。って、何という嫌がらせだろうか。
まあ、文句を言っても仕方がないし次に移ろう。
メインモニター右のモニターには、ポストと画面の上の方に表記されている。
NEWと表記された文が一つあったので、タップする。
◇
ようこそ、アコーステへ。
君達が大陸から魔物を追い払いきることを期待している。
餞別として、それぞれの職業にあったスキルや物品を送ろう。
◇
──運営、帰還、出征、支援Lv1、魔石(2級)×10を神より授けられました。
メインモニター──ステータスを見ると、確かに運営、帰還、支援Lv1が追加されていた。
神ゼウスによると、スキルは一度声に出して発動させた後は、自然と使い方が分かるようになるらしい。
という訳で、
「帰還!」
瞬間、目の前が白く染まり、見知らぬ地へと転移していた。
「理想郷ねぇ」
スキル初回発動の効果で、ここやスキルについての情報が頭の中に浮かんできた。
現時点での帰還の効果は、自身と指定した人物(指定無しの場合自身のみ)をこの地理想郷に転移させるというモノらしい。
理想郷と言っても、ただだだっ広いだけの草原に見えるんだが。
「運営」
何も映っていなかった左上のモニターに、運営の文とその内容がでてきた。
◇
☆立派な運営者になるために☆
まず、運営をしていく上で魔石から得られるエネルギー──通称MEが必ず必要です。
◇
……それで、魔石が与えられたのか。
◇
魔石のME変換は、以下の通りです。
1級→5ME
2級→20ME
3級→50ME
4級→100ME
5級→250ME
6級→500ME
7級→1000ME
8級→2000ME
9級→5000ME
10級→10000ME
◇
という事は、200ME手に入れられると。
◇
☆MEでできること☆
アイテムの購入、味方ユニット創造、死亡者の復活
◇
死亡者の復活か。MEがどれだけ食われるんだろうか。
それに、対象は? 現地人、他被召喚者、ユニット。どこまでが範囲なのだろうか。
◇
☆アイテムの購入について☆
アイテムには、武具、食料品、薬品、書物、宝石類等があります。
常駐の物と特定の時間や期間限定の物もあります。
値段の変動はありません。
クエストの進行や理想郷の発展度合いによって、商品が増えたりします。
◇
期間限定……桃の節句とか、雛祭りとか、体育祭とか、海とか、花見とか、まあ、時期になれば分かるか。
◇
☆味方ユニット創造について☆
MEを消費して、味方ユニットを創造することができます。
キャラクリエイト時と同じで、容姿や職業、スキル等を選択できます。
容姿や職業、スキル等は最初の段階でランダムに選ばれてますが、変更することも可能です。
変更時には、それぞれMEが適当に消費します。
ランダムに選ばれたステータスや容姿は、キャラクリエイトを中断しても選ばれ直されはしないので、好きなステータスになるまでリセットし続けることはできません。
◇
リセマラ対策かぁ。神にまで広がる人類の文化。……こんなことより伝わるべきものはあるはずなんだがなぁ。
◇
☆死亡者の復活について☆
味方ユニットと他大陸で活動している人達が死んだ場合、MEを消費して復活させることができます。
復活に制限時間はありません。
味方ユニットの復活より他大陸で活動している人たちの復活の方が消費MEが少ないのは、仕様です。
犯罪を犯している場合は、復活待機メッセージの横に明記されます
◇
なるほど。流石に現地人は無理か。
まあ、一先ず先に進めよう。
画面が更新される。ポストにメッセージが送られてきているが、スルーして新しい画面に目を向ける。
画面には簡潔に、変換、アイテム、ユニット、復活とだけ表記されている。
変換を選択すると、『変換する魔石と個数を選択してください』と出たので、2級の魔石を10個選択した。
──200MEに変換されました。
よし。次に、ポストを確認しようか。
◇ ポスト
NEW 運営チュートリアル達成報酬
運営についてのチュートリアル達成おめでとう。
チュートリアル達成報酬として、味方ユニットランダム召喚チケット、魔石、小屋を送ろう。
◇
──味方ユニットランダム召喚チケット、魔石、小屋が神より授けられました。
アナウンスの後、魔法陣が現れ、小屋が完成した。
また、足下には魔石と映画のチケットのような紙が落ちていた。
「召喚」
味方ユニットランダム召喚チケットを手にし、胸の前で構え唱える。
僅かな脱力感と共に、チケットが燃え代わりに魔法陣が現れた。
次の瞬間には、漆黒の全身鎧を着た人物が目の前に居た。
【名前】
【種族】ダークエルフ族
【年齢】不老
【性別】女性
【職業】騎士Lv1
【スキル】剣術Lv1 盾術Lv1 体術Lv1 四大魔法Lv1 闇魔法Lv1
【特性】絶えぬ忠誠
【賞罰】
……強いな。スキルが5つもあるし、上位互換スキルっぽいのもあるしな。
一先ず、名前を考える必要があるな。
「冑を外してもらっても良いかな?」
「分かりました」
僕はつい彼女に見惚れてしまっていた。
冑を外すと、一番最初にその整った顔立ちが目に入る。
次に目がいくのは、陽光が反射している水面のようなプラチナの髪。
瞳はサファイアのように青く、艶やかで美しい。
小さな口と瑞々しい唇、白く決め細やかな肌と相まって全体的に可憐な印象を与えてくる。
しかし、静かに主の次の命令を待ち、一切表情を崩さないその姿からは、クールビューティーという言葉を連想させた。
可憐さとカッコ良さ。相反した形容詞のように感じるそれらが同時に存在する彼女はまさに姫騎士という単語が具現化したようであった。
彼女を表すにはこの程度では足りないが、語彙力の乏しい僕にはこれが限界だった。
「君の名前はサクラにしよう」
「ありがたく頂戴させていただきます……!」
パアッと大輪の花が咲くような笑顔で彼女──サクラは返事をした。
さて、何をしようか。
どうも、鈴蘭です。
行き当たりばったりで書いていたら、既に前回の投稿から三日程経っていて驚きました。
まあ、こんな作品を見ている人なんていないでしょうから、これからも気儘に自分が納得できるものができてから投稿していきます。