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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
89/149

メオトラはかく語りき

シンに対し、ありとある問いかけは意味をなさない。

なぜこの星に、なにをしに、なんのために……。

重要なのは唯一の答えではない。

カオスの上に浮かぶこの世界にどう立つかだ。

赦し合う世界を想ったのならそれが君自身の答えだよ。

不安だとしても信じて進むしかない、

我々は人間であり、人間でしかないのだから。


                ◇


 俺たちは階段を降りてまた地下へ、そしてクリエイションルームへと戻る……って、思えば俺たち、普通に出入りしているな……?

 この道筋なら認証とかは不要なのか? いや、それじゃあ明らかに杜撰だろう。ということはいつの間にやらそういう権限が与えられているとか? まあ、依頼をこなしたからな、そういった特典があってもいいもんだ。

 さて、ここで待ち合わせをしているらしいが、ブルースらしき人物は見当たらないな……って、メオトラが近づいてきた!

「ヒ、サ、シ、ブ、リ!」

 あいかわらずいろいろでかいな……。こいつにルナのような烈火の猫パンチをされたら即死はまぬがれまい……。にっと笑ったときに見える牙の威圧感が半端じゃないし……。今日は銀のローブのようなもので身を包んでいる。

「おや、それは翻訳機かな?」

 おっと、メオトラが普通に喋った? この翻訳機は、あのよくわからない言語にも対応しているらしい。

「あ、ああ、わかるよ」

「そうかい、それはけっこう」メオトラはまた牙を見せて笑む「どうにも妙なことになっているようだね」

 意外と……といっちゃ失礼だが、知的な喋り方をするんだな……。

「……あんたはなぜ、ここにいる?」

「装備を調達するためだよ。ダイモニカスを撃破するんだ」

 ダ、ダイモニカスをっ……?

「なんでまた?」

「もちろん、危険な存在だからだよ」

「そうか……そうしてくれるなら、こちらとしてもありがたい!」

「そうかい? 君も望んでいるのかい?」

「ああ!」

「では、共闘することに異論はないね」

「あ、ああ……。しかし、俺の力なんて……」

「必要ですとも」おっと取り巻きのアテマタだ「あなたさまも搭乗していただきたく存じ上げます」

 なにぃ……?

「……どういうことだ?」

「現在製作中のバトルスーツにあなたさまも搭乗していただければ、メオトラさまの戦力も飛躍的に増大することでしょう」

「バトル、スーツ……」

「つまり、私の装備に君も乗り込むんだよ。バックパックにね」

 ま、まじかよ……? しかし、いま製作途中なんだろう? ということは、ハナから俺も一緒に戦うことが想定されていたと……?

「なにを突然そんな……」

 メオトラは俺を両手で掴み、持ち上げる……!

「もし死ぬとしたなら君とがいいからさ。一緒に死んだ者たちは、来世でまた一緒になれるんだ」

 な、なんだそりゃあ……? また死にまつわる運命論かよ……!

「し、死で縁が紡がれるなんてことが……?」

「あるとされているね」

「殺しでもか?」

「そうだね」

「なぜ、殺しなんかで縁が紡がれるっ?」

「煉獄の環にとらわれるからさ」

 れ、煉獄の環……だと?

「しかし、大元は大巨人が生み出しているアイテールによるものだろう? 張本人の大巨人はなにを求めている?」

「君はなにを求めていると考える?」

「わからない……。ただ、そう、赦し合うこと、とか……」

「ふむふむ」メオトラは胸元へ俺を誘う……!「君たちは三つのあれを争奪しているんだってね。しかし、それでシンと会話したところで、その言い分を理解したとはいえないだろう。情報を極度に単純化しているはずだからね。まあ、もっとも……君たちはもっぱらシンの力に興味があるようだが」

 胸が超でかい……じゃない、たしかに、あまりに情報が単純化されてしまうのなら、その意図を汲み取れているとはいえないだろうな……。メオトラは笑い、

「それにしても、赦しだって……? ふふふ、それはまごうことなく君自身の答えだね。君自身がこの世界を赦したがっているんだ」

 お、俺が……?

「逆説的に、君は嫌悪しているに違いない。この世界の現状を……」

「い、いや……俺は……」

「なるほど、この世には赦せないことが多い。憎たらしい輩は皆殺しにしたいし、不幸になってほしい。そうなってしかるべきだし、自ら手を下すとしても、自分だけは特権的に赦されるべきだ。そう、神に愛されるがごとく……」

 メオトラは恐ろしい声で笑う……。

「でもね、神も宇宙もただ沈黙を続けるだけだ。ありえることにおいて善悪など存在せず、寒々とした闇と灼熱にも勝る瞬きがあるばかり。人はそのはざまにて、ただひたすらに怯えるしかない」

「……唯一の答えなどないと?」

 メオトラは俺を胸に押しつける……! なんと柔らかい……じゃなく、絵的にこれどうなんだっ?

「君は君の答えを追い求めるべきだね。真理ほど得難いものはないのだから」

「俺の、答え……」

 しかし、いまほしいのはそうなっている理由だ。

「知りたいのは、どうして殺しなんかで縁がつながるのか、だ……」

「生命が構造であるのなら、その構造の崩壊もまた必然的なことだ。しかし、構造であるがゆえに、そのパターンが再度繰り返されることもまたありえることではないかな? 現に、宇宙はパターンに満ちている」

「り、理屈ではそうなのかもしれないが、俺のしている話はもっと微視的なものだ。繰り返される要素は俺ではない、しかし、俺はそのパターンかなにかに翻弄されている。ここが問題なんだ。そうなることの原因があるのなら知りたいと思うことは……」

「それは不可能だ」メオトラは断じる……!「先にもいったが、会話の成立しない対象が生み出したものだ。理解などできない」

「じゃあ、実質、理由はないに等しいと?」

 メオトラは俺を抱いたまま寝転がる……。

「レックテリオル、理解は万象の上澄みにすぎないんだよ。たとえばあのアテマタたち、彼らは真円という直観を基軸に物事を思考するが、そもそも真円とはなんだろう? それのなんたるかを紐解こうとすればするほど、究極のカオスが眼前に現れる代物だ、理解しきることなどできはしない」

 真円、そういや前にもそれが必要とかいっていたな……。

「アテマタはその構造上、真円の謎に踏み込めない。あの直観的な単純さを基軸に思考し、合理を組み立てるんだ。そしてだからこそ、彼らの根底にはおそるべきカオスが内包されている」

 カオス……。

「アテマタ、トレマー……?」

 メオトラは目を細め「よく知っているね。それもカオスの一例だ。そういったことをしてしまうあの不可解な人工知能たちは、シンの不可解さより発想され生み出されたものなんだ」

「……アテマタは、シンを模している?」

 メオトラは上半身を持ち上げ「君は神話に興味を?」

「……いいや?」

「レクテリオル叙事詩は世界再生の寓話であり、内容は荒唐無稽だね。いや、世界創造を語る神話のどれもが荒唐無稽だ、カオスに満ちている。どうしてだろう? 古代人はなぜそのようなものを受け入れたのか?」

「さあ……? 科学的な思考体系が未発達だったから……?」

「いいや、古代人はある意味、我々よりはるかに知能が高かったんだ。それゆえに直観していたのだと思う、この世界の根底には底知れぬカオスがあると。だがカオスはそうたり得ればこそ、理解も直視もできない。ゆえに、世界を説明するためなればこそ、荒唐無稽でなくてはならなかったのではないか? 私はそう思うんだ」

「……神話のことより、なぜ、殺しなんかで紡がれるのか、俺が知りたいのはそこなんだ……」

「私もその話をしている。つまり同じことなんだ、人にとって死がカオスだからこそ、殺しという事象が選ばれたのではないかな」

「死が、カオスだから……」

「人が人たりえるのは死という概念への畏怖にある。ゆえにカオスたる死に隣接しつつも、明確である殺しという現象が我々の真円たりえるのではないか、私はそう思うんだ」

 ……難解だ、しかし、理解できなくもない……。

「……アイテールは、人が人たりえるものの原初を模索している?」

「私はそう思うんだ」

 ……だが、あくまでメオトラの意見だ。大巨人は理解のできないカオスであることも……。

「……俺たちは、かつて殺しあったのかな? だからこうして巡り合っている……?」

「そうかもしれないね。でもそんなことはどうでもいいんじゃないかな。私は君がとてもかわいいと思うし、これが運命でも初めての出会いでも素晴らしいことには変わりない」

 メオトラはそういって笑う……。

 そして俺は解放される。みんなになにを話していたのか聞かれるが、なんとも答えようがない……。わかったことは俺は俺で答えを見つけていくしかないということだけだ。

 ……しかし、世界を嫌悪しているだって……? ……いいや、そこまでじゃあないさ、認めたくない残酷な現実があるだけで……。

 ……そして俺たちはまたウォルの爺さんのもとへと戻る。気になることは多々あれども、いまは武器の強化が先決だ。設計もまだ終わっていないし、急がないと。

 さて、ロッキーは弾丸をつくれるらしいが……刃ともなるとどうだろうか? シューターの刃を彼女に見せ、

「ロッキー、こういったものをつくることはできるのか?」

 ロッキーは刃を手に取り、

「リボルバーみたいな銃で撃てるならね」

「仮にそういう形にしたとして、実際につくるのは刃だぞ、お前が普段からつくっているのは銃弾じゃないのか?」

「うーん、穴の形にそってつくるイメージだからできると思う!」

 本当か……? アリャにしてもこいつにしても妙に断言するなぁ……。

 まあとにかく、リボルバー式という縛りがあることには変わらないか……と、そのとき、ふと宿で会った武器商人を思いだす。いや、どうでもいいことだが……。

「アレ?」うん? アリャが裾をひっぱってくる「タマツクル、ワタシ!」

 ああ、きちんと説明していなかったな。

「まあ、そういう話だったんだけれど……お前はニリャタム以外を生み出したことがないだろう? でもロッキーは銃弾をつくれるんだ、適性は……」

「ムゥー? レク! ワタシニタノンダ!」

 おおっと? なんだ、お怒りなのかっ?

「い、いや、それはそうだけれど、事情が……」

「それはちょっとひどいんじゃないっ?」

 うお、片言じゃなくなったってことは……セルフィンの言葉をしゃべっている? それはつまり、かなりヒートアップしているみたいな感じとか……?

「なに、他にいいひと見つけたからもういいやってことっ?」

「い、いや、適性というか、効率の話で……」

「だからもういいやってことなんだよね?」

「ち、違う違う、そうじゃなく、あれだ、お前だって手間がはぶけるだろう? 刃をつくるなんて面倒な役割を……」

「私、面倒っていった? いってないよねっ?」

「いい、いっていないけれど、こ、効率として……」

「だから、他にいいひと見つけたからもういいって話でしょっ?」

「そ、そそ、そういう冷淡なニュアンスはなく……」

「ちょっとさあ」アリャは腕を組んで俺を睨む……!「そういうのってないんじゃない?」

 う、うーん……? なんだ突然……。

 そりゃあ、まあ、やっぱいいやって話だし……心構えをさせたぶん、俺が悪いのは確かだし……なんだよって思うのもわかるが……つまりは面倒な役割を担わなくていいってことだし、そこまで怒ることじゃあないんじゃないか……?

「いや、その、機嫌を損ねたんだとしたら謝るよ……。でもな、この問題は戦いにつながることだろう? 命がかかっている。そんな問題にな、うちの有力な戦力にだ、余計な手間をかけさせるのはどうなのかという話なんだよ……」

 アリャはじっと俺を見つめ、

「……なんか、おべっかつかってない?」

 そ、そりゃまあ、つかっているがっ?

「い、いや、実際的な話を俺はしているんだよ! 合理がすべてとはいわないさ。でも、無視していいわけじゃあないだろう?」

 アリャは頷き、

「いいたいことは、わからないでもない」

「そうだろう! 決して、お前を軽んじてるわけじゃあないんだよ。本来ならお前に頼みたくはなかった! 正直、お前の戦力に頼っているからな! でもあれだ、負担を増やしたくなかったんだ。それになんだ、俺はお前に甘えすぎているんじゃないか? とか、思ったりもしたりしていて……」

 アリャは首をかしげ、

「……まあ、そうだよね、レクは私がいないとダメだもんね」

 いやぁ、そこまでダメじゃねぇよ! ……といいたいところだが、ここは話を合わせないとな……。

「すまないな、なにかそう、勘違いさせたみたいで……」

「勘違い?」アリャはうなる「……私、勘違いしてた?」

 あ、あれ? なんでこう、なんだこれっ!

「いい、言い方が悪かった! 頼りすぎてたなって話だよ!」

 アリャはうなり「まあ、そうかもね」

「軽率だったさ、それは謝る! だが……俺のいいたいこと、わかってくれるよな?」

 アリャは鼻を鳴らし「……わかる」

「そういうことなんだよ、うん!」

 どういうことなのか実際よくわかっていないが……ともかく切り抜けたか……。

 ……しかし、なんだか空気が重い気が……。俺、そんなに悪い態度だったか……? ロッキーも不思議そうに目を瞬いている。

「ともかくさー」フェリクスだ「戦力の増強が目下の目標なんじゃないのかい? みんなそれに尽力すべきだよ」

 そうそうそう! たまには、いや、最近いいこというなぁ!

「そうだ、そういうことを俺はいいたいわけでな、よし、設計がんばるぞ! みんなもせっかくの機会なんだ、よくよく考えて、なにかつくってもらった方がいいと思うぞ!」

 そして俺たちは机に向かい、各々、ほしいものを練り上げ……数時間後、クリエイションマシンの元へ向かうこととなる。ドーム状の大きなそれの側には乱雑に机が並び、その上には様々な機器や端末なるもの、書類も山積している。そこで機械とにらめっこをしているギマの男に要件を伝えると、彼は快諾してくれた。

「ああ、話は聞いてるよ。ええっと、使用可能な時間は一時間だな、それまでに全員ぶん済ましてくれ。時間内におさまらなかったぶんは諦めてくれよ」

「一時間? 短いなぁ!」

「ものによるけどすぐにできるよ。ほら、さっさと入った」

「は、入るの?」

「そう、AIに設計図を見せて、質問に答えればいいから」

 そして俺はクリエイションマシンのなかへ……。内部は乳白色に明るく、簡素な机と椅子、そしてソファがあるばかりだ。奥に道が続いているが、立ち入り禁止とあるので行かない方がいいだろう。

『ハイ、どうも』

 うっ……?

 こ、この声は、声だけだったあいつのものっ……?

 し、しかし奴はあの体のなかに閉じ込められている……というか、ともかく個人として行動しているはず……。

『ハイ、どうも?』

「あっ……? ああ、どうも……」

 しかし、どうにも奴じゃあないような気がするな、声質だけが同じなのかもしれない……。

『設計図を拝見します。紙ですか? では机の上にでも置いてください』

「ああ……」

 いったいどこから見ているんだ……?

『なるほど、拝見しましたが、構造にやや非効率的な部分が散見できますね』

「ああ……悪そうなところは修正してくれ。不明な部分に関しても任せるよ」

『それはいい判断です! では試作品をつくりましょう、強度はおもちゃ同然ですが、機構の把握には役立ちますので!』

「うん、そうしてくれると助かるよ」

 そしてなにやら音楽が聴こえてくる……。こんなんで本当にできるのかな……と、奥からテーブルがひとりでに滑ってきたぞ! その上にはシューターと大型の拳銃二丁、そして予備のシリンダーが……!

 マジかよ、どれだけ早いんだ、ものの数分でここまで……! いや、時間がない、さっさと済ませないと。

 まずはアサルトシューターの模型を手にとる。ライフル型にしようかとも思ったが、ロッキーのこともあるので互換性に配慮して拳銃のような形に決めた。しかしかなり大型であり、ストック部分が伸び縮みするので、連続する反動にも備えている。実際にどういう構造となっているのかよくわからないが、トリガー部分に電撃を放つことで刃が射出されるという提案は受け入れられているようだ。形もどことなく未来っぽくてかっこいい。

 そして銃身だが、それはリボルバー式よろしく途中で折れて、放射状に刃をまとっている芯を装填できるようになっている。装弾数は六十発、かなり連射できるぞ!

 さて次はロッキーの銃だ。これは主に装填用の銃で、刃の成型のためシリンダー部分に差異があるなど、俺のとは異なる機構をしているが、見た目だけはよく似ている。発射機構も備えているが、これには水圧を利用する。ちなみにこれは報酬の前払い分だ。

 他にはシリンダーの予備もふたつある。あの後もアリャが文句をいっていたし、弾倉のみ彼女にも渡しておくしかないと判断したが……おそらく難しいだろうというのがワルドの意見だ。魔術師としてはアリャとロッキーは同じタイプで、弓がなければ風の魔術は使えないし、あの短剣がなければニリャタムを呼び出せない。それはどちらも彼女に馴染み深いからこそ魔術の媒介たりえるようで、いきなりシリンダーを渡しても、すぐには刃はつくれないだろうとのことだ。

 そしてバスターシューターだ。やはり未来的な形になっていてかっこいい。これは刃が大きくなり、超振動効果がついただけで従来のシューターと構造的に変化はない。アサルトの機構が謎かつ修理が困難そうなぶん、こちらはシンプルにしておくに越したことはない。

「……うん、いいね、これで頼むよ!」

『了解しました! どことなく温故知新的な武器ですね、ただいま実物を製作開始しました、すぐにできあがります』

 そうして今度は本物が流れてきた! おおお……けっきょく十分ほどでここまでできちゃったよ! マジですごいな、クリエイションマシン!

「すっごい、大したもんだ!」

『わたしにつくれないものはほぼありませんから』

「へえ、少しはあるんだ?」

『生物ないし、それに匹敵する存在はつくれません。心理的抑制が働くのです』

「可能ではあると?」

『あなたがご自分で首を切り落とす程度には』

 嫌なたとえだな……。まさしく心理的に不可能ってわけか。

『そしてクリエイションマシンをつくることもできません。また、わたし自身を複製することもできません』

「なるほど……」

『加えて、建築物など巨大なものもつくれません。これはあくまで空間的なキャパシティに関する問題であり、建材の制作ないし、折りたたみ式のものに関してはその限りでもありませんが』

 そりゃそうだろうな。

『さらに、絵画など美術品の完全なる複製ないし貨幣や金塊などのそれもできません。実際的には可能なのですが、法的に規制されており、あなた方の都合において製作依頼がなされないのです』

 ほうほう……。

『他にも犯罪事件に関する物証などをつくってはならないなど様々な制限がありますが、大方においてご満足していただけていると自負しております』

 なるほど……。しかし、事件の物証ねぇ? やろうと思えば、そんなものまでつくれるのかよ……?

「ちなみにあんたの名前は?」

『スミス54です』

「54? 他にもいると?」

『はい』

 じゃあ、あいつもスミスなんだろうか……?

「そうか、いろいろとありがとう」

『どういたしまして』

 さあ、ぼやぼやしているとみんなの時間がなくなってしまう。十分ほどとはいえ、六分の一だからな。

 クリエイションマシンから出て、次はフェリクスか。

「かっこいいのをつくってもらうよー」

 そして八分ほどして出てきた、おおお、盾とかいってたのに、鎧をつくってきやがった! といっても胸元と前腕、そしてすねの部分のみだが……。

「お前、なにそれ!」

「かっこいいでしょー」

「いいけれど、全身じゃないのか」

「薔薇将校の衣装をモチーフにしてるんだー」

 なんだそりゃあ……? お前はそんな理由で防御効果を下げるのか……?

 そして次はワルドだ。なにをつくってもらうのか……と思えばローブか……。

「なんでまたローブ?」

「……うむ、まあ、ないと妙に落ち着かなくてな」

 そういうものか……。

「しかし強度は高く、耐熱効果もあり、電気も通さん」

「なるほど、防御効果は高い、か……」

 次は黒エリだ。いってた通り、なんか食い物っぽい箱を手にしている。

「……食い物?」

「高栄養価食品だ」

「やっぱり腹を……」

 手が頬に伸びてきたのでやめる……! 次はエリだ。

 ……なんか、白いマフラー?

「それは?」

「マフラーです」

 やはりマフラー……。

「強度がとても高いのです」

「ほう……」

 う、うーん? 寒いのかな? まあ、涼しくなってきたしな……。

 そしてアリャだが……弓か。この前、新しいのを手に入れたばかりなのにな。なんか形状からしてギミックがありそうだが……って、怪しい笑みを浮かべているな、あれは確実に仕込みがあるだろう。聞いてみたいが、さっきのこともあるし……いまはそっとしておくか……。

 ……と、いったところで一時間だ、なんとか間に合ったな。

「済んだよ、ありがとう」

 ギマの男は頷き、

「ああ、そういやあんたレクだろ?」

「あ、ああ……そうだが」

「グゥーさんから伝言だ、はい」

 紙切れを渡される……?

「そこで落ち合おうって」

「ああ……」

 そういやあいつ、回復したのかな? あれからけっこう経つしな、まあしたんだろう。

 さて、グゥーと会うのはもちろんとして、ゾシアムやブルースの発見もしなければならないが……ゾシアムは警戒しているだろうし、そうそうは見つからないだろうな。だとすればブルースだが、それらしい男はさっきもいなかったし……って、なにやらそれらしい男が、俺たちに近づいてくる……!

 なるほど伊達男風だが、面長でとろんとした印象だ。そして紫色のシャツに、赤い薔薇……。趣味ワルー!

「おっ、ブルースじゃん!」ロッキーだ「あのさー、あのフィン、一応ここまで守ったんだよ、だから報酬ちょうだい!」

「ああ、わかってる」ブルースは懐から小さめの金塊を取り出す「俺っちは不義理をしない男さ。だが約束は約束、多少の不備があったので遺物まではやれないぜ」

「わお!」ロッキーは報酬を受け取りご満悦だ「やったー!」

 結果的に遺物を入手できたからかロッキーに不満はないようだ。しかし、小さいとはいえ金塊を渡すとはな、なかなか太っ腹だ。

「あんたはいったい……?」

「俺っちか? ブルース・リップ、人脈屋だよ」ブルースは顎をさすってニヤリと笑む「権威者、職人、傭兵、商売女、誰でも紹介してやるぜ」

「……それがクルセリア・ヴィゴットでもか?」

「不可能はない」ブルースは胸元から手紙を取り出す「というより、その人物より言伝を預かっている」

 そういってブルースは手紙を差し出してくる……。

「……手紙だと?」

 しかもあの魔女からとは……間違いなくワルド宛だろうな。とんでもなく不穏だが、開けてみないわけにもいかないだろう。

 ワルドは霧で手紙が読めない。俺が代わりに手紙を開けてみると……そこには招待状が入っていた。

 ダイモニカス継承権を賭けたゲームの……。

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