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幼怪×人間  作者: 水酸化ナトリウム
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妖怪No.001座敷わらし

僕の携帯電話のメモ帳に残されていた「幼怪人間」という単語をもとに出来る限り膨らまそうとした結果できたお話です。続くかどうかわからないけど一応連載にしておきます。ドクペでも飲みながらのんびり気を抜いて読んでくだされば幸いです。

「誰だ…?お前…。」

「わらわか…?わらわは座敷わらしじゃ。」

わけのわからないやり取り、どうしてこんなやり取りをしているのだろう?

物語は数分前にさかのぼる…。

俺は何気なく家にある離れを探検していた。離れに入るのは相当小さいときに入って以来だ。当時はよくここで遊んでいたらしいが…。

自分で言うのもなんだが、うちは結構大きい家で、江戸時代から続く名家だという。

そんな家の離れなのだから何か面白いものが転がっているのではないかと思い探検しているわけだが、今のところあまり面白いものは出てきていない。

俺はまだ見ぬ面白いものを求めて押入れに手をかけ、開いた。すると…。

そこにいたのは少女…。いや、幼女というべきであろう女の子だった。

黒髪おかっぱで和服を身にまとっており、まるで七五三のような印象を受ける。違和感をあげるとするならば、着ている和服が振袖だという点くらいだろうか。

ここで冒頭の会話に戻る。

座敷わらし…?座敷わらしだって…?

座敷わらし、それはとてもメジャーな妖怪だ。

子供のような外見で、家に住み着き、家の盛衰を司るといわれている。主に岩手県で言い伝えられている精霊的な存在だ。

和服を着ていて黒髪のおかっぱの童女。確かに外見上の性格はあっている。

けど妖怪?確かに俺は人に比べたら妖怪に詳しい。いや、妖怪が好きだと言ってもいいくらいの知識は持っていると自負している。それでもあくまで妖怪は妖怪だ。それは自然現象などに代表される人間の想像の限界を形にしたもの。恐怖が形になったもの。つまり人の中にいる存在だ。いくらこの近辺が田舎で、妖怪が出たという話が多数あったとしても今はテクノロジーの時代だ。不思議な現象の大半が科学で解明されるようになった現代では、妖怪なんて存在するはずがない。

「嘘だ…。妖怪なんて今の時代にいるわけがない…。」

「それはお主らが気付いていないだけじゃ。この近辺には実にたくさんの妖怪が住み着いておるんじゃぞ?」

「そんなわけない!現に俺は、ここに17年間住んでいるが、妖怪を一回も見たことがない!」

「それは忘れておるんじゃ。わらわと遊んだのを覚えていないのか?小さいころのお主は実に可愛かったぞ?なあ、ケン坊や。」

「…!」

なぜだ…なぜこいつは俺の小さいころの呼び名を知っているんだ…。

「大人になるにつれてわらわら妖怪のことは忘れていくもんじゃ…。残念なことにな…。」

「俺が、忘れているって…?」

「そうじゃ、覚えていないのか?ぬりかべや、一つ目小僧。砂かけダヌキに、妖狐なんかもおったのう。」

信じられない…こいつが妖怪で、俺と一緒に遊んでいた…?

どうにかして、こいつが妖怪だということだけでも確かめられないのだろうか…。

……。そうだ!

「伝承によると、座敷わらしは大の大人が押さえつけようとしても押さえつけられないほどに力が強いんだってな、ちょっと力比べしてくれよ。」

「…ほう?わらわを試すというのか?あのケン坊が?ずいぶんと偉くなったものだのう?まあよい。それで信じてもらえるというのならば、やろうではないか。」

本来だったら手を合わせて立った状態で行う力比べをしたいところなのだが、あまりにも身長差があるので腕相撲にした。

「じゃあいくぞ。レディ…。ゴー!」

そう言うが早いか、俺の体は一回転した。体ごと、畳にたたきつけられたのだ。

「え…?」

「どうじゃ?これでわかったかの?わらわは、座敷わらしじゃ。」

嘘みたいな話だが、信じるしかない。少なくとも、こいつは、人知を超えた何かだ。

「座敷わらしだってのは信じられないが、お前が妖怪だってことはよーっくわかったよ。」

「そうか…。まあ今はそれでよい。」

「そういえば、お前っていつからここにいるんだ?」

妖怪ってことならかなりの年齢になるはずだ。

「それは、年齢を聞こうってことかの?女性に年齢を聞くのは野暮ってもんじゃぞ?まあよい。わらわは江戸時代ごろからこの家についておる。この家が繁栄しているのは、わらわのおかげなのじゃぞ?」

江戸時代!スケールが違った。

「おぬしの母親や、祖父なんかとも一緒に遊んだもんじゃ。」

「お前が?俺の母親と?」

「さっきから思っていたんじゃが、そのお前というのはどうにかならんのか。わらわはおぬしの何倍も年上なのじゃぞ?」

「だって、名前知らねーもん。」

「わらわの名は…。さくらじゃ…。おぬしがつけてくれた名前じゃぞ?」

そういや和服の柄が桜だ。当時の俺のネーミングセンスがうかがえる。いや、そのくらいの年齢なら仕方のないことか。

「じゃあさくら。」

「昔のようにさくら姉と呼んでもいいんじゃよ?」

「いやだ。それより、この近辺に妖怪ってどれくらいいるんだ?」

「そうじゃな…。数えたことはないが、何十かはいるじゃろうな。」

そんなにいるのか。こんなとんでもな存在、二、三いれば十分だと思うが。

「あ、何か失礼なことを考えているじゃろ。」

ギクリ。

「い、いや。そんなことないよ…。」

「まあよい。それより、今度からここに友人を呼んでお主に会わせてもよいかの?お主に会いたい友人はわんさかおるんじゃ。」

「…別にかまわないけど。」

「本当か?やったあ!」

そういって飛び跳ねるさくら。こうしていると年相応の可愛い女の子なんだけどな。

それより今友人を呼んでくるって言ってたな。妖怪が俺の家に来るのか…。

「楽しくなりそうだな!」

俺はヤケクソ気味にそう言った。

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