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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
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ブラック・アポロジー!

ありとあらゆる拷問を繰り返し、運命の人を探すあの優雅な日々が崩れ去り、こんなに落ちぶれてしまったのは間違いなくあいつのせいなんだから、これからあいつが私の面倒を見て、また優雅な日々を取り戻させるのは最早、義務を超えて運命よね!

でもあいつは強情だし、私の生き様を真っ向から否定すらするだろうし、ちょっと見た目がいいからって調子に乗り過ぎなのよ! 私のブラック・アポロジーで悔い改めさせてやらなきゃ!


                  ◇


 アホのユニグラ……じゃなかったユニグルは一直線に駆けてくる。そして電撃をまとっているらしい棒を幾度も突き出してきた……が、いかんせんどの挙動もとろい。明らかに戦い慣れてない感じだ。まあ、兄貴の方からして武闘派じゃあなかったからな、その妹ならば尚更なんだろう。

「そんな動きじゃ当たらないぞ、諦めて帰れよ」

「なによこのっ!」

 アホのユニグル、アホグルは、性懲りもなく隙だらけの大振りを繰り返し、どんどん息が荒くなっていく。こうして構ってやってる分にはまだ可愛らしいとも言えなくもないかもしれないが、上の立場になると一転、とんでもない悪女に変貌するからな、どうにかここで完敗させて諦めさせたいところだが……。

 しかし、こいつの場合、どう対処をしたらいいんだろう……? とんでもない性悪だといってこの場では無力な女だからな、腕力で片付けるのは何だか違う気がするし、ゲンコツ程度では何度でも向かってくるだろう。さあて、どうしたものか……。

「ど、どうしたのよ逃げてばっかりいて……! あ、あんたそれでも男なのっ……? かかって、きなさいよぉ……!」

 アホグルは息も絶え絶え、動きもかなり散漫になってきた。とりあえず、一撃をお見舞いしてあの電撃棒を奪ってやるとするか。俺はアホグルのだらしない突撃を躱し、すれ違いざまにゲンコツを食らわせる!

「あいった……!」

 そして悶えているところで棒を奪う!

「あっ……! ちょっと……! ルール違反でしょうがっ……!」

 なんのルールだよ……。

「ほら、力の差は歴然だろう? さっさと諦めろ」

「くっ……!」

 アホグルは悔しそうな顔を見せるが、すぐに肩をがっくりと落とした……。

「わ、わかってたわよ、力じゃ敵わないって……」

 おっ、なんだ? 意外と物分りがいいな……。

「それにあれでしょ、あんた電撃効かないんでしょ?」

「なんだ、知っていたのか。じゃあなんでこんなものを持ってきたんだよ」

「それはあれよ、喜ぶかと思って……」

 なにぃ……?

「なんでそうなるんだよ! このアホ女! アホグル!」

「ああっ……アホじゃないわよってアホグルってなによっ? アホじゃないわよっ! 医学知識だってあるんだからああああああああああっ……!」

 ああ煩い……。さっきも聞いたよそのくだり……。

 そしてアホグルはわなわなと肩を震わせるが、突然、ニヤッと嫌な笑みを浮かべる……。

「でもあんた、最初は効いてたわよね、あの拷問で効かなくなったんじゃない?」

 ……うん? まあ、きっかけは、そうだな……。

「そう、だが……」

「じゃあその体質、私のお陰じゃないっ?」アホグルは途端に元気になる「ねえ、私のお陰で強くなれたんじゃないっ?」

「いや、それは違うだろう」

「何が違うのよ!」

「俺が自身の力で苦難を乗り越え得た力だ。まあ、お前の所業がきっかけではあるけれどな、断じてお前のお陰じゃあない」

「そりゃそうよね。私が悪かったわよ……」

 おおっとなんだこいつ? いきなりどうしたんだ?

「どうした、ついにおかしくなったか……?」

「はあああああああああ? なんでそうなるのよ! 謝ったでしょ、素直に受け入れなさいよ!」

「いやだって、嘘くさいもん」

「あんた性根腐ってんじゃないの?」

 思わずゲンコツが出る!

「あいったいった!」アホグルは幾度も飛び跳ねる「ちょっとあんた! 同じところを殴るんじゃないわよ!」

「お前にだけは性根がどうとか言われたくないわ! 多くの人を拷問してきた性悪女のくせに!」

「多くないわよ! 五十四人よ!」

「め、めちゃくちゃ多いじゃねーかっ! こっのドアホ女! ドアホグル!」

「ドッ……ドアホグルって何よ! ドアホじゃ……!」

「ああもうそのくだりいいから、さっさとどっかいけよ……」

「……ドアホじゃないわよ」

 そしてドアホグルは怒気を無理矢理押さえつけたかのような奇怪な微笑みを浮かべる……。

「……ええとあれよ、何だっけ? そうそう、謝罪よね、それをしたいからちゃんと聞きなさいよって話だったわよ……」

 まだその話をするのか。ううむ、やっぱりなんか色々とおかしいよなぁこいつ……。

「いや、そんなのいらんからどっかいけって」

「ちょっと……」ドアホグルは固く握った両拳をわなわなと震わせ「あんたって……ほんっとそういうとこ……」

「だいたいさぁ、謝罪って次元の話じゃないだろうよ。拷問して殺してさ……自分がどれほど悪い事してたのか、自覚あるのかよ」

「ないわよ。じゃなかった、あるわよ」

「どっちなんだよ!」

「そもそも私は殺したりなんかしませーん! なんで殺すのよ、愉しめなくなるでしょ! 殺すのは大抵バカな部下どもよ! ついでにあんたもバカなんじゃないの?」

 ゲンコツを見舞う!

「わいったいったってちょっと……!」ドアホグルは奇妙なダンスを披露する「……あんたってば! 同じところを殴るんじゃないわよって言ってんでしょーがっ!」

「拷問された人々の苦しみはこんなもんじゃねーよ! それにエオを殺したって言ってただろ!」

「あれはいいのよ、特別だったし」

「特別だとぉ……?」

「あれはね、殺すたびにより美しくなって再生する、稀有な存在だったのよ。あちこち入り込んで目障りではあったけど、特別ではあったわ。だからこの私が直々に苦しみを与えて、時には殺してもあげたのよ。わかる? この素晴らしい循環! あの美貌は私がつくったのよ!」

 ……そうか、死んで怪物になる奴らがたくさんいたんだ、その逆もあり得るってわけか……。

 だが……その度にエオは死んでいる……。

「理解など出来るか。そしてそうだな、お前もエオの仇か……」

 俺の怒気に勘付いたか、ユニグルは後ずさる。

「ふ、ふん! あんたじゃ理解なんか出来ないでしょうねっ! 何よ! やるつもりっ?」

 ……やるか? こいつは敵だが……この状況では弱者だ。

「……今、どうするか考えている」

「そ、そもそも、なんで苦しむのが悪いのよっ? 人体にそういう機能が備わっているんだから、それを刺激して悪いことなんかないでしょっ?」

 なにぃ……?

「私の行為が悪なら、その悪は苦痛を覚えた人体から湧いてきたと言えるでしょっ! 苦痛が悪なら、その源泉たる肉体も悪だってことになるじゃないっ!」

 こいつ……この言い分、アデサのそれにそっくりだ……!

「……お前もアデサと同じ裏教典の絞りカスか。奴はネズミの餌になったがな……!」

「……なっ、何よ! やるんならやりなさいよ! あんたがどういう手法で私を痛めつけるのか評価してあげるわっ!」

 なにぃ……? そう言えばこいつ、拷問し合える人とか気味の悪いことを言っていたな……。誰が合わせてやるものか!

「そんなもん、やるわけねぇだろっ!」

「なによやりなさいよ! あ、でもゲンコツは駄目だからね!」

 ユニグルは頭を押さえて挑発してくるが、これは内心、助かったとも言えるかもしれない……。戦力差が大きい分、俺とこいつでは戦いにはならない。俺が一方的に痛め付けるかどうかの話になってしまうだろう……。

 エオの仇は討ってやりたいが……弱者をいたぶるなんて、こいつみたいな真似はしたくないからな……。ここでは話に乗らないことでひとまず終わらせておこう……。

「誰がお前なんかと!」

 ユニグルは心底悔しそうな顔をし、犬のように唸る……。そんなにやられたいのかよ、おかしな女だぜ……。

「……拷問したがるってのも理解できないが、されたがるのはもっと理解できんな……」

「拷問道は奥が深いのよ!」ユニグルはまだ頭を防御している「私が命懸けで竜の血モドキを飲んだのも、それを極めるためなのよ!」

 ご、拷問道……。

「私は楽しく拷問し合える運命の人を探してるの! なんか文句ある?」

 ああ、言っていたなそれ……。

「あるけれど……今はいいや」

「いいやってなによ!」

「今はこっちも忙しいんだ。マジでそろそろどっかいけって……」

「いや、だから、謝罪をね? 聞きなさいよって何度も言ってるでしょ?」

「俺の分はいらんよ。それより今まで苦しめてきた人々に対してしろ。じゃあな、さっさと消えろ」

「……あんたさぁ、そういう態度ってないんじゃない? それ、結構ひどいと思うわよ……?」

「お、お前に言われたくねーよ!」

「私はそういうこと言いませーん!」

 こいつ、いちいち煩わしいな……!

「ああわかったわかった、じゃあ聞いてやるからさっさと済ませろよ」

 しっかし、こいつが謝罪ねぇ……。その割に反省の念がまるで見えないがな……。

 ……いや、もしかして、こいつなりに縋っているつもりだとか……? 俺に助けを求めるほど切羽詰まっているが、素直に言えないのでこんな面倒なことになっている……?

 相変わらず嫌らしい気配だが、敵意そのものは意外と薄いしな……。少なくとも俺を殺す気はないようだ。

「えーと、その……ごめんね?」

 ユニグルは小首を傾げてみせる……。

「あ、ああ……」

「本当、悪かったと……思っているのよ?」

 ……そして、何やら小刻みに震え始める。

「罪悪感に押し潰されそうなの……」

「そ、そう……か?」

「ごめんなさい!」ユニグルが頭を下げた!「すっごく反省してます! 許して下さい!」

「い、いや、そういうことは俺じゃなく……」

 その時! すごい速さでユニグルが急接近! 俺の両手を取り、顔を近付けてくるっ……!

「ごめんなさい、許してくれますか?」

 ユ、ユニグルの瞳が潤んでいる……。

「ごめんなさい、許してくれないのですか?」

 瞳が近付いてくる……。

「許してくれるとしたら、ごめんなさい、どこまで許してくれますか?」

 ……こ、これは? なんだ、何かおかしいような……?

「ごめんなさい、ごめんなさい、許してくれますよね?」

 な、なんだ、おかしい……のか?

 頭が、もやもやしてくる……。

「許してくれるのでしょう? そうですよね?」

 おかしい……いや、おかしくない? こいつは……反省している? いや、待て、何か変だ……! しかし……。

「許してくれますよね? なんでも許してくれますよね? どんなことでも許してくれますよね?」

 こ、これは……魔術なのでは……?

 しかし、ユニグルは反省をしているようだし……。

「どんなわがままも許してくれますよね? ずっとずっと私のために尽くしてくれますよね? 永遠に私のモノになってくれるのよね……? さあ、言って! 私を許すって……!」

 その時、ユニグルの顔が視界から消える……と共に、頭の霧も晴れていく……!

 ドアホグルはしゃがみ込んで悶え……その隣には黒エリ、拳を握っている。黒エリのゲンコツはかなり痛そうだな……。

「危うかったな」ワルドだ「先の謝罪は洗脳魔術の一種であろう」

「せ、洗脳だって……?」

「謝罪で種を蒔き、許しの言葉で芽吹くものと推測される。なんとも嫌らしい呪文にしたものだな」

 ああ、何かおかしいって思っていたんだ……! でも、だんだんと抗えなくなっていって……。

 それにしても、謝罪の言葉が呪文だって……? このドアホグル、なんて性悪な発想をしてやがるんだ……!

 俺はドアホグルの頬を掴んで、無理矢理立ち上がらせる!

「わいだだだだだだ! わにふんのよっ!」

「なんて奴だ!」そして両頬を強く引っ張る!「この性悪!」

「にゃめにゃふぁいよっ!」

 ドアホグルは俺の手から逃れて、素早く後退する! そして両頬をこすりながら俺を睨む!

「わ、私のブラック・アポロジーを見破るとは、いい仲間に恵まれたようね! 旗色が悪いし、今回はこれで勘弁してやるわ!」

 そして踵を返し、半壊したギャロップに乗り込んだ。ようやく帰る気になったか……。

「待ってなさい、次こそ私の奴隷にしてやるんだから! それにあんたもよく考えることね、自分にとって何が幸せかということを……!」

 それは少なくとも、お前の奴隷になることではないわな……。

 ギャロップはふらふらと浮き上がり……去るのかと思えばドアが開いた。そしてドアホグルが顔を出し、

「ばーか」

 そう言い残し、今度こそ飛び去っていった……。

 あっ……あいつうぅうう……!

「だから言ったろう、さっさと始末すればよかったのだ」黒エリはため息をつく「変に情けをかけると面倒なことになるぞ」

「だからって……どうやって相手にすればいいんだあんなの……」

「ふん、まあ、あんな調子では長生きもできまい。いざとなったら私がやってやる」

 う、うーん、できることなら何より反省してもらいたいんだが……。

「足止めを食ったな」ワルドだ「先を急ぐとしよう」

 そして俺たちはまた歩き始める……が、何だか疲れたなぁ……。また来るようなことを言っていたが、正直、もう勘弁して欲しいんだが……。

 そして日が傾き、風景がやや赤みを帯びてきた。さて、そろそろ野営の準備をしないとな……。

「よし、じゃあ久しぶりに例の樹木に泊まるとしようか。アリャ、頼んだ」

「ウホホーイ!」

 アリャは素早く樹木に上り、周囲を見回し、降りてくる。

「ムコー、アッタ」

 そしてアリャを先頭に十数分歩くと、あの竜血樹モドキに辿り着いた。

「……しかし、この人数じゃあ、いささか狭くないかな?」

「あなたのバックパックは」伍長だ「広げると小型のテントにもなります。それを内部空間の上部に吊るし、二段構造にしましょう」

 ……へえ、そんなこともできるのか。

「じゃあ、そうしようか。ところで、今日の進捗はどうだい?」

「まあまあですね。明日中には到着できると思います」

「そうか、それはよかった」

 そして俺たちは食事の準備を始める。メニューはいつもの通り鍋だ。新しく入手したそれには透明の蓋が付いていて、伝熱効果が高く、汚れも付着し辛い優れものらしい。

「さて、それじゃあ……役割分担をしようか。エリは鍋に水を溜めておいてくれ。俺とアリャ、黒エリは狩り、伍長はテントなどの準備、他のみんなは薪になりそうな枝とかを集めたり、周囲の警戒を頼むよ」

 みんなは頷き、そして俺は狩りに出る。

「アリャはまず、山菜やキノコとかを採ってくれ。俺たちじゃあ良し悪しの見分けが付かないからな」

「ワカッタ!」

「よし、俺たちは肉の担当だ。まずは俺が気配を探る」

「ああ、任せた」

 そして俺は気配を探る……。

 なるほど……近くにやや大きめの気配がある……気がするな。頭上から感じるので鳥だろう。

 俺たちは慎重に進み、そして……思ったよりでかいな、背丈が一メートル近くはあるぞ……。

 上から下へ色濃くなっていく灰色っぽい羽毛、そして白く長いくちばしを持っている。

「あれはどんな鳥なんだ……?」

「戦力は未知数だが……やるしかあるまい」

「ああ、じゃあ……同時に光線で攻撃をしよう」

「了解」

 そして俺たちは身構え……た時、なぜか黒エリがくしゃみをした……。

「おおい、なんでこんな時に……!」

 ……そして案の定、鳥に気付かれた! そして羽を広げる、するとそこには真っ赤な目玉のような模様、なんかおっかないんだけれど!

「おお、なんかやばそうだぞ!」

「ともかく仕留めろ!」

 俺たちは光線を撃つ……と、鳥は敏捷に動き、俺の光線を羽の目で受け止めたっ? そして目の模様が光る!

「やばいっ!」

 俺たちは木陰に隠れる、幾本もの光が辺りに降り注がれたっ!

「あっぶねぇ、なんだあの羽は!」

 光線が効かないならシューターだ! 俺は木陰より身を乗り出して構え、そして撃つ! すると鳥はひらりと躱した……。

「当たらないか!」

「待て、光線を受け止めたのはなぜだ? 見てからではさすがに躱せないはず、銃口より射線を読んだのでは。ということは、奴は銃がどういうものか知っているということだ」

「正面からじゃ当たらないってか」

「反応を見せたのはお前の銃のみだ。私の光線も当たらなかったが、お前の光線を受けるために動いた拍子でたまたま当たらなかった可能性が高い。つまり、私の攻撃には反応しないはず」

「いまので覚えたんじゃないか?」

「どうかな、試してみよう」

 そして黒エリは木陰から向こう側を見やり、ため息をついた……。

「……どうした?」

「いない……」

 ま、まあ、そりゃあそうだわな……。鳥はよく逃げるもんだし……。

「気を取り直して次へいこう……」

 そしてまた気配を辿ると……見付けた、かなりでかい獣だ……。黒い毛で覆われ、背骨のラインが一層フサフサしている。蹲って微動だにしていないが、寝ているのか……?

「ありゃなんだ? 熊か……?」

「肉にするにも多過ぎるな。もう少し小さい獲物にしよう」

 うーん、小さい獣の気配は掴み難いんだよなぁ……。そしてまた気配を探ること数分、近くにそれらしいのが、いそうだな……?

「うーん、左手の方、だな……」

 そして気配の方へ向かうと……うっわ! なんか、ゲジゲジのでっかい奴が、木の幹にへばりついてるぅうう……!

 これまた一メートルはあるだろう胴体からは無数の長い足が飛び出して……あわわ、見てるだけで背筋に悪寒が走るぜ……!

「あれは……美味らしい……」

 黒エリがとんでもないことを言い出した……!

「な、何を言い出すんだよおい……!」

「いや、誰も食べるとは言っていないだろう……」黒エリは二の腕を摩りながら言った「そういう情報があるというだけのことだ……」

「どこ筋だよその情報……」

「ボイジルだ……」

 またあいつかぁ……! 気味の悪い話にいちいち絡んでくるなぁ……!

「あんなものを持って帰って不評を買わんわけもない……。やめておこう……」

「……当たり前だろう」

 ……と、その時、ゲジゲジが動き出したっ? しかも、ここっ、こっちに来るぅうううっ……?

 俺たちは悲鳴を上げながら走り出すっ……! 振り返ると確かに追って来てるぅうううううっ……!

 しっかも速い、黒エリも速い!

「まっ、待ってくれぇええっ……!」

「くっ、横に逸れろ!」

 黒エリの手の平より光線が幾度も放たれる! するとゲジゲジのいっぱいある足がいっぱい飛んで、なんかすごく気色の悪いことになっているが……お陰で追跡が止んだようだ……!

「あああ、危なかったぁ……!」

 大した敵ではなかったはずだが、恐怖心が勝って慌てちゃったな……。そういう意味では強敵なのか……?

「……闇雲に動いてしまったな」黒エリはうなる「あまり離れると気配が辿れなくなるのではないか? 一旦、皆のところまで戻ろう」

「ああ、そうしようか……」

 そしてみんなのところに戻ると、既にアリャが肉を捌いていた……。兎っぽい獣が数匹、量としては充分だろう……。

 俺と黒エリは互いに顔を見やり、ため息をついた……。

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