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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
71/149

外なる世界の規範

 他の軍人に二人の居場所を尋ねると、食堂にいるとの話だ、案内されて赴くと、長テーブルが並ぶ一室へ、その片隅に二人が向かい合って腰掛けていた。両者の前にはカップが置いてある。

 二人に近付くと、伍長は俺たちを見やる。

「どうも」

「あー……何の話をしているんだい……?」

「人の定義について談議をしていました。どうぞ」伍長は着席を促す「いま、お茶を持ってきますね」

 そして彼女は立ち上がり、食堂の片隅にあるポットらしき機械の前に立ち、お茶を淹れ始めた。黒エリがエリの隣に腰掛け、俺は伍長の席の隣に落ち着く。

「……先の話の続きかい?」

「はい」エリは頷く「先ほどは余計な口を挟むまいと黙っていましたが、実のところ興味がありまして……」

「いやあ、そんな遠慮はいいよ。それより俺たちこそお邪魔じゃなかったかい……?」

「いいえ、むしろ大歓迎です」エリは微笑む「それにしても、やや特異に思える人間観ですね……」

「そうなんだ、俺もそこが気になってね」

「そうでもないかもしれんぞ」黒エリだ「悪の概念を基軸とした人間の定義は、考えてみれば当然のことなのかもしれん。なぜなら、もし人の世に悪などなく、みな平穏に微笑んでいられるのなら、自身が人かどうかなんてどうでもよいことだろうからな」

 なるほど、自身が人に値するか否かを重視する、しなくてはならない時は、常々問題を抱えている場合に違いない……。

「その通りです」

 伍長は俺と黒エリの前にカップを置き、着席する。

「漠然とした悪の気配に怯えたとき、人という概念にはっきりとした形を求めるのが我々の常です。しかし人という概念はもともと胡乱なもの……。そこに確たる証明を求めればこそ、人は立ち籠める悪の霧に翻弄されてしまうことでしょう。その事態を解消するには、むしろ人という概念をこそ、霧のように飛散させねばなりません。そしてそのためには悪を形づくり、その所在を明確にする必要があるのです」

 エリは頷き「悪の形成と所在の認知……。つまりは、犯罪として認識するということですね?」

「そうです」

「先の議論で、あなたは悪の断罪を確認と表現しました。つまりは投獄にもそういった意味合いがあるということです。ですが、投獄とは隔離、それは流刑と同種の行為ではないのですか?」

「違います。流刑とはつまり病巣の切除ですが、我々の社会では犯罪者を切り捨てるものとは認識していません。それはむしろ抑留の意味合いを持ち、社会よりの隔離というよりは、外界へ赴く機会の剥奪なのです。監獄はそれを実現するための施設と言えるでしょう」

「なるほど、まさに流刑の逆、ですね……」

「そうして罪状に応じた刑罰を正常に与え、その悪の所在を明確にします。そうすることによって、市民は人権を担保されていることに確信を得て安堵し、人の概念は軟化することでしょう」

「犯罪者は絶対に逃さないというわけか」

「はい。科学捜査を駆使し、どこまでも追い詰めます」

「ほう?」黒エリだ「外界へ逃亡した場合はどうなるのだ?」

「逃亡犯の情報は各都市においても共有されていますので、他の都市に逃げ込んだとしても追跡ないし逮捕されることでしょう。また、それ以外の土地にいる場合は、特別高等警察官が追跡することになります。その際、連れ戻すことが困難な場合はその場にて処刑されることとなります」

 処刑……。

「ですが……」エリだ「外界は自由世界のはずです。ならばこそ、法的拘束力がなくなってしまうのでは……?」

「その点においては外界と利害が一致していると解釈されています。前提として犯罪者が我々の社会における、ある種の基盤となっているのなら、外界における犯罪者の自由活動は外界にいる者たちに対する侵害行為に該当する恐れがあり、それを阻止しようと動くことは即ち、外界に対する敬意と配慮に相当するものと考えられているからです」

「ということはだ」黒エリだ「その特別高等警察とやらは、犯罪者を追跡するという名分においてなら、外界へギマの法を押し付けることも可能という訳だな」

「その逆の可能性を考慮すればこそ、平等ではあると思いますが……」伍長は呟くように言った「それに、外界への干渉を厳しく制限するとなると、この談議自体が成り立たない恐れが……」

「その追及は、いささか疑心暗鬼に過ぎるのではないですか?」エリだ「それにニューさんが仰る通り、この機会そのものを揺さぶるような主張は、現状においては不適当かと思います」

 確かに……。どうにも俺たちを受け入れた背景には、悪さをする、そしてその場合に処罰できる可能性ってやつが関係しているようだしな……。そして、あるいはだが、俺たちの受け入れは、ギマの社会の強度を試す一例として記録される……なんて強かなことすらやっていそうだ……。

 しかし黒エリにとってはエリの叱咤こそが痛恨だったようで、

「そ、そうだな……。申し訳ない……」と、気落ちしてしまった……。

「私は……ギマの法を信じています」伍長だ「私はホー様に誓いました、常に人らしくあると……」

「はい、それはもう……高潔な御意志だと思います」

「ですが、外界に言及すればこそ、ここまでの話では限界があることに気付くでしょう。これまではあくまで社会という内なる世界における人間の定義、そのお話をしてきました。ですが、これより歩む外界ではどうでしょう? 人としての担保は一体どこに?」

 確かに……。外界は自由な……野生の世界だ。弱者たる俺にとっては身を守るだけで精一杯、仲間に頼ってここまで来たからこそ、余計なことを考えなくてもよかったが……。俺にもし、無敵の力があったら? やろうと思えばなんでもできる、できてしまう……。咎める者もいないままに……。

「私には力があるそうです、恐ろしい力が……。私は気配を断つこと、身を隠すこと、忍び寄ることに極めて優れているらしく……ホー様いわく、殺せない人間はいないかもしれない、そうです……」

 な、なんだって……?

「私は殺しの異才……。ゆえに、放埓に生きれば外道にもなりかねない……。だからこそ、私には外界における確たる規範が必要なのです……」

「それは信仰……なのですね?」

「そうです、私は何より神における人でいたいと思っています。要たる主こそ私を人間にして下さるのです。そしてその道を照らして下さったホー様には……深く、深く感謝をしています……」

 なるほど……。信仰にはこういった効能もあるのか……。

「じゃあ、あれだな、要たる主というか、白い教会の教えは随分と道徳的なんだろうな」

「はい、まったくその通りです」

 おおっと伍長が微笑んだ……。表情の動かない凛とした人だが、こうなると可愛らしいな……。

 そしてエリもさぞかし優しく微笑んでいると思ったが……どうしてだろう、彼女の表情はやや、強張っている……。

「エ、エリ……?」

「……教典から学べることは多々ありましょう。ですが、そのすべてが絶対的なる規範と断言できるはずもなく……」

「はい、理解しています、言葉は解釈によっていかようにもその色を変えてしまう……。ホー様はそうおっしゃっていました」

 そう、そうだな、さすがホーさん、賢明な教えだ。

「ですが、私の教典にはまだまだ解釈の空白があります。私は是非ともこれをホー様と埋めてゆきたく思っていますが、あの方は何かと多忙な様子でして……あまりお邪魔をするのも気が引けますし……」

 そうか……。あの人も何かと苦労しているんだろうしな……。

「解釈だけならば私だけでも多様に行えるのですが、私は出来の悪い教え子でして、ホー様に訂正を受けること数多……。ゆえに、正直に申し上げまして、外界に出る際には常に一抹の不安を抱えているのです……」

 そうか、教典の解釈も複雑なんだろうし、なんでもありの世界でどの様に生きれば人であると言えるのか、それはなるほど難解な問題だろう……。

「じゃあ、エリに相談をしたらどうだい? 彼女も白い教会に……」

「はい、是非とも一緒に解釈を進めましょう……!」

 おおっと? なんだ、妙にやる気だな……? 黒エリも目を大きくしている……。

「そうですか? ならばお言葉に甘えて……と、そうでした」伍長は立ち上がる「急ぎの書類仕事が残っていまして、そろそろ失礼しなくてはなりません。また食事時にでも、お会いしましょう」

「はい、お話できてよかったです」

「こちらこそ」

 二人は互いに軽くお辞儀をし、そうして伍長は去っていった……。

 そしてエリはゆっくり息を吐く……。

「……気が付きましたか?」エリだ「思い過ごしならば良いのですが……」

 なに? なんだ……?

「なにか、あるのかい?」

 エリはうなり「いいえ、なんでもありません……」

「なんだ? まさか奴らの一味である可能性が……?」

「いえまさか、そういうことではありません。ただ……」

 しかし次ぐ言葉はなく……まあ、あくまで憶測なのだろう、いま話す必要はないという判断なのかもしれない。

 そして、そのままのんびりお茶を嗜んでいると……何やらがたいのいい軍属が二人、こちらにやってきた。そしてぐもぐもと何やら話し掛けてくる……。

「……すまないが、その言葉はわからないんだ」

 すると軍属の片割れが口元を上げ、ナイフを取り出す! そして手をテーブルに置き……開いた指の間に刃を立て、間から間へ、高速で移動させ始めた……!

 ……って、すごいにはすごいが、それに何の意味が……? 一芸を披露したかったのか、挑発めいた度胸試しなのか……。

「ふん、下らん」

 黒エリはナイフを寄越せと手を差し出し……軍属は顔を見合わせる。そして不敵な笑みを浮かべて、手渡した……。

 おいおい、大丈夫かよ……と心配する必要はないな、黒エリならしくじっても指が飛んだりしないだろうし。

 そして案の定だ、軍属を超える早業を見せ、したり顔でナイフをテーブルに滑らせた。彼らはナイフを仕舞い、愛想笑いをすると、すごすごと帰っていく……。

 何だったんだ一体……? まあ、俺たちは物珍しいんだろうし、ちょっかいをかけたかっただけなんだろうけれど……。

「……あまり、歓迎をされていないのでしょうね。席を離れましょうか?」

「どうかな、単なる好奇心かもしれないよ」

「ああいう手合いに遠慮をしてはかえって増長の機会を与えることになる。毅然としていた方がいい」

「そうだな。それに伍長の話からして、異分子たる俺たちが曲がりなりにもギマの社会に入り込むことは、相応に意義があることのはずなんだ」

 そして引き続き茶を嗜んでいると、ワルドたちがやってきた……が、アージェルの姿はないようだな。

「あれ、アージェルは?」

 フェリクスは肩を竦め、

「なにか考え事してるようで、声を掛けても生返事しか返ってこないんだ」

 あいつも気難しいところがあるからなぁ……。

「まあ、集団行動はあまり好きじゃなさそうだしな、時には一人にしておくのもいいさ……」

「オチャ、ノミタイ」

 お茶は……食堂の端にあるあの機械で淹れるんだよな……。俺はアリャを連れ、機械の前に立つ。それは形状からしてやはりポットのようだ。

「ホイ」

 カップはすぐ隣に重なって置いてあり、アリャが手渡してくれた。さて、これを台に置いて……頭頂部分にあるよく目立つボタンを押せば……おおっと、やはりお茶が出てきたぞ!

「ホホー、マダ、アツイ」

 カップからは、はっきりと湯気が立っている。なるほど、おそらく保温機能があるんだろうな。俺はみんなの分も淹れ、やはり近くにあったトレーに乗せ、運んでいく。

「ホー、レク、ウマイ」

 上手い? ああ、家で給仕の仕事もしていたからな。優雅に手早く運ぶには相応に馴れが必要なんだ。

 俺は調子に乗って、上客に出すようにみんなの前にカップを差し出していく。すると黒エリが笑み、

「……なかなか、やるではないか」

 俺はかしこまったお辞儀をし、

「お褒めに預かり光栄です、お嬢様」

「う、うむ……」

 おおっと、妙に嬉しそうだなぁこいつ……。

「なんだか、高級そうな感じがしますね……」

 エリも可愛らしくはにかむ……。

「レク、エライ!」

 おお、女性陣には好評のようだ。嫌々ながらも練習した甲斐を、こんなところで感じるとは……いやはや、人生わからんもんだ……。あの家じゃあ、このくらい当たり前のことだったし、母さん以外は誰も褒めてくれなかったしな……。

 そして夕食どきが近付くと、すごく香ばしい、美味そうな匂いがしてきた……! 奥のテーブルに巨大な鍋が複数、軍属がどんどん食堂にやってきて、並び始める……。どうやら自分で取りに行く必要があるみたいだな。

 俺たちも並ぶと、みな、こちらをチラチラと見てくる。さすがに煩わしいが、目立ってしまうのは仕方のないことだな。

 そして食事は……山盛りのライスに……? 茶色いソースをかけているな……? あれがこの香ばしい匂いの正体か。

 俺たちも前にならってトレーを手にし、料理とスプーンを貰う。そして元いた席に戻った。

 そして食堂はあっという間に軍属でいっぱいになり、各々食べ始めている。さあてこの料理、いかほどの味か……。

「ウオオー……! チョーウメー……!」

 アリャが目をひんむいて食っている……! まじかよ、そんなに美味いのか……! 俺は恐る恐る口にする……。

「こ、これは……!」

 スパイシーな風味と肉野菜のコクが口の中に広がる……! ライスもふっくらとしていて、旨みが尋常ではない……! そしてその両者が渾然一体となれば……!

 おおお、これは確かに、マジで美味いなっ……! 美味過ぎる……!

 エリは目を見開き硬直し、黒エリは幾度も頷いている。ワルドはすでに皿の半分を平らげており、フェリクスはいつになく真剣な面持ちだ……! そしていつの間にかアージェルの姿が、黙々と口に運んでいる……。

「こ、これは一体……!」

「カリーです」いつの間にか伍長がいる「カリーライスです」

「カリー……ライス……」

「古来より不動の人気を誇る料理です。唯一の問題は食べ過ぎてしまうこと……」

 た、確かに、これは食べ過ぎても仕方がない……! ワルドなんかもう新しいの持ってきてるし……。というかマスクをずらしてるせいで、黒い霧がちょっと漏れてる……。

「チョーウメー!」

「で、でも、いささか、辛くないかい……?」

 何を言っているんだ、このスパイシーさがいいんじゃないか! さて、俺もお代わりしてこようっと……!

 ……そして食事が終わり、俺たちは多幸感に包まれつつ、部屋に戻る……。そしてみなベッドに腰掛け、感嘆の溜息を吐く……。

「……美味かった、な」

 俺がそう呟くと、どっと場が湧き上がった!

「まさかあんな料理があるとはな!」黒エリは興奮気味に言った「一体、どんな香辛料を使っているのか……」

「つ、作り方が知りたいですね……!」

「でも、ちょっと辛かったかなー……」

「チョー、ウマカッタ!」

「あの香り、以前に嗅いだことがある……」ワルドだ「獣肉に振りかけ、臭みを取るに重宝するとの話であった。あの時も大変な芳しさに驚いたものだが、あそこまで上等な料理に昇華できるとは……」

「カリーライスは」アージェルだ「地下でよく食べてた」

「地下でか? へええ……」

「スゲー、ウマカッタ!」

「でも、ちょっと辛いと思うなー……」

 その夜はカリーライスの話で盛り上がり、気付いたらもう消灯の時間だ。明日も早いようだし、そろそろ寝るか……。

 ……というか、腹一杯で動きたくない……。


 そして翌朝、出発の準備をしていると伍長が姿を現した。軍服ではない、白っぽいシンプルな長袖と、深緑のズボン、そして黒いブーツ……。腰回りに革のポーチ、腰や足元には大型のナイフが、肩より腹部にかけてホルスター、拳銃を装備している。なんだか、かっこいい感じだな。

「お早うございます。準備は完了しましたか?」

「ああ、そろそろバッチリになる予定だ」

「では、準備ができ次第、出発しましょう」

「あの、ギャロップとかは……」

「使用は許可されません。移動は徒歩です」

 まあ、そうだろうな……。

 いや、いかんね、便利に慣れてしまうと甘えが顔を出してしまって……。

「目的地まではおおよそ一日半から二日ほどかかると思われます。急ぎましょう。それとこれを」

 伍長は俺に小さなカードを手渡してきた。何やら矢印が点灯している……。

「それはコンパスです。矢印の方向に進めば辿り着けるでしょう。もし、私とはぐれた場合に役立つはずです」

「ああ……ありがとう」

 そして俺たちは入ってきたゲートをくぐり、森へと出る。さあて、ここからはまた気を引き締めていかないとな……。

「よし、行くか」

 俺たちは森の中へ……。獣に出会わなければいいが……。

 それにしても、ハイロードより森の中の方が安全、か……。実際どうなんだろうな? 森の中で襲ってきた獣って……ええっと……?

 そしてエリに聞いてみようと振り返った時、ふと気付く。伍長がいない……?

「あれっ? 伍長は?」

「はい」

 あれ、いるみたいだな? 声が確かに……。

「あの、伍長……?」

「はい、ここです」

 おっと、側にいるじゃないか……! それに、伍長は小さな本を開いている……。あれはもしや、教典なのか……?

「ええっと、伍長?」

「はい」

「どこかに行っていた?」

「いいえ、ずっとお側に」

「そ、そうかい……」

 そして歩き出すが……やはりだ、伍長の姿がない……。

 こいつは……すごいな、こんなことがあるのか……。気配はおろか、姿すら視認できなくなるとは……。

 すぐにスィンマンを思い出すが、これは奴より上等な技能ではないだろうか。側にいるはずなのに、マジで微塵も気配を感じ取れないからな……。俺はワルドに近付き、小声で話す……。

「……伍長の居場所、わかるかい?」

「……わからん。そこにいるならば反響があるはずなのだが……」

「不安ですか?」おっと……伍長の声だ「お気持ちはわかります。ここは獣の王国、何が起こってもおかしくはない」

「いやいや、そういうことじゃない。ただ……あまりに凄くてね」

「そうですか。ですが、疑いは必要ですよ。なんせここは自由の世界、何があっても不思議ではないのですから」

 そ、それはそうかもしれないが……。

 しかし、彼女はこの獣の王国においても神において人なんだ、危険なんかないだろう。

 ……ないよな? 教典には何が書かれていたか、いまとなっては忘れたが……たぶん、徳のあることが書かれているんだろう。それを規範として外界で生きたとて、危険な生き方にはならないはず……。

 だが、その解釈次第では万が一もあり得る……? もしや、エリが言い淀んでいたのは……。

「ニューさん」エリだ「教典に関する解釈においては、私も長年尽くしてきました」

「本当ですか」

 おっと伍長が姿を現した……。

「はい。よろしければ、早速、お話を始めませんか?」

「ええ、是非とも」

 そうして二人は本を中心に仲良く並んで歩くが……これはなんだ、単なる会話なのか? それとも懸念ゆえの行動なのか……?

 おおっと、なんだか怖くなってきたぞ……!

「ところでニューさん」エリだ「入隊はご自分の意思ですか? それとも、ホー様のお言付けでしょうか?」

「はい、ホー様がお薦めになられたので……。確かに、都市の安定を守ることは大切なことです」

「都市を出てよかったのですか?」

「私の任務は外来人の脅威判定です。ゆえに外界の調査は通常任務です」

「……私たちは脅威であると?」

「私はそれを調査する名目で同行しているのです。ですが、この調査が無事に済めば、僅かにですが、ギマの社会においての評価が上昇するでしょう。あるいは、名誉市民候補に選ばれるかもしれません」

 名誉市民……? そんな概念があるのか。まあ、候補だとしても、選ばれて悪いことはないな。

 ……そして二人は話をしながら道を進んで行く。こうして見る限りでは問題などないように見えるが……。

「ふん、あれは少々、近付き過ぎではないのか?」

 まあ、黒エリからすれは既に問題ありに見えているようだが……。

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