グリギマ放送局
この地はありとあらゆるネタの宝庫だ。
特に冒険者が獣と戦い、打ち倒し、やがて遺物を手にするリアリティーショーは他のなにものにも代え難い。
俺たちはその様子をつぶさに見詰め、視聴者の望むドラマに仕立て上げる。それが矜持であり、使命であり……ただの仕事でもある。
ところで今日は最近人気のレク一行がやってきた。なるほど、普通ではない道のりを経てきただけあり、面白い連中だ。
はてさて、彼らはどこまで生き残れるのか……。せいぜい長生きをしてほしいものだ、視聴率のためにもね……。
◇
森を歩くこと数時間、幾度かの獣の襲来を退け、辿り着いた目的地は……ただの岩壁? 行き止まりじゃあないか……。
「ここだ」探検家は岩壁を叩く「この辺りに隠された入り口があるはずだ」
「ここにぃ?」
「内部は居住区になっているらしい」
そして岩壁を入念に調べ始めるが、なんの発見もないまま、いたずらに時が過ぎていく……。
「おい? 本当にここなのか?」
「ああ、間違いない、はずだ……。どこかに入り口が……」
『無駄だ』
そのとき、どこからか声が……!
『部外者は入れない。立ち去れ』
どうやら場所に間違いはなかったようだが……どのみちだめな感じか……?
「オレだ、グリコンだよ、以前に会っただろ?」
『グリコン……? ああ、オルツ・グリコンだな。何の用だ、いいネタでも仕入れたのか?』
「いや、休息したい」
『それだけか? ならだめだ、俺たちは慈善屋じゃない』
やはりだめか……。
「仕方ない、他を当たろうぜ……」
『いや、待て、お前は……!』
お前は……? なんだっていうんだ……?
すると突然、岩壁が開いたっ……! そしてギマの男が複数、現れる……!
「あんた、レクだろ?」
だしぬけになんだ? なんで名指し……ってあれか、俺たちの冒険を記録して楽しんでいるとかいう……。
「そう、だが……」
「へえ、これは珍客だ!」
ギマの男たちはぐもぐも頷く……。みな無精髭を生やし、身なりもなんだかだらしない……。中にはパンツ一丁の奴までいるぞ……。
「俺はカ・ボゥー。このグリギマ放送局の責任者だ」
「ほうそう……?」
「あー……なんだ、この地で起こっている事件のあれこれを記録してあちこちに送ってるわけだな。グゥーさんと知り合いなんだろ、聞いてないか?」
「ああ……俺たちの冒険を見ているんだろう?」
「そうそう。で、あんたらのそれは人気があってな、ともかく会えて嬉しいよ」
カ・ボゥーは右手を差し出してきたので、俺は握手に応じる……。
「で、ここに来たのは休息のためだって? いいよ、使ってくれて」
「おっ、そうか? ありがとう」
「グリコン、今回もいいネタ引っ張ってきたな」
「なんだよ、見捨てようとしたくせに……」
「それに、背負っているのは、まさかアテマタか?」
「ああ、オレの相棒だが……」
「なんだよー、それを先に言えよなぁ!」
カ・ボゥーは探検家の肩をバシバシと叩く……。
「そうと決まればさっさと入ってくれ。あんまり外にいると獣がやってくる」
そうして俺たちは岩壁の中へ……。重厚なドアは自動的に閉じ、その中にもまたドアが……。そしてそれが開くと……なんか、変な臭いがするな……? というか、生活臭がすごい……!
中央には乱雑に固まった金属の机が、そしてその上には植木鉢に咲いてる花みたいな機械、それに本やら、食いかけの料理やら、衣服やら雑貨やら何やらがごちゃごちゃと乗っており、その周囲には椅子が乱雑に置かれ、その近くにはソファやテーブルがあるが、やはりその周囲はゴミなんだかそうでないんだかよくわからないものだらけだ……。
「ここは典型的な男所帯なんだ、汚いのは勘弁してくれよ」
でもいささか臭くないかぁ……? こいつはちょっと掃除をしないと、外よりましとは言えなくなって……って、なんだ、エリがふらふらと前に出た……。
「これは……よくありません……。お片づけをさせて下さい……」
「おっ、掃除してくれるの……?」
まあ、世話になるんだ、そのくらいはした方がいい……というか、掃除をした方が俺たちの居心地もよくなるに違いない。俺も手伝うとするか……って、エリがかつてないほど俊敏な動きを見せる! 食い残しは一箇所に集め、皿を綺麗に重ねる、衣服もほろって迅速に畳んでは積み重ね、雑貨類も素早く分別し、やはり一箇所に集める……!
わかるぞ、あの手さばきの凄さが……! 俺もあの家でそこそこ鍛えられたクチだが、彼女はモノが違う……!
エリはふと振り返り、
「あの、箒はありませんか?」
「箒……はないな。掃除機ならあるよ」
カ・ボゥーが奥から妙な機械を持ち出してきた。
「それは……?」
「掃除機だ。ごみを吸引する機械さ」
「そんな便利なものがあるのですか」
「ああ、ここを押せば動き始める。ずいぶん使っていないが、まあ動くだろう……」
そして機械をいじると、それは静かに稼働し始め……おおっ、床の塵があっという間に吸い込まれて消えた……! エリは目を大きくし、瞳がきらきらと輝き始める……!
「すっ、すごい!」
そして男より借りると、流星のごとく床を掃除し始めるっ……!
「すごいすごい!」
あ、あんなに嬉しそうな、そして機敏に動くエリは見たことがないぞ……! 俺と黒エリは顔を見合わせる……。
「これはなんのスイッチですか?」
おっと、掃除機の先端が変形して鋭利な形になったな。
「ああ、なるほど、これで細かいところまで……!」
そして今度は隅々まで手を入れ始める……が、ブボッと嫌な音がした? どうにも誤って袋を吸引してしまったようだ。
「はっ、らら、袋を……!」
慌てて引き抜こうとして袋がのびーる……。
「ああっ、袋が……!」
「スイッチを切ればいいよ」
「ああ! そ、そうですね!」
エリは一旦スイッチを切る。すると袋は掃除機より離れた……。
「ああ、申し訳ありません、袋が伸びてしまいました……」
「いいよそんなの、いくらでもあるし」カ・ボゥーは笑う「それより、上の階も汚いんだ、頼めるかな……?」
「はい、それはいいですが……」
エリにばかり任せるのもよくないな、俺だってあの家で家事をこなしてきた身、掃除はお手の物だ!
……それにしても、臭いなぁ……! この臭いは主に放置された食い物から発せられているようだ、俺は残ったそれらを一つの袋に固め……ってこの袋、薄っぺらくて透明なわりに妙に頑丈だな……! こんな生ゴミ集めに使っていいものなのか?
「この袋……すごいな。掃除に使っちゃっていいのかい?」
背の高いギマの男が腹を掻きながら、
「ああ、外じゃ滅多に見ないでしょ。でもこっちじゃ使い捨てのものだし、どんどん使っていいよ」
「そんなに手軽なものなのかい? じゃあ、少しわけてくれないかな?」
「いいよいいよ、いくらでも」
まじかよ、これ地味にすごい遺物だろう、ラッキーだぜ……! 俺は意気揚々と掃除をし、ふと周りを見回すと……綺麗になっているのはエリや俺の周囲ばかりだな……。ワルドは椅子に座って何もしていないし、フェリクスはギマの男たちと談笑しているし、黒エリは嫌そうにがらくたを箱に放り投げているだけだし、アリャに至っては機械を勝手にいじって遊んでいる……。そしてもちろん、ギマの連中もまるで戦力にならない。探検家なんか寝ているし……!
ああくそ、頼れるのはエリと己の腕だけか……!
……そして小一時間ほど懸命に掃除をし、室内は見違えるほどきれいになった……! もう嫌な臭いもしないぞ……!
「うわあ、ありがとう! こんなにきれいになるなんて!」
ギマたちはぐもぐもと歓声を上げている……。ああ、けっこう疲れたが、その甲斐はあったか……。
「はい、喜んで頂けてなによりです」
エリは太陽のように明るく微笑んだ……! なんて素敵な笑顔だ! 俺は思わず見とれた……のも束の間、エリの顔にふっと影が差す……!
「ですが、このように便利なお掃除道具がありながら、どうしてあのような有様になるのですか……?」
痛いところを突かれたのか、ギマの男たちはぐもっ……と吃る。
「……い、いや、以前はね、家事をしてくれるロボットがいたんだけどね、いつの間にかどっかに行っちゃって……」
「……愛想を尽かされたのですか?」
「えっ、いや、でも、あいつは……自意識があるわけじゃないし……」
エリがじとっと見詰め、ギマの男たちは後退していく……。
「ま、まあ待てよエリ、男所帯ならそんなもんだって、なあ?」
ギマたちはぐもっと頷き、
「そっ、そうそう、きょ、今日はたまたま汚かっただけで……」
「なるほど」エリは妖しく微笑む「たまたま、だったのですね」
ううっ、なんだか今日のエリ、怖い……!
「ま、まあまあ、許してやろう」黒エリだ「男などこんなものだ、私の父も肩書きこそ立派だったが、家事など一切にできなかったよ」
「オトコ、カジシナイ、ヤバイ」
お、お前らはエリと同じグループにいないだろ……! エリと俺で九割はやってたんだぞ……と、そこでワルドが口を開いた。
「さて、それはともかく、休息がてら、今後のことを話し合うとしよう」
すごいぞワルド、堂々と話を横にやった! 一瞬、エリの瞳が怖い光を見せたが、
「……レクさんだけはちゃんとお掃除してましたものね」と呟いて許してくれそうな雰囲気だ。だけってところで黒エリがびくりと肩を震わせたが、自業自得だろうよ……。
そして俺たちはソファに腰掛け、話を始める……ところで、なにを思ったのか黒エリがボゥーに尋ねて、お茶を煎れ始めた……! 俺が訝しげに視線を送ると、カップを持って小首を傾げてみせる……! なんだその良妻ぶった仕草は、逆に怖いぞ……!
「ま、まずは戦法の話をしよう……」俺は黒エリから目を逸らす「これからの戦い、エリの防御魔術や治癒魔術はかなり重要と考える。ゆえに、エリを優先的に守らなくてはならない」
エリはうなり、
「先ほどは……」
「いや、いい。さっきは完全に配置ミスだ、君のせいではない。むしろ俺たちが謝らなくてはならないくらいだ、すまない……」
どこかの悪妻は大きく頷き、
「その通り、猛省しなければな……!」
そしてみなに茶を配る……って、もうできたのか? この香りはギマ茶だな、やはり芳しい……。でも、黒エリのお淑やかな仕草はなんなんだ、エリへの点数稼ぎか?
「……だ、だから、エリには必ず誰かが付いている必要がある」
「私だな」
「そうだ、そしてワルドもな。セイントバードは優れた防御魔術だが、面での攻撃とは相性が悪い。そこにライトウォールを張れるワルドが傍にいてくれると頼もしいんだ」
「うむ」
「エリには常に両者のどちらかが付いてほしい。どちらが付くかは敵との相性を見てくれ」
「ワタシハ?」
「アリャは積極的に敵をかく乱する役割かな。そして隙あらば死角よりグサリ、だ。ニリャタムの戦力も期待している」
「ワカッタ!」
「僕はー?」
フェリクスか……。
「真面目な話、俺とお前は弱い。無茶をしないようにしよう」
「そ、それだけ……?」
「いまはな。お前は技能の習得に長けるんだろう? つまりは大器晩成ってやつだ。そこに期待しているが、いまは己の力量を過信するな。奴らは危険だ、甘く見ていると簡単に死ぬぞ」
「そ、そう、だね……」
厳しいかもしれないが……奴らはあまりに手強い。楽観は即、死に繋がるからな……。
「そして俺だが、主に索敵を担当する。そして電撃系とは相性がいいので、そういう手合いには積極的に前に出るよ」
みんなは頷く。
「よし、ではこれからは……」
「あの、私は?」
そうだ、アージェルもいたな……。掃除のときに姿が見えなかったが、どこにいたんだ……?
「そもそも、お前はどうしたいんだ? 個別に目的があるなら同行する必要はないんだぞ。見ての通り、俺たちはなにかと敵を抱えているからな」
「私は……」アージェルはどもる「別に、することもないし……」
「そうか……。しかし、なんとなくで同行して、自らを危険に晒すなんて、賢いことじゃないだろう?」
「べ、別に、そんないい加減な気持ちで……」
「俺はお前が後悔して死ぬことを怖れているんだ」
アージェルは俺を見つめ……そして目を伏せた……。
「……転生できるらしいし、後悔なんか……」
……ああ、そういう考えなのか。
「……そうか。まあ、でも、今一度、よく考えてくれ……」俺は咳払いし「では、これからどうする? カタヴァンクラーの要塞に戻るかい?」
「それは危険だな」黒エリだ「最悪の状態としては砦が壊滅し、奴らが陣取っているケースがあり得る。不用意に接近し、強襲を受ける事態だけは避けねばならん」
「そうだな……。しかし、バックパックがないと今後の旅に支障が出るぞ。このままじゃあ鍋もつくれない」
「うん?」カ・ボゥーだ「あんたら鍋がほしいの?」
「ああ……。生命線のバックパックをなくしてね……」
「そんなの、いくらでも調達できるぞ」
「ほ、本当か……?」
「ここにはないけどな、近隣の里に行けばいい」
「ギマの里……」
「あんたらがグゥーさんの知り合いなら、それなりに手を尽くしてくれる奴らはいるさ」
「そうか、では、そこまで案内してくれるか?」
「それは無理だな。場所を教えるから、徒歩で行ってもらう」
「そうか……」
「悪いな、俺たちの紹介で里まで連れていくことまではできないんだ。そして、たまたま辿り着いたってことにしてほしい」
「いいんだ、わかるよ」
「そしてもちろん、グゥーさんの息がかかったひとに世話になるんだぞ」
「ああ、忠告をありがとう」
「よし、準備が整ったら言ってくれ。あと、別にここに何日いてくれても構わないからな」
「うん、世話になるよ」
「……というか、じょ、上階も掃除してほしい、しな……」
カ・ボゥーは恐る恐るエリを見やるが、
「わかりました」おっと、エリが朗らかに頷いた「ですが、今度はみんなでやりましょう……ね?」
今度の「ね?」はちょっと怖い……。みな一斉に頷く……。
「でもまあ、残りは後日にしよう。食事なんかはご馳走するからさ、ゆっくりしてくれ」
そうして、のんびりしている内に室内が黄昏ていく……。窓はないが、外の景色が壁に映っているんだ。そのせいか、息苦しさは感じない。
俺は好奇心より、機器の名称やその機能など、一通りの説明を求める。するとギマたちは快く説明をしてくれた。もちろんすぐに把握できたわけではないが……なんとなく把握できてきたぞ……。
「これでその、ドキュメンタリー番組とやらをつくっているのか」
「まあ、あんたたちにとっては、あまりいい気はしないかもしれないが……」
「でも、そういった番組があるから、あんたらは俺たちを助けてくれた」
「そうでもある。お互い持ちつ持たれつ……ってやつだな」
そこでふと、カ・ボゥーは真剣な面持ちになる……。
「だがな、けっきょくのところ、俺たちはあんたらの四苦八苦を眺めて愉しんでいるだけなのさ。それを踏まえての好意だということを忘れてはいけない」
「そう、か……」
「あんたらをここに招いたのも、人気のある冒険家だからさ」
カ・ボゥーは肩を竦める。
「冷淡かもしれないがこんなもんだ。俺たちは情に訴えかけるが、情にほだされはしない。それが矜持なんだ」
矜持、か……。
そしてカ・ボゥーは他の冒険者たちの記録映像を見せてくれた……。獣に襲われ懸命に戦っている姿や、必死に逃げ続けている様子……なかには食い千切られている凄惨な場面もあった……。
「……過激だな」
「もちろん、凄惨に過ぎるシーンを丸ごと放送したりはしないさ。あと、排泄や水浴びなどのシーンもカットする。そういうのを覗き見るのは悪趣味だからな」
「そうか……」
そのときふと、思う……。自主的にそういう場面をカットするということは、彼らは俺たちにある種の敬意を抱いていると言えるのではないか……?
そしてさらに思う、この関係が逆ならどうだろう? 俺たちは豚に似た彼らを晒し者にしないという確証はあるだろうか……?
「まあ、ここはローカル局だし、そんな大した番組はつくらないけどな。獣の生態とか、そういうものの方が多い」
「獣の生態、か……」
「おっ、いい匂いがするな」
本当だ、いい匂いがしてくるな……。見るとエリ二人が料理をしている。
「料理までしてくれるのか! 野郎のクソ料理ばっかりで飽き飽きしてたんだ!」ボゥーは立ち上がる「あのひといいよなぁ、視聴者にも人気があるんだぜ!」
「そ、そうなのか……?」
「まあ、がんばれよ!」
「なっ、なにをっ……?」
それからややして、料理ができたらしい。パンみたいなもちもちした何かと、肉と野菜の炒め物、そして魚のスープもある。
「ウホホ、サカナー!」
アリャはさっそく魚のスープを口に含む。
「チョーウメー!」
そういや、さっき獲った魚は潜水艇に置き去りだったな。奴らの襲来があったし、仕方なかったが……。
そうして腹が膨れたところで日も暮れた。エリ二人は風呂を掃除すると言って姿を消し、ワルドは腕を組んでなにやら思案している様子、フェリクスはまたも談笑しているし、アリャはソファに座ってうとうとしている……。俺も背もたれを枕に、だらしなくソファに沈んでいる……。
あーあ、今日も疲れたなぁ……。でも、ここなら疲れも取れやすいだろう……と思っていたとき、ふとワルドが口を開いた。
「レク……」
「なんだい?」
「ここでこうして食事や寝床にありつけておるのも、そもそも君があのとき、交流を深めたからであるな……」
……いきなりなんだ? あのときって……グラトニー7と相対したときか……?
「我々冒険者は、ここを邪悪なる魔物の巣窟と思い込み、そして多くの敵をつくっては敗れ去ってきた。しかしどうだ、ほんの少し、関わりを見直すだけで、食事や寝床はおろか、風呂にまで……」
「……俺は、ここに来て浅いし、よくわからないよ……」
「ある種の敗北感……。決して悪しき意味ではなく、私はそれを君に抱いている……」
「ワ、ワルド……?」
「我々は愚かに過ぎたのだろう……。敵意は、虚無しか生まんのだろうな……」
俺は思わず、上半身を起こす……。
「どうしたんだ、ワルド……?」
しかし返答はなく……ならば、俺も追及をしまい……。
俺は再び、ソファに沈む……。
……ワルドはいささか、俺を過大評価している。俺は……そういうのではない、ただ……魔物と呼ばれる存在が……それほど邪悪に思えないだけなんだ……。
そう、故郷にて現れたあのバックマン、あれらは凶暴だったが、悪意はなかった……。あくまで獣の延長、恐ろしいが、悪意はなかった……。
……本当に怖いのは人間だ、蒐集者、そしてエジーネ……。
蒐集者はどんな思いで人を殺めるのだろう、エジーネはどんな思いで母さんを……。
いや、エジーネの件についてはまだ確証は得られない……。
しかし、本当にそうだったら……? 俺はどうするのだろう……。
どうするの、だろう……。