おばあちゃんはラブ〇イバー
告白しよう。
我が家のひいひいおばあちゃんはラブライバーである。ひいひいである。息切れではない。お産でもない。曾祖母である。
しかもサ〇シャインではなく初代である。推しキャラは矢〇ニコという。サ〇シャインの時代に初代とはやはり旧式である。
皺くちゃの顔で「にこにこに―」などと言っている。心配になる。シミ皺だらけである。ツインテである。いつかとっくり死ぬのではないかと思っている。むしろ安らかに眠ってほしい。
ギネス認定も考えた。【世界最高齢ラブライバー】の見出しが頭の中を過った。だがその際に、ツインテのひいひいおばあちゃんの姿を想像すればひいひいと息が上がった。
「ほのかぁぁ~」
これは曾祖母が俺の事を呼んでいる合図だ。どうやらボケがまわり俺の事を登場キャラだと思っている。いつから俺は性別まで変えてしまったのだろうか。
得てしてこのような時、俺は居留守を使う。家の中でである。返事はしない。面倒くさいに決まっている。
「ほのかぁぁ~次のライブの練習するわよぉ~」
皺がれた声で何を言っているのか。遂にボケが地球一周旅行でもしたのか、言ってることが支離滅裂だ。
杖をついてしか歩けないボケ老人がライブなど笑止千万。初ライブが最後になるなんて冗談にもならんユーモアセンスだ。
「お前は俺の手に余る」
俺は曾祖母に対していささか厳しいきらいがある。それも無理からぬことながら、俺は曾祖母の扱いに手を揉んでいる。
それは俺だけではなく我が家全体での話であった。
時にそれを薄情と思うだろう。しかし世間とはそんなもんだ。
「ほのかぁぁ~どこにいるの~」
懲りもなくまだ俺の事を探しているようだ。
「黒乳首はAV地区に逃げたよにこにー」
もはや日の下で見ることはもうないだろう。俺が彼女の後釜として十人目のメンバーとして入ってやっても悪くない。だが残念なことに時代はすでにオワコンの風潮だ。
「そうやって人権を冒涜する発言をするんじゃないわい!」
「しらないよ……とにかく高坂穂乃花はログアウトしました」
これ以上、会話するのは不毛でならない。俺は早々にトイレに逃げることにした。
部屋を出て、縁側を渡り、トイレの個室に入りズボンを脱いだところでやはり俺は高〇穂乃果ではないことを自覚する。
しかし、曾祖母には困ったものだ。何が高〇穂乃果だ。何が矢〇ニコだ。東〇希はどうした。エリー〇カはどうした。
俺は愛すべき三年生の姿を思い浮かべた。
ドムと呼ばれる体系が愛おしい。ハラショー。ふざけているのか。しかしあの無駄な設定がたまらなく心を擽る。
あれ、いやいやおかしい。
俺は潔くトイレから出た。縁側を抜け、部屋に戻った。その間水は流れていない。曾祖母は相変わらずボケていた。
何がおかしいのか。俺はいつからこれほどもでに詳しくなっていたのか。
おもむろに自分の乳首の色を確認する。
嗚呼、成程合点がいった。
そうか俺こそが高〇穂乃果であったか。