訪問者たち
ドアを開けるとグゥーにスゥーだ。グゥーは何やら巨大な紙袋を担いでおり、スゥーは大きな金属の円柱を抱いている。
「よう、お二人さん」
「暇だから遊びにきたんだ」
「そうなの。スパイごっこして回ろうと思ったけれど、いまいちユーモアが通じなさそうな人たちばっかりだし、けっきょくここへね」
スパイごっこ……。俺は二人を部屋に招き入れる。
「まあ、テキトーに座ってくれよ」
グゥーは紙袋をテーブルに置き、それを開いてみせた。すると中から香ばしい匂い!
「バーストコーンだぜ、さっきキューにつくってもらったんだ」
「バースト?」
「ある品種のコーンを乾燥させて炒ると、破裂してこんなになっちゃうのよ」
「へええ」
勧められて口に含むとこれは美味い! 軽くて香ばしいぞ!
「美味しいでしょう? 白いのは塩、茶色いのはカラメル、黒っぽいのはスパイス、緑色のはハーブだったかな。あとこれお茶ね」
「世の中には色んなものがあるんだなぁ……。そうだ、エリたちも呼んでこよう」
「ああ、僕が行くよー。用も足したいしねー」
フェリクスが腰を上げて部屋を後にした。スゥーが筒の蓋を開け、中から簡単なカップを複数取り出し、そこへ茶を注ぐ。すると紅茶のような芳しい香り……だけじゃなく柑橘や香草の側面、樹木のような面影もあるかな、飲む前から美味の予感がする。
「いい香りだね」
「ロポモコ草のお茶よ。私たちがよく飲むギマ茶の一種」
「ギマ茶……」
そして俺たちは席につき、差し出された茶をさっそく口に含む。嗅いだときに感じた複数のニュアンスが混然となり、思わず笑みがこぼれた。
「おお、これは美味いね……!」
「うむ、逸品であるな……!」
「でしょう? 私も大好きなの」
ギマ茶かぁ、やるもんだなぁ……。
ほっと一息、身体中から疲れが抜けていくようだ……。
グゥーやスゥーもほんわかした顔になっている。
「……いやぁ、先日は割と先の話をしたつもりだったんだけど……いきなりおっ始まったなぁ」
「ああ……ほんとだよ。あれはいったい何なんだ、爆弾か?」
「うん、けっこう大型のやつだぜ、どっから手に入れたのやら」
「あやつらは何者なのだ?」
「うーん、あまり見覚えがないんだよなぁ」
「栄光の騎士もか?」
「うん、その名はたまに聞くけど見たのは初めてだ。以前、仲間に危害を加えたからな、シューが殺しに行ったんだけど、異様に頑丈で倒せなかったんだってさ」
ああ、そういや殺し方を知りたがっていたな……。
「まあ、これはただの勘だけど、奴らはブラッドワーカーじゃないかと……」
「……ブラッドワーカー?」
「あれ、知らないの? 外じゃわりと有名だよ、そう呼ばれている猟奇殺人グループがいるって」
うーん、そういえば、ケリオスがそんな名前を口にしたような……?
「ワルド、知ってる?」
「ううむ、聞き及んだことがあるような……」
「暗黒城の連中と関係があるのかな?」
「あるとか聞いたな。もう下っ端しか残ってないらしいけど」
暗黒城といえばケリオスだが、あいつは皇帝派だったんだよな……。しかし裏教典派でもあり、猟奇的な趣向もあった……。
「下っ端といえば、お主らの組織体系はどうなっておるのだ?」
「組織っていうほどかっちりしてないよ。俺たちはコンサルタントだから」
コンサル……?
「なにそれ?」
「ようはいろんな組織や個人に助言を与える立場ってこと」
「へえ?」
「そうねぇ、それほど強い上下関係はないわよね」
「そうなのか、君らはギマ族の幹部みたいな感じだと思ってたよ」
「まあ、一目置かれる存在ではあると思うわよ。私はいわば女優でモデル、あなたたちの言葉で言うところの『野ばら』っていう、芸術グループの代表なの」
「女優、芸術……?」俺は首を傾げる「武闘派じゃないのか……?」
「違うわよぉ」スゥーは手を振る「外界は危険だから戦闘力が必要なのはそうだけど、専門家じゃないもの」
「そうなの……?」
「うーん、こいつの役割は説明が難しいんだよな」グゥーは唸る「言うなれば、ギマに有利な状況をつくったり、そう仕向ける役割なんだよ。女優は副業だな」
「はああ? 逆なんだけど! 女優が本業で、それでも溢れてくる才能をこっちに使ってあげてるだけなんだけどっ!」
なんだかよく分からないが、戦略的なあれこれを担当しているのか……?
「で、俺だが、俺は技術系集団の……そうだな、お前たちの言葉で表現するならプレイメイカーとでも名乗ろうか、それのリーダーなんだ。いろいろ調べて知識を蓄え、必要不要に関わらず色んなものをつくる。まあその名の通り遊びが主だけどな」
「……じゃあ、いつも俺たちを襲ってくるあいつらは何なんだ? その、俺たちもいくらか殺めてしまったが……」
「いろいろだよ。ギマ信仰の強い者はもちろん食うために襲いかかるし、それに偽装して山賊みたいに冒険者の追い剥ぎを楽しんでる奴らもいるし、中には殺しそのものを目的としている奴らもいる。まあ、本質がどうであれ、襲い掛かってくるなら撃退も当然のことさ。襲われたのに殺しちゃだめなんて法は外界にはないし、そもそも俺だってお前を半殺しにしただろ?」
「あれは半分じゃあないだろう……」
「前にも言ったが、ぜんぶ計算してやったんだ。なんせ俺だぜ?」
俺だぜ? とか言われてもさぁ……。
「事実、死にかけて魔術の才を伸ばす奴らは同胞にも多いんだ。そしてそういう奴らの多くが胸部に大きなダメージを受けている」
「胸部、心臓とか……?」
「いいや、むしろ骨だと俺は思う。内臓ばかりをやられた者たちに対し、肋骨を折っただけのケースの方が発現確率が高いんだよ。そして頭蓋骨はさらに高く、確率は低いが手足のみでもあり得る」
「じゃあ、なんで俺を半殺しにしたんだよ」
「骨折だけでは発現確率は低いんだよ。骨折しつつ、半死半生になればけっこう高い確率で魔術がモノにできる。これは人体実験で結果が出ているし、信憑性は高いぜ」
「人体実験だとぉ……?」
「もちろん有志を募ってさ、強制はしていない。死人も出てないぜ、ちゃんと準備をしてやったからな。まあ、お前をやったのは気まぐれなんだけど、その気まぐれが起こったことには必然性がある。ギマ以外でも同様に発現するか知りたかったんだな」
「おいおい、どのみち実験なんじゃねーかっ」
「まあまあ、悪かったよ。でも、友好的に提案したところで納得はしないだろ?」
「まあ、そうだし……助かった面もあるけどよぉ……」
「だったらいいじゃん! そしてだ、ここからが面白いんだよ」
「……なんだ?」
「魔術師は骨の構成が常人とは異なるんだ」
「骨の構成が……」
「ぱっと見じゃ分からないけどな、顕微鏡で拡大すると、ただの傷とは思えない線が入っているんだ。これは手に顕著で、おそらく手から発動する魔術師が多いせいだと思う」
「むう、骨が魔術の要であると……?」
「ああ、骨が関係しているのはほぼ間違いないと思う。お前たちが欲しがっているリザレクションだって骨が必要だろう?」
「なにっ、骨が、そうなのかっ?」
「らしいとは聞いてるぜ」
「そういや、土葬文化があるところって言っていたな? つまりは骨を焼いてしまったらだめなんだ!」
「昔、おばさまが言ってたわ、骨は魂の宿り木だって……。何か関係があるのかしら?」
魂の宿り木か……。
「ううむ、糞尿の成分が異なるとは聞いていたがな……」
「ああ、それも聞くな」
骨、か……。魔術の門はあくまで比喩、実際に機能しているのは骨だった……?
そしてふと、蒐集者を思い出す。奴は機械の体、魔術は使えないのだろうか……?
何だかよく分からんが、ともかくすごい情報だ。特にリザレクションの条件は重要だな、後でエリに伝えないと……!
「グゥーさ、お前すげぇなあ!」
「おっ、そう? ふふん、そうさ俺はすごいんだよ!」
グゥーは気をよくしたのか、踏ん反り返る。
「でも、魔術はからっきしなのよねー」
「ふん、俺には文明の利器があるからいいんだよ!」
「スゥーは使えるのかい?」
「ええ、ギマだし、変身魔術が得意よ」
ワルドが身を乗り出し、
「まことか?」
「ええ!」
「え、なに、変身する魔術なんてあるの?」
「うむ、実在が疑われるほど高度な魔術だが……」
「それはあれだ、こいつが凄いんじゃなく、そもそもギマ族は変身魔術に高い適性を持つんだよ」
「なによ、ヘソ曲げちゃって!」
「変身って、何に変身するの?」
「え? そ、それはあれよ、秘密よ」
「こいつ、鋼鉄人間になれるらしいんだ……った!」
グゥーの腕をスゥーがベシンと叩く。というか、鋼鉄人間……?
「まあ、あれよ……ドラゴンレディーはあれ自体が強化装備なんだけれど、どっちかっていうと変身した姿を隠すためにあるのよ……」
道理で圧倒していたと思ったぜ……! 装備品の差というより、変身の効果がより大きかったのか……!
「だって仕方ないでしょ? 可愛くないんだもん!」
スゥーはわっと泣き出す! 男の俺からしたらむしろ格好よさそうなもんだが、女性のスゥーからしたら大問題らしい……。
「まあ、それはどうでもいいとして……」
「よくない!」
「ワルドだっけ? あんたのそれも変身魔術に近い系統じゃないかな?」
「よくない!」
「うるさいよ! ミスティダークだっけ? それ、消えないの?」
「うむ……」
「だったら、発生源はあんた自身かもしれないな」
スゥーは立ち上がり、くるくる回って俺に抱きついてくる……。何だか芝居がかっているなぁ……。
「むう、他者の体質を変化させる魔術……というわけかね?」
「そんな感じだろうな。強烈な魔術だぜ、消えない煙幕なんて、ぞっとする話だ」
「うむ……邪悪なる魔女の仕業よ」
邪悪、か……。個人的には無邪気さが怖いって印象だがな……と、そこにまたドアをノックする音。
フェリクスじゃないな、ノックする必要がないしな……ってスゥーがドアの方へ向かった!
「……合言葉は?」
いや、そんなのないから! 当然、向こうの反応もない……。
「あなたね、トーマス……決着を付けましょう!」
トーマスって誰だよ!
慌ててドアを開けるとフィンの戦士が二人、身構えている!
「むっ……? いまの声はなんだ……?」
「ああ、いや、演劇……?」
二人は訝しげな顔をする……。ほらぁ、変なことするから訳の分からん空気になっちゃったじゃないか……!
やってきたのは先ほど話しかけてきた女と……静かな瞳の壮年の男だ。男は髭をたくわえ、髪は顎辺りまである。どちらも緑を基軸としたなりをしており、得物は手にしていない。
「少し、いいかな?」
男は柔らかい物腰だ。そういや、頼み事があるとかなんとか言っていたな。無下にもし辛いので、とりあえず招き入れる。
すると当然驚くわな、グラトニー7の二人がいるんだもん……。
「セルフィンじゃん」
「は、初めまして……。私はソリュウト・アトラフィン」
「……私はヨニケラ・セリダフィン」
俺たちも名乗り返すが……スゥーは壁際でポーズを取る……。
「私はアンナ。アンナ・ニールセン……」
誰だよ! 拳銃を持つのやめてくれ!
「そ、それで、何の話だい……?」
フィンの戦士はグゥーたちを見やる。
「何だ、俺たちがいちゃいけないのか?」
「いや、そのようなことはないが……」
「……彼らの前で話せないような要件なら、こちらとしてもお断りだぜ」
フィンたちはふと顔を見合わせるが……すぐに話し出す。
「……単刀直入に言えば、ある遺物探しを手伝って頂きたい」
「遺物か……」
「大巨人の復活はもちろん阻止するが、やはり力は欲しい。我々が置かれている状況を打破するためにも……」
「ああ……話は聞いている」
「我々には力が足りない、どうにかして遺物の力を借りたいのだ」
「しかし、なぜ俺たちに……? 同胞に助力を得られないのか?」
男は頷く。
「君たちでなければならないのだ」
「どういうことだ……?」
「地下に行ったことがあると聞いた」
「地下……! ああ、まあな……」
「我々も試みたが、侵入経路のすぐ側に蜂の巣があり近寄れないんだ」
マス・スティンガーズか……。
「ああ、あいつらはやばいよ」グゥーだ「数体なら大したことないけど、増えるほどに戦力が激増するんだ。数十匹集まれば中央の怪物クラスになる。巣の近くじゃそれ以上だ。まあ、ほとんど勝ち目はないわな」
まじかよ……! じゃあ、あのときかなりやばかったんだな……!
「どうにも、扉を開けることができたそうだが……」
「ああ……鍵となる人物とたまたま出会ってね」
「そうか、では、ぜひ紹介を……」
「難しいな」
おっとワルドだ。
「地下は極めて危険だ。底意地の悪い輩が支配しておるからな」
そうだ、声だけのあいつ……! それに、俺が舞い戻ったりしたらただでは済むまい……。
しかし、アージェルはどうしているんだろうか……。それはとても気になる……。
「しかも、機械兵士とマス・スティンガーズどもが戦争を始めおった。そして他の魔物たちも暴れ狂っておる。入ったとて無事には済むまいよ」
それもそうなんだよなぁ……。
「では、紹介だけでも。あなた方は入り口まででいい」
「むう、どうするかね?」
どうするか……。入り口くらいまでなら大丈夫かな……?
「面白いじゃん」グゥーがニヤリと笑む「俺も行こうかな」
フィンたちは当然、いい顔をしない。
「何だよ、いまは同胞だろ?」
「そうよ、私たちに見せられないなんて、何を隠しているのトーマス?」
まだやってるのか! トーマスもいい加減お困りの顔だぜ……? ワルドは腕を組み、
「うむ、では、皆でゆくかね」
「おお……いいのかい?」
「入り口までという条件ならばな。君も彼女のことが気になるであろう?」
「あ、ああ……そうだな」
「フランク、いけないわ。その女はスパイよ!」
俺もフランクになっちゃったよ……。
「でもよ、入れるとは限らない……というか、可能性は低いと思うよ。アージェルと会話できなければ話にならないし、できても入れてくれるとは限らない。彼女は遺物欲しさに侵入する輩が嫌いなんだ」
「そうか、しかし我々だけではどのみち不可能だ。試してみる価値はある」
「入り口までとはいえ、危険はゼロではない」ワルドだ「労力の見返りとして、入手した遺物は拝見させて貰うぞ」
「入り口までなら俺がひとっ飛びで送ってやるよ。その代わり、見付けた遺物を俺にも見せてくれよな」
やはり二人とも疑っているな。俺としても、疑惑は捨て切れない……。
「よし……みんなで行こうか」
「よしきた!」グゥーは手を叩く「地下は俺も行ったことないんだ!」
「ターゲットは逃さない……」
こいつらは半ばお遊び気分だな……。というか、地下まで行くつもりか?
「では了解を得たということで、後にまた……」
「あ、待ってくれ」
二人は去る足を止め、振り返る。
「クラタムと……ゾシアムだったか、彼らはどうする?」
「無論、倒さねばな」
「こ、殺すわけじゃあないんだよな?」
「運が良ければ」
なに……? よりにもよって彼らからそんな言葉が出るなんて……。
「当然だろう、彼らは最大の禁忌に手を出したのだ」
「しかし、フィンの総意と聞いたが……?」
「それは違う。長老たちの意見は二つに分かれ、未だ答えは出ていない。おそらく強硬派が独断にて彼らにそう吹き込み、命じたのだろう」
「じゃあ、騙されているってことじゃないか!」
「そうとも解釈できる。しかし長老たちの言葉には違いなく、戦士である彼らは従うより他ないのだ」
「そんなのってありかよ……!」
「彼らは戦士としての使命を全うしようとしている。それは崇高な意志だ。だからこそ、我々も対立する戦士として、彼らに応えねばならない」
何という……! とどのつまり、まとまらない長老たちの尻拭いってわけかよ……!
「お主らの事情は分かった。しかし、とある魔女が介入しておることは知っておるかね?」
「クルセリア・ヴィゴットか。彼女は我々の友人だ」
「なにっ! 馬鹿な、同行を容認しておるのかっ?」
「あなたは彼女を存じているのか?」
「あれは大量殺戮者だ、おぬしらもただでは済まんぞ!」
「一国を焼き払ったのだろう? それで我々は救われた」
「なっ……!」
ワルドは一瞬、言い淀む。
「……何だと?」
「なぜかは分からないが、時代の折に我々を狙ってくる輩が現れる。そのような不可解かつ不気味な力から我々を救ってくれたのが魔女クルセリアだ」
あの魔女、やはりフィンと繋がりがあったのか……!
「……そうか、しかし、あやつがしたことは大罪だ」
そうだな、どのような理由があろうと一国を滅ぼしたんだ、関係のない人々をも殺戮したことには変わりない……。
そこでドアが開く、フェリクスとエリたちだ。
「オオー? イイニオイ! ブタッ? ヨニケラ!」
アリャは器用に驚くが、興味はすぐにバーストコーンのみに向けられる。
「では、また後ほど……」
ヨニケラはアリャの頭を撫で、そしてフィンの二人は部屋を後にする……。
「どうかしたのですか……?」
エリは閉じられたドアを見ながら言った。
「ああ、手伝って欲しいことがあるんだってさ。あの地下に用事があるらしい」
「地下に……」
「地下だと?」黒エリだ「地下は危険だぞ」
「いや、入り口までの案内だけだよ」
「ほう? そしてこやつらはなんだ?」
「あっ、黒豹だ!」
アンナ……じゃない、スゥーが声を上げる!
「……黒豹?」
「これ黒豹よね?」
グゥーは黒エリを見やり、
「おお、本当だ、気付かなかった」
スゥーは黒エリをじっと見つめる……。
「な、何だ貴様……」
「というか、融合してないこれっ?」
「まじかよ?」
「まじまじ、ちょっとその服脱いで……」
「なんだ、ええい、離せっ」
「ちょっとだけだからぁー!」
二人はもみ合いを始める……。
あの、ここでそういうことをされると色んな意味で困るんだけれど……。
「オオー! ウマイ!」
アリャは次から次へとお菓子を食ってるし……。
「お前、こぼすなこぼすな!」
グゥーはアリャが勢い余ってこぼしたお茶の後始末をしてるし……。
「そうです、脱いで下さい」
エリはスゥーの加勢をしてるし……?
ああ、手に裁縫道具を持っているな、黒エリの服を直そうとしていたのかな? 何事かと思ったぜ……。
「美味しいねーこのお茶」
フェリクスは優雅に茶を飲んでるし……。
そしてワルドはひとり、腕を組んで黙している。
「ワルド?」
「……うむ」
「あの魔女、本当に国を滅ぼしたのか……?」
「間違いない」
「大巨人を狙ってるのかな……?」
「おそらくは」
「しかし、いったいなぜ……?」
「……うむ、そろそろ話しておくべきか」
「話すって……?」
「私の、クルセリアの過去を」
「ああ……いつか話してくれるって話だったな。ぜひ、聞かせてくれ」
「そうか……しかし」
ああ……室内はまだ騒がしいなぁ。落ち着いて話ができる状況じゃないぜ……。
「じゃあお風呂一緒に入りましょー!」
「な、なぜ貴様とっ!」
「早く脱いで下さい、直しますから」
「いや、だからこぼすなって! 落ち着いて食え!」
「チョーウメー!」
「美味しいねー」
まあ……少し、静かになるまで待つとするか……。