第2話-2❮依頼❯
前回の続きです!
新には疑問が残る。
なぜ自分なのか。
たった一度しか会っていないはずなのになぜなのか。
そうこう頭を抱えているとふと、とあることに気が付く。
(なんか周りの人達、こっちを見てる気がする。)
この視線を浴びる理由は一瞬で分かった。
今、新の目の前で共に歩いている少女、由衣は世間一般で見ればとても可愛い部類に入る。
そして、少し後ろで全く冴えない少年である新が一緒なのだ。
視線のほとんどが新に向けられた憤怒のものだった。
(なんか嫌だな…)
不快感が胸に残る。
気が付けばいつの間にか職員室に着いていて、由衣は図書室の鍵を受け取っていた。
特に会話もしてないなら帰らせてほしいが、たまに向けられてくる由衣の視線が帰るなと言ってくるが故に帰れない。
職員室から図書室までは意外と遠い。
話題がない。そもそも話しかけるのすら躊躇してしまう。この空気の中僕はどうしたらいいのだろう。
頭をフル回転させても答えは見つからない。だが、答えを出してくれたのは由衣だ。
「私がね、探し物を君に頼んだのはね…」
そこまで言って、チャイムの予鈴が鳴った。
「やば!早くしなきゃ先生に怒られちゃう。急がなきゃ。新くん、行くよ。」
結局1番知りたかったことが聞けずに図書室まで着いた。
「ちなみに、どんなものを探してるの?」
図書室に入って最初に聞いた。これを聞かなきゃなにを探せばいいのかわからない。
「んーとね、少し分厚い本、というか日記?みたいなもの。」
「わかった。」
早く帰りたいがために早速探し始めた。由衣が昨日いた机の下や周りの本棚を探しても見つからない。
ふと、新は本棚の下に少し隙間があることに気がついた。
その隙間をのぞき込む。すると、そこには1冊の辞書ほど分厚くない本があった。
手を伸ばし、その本を手に取る。表紙には何も書いていない。
中を開いてみる。
内容は渡辺 由衣の日記だった。
あまりプライベートを覗くのはよくないと感じ本を閉じようと思ったが、たまたま開いたページに衝撃の単語が並んであった。
『癌』『余命2年』『深刻』
思わず手が止まる。
焦りと動揺で目線が泳ぐ。
「見つかった?」
由衣が訪ねてきたのに気付き、咄嗟に本を閉じた。
「うん、あったよ。けどこれ…」
焦りが隠せない。
「中身、見たんだ。」
真剣な眼差しで問いかける由衣に恐怖心がくる。
「私ね、あと少しで死んじゃうんだ。学校卒業できないで。」
悲しげな表情で言う彼女になにも言ってあげることができなかった。
新にできたことはそっと本を差し出すことしかなかった。