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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
58/149

雷雲は笑う

 敵は三人に、人体実験をされた人たちか……こちらは水槽の数からして、ざっと十人はいるな……!

「アリャ、ニリャタムは?」

「マダ、カカル。ムリスル、ヤバイ」

「そうか、では俺たち三人でやるしか……」

 そのとき視界の端に影、黄色い奴だっ!

「ちんたらしてんじゃねェッ!」

 機械の腕が飛んできたっ……? そして、腕を掴まれる!

「オラ一匹目ェッ!」

 衝撃っ……! 視界が白く……なり、下から何かがせり上がってくるっ……!

 そして気付いたときには……視界が斜めに、倒れている途中か……? そして奴が目前に、機械の腕、肘より下が……チェーンのようなもので繋がれている、そして手の方は既に……俺の腕より離れ……チェーンと共に、引き戻されている……。

 こ、これはケリオスをぶん殴ったときと同じ状態、奴の電撃で知覚が加速しているんだ……! そして、この滾り……! 怒りか衝動か、敵をぶっ潰したくなってくるっ……!

「うおおあっ!」

 俺は駆け、奴の脇腹に渾身の拳を打ち込むっ……! 異様に硬いが、このままぶっ飛ばすぜっ!

 奴の驚いた表情、そのまま壁まで吹っ飛び、激突……! だが、ここでのんびりはしていられねぇ……! 畳み掛けるぜっ!

「くたばれぃっ!」

 俺はシューターを連射する、奴は姿勢を崩しながらも機械の腕で弾きやがった、ならば接近戦で潰してやるぜっ!

「ぬォオオオッ!」

 奴は床を殴って浮き上がる、そして蹴りだ! だが、そんな大道芸、リキが入るかよ! 受け止め、そのまま足を掴み、床に叩き付けるっ……が、機械の腕で衝撃を吸収しやがった、そして体を捻って俺の腕から逃れ、着地しやがる……!

「てッ……テメェエエ……!」

 黄色の野郎は俺を睨む、そのとき水槽が破られた、中から裸の男女が、いや! 徐々に変質してゆく、まるでトカゲのように……!

 そして絶叫しながら黄色い野郎に飛び掛かった!

「アアッ? 邪魔だッ!」

 奴は機械の腕で実験体を返り討ちに、だが隙だらけだぜ!

「おおっ、吹っ飛べ!」

 渾身の正拳、しかし間一髪で躱される、と同時に腹部に打撃、膝蹴りか! だが、あんまり効かねぇなっ!

 お返しに肘打ちを顎に、奴はよろめいて膝を突く、そのツラを全力で蹴っ飛ばしてやるぜっ……と構えた瞬間、実験体が飛び掛かってきたっ! 鋭い爪だ、俺は飛び退いて躱す、眼前にはほとんどトカゲ、いや、ドラゴンなのか? ともかく爬虫類人間が牙を見せる!

 そして来るかっ……と思いきや、真横に吹っ飛ぶ、よく見えなかったがアリャの一撃だ!

 そして視界に黒コートの姿が、こちらに腕を突き出す、袖にちらりと機械が見える、先んじて躱す、銃弾らしきものが宙を切る!

「なに?」

 驚いている場合か、シューが近くにいるぜ! 剣が胴を狙う、しかし甲高い音、両断には至らないかっ……?

「ほう、固いな?」

 コートの男は飛び退き、置いた鞄を踏み付ける、すると開いて、二丁の拳銃が飛び出し、それを手にした……! そして切れたコートの隙間から見えるのは金属的な光沢のある腹筋……? だが、先の一閃で傷が付いている!

「ただの剣で私に傷を付けるとは聞きしに勝る腕前だ、グラトニー・ナイト」

「私が騎士だと?」シューは嗤う「私に守るべき主などいない。それに、腕前を語られるほど本気を出していないぞ」

「すぐにそうなるさ。剣が銃に及ぶはずもない」

 そして両者は睨み合いを……と、黄色の野郎が立ち上がったな。

「ようやく立ったのか、待ちくたびれたぜ」

「……ブッ潰れろァッ!」

 奴は跳んで機械の腕を振り上げる……が、遅いんだよっ! 超振動ナイフを構えたそのとき、右より気配、毛皮の女、突き出した左腕が変形し、銃になっているだとっ? そしてほぼ同時にアリャが飛び出す、しかし、弓だけを引いている……?

「よそ見してんじゃねェッ!」

 ちっ、カウンターは間に合わん、飛び退いて躱す、奴の腕が伸びてなぎ払うように迫ってくるのを伏せて避ける! 奴は腕を戻し、飛び退いた……! そして舌打ちをする。

「……おいジジイッ! 新型の腕を持ってこいッ!」

 奥に隠れていたらしい博士がひょいと顔を出し、

「わ、儂の管轄じゃないっ!」

「黙って持ってこいッ! ブッ殺すぞッ!」

「くぅっ……!」

 そして博士は部屋から出ていく……ところで実験体に襲われ、悲鳴とともに引き裂かれるっ……!

「チッ、使えねェー奴めッ!」

 奴は真っ向から疾走してくる、しかし今の俺からすれば動きがノロいぜ、機械の拳を躱し、腹を打ち上げるっ! そして畳み掛けの……!

「……ッキショウめがァッ!」

 顔に衝撃っ……! 蹴りでもくらった……と気付いたとき首に機械の腕がっ……! させるかよっ! 俺は肘と膝で腕を挟み潰さんと叩く! 破壊には至らないが、ひしゃげたぜ!

「アにやってんだァッ!」

 奴の左拳が無数に降ってくる、だが今の俺にはいまいち効かねぇなっ!

「うおおぁっ!」

 奴の顔面を打ち抜くっ! カウンターで入った……と思ったら頭突きで返してきやがった! そして奴は前傾姿勢に! そして吼えながらタックル、躱そうとするが一瞬遅い! 衝撃、吹っ飛ばされる……!

「ッブれろッ!」

 尻餅を突いた形、そこに機械の拳、避けられない、ならば攻勢に出る!

 超振動ナイフを取り出し、いなしながら拳を斬るっ……! 薬指から小指にかけて、拳の三分の一を斬り落としたっ!

「クソォあッ!」

 強引な裏拳に弾かれる、ナイフが手から離れちまった、そして奴の視線はそっちへ、隙ありっ!

 また顔面に拳を打ち込むっ! 奴は倒れる、そこに飛び掛かり、拳を振り下ろすが転がって逃げやがるっ! そして足払いを食らい今度は俺が倒れる……!

「ンどこそ死ねやッ!」

 しまった、機械の腕で首を掴まれる、まだ動くのか……!

 そして衝撃! 視界が真っ白に……!

 やばい……やばいぞ、さらに、力がせり上がってくるっ……! この力を肉体で発揮してはだめだ、そう直感する、別の形で外に放たなくては……!

 俺は……! 奴の体に手を当てる!

「う、嘘だろテメエ……!」

 力を解放! 稲光がっ……? 炸裂するっ! そして気付けば宙に浮いている、そして背中から墜落! くそ、奴はどうなった……?

 見ると遠くで倒れている、まったく動かない……。そして俺の体も……う、動かない……! 今の一撃の反動か、体を活性化し過ぎたか、ぜんぜんダメだ……!

「レクッ!」

 アリャが駆け寄ってくる……。

「お、おお……済まない、動けない……」

「ダイジョーブ、ワタシ、マモル!」

 アリャの視線を追うと、毛皮の女が姿勢を崩している、どうやら優勢か……? アリャは弓を引いているが……矢はない……。

「この……ガキ……!」

 お、女の顔左半分が剥がれ、中身が機械だっ……? どうにも、こいつらみんな体の一部が機械のようだな……!

「ブチノメス!」

 アリャが射った……と同時に水槽のガラスごと女が吹っ飛ぶ……! これは一体……? まるで空気を叩き付けたような……。

 そして女は動かず、シューは……何やら睨み合いを続けているな……。両者の周囲には実験体の死体が転がっている……。そして残った者たちも何やら苦しみ悶えている……。

「どうした、こないのか?」

 シューはひとつため息を吐き、

「ふん、では攻めやすくしてやろう」

 シューが構えを解くと、上半身の鎧が開き、それを脱ぎ捨てた……! そして金髪の髪を撫で、前髪を摘む。

「ついでに、剣もいらんか?」

 シューは剣をも捨てる……。おいおい、余裕にしたってそれは……。

「レクと言ったな」

 シューが俺を見やった刹那、銃撃! しかしシューには当たっていない……!

「そんな活性では体に負担を掛けるばかりだぞ。活性は腕前のバロメータだ。魔術師ならば誰でも出来ることだが、上手くやれる者は多くないのだな。……そうだな、楽器の演奏に近いか、音を出すだけならば誰にでも出来るが、美しき旋律を奏でるには相応に……」

 シューが黒コートの方を向き、構える……!

「弛まぬ努力が必要だ」

 コートの男は後退する……。当然だ、さっきのは必殺のタイミングだったはず、なぜ当たらなかったのか理解出来ないのだろう……。

「ひとつ、奥義を教えてやろう。いいか、脳より発せられる電気信号より、アイテール伝播の方が遥かに自由で、速いのだ。つまり知覚に頼った動作では遅過ぎるのだよ」

 こ、ここで講釈かよ……! この男、余裕にしたって……。

「そこでアイテール伝播を利用する訳だが、これにはコードが役に立つ。コードには全方位より複雑怪奇に伝播するアイテール情報を処理できるタイプがあり、これによって気配を察知したり、他者の行動を高い精度で予測することが出来るようになるのだ」

「なにっ……?」

 高度な予測、それこそ予知に繋がる力ではないか……?

「分かるか?」シューは黒コートを指差す「彼奴の動きなど筒抜けだということだ、特に直線的な攻撃などはな」

 それで容易く銃弾をも躱せたのか……!

「じゃあ……魔術の使用に使うコードは……」

「魔術は二種類に大別することが出来る。アイテールの伝播を起点とした受動的なものと、意思を起点とした能動的なもの、貴様が言いたいそれはアイテールに干渉し、ほんの短時間、構造体より力を得る技能だな」

「構造体……?」

「そうだ、アイテールのな」

 構造体と言えば……。

「具象魔術……」

「うむ、まあ、可視化できるほどに密度を高めるか否かの違いはあれども、本質はみな同じだな」

 まとめると、ワルドがよく使っているあれは能動的な魔術で、俺のは受動的なそれ、そして蒐集者の予知も……奴の言う通り、超越的な力という訳ではなく、アイテールにおける、一種の達人的な力なのか……?

 いや、そんなことより敵を前に長々と講釈を垂れるこの事態は何だ……? 敵も攻めてこない、つまりシューの優位は揺るがないということ、アイテールの扱い方において、これほどまでの戦力差が生まれるとは……。

「……待つのも飽いたな、来ないのならこちらからゆくぞ」

 そのとき、黒コートが銃を連射しながら出口に向けて疾走、そのまま姿を消した……!

「ふっ、退いたか、賢明だな」シューは俺を見やり「それにしても今日はついていない……。やはりあの竜とやり合うべきだったか……」

 ドラゴンの存在に気付いていたのか……!

 しかし手を出さなかったということは……やはり容易な相手ではないと踏んだからだろうか……?

「して、立てるのか?」

「ちょっと、厳しいかな……」

 奴の攻撃もそうだが、活性の後遺症も大きい……。多少は慣れたと思っていたが……。

「ともかく、ここでの用事は済んだと見える。後は……」

 と、そのとき……見知った気配を感じる、こいつはワルドたちに違いない……! ややして、数人の人影が現れる。

「ああーっ!」スクラトが頓狂な声を上げた「何だよ、もう終わっちまったのかよぉー!」

「もたもたしているからだ」

 シューは鎧を着て、剣を鞘に戻す。

「むっ、レク、無事か!」

 ワルドが駆け寄ってくる。

「ああ……何とかね」

「むう、遅れて済まんな、宿の方では情報に乏しく、馬屋の方から向かった方が早かろうとな」

「ああ……」

「それにしてもここは一体……?」

「話は後だ、人質を集めて脱出しよう……。そして、手を貸してくれ……」

 俺はワルドに肩を貸してもらい、人質たちを先導していく。そして入ってきた金属のドアの前に来るが、そこの周囲にはワルドたちが倒したのだろう、複数の警備兵が倒れていた。

「用は済んだようだな」

 おっと、遺物研究の博士だ、いつの間に……。

「まあ、いつかはこうなるだろうと思っていたよ」

「ここは……元老院の管轄なのかい……?」

「さあてな、どこの何かは分からん。私は研究さえ出来ればいいのでね」

「そう、か……。そしてワイヤー博士だが……」

 その最期を話すと、意外にも博士は笑った……。

「あいつらしい。そうなると思っていたよ。私もそう長くはあるまい」

「いいのかい? 今なら……」

「けっきょく好きなことをやってきただけの人生だからな、死に様に文句を付ける資格もあるまい」

「けっ、だべってる場合じゃねぇーんだろ?」

 不機嫌なスクラトが急かしてくる。まあ、確かに急いだ方がいいわな……。

「じゃあ、幸運を祈るよ、爺さん」

「オスカー・フラットだ」

「俺はレクテリオル・ローミューン……」

「達者でな、聖戦士よ」

 聖戦士、レクテリオル、シン・ガード……。それはただの呼び名だが、何とも言えない余韻を残しつつ、俺たちは地下より脱出する……。

 そして馬屋へ戻るが、室内は元のままだ。幸運にも、まだ何者もここを訪れていないらしいな。

「さて……みんなはどうする?」

 捕らえられていた人々は互いに目を合わせる。

「ううむ、ここに置いてもいけぬし、カタヴァンクラーに保護を頼む以外にあるまいな」

「そうだな、そうした方がいいか」

「俺は告発するぜ」一人の男が前に出る「ここの地下にあんなものが……今すぐに暴露しなくては!」

「気持ちは分かるが、黒幕は国家以上の存在かもしれないんだ。今は一旦、逃げた方がいい」

 男は何か言いたそうだったが、ここが依然として敵地に変わりないと諭すと、何とか分かってくれたようだ……。

「よし、みんな分散してここから出よう……。あの悪行を目の当たりにした今、コソコソする必要もないかもしれないが……なるべく目立たない方がいいと判断する」

 といっても白い服の集団だ、どう足掻いても目立つだろうが……。

「そうだな、念には念を、だ」ディーヴォは首肯する「バラけて移動し、集合場所は橋にするか」

「よし、それでいこう……!」

 そして俺たちは幾つかのグループに分かれて外壁を通り、橋で合流した後、ギャロップの元へ……。

「こんなにいるのか!」ソマ・ウーウは仰け反る「これは加勢が必要だな。待ってろ、まずは彼女らからだ」

 やはり優先されるのはカタヴァンクラーの身内か……。彼らはソマ・ウーウの姿に驚いているようだ。外界に住んでいたんだろうし、ウォルは珍しいだろうからな。そして幾人かの男女を乗車した。

「それにしても、よくやってくれた!」ソマ・ウーウは俺の肩を叩く「正式な礼は後ほど、今は彼女らだ」

「ああ、行ってくれ!」

 ギャロップは飛び立ち、戻ってくるまで俺たちは魔物の襲来に対処する。そしてしばらく後、今度は二台のギャロップがやってきた。一台はグゥーのだ。

「よお、無事だったな……って」グゥーはうなる「手酷くやられたみたいだな……」

「ああ……。これでも大分マシになったんだがな……」

 一応、ワルドが治癒の魔術をかけてはくれたものの、さすがにエリと同じようにとはいかない。それに彼を余計に消耗させたくもない、治療はほどほどで止めている。

「まあいいや、さっさと乗ってくれ!」

 二台のギャロップが飛び立つ。そして戻ってきたぞ、カタヴァンクラーの拠点だ。でも、そこにはやっぱりあの巨人がいるんだなぁ……。

「オ・ヴーが引き付けてくれるそうだから、降りたらさっさと中に入れよ!」

 ギャロップが降り立ち……って、凄まじい戦いだな、巨人の光線が幾本も奔り、そのすべてをオ・ヴーは捻じ曲げて回避している……!

「おい、見とれてる場合かよ! さっさと入ろうぜ!」

 おおっとそうだった、俺たちは塔屋の中に入る……!

 ああ、何とか無事……って訳でもないが、ともかく生きて戻れたぜ……! 朝に出て、今は夕方くらいか。エリはまだ回復していないかもな……。

「おい、それとな」グゥーだ「蒐集者の奴、死んだらしいぞ」

「えっ……?」

 なにぃ……? 蒐集者が……死んだ? いや、殺した?

「誰を殺したって……?」

「いや、奴が死んだんだよ! どうにも仲違いした上に、獣に食われちまったらしい」

 け、獣に食われた……?

 あ、あいつがぁ……?

 しっ……信じられねぇええええ……!

「あのカーディナルが?」ディーヴォだ「ヨデルの件か……?」

「いやいや、あいつはそう簡単に死なんさ……!」

 そう、これがきっと奴が言っていた面白いことだろう……!

 ああ、面白いなカーディナル、ほんと笑えるよ……!

 俺たちは階段を降り……そしてひとまずディーヴォたちと別れ、エリの元へ……。ドアを叩くと黒エリだ、目を大きくする。

「おっ……おお、帰ってきたか……!」

「楽勝だったよ」

「……そうは見えんがな、無事で何よりだ!」

 そう言って腕をベシンと叩くが……! すっげぇ痛いんだけれどぉ……!

「うむ、みな無事のようだな。しかしアリャ、どこに行っていた、心配したぞ?」

「シュギョー! チョー、ツヨクナッタ!」

「そうか、そうだレク、朗報があるぞ」

「奴がくたばった、か?」

「あ、ああ……そうだが……」

「残念だが……それはない、な……。期待が裏切られる覚悟はしておいた方がいい……」

 黒エリはうなる……。

「それはともかく、エリは?」

 奥を見やるとまだ寝ている、な……。

「寝たり起きたりだな。しかし順調に回復はしている」

「そうか! フェリクスは?」

「さあな、そこら辺にいるだろう……と、そうだ、ファンタズマクリスタルは入手したのか?」

「いいや、人質の方を助けてきた」

「なに?」

 俺は手短に説明する。

「宿の地下に……だと? にわかには信じがたいな。しかし、そうなってくると奴らは……」

 そのとき、ドアがノックされる……。出るとグゥーにジューだ。

「ここにいたか、ちょっとやばいことになってるぜ」

「奴らのことだな、どうなった?」

「人質が解放……って、その傷大丈夫っ?」

「あ、ああ、大丈夫、大丈夫……! ……で、なんだって?」

「……人質がね、解放されたと聞くや否や、今度は元老院のネタを開示しようって言い始めたらしいの」ジューは肩を竦める「となればまだ生かす意味もあるよね」

「でもよ、今度は聖騎士団が立ち阻む訳だ、その情報が事実なら口外させる訳にはいかないってな」

「なにぃ? だが……立場上、そうするかもな」

「そして睨み合いをしているの、もうずっと!」

「次から次へと……。しかし、俺たちじゃどうしようもないぜ……?」

「そうなんだよな、ボスも義理からカタヴァンクラー側に立ってはいるが、俺たちは別に元老院と確執がある訳でもないからな。ボスの意思がギマの総意と誤解されかねない状況である以上、そうそうは動けないはずだぜ」

「聖騎士団と衝突してまでカタヴァンクラーは元老院の情報を知りたがっているのか?」

「ああ、そうみたいだ。それに皇帝派もカタヴァンクラーの肩を持つ気配だな」

「混迷してきているな……」

「しかも、獣の襲来も続いていてね」ジューはため息を吐く「まったく、嫌になるよ」

「まだやってきているのか……」

「そうそう、やばいんだ、懸念が当たった、アーマードラゴンがやって来ているらしい!」

 またドラゴンか……!

「でもね、巨人が邪魔で大砲が組み立てられないの」

「うーん……!」

「あちこち困るよな、マジでどうする?」

 ど、どうするかってなぁ……!

「ちょっと、状況をよく見てみないと分からないな……」

「じゃあ、ひとまず地下にでも行ってみるか? あ、それはそうとお前の仲間のフェリクスな、あいつふらふら色んな奴に気安く話し掛けてるし、なんか危なっかしいぞ……」

 あいつは人懐っこいというか何というか……。まあ、それがいいところでもあると思うけれどなぁ……。

「よし……じゃあワルド、とりあえず行ってみようか……?」

「うむ」

「ワタシ、ヤスムー」

 アリャは大きな欠伸をする。

「そうだな、そうした方がいい、ゆっくりしてな。そして黒エリ、留守番ばかりで悪いが、頼むぜ」

 黒エリは唸り、

「雲行きが怪しくなったらすぐに戻ってこい。ここは面倒事が多いしな、あるいは離脱も視野に入れておこう」

「そう、だな……」

 そして女性陣を残し、俺とワルドは地下へ……。

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