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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
82/149

不要因子を殺せ

 時間が……ゆっくりと、流れていくようなこの感覚……。

 電撃で活性したのか、蒐集者の奴め……って、鳥が飛んでいる……? しかし、これは……エリの鳥では、ない……。

 鳥たちを目で追っていくと、その先にたくさん集まっている一帯が、中央には人影がある……。

 あれは……またあの青年か、あの花畑で会った……。彼はこちらを見やる。

「……肉体は、そうあるように成長する。だからこそ、その活動もまた、その有り様を超えることがない。ゆえに自然は均衡を保ち続けることができたのだ」

 またなにやら……よくわからないことをいっているな……。

「しかし、ある種にはそれまでのものとは異なる特徴があった。道具の使用という、外部における拡張に特化していったのだ。そしてその進化こそが、自然の均整を破壊してゆく要因となった」

「……なんの話だよ?」

「だが、それを致命的な逸脱と見なすのは尚早だろう。そう、過渡期……やがて森羅万象の掟に収束してゆくに相違ないのだ……」

「……それは人類の話か?」

 青年の周囲に様々な鳥たちが集まっている……。彼はそれを愛おしそうに眺め……鳥の名を連ね、鳥たちは彼の周囲を回っている……。

「あるいは生命の設計図、またあるいは、それらが織り成す循環……。そして最小は最大と相似し、人類はさらなる進化を果たすと思われた」

「思われた……?」

「だが失敗した。我々は楽園へは至れなかったのだ。だからこそ、我々は次世代の人類を創造せねばならなかった」

「人類を、創造……?」

「君はギマが好きだね。彼らを美しいと思っている。そうさ、それはなんら不自然なことではない。彼らはルールを守って設計されたがゆえに美しいのだ」

「設計……された……」

「美しさとは無言の指標だ。目指すは、あるべき森羅万象の環……。ああ、それは素晴らしい、素晴らしいものだ。だからこそ……」

 うっ……!

 鳥が……鳥たちが……! 黒く、変わっていく……!

 なんだこの、どす黒い、不吉な気配はっ……!

『不要因子を殺せ……』

 なにっ……? この、声のような……?

『不要因子を殺せ……』

 不要、因子……? なんのことだ?

『不要因子を殺せ……』

『不要因子を殺せ……』

『不要因子を殺せ』

『不要因子を殺せ!』

 な、なんだこれは……!

 この声……のようなものを発しているのは、あの青年ではない? まさか、あの鳥たちがいっているのかっ……?

 黒い鳥は羽ばたき、周囲を巡る!

『殺せ、不要因子を殺せ!』

『殺せっ! 不要因子を殺せっ!』

 ふっ、不要因子とはなんだっ? 誰のことなんだっ?

『不要因子を殺せ!』

『不要因子を殺せっ!』

『不要因子を殺せ……!』

 俺は……! なぜだ! なぜ、そんなことを強要する!

『不要因子を殺せっ!』

 待て、待ってくれ、みんな、同じ生物だろうがっ……! 不要因子なんて存在しないはずだっ……!

『殺せ、不要因子を殺せっ!』

『不要因子を、殺せっ!』

『不要因子を殺せ!』

『殺せ、殺せ、不要因子を……』

『不要因子を殺せっ……!』

 黒い鳥たちが飛んでいく、気づけば地下の一室、そうだ、いまは戦闘中だった……!

 黒い鳥たちが、敵対者へ向けて飛んでいく……。

『不要因子を殺せ』

 ふ、不要因子とは、奴らのことなのか……?

 でもなぜ? どこが?

 たしかに、俺たちにとっては敵だろうが、それはあくまで立場の相違であって……。

 それに、この不吉な鳥たちは……俺たちの都合なんかまるで意に介していない……。まったく別の観点により、奴らを殺そうとしている……ような気がしてならない……。

 それに従うことは、俺たちにとっては都合がいいが……。

 しかし、安易に従ってはならない、あれは恐ろしいものだ、不吉そのものだ、そして直感する、あれらに集られている敵対者の不幸を……!

『不要因子を殺せ』

『不要因子を殺せ』

『不要因子を殺せ……!』

 だが……強い強制力を感じる……! 黒い気配が俺にそうさせようとしてくる……!

『不要因子を殺せ』

『殺せ、不要因子を殺せ!』

『不要因子を殺せ……!』

 待て、駄目だ、止めてくれ……!

 ああ、ここは猶予を、待ってくれ……!

 待ってくれ、

 待ってくれ、

 待ってくれ……!

 どうか、待ってくれ……!

 ……俺は、いつの間にかしきりに懇願している……。

 それは敵対者を庇う愚行かもしれなかったが……。

 しかし……。

『……では、猶予を』

 ……鳥たちが? 違う反応を見せた……。

 そこで気づく、俺の周囲にエリの鳥たちが巡っている……。

 そして少し遠くより黒い鳥たちが……とまっており、俺を見詰めている……。

『……猶予を』

『猶予を……』

『猶予を』

 そして、どこかに飛び去った……?

「レクさん!」

 肩を叩かれる、エリだ……。

「攻撃を受けています、身を屈めて……!」

 あ、ああ……そうか、そうだったな、戦闘中だ……。

 電算機の影より……気配があるな、敵は四人か……。断続的に銃撃をしてきているようだ……。

 しかし、よかった、なんだろう……? 焦りはない……。

 あの鳥たちと対峙するより余程……気楽だ……。

 それに敵の動きがよくわかる、これからどういう動きをするのかも……。

「……エリ、下手に動くな。俺に任せてくれ」

「えっ……?」

 猶予だ、猶予がある内に終わらせる……。

 電算機の間を縫って進む、奴らの背後に回る……が、その前に気づかれるはずだ、なぜだかそういったビジョンが頭に浮かぶ! だから、それを踏まえ、先んじて撃つ!

 光線銃で敵の得物ごと腕を撃ち抜く! 敵対者は倒れる、よし、次は右の物陰にいる奴がこちらを向くだろう、やはり得物を狙って撃つ!

「ちっ……! こっちだ……!」

 残り二つの気配がこちらへ、しかし、お前たちは……。

 ひとりはワルドの光線に足を撃ち抜かれ、もうひとりはアリャの空圧で吹っ飛び、電算機に衝突する……!

 よし、片付いたか……。

 しかし……なぜ、あの鳥たちは奴らを……? 奴らのなにが問題なんだ……?

 邪悪だから? 悪党だから? ……いいや、おぞましい気配なんて感じない……。

 俺は奴らに近づいていく。うめく敵対者たちに戦意は残っていないようだ……。

 猶予だ、これは猶予だ……。

 あんたたちは、ここで死ぬ必要なんかない……。

 力が抜けていく……なぜだか、とても哀しく……。涙が溢れてくる……。

 そのとき、柔らかい感触……。

「よしよし、大丈夫よ、あなたは正しいわ……」

 し、蒐集者……! 俺は慌てて引き剥がす……。

「こ、これが力の代償か……!」

「……わたしには声に抗う理由はなかった。だから共存は難しくなかったわ。でも、あなたは違う」

 敵対者たちは皆、俺たちと同じ種族……。そろって黒い戦闘服らしきものを着ており、冒険者という風体ではない……。

 それにギマやウォルでないということは、元老院絡みか……?

 俺は彼らに近づき「……お前たちは何者だ?」

「やめろ、撃つな……」

「撃たないから、答えてくれ」

 敵対者の男はうなり、

「……俺たちはただの傭兵さ……。雇われに過ぎん……」

 傭兵、か……。

「雇ったのは?」

『また馬鹿げた異能者が現れたものだな』

 おっと、どこからか声が響いてくる……。敵対者は頭上を見上げる。

「雇ったのは、あ、あの声の奴さ……」

「なるほど……。わかった、さっさと行ってくれ」

 そして彼らは怪我に呻きながら、重い足取りで去ってゆく……。

『まあ、予想できたことだがな、あそこへやって来た時から』

 それにしても、この声……。どこかで聞いたことがあるような……?

「この声は……」ワルドだ「ヨデル・アンチャールとやら、であったかな」

 ああそうか、ヨデル・アンチャールか! しかし、なぜここに? どうして傭兵をけしかけてくる……?

「……皇帝のお守りはどうした?」

 奴の笑い声が響く……。

『いまごろ、サラマンダーと身を寄せ合って増援を待っているさ』

 なに……? なぜそんな状況に……。

「皇帝の警護なんてどうでもいいと? お前は一体……」

『何者か? ヨデル・アンチャールだよ、本物のな』

「なに……?」

『鼠に呑まれたのはジョン・マーカスという男だ。奴は他者の気配を真似る異能と変装の達人という特殊技能を持っていた。つまり、それまでのヨデル・アンチャールは偽物だったのさ。俺が皇帝派にいたのは潜入初期だけだ。有能だからな、多忙だったのだよ』

「それで、お前も元老院派だと」

 しばしの静寂、そして小さく、やがて大きくなる笑い声……!

『まあまあ、いまはいいじゃないか、本音で話そう』

 ……本音だって?

『お前はどのような任務でここへ来たんだ? クルセリアを狙っているのか?』

 う……ん? お前って俺のことか? まるで話が噛み合っていないような……。

「いっている意味がわからん」

『そうはさせん。彼女は誰にも渡さんよ』

 ……マジで噛み合っていないな。俺はワルドを見やる。彼はフンと鼻を鳴らし、

「あやつに誑かされたようだな。やめておけ、あれと関わってよいことなどなにもない」

『……ワルド・ホプボーン』

「いかにも。邪魔立てするならば、容赦もできんぞ」

『ワルド! ホプボーンッ!』

 うおっと、怒号が室内に響くっ……!

『よく来たな! 貴様はだけは私が確実に葬ってやろう!』

 なにぃ……? さっきからなんなんだよこいつは……。

「あいつ、さっきからなにをいっているんだ……?」

「さてな」ワルドはうなる「だが、愛情はなによりも強い動機となる。あやつは敵と見なして相違あるまい」

『……やるじゃないか、先程より防衛システムが機能しない』

 ……防衛システム?

『私以外にもここのアクセス権をもつ者がいるとはな。となれば私のいいたいこともわかるだろう? 奴らを信じるな、お前もいずれは……』

 いやぁ、完全に勘違いしちゃってるなぁこいつ……!

「俺を元老院派だと? いやいや、まるで見当違いだぜ!」

 少しの沈黙……。そしてまた奴の声が……。

『……そうか、あるいは本当に知らないのか? 元老院の実態を……』

「実態だって?」

『おかしいとは思わないのか? カタヴァンクラーの元へ集められたことを、そして、奴がお前たちを受け入れたことを……』

「おかしい? なにがだ? シンの意思奪還作戦の顔合わせだろう? 途中で割り込むのが危険だから、権威のあるカタヴァンクラーとの接点を得るために……」

『なるほど、まあたしかに、まったくの余所者が途中で参戦してもよいことはなかったろうな。しかし、それは強者には当てはまらん。事実、軍が介入してしまっているだろう? あれほどの戦力の前には通じん理屈よ! それに予知が可能なお前にもな』

 ……こいつはなにかと勘違いしているようだな。

 しかし、予知だって……? たしかに……妙に先が見えたような気がしたかもしれないが……。

 それはともかく、途中参加で袋叩きにされる懸念は強力な組織相手には通じないって意見には納得できる……。そしてその場合、あの集まりの意義は薄れてしまう、ということになるが……。

「……いや、しかし、カタヴァンクラーはアテマタと関係があり、あそこに集まったのも、元はといえばアテマタの決定なんじゃないのか……? だとしたら従うことに意味もあるかも……」

『なるほど、その解釈もまた筋が通っている面があるのかもしれんな。しかし、アテマタが本気ならばそのような回りくどい方法はとらんよ。単なる実力行使に出てクルセリアたちを止めるはずだ』

 ……そうかもしれんな。危機的であればこそ、外部の戦力に頼らず、自ら動き出しそうなものだ。なんせ彼らにはシン・ガードという特上の戦力だっているんだしな……。

「なんだ、先ほどからわずらわしい……」黒エリだ「カタヴァンクラーが敵対勢力の手先を受け入れたというのなら、目的はその手先の捕縛ないし抹殺ではないのか」

『なんだ、やはり承知だったのだろうよ!』

 黒エリはお手上げといわんばかりに大きく肩をすくめる。

『それがこの騒動の肝だ!』

 だから、なんの話だってのよ……。

『それを知っていてなお、お前たちは奴らに与するのか?』

 うーん、どうしたものか……と、そこにパムの女が急接近してくる!

「あのあの、あなたたちは元老院のスパイだったんですかぁー?」

「はあ? いや、まったくの見当違いだよ……。さっきから話が噛み合わなくて困っているんだ」

「そおなんですか? じゃあじゃあ、あのひとは勝手に勘違いしているんですかぁー?」

「だろうね……」

「あのあの! 『突撃! 最前線!』のルナですが、質問がありまーす!」パムの女は例のポーズをとる「元老院はいったいなにをしようとしているのですかぁ? 無知な私たちはまるで話についていけてなくって困っているんです、どうかハッキリとおっしゃって下さーい!」

 また、少しの沈黙……。だが、やがて奴は答える。

『……ああ、どうりで見たことがあると思っていた。そうかそうか、なるほど』奴はエヘンと咳払いする『お前たちの番組はなかなかに面白いな、よし……インタビューに答えてやろう』

「わあ、ありがとうございまーす!」

 ええ……? ま、まあ、説明してくれるってんなら、こちらとしても助かるが……。

「そもそも元老院ってなんですかぁー?」

『……もはや力の慣習に過ぎん。これはとある演劇の台詞だが、あれは元老院の現状を鋭く捉えている』

 おお……? また薔薇将校か……?

 俺はフェリクスを見やるが、彼はなにやら腕を組み、首を傾げている。いやいや、お前、演じていたんだろう……? 内容とか把握していないのかよ……!

「力の慣習? それはどおいうことですかぁー?」

『権力という現象に過ぎんということだ。組織を構成する人間に際立った特異性はない、いや、あってはならないという理念がかつてはあったのだが……』

「あってはならないとは?」

『理由は二つ。頂点の席には偉大なるカリスマが座るべきとされ、それ以外はみな等しく凡庸な存在でしかないということ。それゆえに自身を特別だと見なす態度をとることは大罪であったのだ』

「へえー! そおなんですかぁ!」

『うむ。そして二つ目は実際的な問題でな、組織の堅牢性を重視しての取り決めであるということだ』

「堅牢性、ですかぁ?」

『そうだ。カリスマに裏打ちされた組織ほど、そのカリスマの喪失による衰えも大きい。しかし、それでは組織として脆弱だろう? ゆえに組織を構成する細胞はいくらでも代替が効く消耗品でなくてはならない。重要なのはシステムということだな。そういった意味では、元老院は強固な組織として設計されていた』

「なるほどー。私がいなくなったらこの番組も終わりですしねー。『突撃! 最前線!』は儚い番組ですよぉー」

『ふっふ、まあ、そういうことだ』

 なにかちょっと和やかな雰囲気だな……。

 でも、おかしくないか? 前後でやや矛盾があるような……。

「それで、元老院はなにを目的としているのですかぁー?」

『偉大なる真の王が頂点の席に座るまでは、もっぱら平定と規律の維持が目的だな。だが、いまはもっぱら権力の虜よ』

 ……なるほどな。決していい話じゃないが、特に驚くような内容ではない。

「そおなんですかぁー! それで、その元老院さんたちはこの状況において、なにをしようとしているんですかぁー?」

『……新陳代謝、とでも答えるだろうさ、奴らはな』

「それはどういう意味ですかぁー? あ、言葉の意味はわかりますよ」

『奴らは頭脳のつもりなのさ。対し、配下の者どもは常に代謝される細胞だ。狂人どものたわごとだが』

「つまりは、不要な人員の削減ですかぁー?」

『それはまったく正しくない。それに関わらずの新陳代謝だ』

「よくわかりませんー。不要でないのに捨てるんですかぁー?」

『そう、だからこそ……』ふとそこで言葉が途切れる『……待て』

 なんだ……? なにかあったのか?

『……なぜ、ここにいる? もっと深部で隠れていろといったろう?』

 誰かと話している……? かすかに、相手の声らしき音が聞こえるが……。

『案ずるな、私が守ってやる』

 守って……? まさか、話している相手は……。

「クルセリア……」

 ワルドが呟く、やはりか……! 渡さんとかいっていたものな……と、思ったそのとき、ヨデルの呻き声が……?

『ば、馬鹿な? なぜ、貴様がここ……にっ!』

 そして激しい雑音! まるで床に転げ落ちたかのような……。

『クッ、クル、セリア……。俺は、お前のために……』

 さらに騒音、そして静寂……。

 ……なにが起こった? まさか、やられたのか……?

『ワルド』

 おっと、クルセリアの声だ……。

『安心して、邪魔はさせないから』

 ワルドはうなり、

「……おぬしらはなにをしておる?」

『匿ってくれるといったのに、防衛システムが動かないってひどい冗談よね』

「べつにいいでしょう?」蒐集者だ「邪魔でしょうし」

『そうね、べつにいいわね』

「クラタムたちはどうしたっ? ここにいるのかっ?」

『ええ』

「連れ帰らせてもらうぞ!」

『それはどうかしら。私はよくても、彼ら自身が承諾しないでしょうし』

「おぬし……」ワルドだ「ここで決着をつけるつもりがあるのか……?」

『もちろんよ』

「だが、なぜここなのだ? 軍隊が介入しておるではないか」

『機会は均等にしてあげないといけないでしょう?』

「なぬ? 機会とは?」

『アフロディー……じゃなかった、ダイモニカスよ。ユーから聞かなかった?』

 ……ダイモニカスッ!

「そんな、だってあれはボーダーランドの外へ出して……」

『あれは出し入れ自由なのよ。そして、もういらないから手放すの』

 なっ……なにぃいいいっ……? 手放すって、そんなことしたら……!

「……わからん。おぬしの考えておることはまるでわからん……」

『よく、そういわれるわ』

 だが確信がある! ヴァッジスカルの目的は間違いなくそれだ! だから駒として俺をここへ呼び寄せたんだっ!

「ヴァッジスカルにだけは渡せない! 魔女よ、どうか奴にだけは……!」

『そう思うなら、お前自身で止めるのね』魔女は笑う『じゃあ、またねワルド……』

 そして音声は途絶えたが……。

 くそっ! ヤバいぞ、事態はとんでもなくヤバい……!

「レク」ワルドが肩を叩く「止めよう」

 そう、そうだ……! ワルドも強力な遺物の頻用を強く望まない立場だ……!

「ああ! 必ずな!」

「うむ、必ずだ」

「はい!」エリは意気込む!「それが危険なものであればこそ、絶対に渡してはなりません!」

「ダイモニカス、か……」黒エリだ「我々が先んじて入手することができれば中央へも楽に進めるかもしれんな」

 入手ってなぁ……! 仮にできても、すぐにぶっ壊したいぜ……!

「ともかく、ヨデル・アンチャールのもとへ行ってみよう」

「はーい、コントロールルームはこちらでーす」

 蒐集者が案内を始める……。

 そして電算室を通り抜け、通路を行く……。防衛システムがどうとかいっていたが、それらしいものはないようだな。魔女と蒐集者の会話からして、こいつがシステムの起動を阻止していた風にもとれるが……。

 通路は薄暗いが、ところどころに小さな明かりがあるのでなんとか歩ける程度には視界を確保できる。どうにもドアが沢山あるようだが……寄り道をしている場合ではないな。

 それにしても通路がいやに綺麗っぽいな……。埃やカビの匂いはしないし、残骸が散らばってもいない。加えて獣の気配もない。人の手が入っている証拠だ……。

 そして俺たちはしばらく進み……通路の突き当たりで待ち構えるドアの前に立った。

「はーい、この先でヨデル・アンチャールさんが死体になってまーす」

 わざわざいわんでもいいよ……。

 そしてドアが開かれ……一面がモニターの、がらんとした部屋に辿り着くが……そこにあるのは血溜まりだけだ、死体がない……。

「嘘でーす。彼は万能者の系譜なので、結構しぶといようでーす」

 なんだこいつ……。

「それではいよいよ、お目当ての場所に向かいまーす」

 ……お目当て? お目当てってなんだ?

「なんの話だよ……?」

「クリエイションマシンでーす。なんでも……というわけにはいかないでしょうけど、大方のものはここでつくれるという夢の工場でーす」

 そして蒐集者は俺を見やり、

「そんな武器でこの先も戦えると思う? つくっていきなさい、悪いことはいわないから」

 武器……か。このシューターや光線銃だってそこそこ強いはずだが……さすがにここまでの戦いになってくると厳しい感じはあるわなぁ……。

「いい考えだ、利用しよう」黒エリだ「そしてつくった武器で、こやつの頭を撃ち抜いてやろうではないか」

 黒エリは蒐集者を睨む……が、奴は妖しい笑みで返す……。

「そ、そうだな……。じゃあ、行ってみるか……」

 そして俺たちは蒐集者に案内され、さらに通路を進む……。

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