第1話❮出会い❯
いつも通りの道。
いつも通りの校舎。
いつも通りの教室。
なにもかもいつも通り。
教室の中では小さなグループに分かれて話す人達。
男子女子とが色々な場所で話している。
その中でも蒼井 新は孤立していた。
趣味は読書。眼鏡を掛けて見た目は地味だ。
周りの人に全く興味ないし、興味を持たれたくない。
新は手元にある本を開き縦に綺麗に並べられた文字の羅列を読む。
内容はかろうじて理解出来るレベルでとても難しい本だ。
しばらく読み続けて目も疲れてきたときに授業開始のチャイムが鳴った。
黙々と先生の話を聞き、その内容をノートにとる。その繰り返し。
1日の授業が終わり放課後、図書室により沢山の本を漁る。
黙々と静かな空間で読む本は最高だった。
夕方の6時頃、ある程度読み終えて今日は帰ろうと思ったとき、目の前で一人の少女が気持ちよさそうに寝ていた。
時間が時間だからおそらく自分が図書室の鍵を返しに行くはずだった。
この少女に鍵を預けて先に帰るという手もあるが、新の中にある善の心がこれを許さなかったのだろう。気付けば少女の肩をポンポンと叩いていた。
少女はゆっくりと体を起こし、盛大に大きなあくびをした。
「ふわぁぁーー。ん、んー?ここどこー?」
「図書室だよ。もう6時だから帰ろうと思ったんだけど、鍵、どうする?」
寝ぼけた口調で喋る彼女に一言言った。
彼女は時間かを聞いて目を見開きながらガタンと立ち上がった。
「え、もうそんな時間!?大変!寝過ぎた!!このあと大事な用事があるのに。」
あたふたしながら帰り支度を済ませて早々と帰ろうとする彼女を「まって」と新は止めた。
「図書室の鍵、どうするのさ」
「えぇー、こっちは忙しいんだから任せたよ!そんなことしてる暇ないし。」
そう言って彼女は図書室を出ようとする。
すると彼女は「あっ」と言って振り返った。
「私の名前は由衣。渡辺 由衣だよ。」
そう言って由衣という少女は図書室を出ていった。
呆気にとられた新は我に返り、図書室の鍵を持ち、戸締りをしっかりしてから鍵を返しに職員室に向かった。