プロローグ
私の場合・・・
恋をするには、いくつかの決め事がある。
1.自分自身の心が落ち着いていること
2.相手が年上であること
3.手を繋がないこと
4.プレゼントは決して貰わないこと
5.相手に何も求めないこと
これは、今までの決して多いとは言い切れない恋愛経験の中で、私が自分なりに考えて導き出した答え。
初恋が終わったときに1番目の決め事、2つ目の恋愛が終わったときに2番目の決め事、3番から5番目の決め事は、1年前に終わった3つ目の恋愛が終わった時に追加した。
3つ目の恋愛・・・
聡太と出会ったのは大学のキャンパス。1つ年上の聡太とはサークルが一緒だった。
サークルの中心メンバーだった聡太は、発言力もありとても頼もしく見えた。
サークルの夏期合宿で聡太から告白された時は、天にも昇る気持ちで・・・
海岸を歩きながら手を繋いで・・・その瞬間に私は彼に掴まったと感じた。
それから半年はとても楽しい日々が続いた。
聡太は色々な所へ私を連れて行ってくれたし、聡太の部屋や私の部屋、旅先で何度も抱き合って眠った。
そして、聡太の卒業3日前の夜。
後輩たちからの人気が高い聡太は、色々な送別会が立て込んでいて忙しかったが、その日は私のために予定を空けてもらった。
私は聡太の卒業祝いにと、奮発して買ったダイバーズウォッチをバッグに忍ばせて、予定より30分も早く聡太の家に着いた。
「ちょっと待ってて、今着替えるから。」
いつもだったらすぐに開く扉が開かないことも、聡太の声が普段より低かったことも、疲れているのだと思い込んだ。
「もうお前のこと愛してない。別れよう。」
聡太のアパートの脇にある公園で、私の方を見もせずに、ポプラの木を見つめたまま低い感情のこもらない声で彼は言った。
私はといえば予想外のことに動揺し過ぎて、彼を責めることも彼に縋り付くことも出来ないまま、淡々と別れを受け入れた。
そして、部屋に戻ってからがひどかった・・・
部屋のあちこちに聡太の欠片があって・・・1つ1つに思い出が甦ってきて・・・
何で別れなくちゃいけなかったんだろう・・・
一体何がいけなかったんだろう・・・
あの時彼の部屋に誰かいたのかも・・・
いつから別れを考えていたんだろう・・・
答えてくれる人はもういないのに今更疑問がどんどん沸いてきて、目眩が止まらなくなって・・・
気が付いたら病院のベッドの上にいた。
親友のアーちゃんが、電話に出ない私を心配して訪ねてきてくれたのは、聡太と別れた2日後。携帯の電池は切れていた。
アーちゃんは未だに「私は命の恩人ね!」と何かにつけて言ってくる。
そして、私が病院に入院している間に、聡太は卒業して行った。
彼にはそれきり会っていない。
それが私の3つ目の恋・・・
短い連載(プロローグ+5話+エピローグ)になる予定です。
しばらくお付き合い下さいませ。