プリズムロウ
正直いって悪かったと思っている。
しかし、なぜだかまるで謝りたくないのだ。
ぜったいに謝りたくない!
いや、本当に悪かったとは思っているのだが……。
うーん、怒号だか号令だかよく分からないが実にうるさいな……。もしかして一晩中やるのか……?
アリャとエリは寝息を立てているが……よくこんな状況で眠れるもんだな。肝が据わっているのか、それとも俺たちを信頼してくれているのか……。
「よぉし……では右旋回っ! いくら貴様らでも右と左の違いくらいは……って、右だといっておろォーガァッ! きっ、貴様ら、ふざけているのではあるまいなっ?」
声の聞こえ具合からして奴はここの二階辺りにいるな……。それにしても、下の連中は左右の判別もつかないのか……? そんな事で組織的行動ができるんだろうか。
「ちっがぁああーうっ! 我輩から見て右だァー!」
いや、そりゃ混乱するわ……! 下の連中もよくあんな訳の分からん奴に従っているもんだ……。
「むっ! 何の用だっ?」
ズコン! とでかい金属音っ……に、着地音!
「相変わらず進歩してねぇなあっ? やるだけ無駄じゃねぇのかっ?」
なんだ、新手、奴の仲間かっ! 野太いが反響しているかのような声……! そうか、他にもいるのか……!
「暇人には分かるまいよ! こやつらを戦力にできれば我が軍の勢力は格段に増すに違いないのだっ!」
「はんっ! それよりテメェ、ここで何やってたんだっ?」
「な、何をっ? みみっ、見ての通り訓練に決まっておろうがっ……!」
「ここに入って何かしてただろっ? 侵入者でも見つけたんじゃねぇのかっ?」
「むっ? い、いや、知らんが……?」
「あんだぁその態度はっ? もしやこそこそ隠れて何かしてたんじゃねぇだろうなっ! 勝手な真似しやがったら姐御にぶっ殺されるぜっ!」
「ふん! 侵入者がいたような気がしたので見回っただけだっ! おらんかったがな!」
「テメェじゃ見つかるもんも見つからねぇよっ! よぉし、俺がいぶり出してやるぜっ!」
またズコンとでかい金属音、そして着地音……! 近いな、三階まで上ってきやがったか……!
ちっ、上手くかわせたと思ったのに……!
「まずくないか……!」
「ぬう……!」
二人を起こさないと……って、すでに起きていた、ズコンズコンうるさかったしな。追うようにまたガキンと金属音、あの軍服の奴も三階に上ってきたようだ……!
「誰もおらんよっ! 我輩がしっかり確認したからなっ!」
かなり厳しい状況だな、ワルドに壁を吹っ飛ばしてもらってさっさと脱出した方がいいのかもしれない。
「だからこそ信用ならねぇっつってんだよ!」
足音や声が近い、もう中へと入ってきているようだな……。
「な、なんだとぉー? この我輩がしっかりと探したんだぞぉ、幾度も往復してだぁっ!」
「幾度も空回りしてたの間違いだろうがッハハハ!」
どうでもいいが、後から来た奴……どことなく口調がグリンに似ているなぁ……。
「いいから失せろぉっ! ここはまったく完璧に誰もいないっ! 探すなら他の場所にせいっ!」
まあ、間違いなくここにいるんだけれどな……。
「そういって見逃したことが何度あった?」
……まあ、熱心なわりに微妙にザルでもあったからな……。
「きっ、貴様だって、取り逃がしたことがあったろォーガッ!」
「テメェよりマシだっつってんだよっ!」
「おっ……? な、何をっ……!」
「頭の歯車を正してやるよっ!」
うおおっ、轟音っ? いくつか前の小部屋か、壁を壊したようだぞ、瓦礫が落ちるような音も、やめろよ、最悪ここが崩壊しかねんだろう……!
「きっ……! きき、貴様ァアアアアアッ!」
なんだ、甲高い駆動音……って、けたたましい! 銃撃音かこれはっ……? おいおいおい、おっ始めやがったのかぁっ?
「よおぉーしっ! やるんだなテメェエエッ!」
「ぬわっ! 放せっ、やめろっ!」
撃たれたらしいが平気なのかっ? あっ、辺りで轟音が続くっ! 壁に叩きつけまくっているって感じかっ? おいおい、マジで崩れちまうぜっ……!
「きっ、キョーというキョーはァア! ゆっるさァアアアンッ!」
「こっちの台詞だっ! バラバラにしてやるぜェエエエエッ!」
想定外のヤバさだ、見つかる以前に俺たちも巻き込まれかねん!
「……もう、逃げようぜ……!」
「……うむ! この騒音だ、壁を破壊しても仔細なかろう……!」
おおっ、ワルドが杖をひと突きすると壁に穴が空いたっ!
向こうじゃまだドカドカやっているな、気づかれていないらしい!
「悪いがエリ、鳥で運んでくれっ!」
「はい、わかり……」
……って、軍服の奴がぶっ飛ばされてきた! この部屋のすぐ前だ、さらに大きな人影も現れたぞっ……!
となると、さすがに気づくわな……壁を壊して月明かりが入ってきちゃっているし……ああ、二人揃ってこっちを向いた……ついにバレちまったか……!
……だが? 誰も、動かない……。
ウンともスンともいわない……。
空気が、凍っている……。
……今なら、奴らの姿がよく見える……。
片方は赤い? 軍服を着た、痩せた男……。人間のようだが顔半分を仮面で覆って……いや、あるいは機械なのか? 腕から銃のようなものが出ている……!
もう片方は緑色? の軍服だ、かなりの巨漢、服の下に甲冑を着込んでいる……というのも不自然だ、あるいはこいつも機械なのか……?
……なんて、のんびり観察している場合じゃないが……しかし、空気が止まっていて……動いていい雰囲気でもない……。エリの鳥だけがふわふわと……辺りを飛んでいる……。
「……いっ……いるじゃねーか……」
ようやく、静寂にヒビが入った……。
まあ、そりゃいますがね……。
「……う、ぬう? ねっ……ねね、鼠ではないか……?」
……なに? 鼠、何が……?
「そう……そうだ、ね、鼠なぁーどっ! め、珍しくもなくっ! き、脅威でもなァーイのだぁっ……!」
なにぃ? どういうことだ……?
「テメェ……ついに、完全に……イカレちまったのかぁ……? どう見ても四人……四人もここにいるじゃねーか……!」
「い、いや、いないっ……と、我輩は、思うゾォ……?」
も、もしやこいつ、あれだけ豪語した手前、引くに引けなくなっちゃったみたいな感じか……?
「いっ……いるじゃねーかよ……。なあ……?」
お、俺たちに聞かれてもなぁ……。まあでも、いるには違いないので頷くしかないな……。
「げ、幻覚であろう……? めめ、目玉が故障したのではないのか……? このポンコツめぇ……」
「ポ、ポンコツ……」
うーん……そういうことにして欲しいのは山々だが……。お前は本当にそれでいいのか……?
「なあ……その言動は忘れてやるからよ、認めろよ、いるだろ? そこに、四人も……」
「いなァーイ……」
おっとまだ強弁するのか? 無駄に根性があるな……。
「いるだろうがよっ……」
「い、いなァーイッ……」
大男の肩が震え出したぁ……! 大丈夫か、すぐにでも噴火しそうだぞぉ……!
「あのなぁ……マジで答えろよ、いるだろ……!」
「どこにだぁ……?」
「そこに、目の前にィイイ……!」
「み、見当たらんナァ……?」
「そっこに……! いるじゃァアアねぇええかぁああ……!」
「おおおおらんなァー……?」
「いっるじゃねェエエエエエエエカァアアアアアッ……!」
「いッナァアアアアアアアイィイイッ……!」
「めっ、めちゃくちゃそこにいるだろうがよォオオオオオッ!」
「イナイナイナイ、イッナァアアアアイィッ!」
なんか……ええっと、どうすりゃいいのこれ……?
「おったぞ」
おっ……うおっ、ワルドッ? だ、大丈夫かよ、話に割り込んで……!
「ずっと、ここにな」
うわぁ、そういうことにしちゃうの……?
あーあ、赤い? 軍服の奴、えらく目ん玉ひんむいちまって……がっぽり大口を開けて……これ以上ないくらい驚愕しちゃっているぞ……。
「きっ……きき、キサマ、そ、そそ、そこにぃ……いた、いた、いたたたた……?」
「おったよ。じっと息を潜め、微動だにしておらなんだ。冷や冷やしたが、なぜかおぬしは見落としてくれていたな」
「ばっ……ばば、ばっばばば、ばば……?」
いやまあ、あんたは執拗に見回っていたさ、すごく真面目そうではあったよ……。
「……ば、ばば、馬鹿な……? わ、我輩は確かに、たしかに一つずつ……!」
「間抜けが、見落としたんだろうが、ドマヌケがよっ……!」
「いっ、いい、いいいや、ままっ待て……姫は、ひひめはしかかかりとと、我輩の、精密なる、じゅ、巡回を……みみっ、見守っておられた、は、はずぅ……?」
『ひ、ひゃい、しっかりとと、みみ見て、回ってわって、いたと存じっじ……』
おいおい姫の方まで錯乱ぎみだがっ……? まあ一人二役だから当然だろうが……というか、目の前でやられるとさらに気味が悪いなぁ……。
「おお姫よ、いかがなされた? 愚かな近衛と同じく脳味噌が腐っておいでかな?」
大男が笑い出す……!
壁を叩いて大笑いだ……!
「……ァアア……」
まだ笑っている、俺たち……もう脱出しちゃわないか……?
「……ァアアアア……」
赤? 軍服もなんか……顔をかきむしっているし……。
これはあれだ、決壊するんじゃあないか……?
今のうちに耳を塞いでおこうか……。
「……ッキャァアアアアアアアァアアアアッ!」
うおおっ? なんかこっちへ突っ込んできたぁああっ……がっ? なんか勝手に俺の足に引っかかって……。
「あっ……ああっ? アアアアアアアーッ?」
穴から外へと転げ落ちていった……!
エリを庇ったついでの事だったが……これはこれでいいか!
「アアッ! アガババ! ゲブッ……!」
あらら溺れちまっているな……。
うーん、このまま見殺しってわけにも……だが敵性がないわけじゃないからな……っと、いや、がんばって泳いでいるな、自力で岸に上がれたみたいだ……。
「……ヒッ、ヒヒッ、ヒャアアアアアアッ!」
どうやらまだ頭は冷えていないらしい……って、銃撃音が聞こえてきたぁっ……?
「まさかっ? あんの馬鹿野郎がっ!」
大男、踵を返していった、広間の窓から身を乗り出している!
すげぇ撃っている感じだが、まさか……!
「うおおっ?」
そのまさかだ、橋の上が血の海になっているっ……!
「おいおい、あいつらバックマンなんだよなっ?」
「まあ似たようなもんだ、しっかし、てめぇで集めた兵隊を潰しやがってイカレ野郎がよぉ……!」
そうか、もともと死体か……いやしかし、ひっでぇ惨状には違いないがな……!
「きっ、きき、貴様らが見逃しっしし、しぃーしっ! ひ、ひひ姫さぁまでもっ、ぐっぐぐ、愚弄ゥウウウウッ!」
どうするんだこの有様は……っと、奥の砦から四人、出てきたぞ……! そのうちの三人が奴を取り押さえた!
しかし奴は奇声を上げながら抵抗の構えだ……。泣き叫びながら辺りに乱射しまくっちゃっている……!
……それに待て、残った一人がこちらを見上げている? いや駆け出しっ……何だっ? もの凄い速さ、跳んでっ、危ねぇっ! 一気に窓から入ってきやがったっ……!
ものすごい身体能力だ、猛スピードで入ってきたのに着地はしなやか、明らかに普通じゃない……!
黒い? 軍服の女……! 口元をこれまた仮面のような機械のような……マスクで覆っているが、長い髪はエリとそっくりな白髪……。
「……これは何の騒ぎだ?」
「イカレ野郎がついにプッツンしやがったのさ」
「こやつらはなんだ?」
「プッツンした一因だ」
「いや、俺たちはただ、宿……」
……をおおっ……? まっ……いっ……てっぇえっ?
「レッ、レクさんっ?」
「いいっていってっ……! マジいったぁっ……!」
ちょっとおいっ……! なに、なんで鞭っ……? いきなり、しばきやがったこいつっ……?
おっい……太もも、マジでクソ痛いんだがぁっ……?
「なっ、なにをなさるのですかっ?」
「ニェエエー!」
うっひょー……汗でてくる、マジでいってぇー!
エリがすぐに癒してくれるが……ああー……痛すぎてびっくり飛び跳ねるわこんなの……!
つーか何だっ? なんでっ? やんのかこいつっ……みんなも臨戦態勢だっ……!
「待て、今のはただの挨拶だ」
なに……?
なにが……?
なにがぁあああ……?
何が、なんでっ? はああっ? この仕打ちのどこが挨拶だっていうんだよっ……!
「いやおい……!」
「事情があるなら聞こう。話してみろ」
いやいや、
いやいやいやっ!
じゃあいったい何のために俺はしばかれたんだよっ……?
「私たちはただ……雨風を凌ぐため、一時的にこの場をお借りしようとしただけなのです。それを粗相だと仰るのでしたら謝罪いたします。ですが、一方的に暴力を受けるいわれなどは……」
「ふむ、そうか……」
そうか……じゃねーよっ!
マジでなんでしばかれたんだよ俺っ……?
つーかこのしばき女、じぃっとエリを見つめやがる……っていうか近い近い! 鼻先がくっつくくらい近い!
「……なるほど、いいだろう。宿くらい貸してやる。ときに貴女、名は?」
「……エリヴェトラ・メザニュールと申します」
「ほおう? 私はエリゼローダ・キュランガル。似た名だ、やや縁を感じるな?」
「エリしか似ていないじゃないか……」
あああぶっ……! 危ねぇなっ!
こいつっ、またしばこうとしやがったっ……!
「おおい! 何すんだよお前っ!」
「そうです、やめてください!」
「ふん、まあよかろう」
だっからなにがよ!
俺はなんにもよくねぇーんだよっ……!
「いいのか? 姐御」
「たまには慈悲も与えんとな、宇宙の調和が乱れる」
なにいってんだこいつは……?
「で、あの馬鹿野郎はどうする?」
そうだ、下は収まったか……?
……まあ、収まっているような……いないような……。
あいつ、なんかすげぇ勢いでブチのめされているな、ぶん殴られて宙を舞っている……。
「鎖を巻き、大人しくなるまで湿地に漬けておけ」
しばき女はまたもエリに顔を寄せやがる……!
「夜は長い……。ゆっくりしてゆくといい」
「あなた方はいったい……?」
「我々は便宜上、プリズムロウと名乗っている。各国より派遣されし部隊の残党、その寄り合い所帯だな。私はレジーマルカより遺物を探しにこの地にやってきたが、部隊が壊滅しこのザマだ。他の者も似たようなものさ」
エリと同じく、レジーマルカの出身か……。
まあ、見た目だけは似ている気がするがな……。
「貴女もそうなのだろう? その白髪は北のシュノヴェ人特有のものだからな。つまり我々は同郷の友というわけだ」
「あんたらバックマンを集めて何を……」
うわっ、また鞭を振るわれそうに……!
「な、なにゆえレクさんにばかり……!」
「いやマジでなんでお前、俺に恨みでもあるのかっ……?」
「ふん! 兵士に仕上げられるというので試させているだけだ!」
「……バックマンが従うというのか?」
「動く死体という点では同様だが、あれらは機械で動いている!」
機械で……? というか、
「な、なんでさっきからお前、そんな怒ってんの……?」
「なぜ……なぜ?」
ううっ……なんかっ、今度は俺の方に……近い近い!
「……思えばなぜだろうな? 会ったことがあるのか?」
「し、知らん……」
「なんだか覚えが、ある」
「知らねーってのよ……お前みたいなしばき女……」
ああっ、だから鞭を構えるなっ……!
「そっ、それより、機械で死体が動くだと?」
だが確かに、そういう技術もあり得るとは思う、あの地下のような技術力があるならば……。
「まさか、お前たちは……」
「……そう、ゆえあってな」
しばき女……急にトーンを下げてきたが……。
「我々とて、望んでなった体ではない……」
「……まさか?」エリが目を大きくする「そんなことが……?」
エリが同情の目を向けるが……なんだ? しばき女の瞳が艶かしく光ったような……?
「……こんな場所ではつまらんな、もっといいところに泊めてあげよう」
……うーん、なんだか妙な予感がするような……?
「あ、いやいや、ここで充分だから……」
うおっ! また鞭で威嚇してきやがった……!
なんで俺にばっかりそんななんだよ!
「遠慮するな、もっとよい寝床を用意してやろう」
「ですが……」
「いいや、遠慮させてもらう」おっとワルドだ「おぬしらの同胞に脅かされた事は事実であるからな、過度に警戒してしまう事情も理解してもらいたい。我々はここで充分だ」
さすがワルド……というか、彼には鞭を振るわんのか?
いやそれでいいんだが……俺だけかよ、なんでぇ……?
「ええ、私もみなさんと離れるつもりはありません。お誘いは嬉しいのですが……」
しばき女はうなり、
「そうか……では、そうだ! 私がここにいよう。それならよいだろう?」
「え、ええ、私は構いませんが……」
……いや正直ご遠慮願いたいが、こいつ、いちいちしばこうとしてくるからな、怖いんだよな……。
「よかった。私の事は……そうだな、エリとでも呼んでくれ」
「奇遇ですね、私もそう呼ばれています」
「そうか! ではエリ同士、二人きりでお話をしよう」
黒いエリが白いエリの手を握って奥へと連れて行く……途中で振り返った。
「ボイジルを湿地に漬けた後、橋を清掃せよ。再生が見込めない者は葬ってやり、それ以外の兵は宿舎にて休養させておけ」
「了解だぜ」
大男は窓から出ていく……ところで話しかけてくる。
「命拾いしたな、姐御は美女と同郷の者に慈悲深い。両方揃っているならなおさらだ。俺はヘキオン・アインザッツ。お前らにとって敵か味方かは姉御次第だが、どちらにせよ楽しくやろうぜ」
「あ、ああ……」
「またな」
そして跳び降りていく……。
機械との融合、か……。とするならあの男は全身を……? とはいえ、彼は今のところもっともマシな印象だな。
それにしても……奥の、無事そうな小部屋で何やらお話とやらをしているようだが……あのままで大丈夫なのか……? まあエリを気に入っているようだし害する事はなさそうだが……なんだかもやもやするんだよなぁ……!
「さて……妙なことになってきたけれど、どうする?」
「むう、一先ずは……様子見するしかあるまいな」
そうだな、疲れたしなぁ……。
「よし、じゃあ、また交代で寝るか……」
「うむ」
「ネムーイ……」
「まずは私が見張ろう」
じゃあ、お言葉に甘えて先に休むことにするか……。
まったく……あのイカレた奴のせいでとんだ一夜になっちまった。ここにしたって使っていないならちょっとくらいお邪魔されたっていいだろうに……。
うーん……なにやら遠くで……ぼちゃんと水っけのある音がした……? あいつ、ふん縛られて漬けられたかな……。
小さく話し声も聞こえる……。あの二人のエリは何を話しているんだろう……?
まあ……いいか、今は寝よう……。