昼餐への招待
招かれざる客という表現には弱さがある。
客はもてなし、必要ならば知らしめる。
いずれにせよ力を見せつけるよい機会ではないか。
進む、巨人はひたすら道を進んでいく……足運びは速くなさそうだが歩幅があまりに大きいのでけっこうな速度が出ているだろう、この短時間でも相当な距離を進んでいると思うが……このまま進んでしまっていいものか……? 他に見込みがないのも確かだし、周囲に何かが見つかるまで動くに動けないのはそうなんだが……。
……まあ、あまり危惧しても仕方がないか、どのみちリスクは付き物だろうしな。
じゃあ……することもないし、グリンにいいつけられている戦闘報告書でも書いてやろうかな。書式に関しては何も聞いていないが効いたとかいないとか、ある程度の内容でいいだろう。
えっと、巨大ムカデ、レッドソーには充分に通じたな。さっき襲われた大口の植物みたいな奴にも……そうだが、あれの名前って何だったろう? 図鑑もきちんと読んだのは一部だけで、後はほとんど流し読みで済ませてしまったからなぁ。
「……なあエリ、俺、工房のグリンに頼まれていてさ、この新しい武器の評価をしなくちゃならないんだ。それで、さっき現れた大口の植物みたいなの、名前とか分かる……?」
「はい、図鑑に載っていました。確かスナップグリーンです。マッドツリーと同じく食肉の植物で、こちらはよく匂いを感知して襲いかかってくるとありました」
「おお、よく覚えているね」
「巨大な蟻のような生物もいましたね。あれはサルベージブラックです。戦いの場に現れ、残り物に与ろうと寄ってくるそうです。それとあの巨大な花のような生物、ブラッディクィーンには気をつけねばなりません。私たちの行く手を蔓で阻もうとしていました。かなり知性が高いように思えます。あるいは植物ではないのかもしれません」
へえ、そこまで覚えているのか?
「すごいな、まさか見たページ全部を……?」
「いえいえ、全部とは……」
「ともかく助かったよ、ありがとう」
「はい……」
スナップグリーンとやらにはきっちり効いたな、他の奴には攻撃していないが、まあ効かないってことはないだろう。
「あっ、見てください、遠くにも複数、巨人がいます」
周囲に目をやると本当だ、ちらほら他の巨人たちも散見できる、というかあれは……! 斜面を転げ落ちているのか? ひっくり返って大きな砂煙が上がっている、その周囲から鳥たちが大量に羽ばたいていった……。
……一見してユーモラスにも思えるが、あの様子は端的な事実を明示しているといえる……つまり、こいつだっていつすっ転ぶか分からないってことだ……。
「エリ……こいつが転んだときの対処法ってあるんだよな……?」
「そう、ですね……ええ、その場合は私の鳥でなんとかします」
あれ、なんだか歯切れが悪いな……? とくに案はない感じかい……?
……まあ、その時はその時か、少なくとも俺の能力を超えた事態だ、なるようにしかならんだろう……。
それにしてもこの巨人は……不思議な存在だな。何がどうして岩の集まりが動いている……いや、そもそもこれって岩なのか……? 固いし灰色だが、自然のものとは違うような……?
そもそもだ、間接などの可動部はどうなっている? こんなに固い奴が動くにはそれなりに遊びの隙間が必要なはずだろう……と見れば当たり前か、首元になると隙間が多数、空いているな。動いて削られるのか個々の岩は干渉していないらしい。
……となると隙間の奥が見てみたいな。
「どうかしましたか?」
「いや、あの岩の隙間の中はどうなっているのかなってさ」
エリも首元を見やり、
「確かに、気になりますね……」
おお、光る鳥を利用する感じ? 何羽か首元へと近づけるが……。
「うーん、何か見えるような……?」
「はい、模様といいますか……」
なんというのか、いつか見た人体解剖図の……筋肉の表層にやや似ているか? ただ色は青の暗色? だ、生物というよりはまるで機械のような質感でもあるが……。
「……こいつ、どことなくシン・ガードに似ているな?」
「ああ……目の当たりにしたそうですね」
「ちょっとワルドにも協力してもらおうかな?」
ワルドなら見えないものでも分かるかもしれないしな。逆側の肩へと呼びかけると……光る鳥に運ばれてやってきた。
「ぬう、確かに……岩なのは外装のようなもので……しかもさほど厚くないようだな。内側のそれとは材質が少々違うようだ、推測するにこの岩は偽装か、あるいは……」
あるいは……?
「ドーシタ?」
アリャが顔を出す、あいつ頭の上に乗っていて大丈夫なのか? ちょっと首を傾げただけでずり落ちそう……って、何だっ? また巨人が吼えたっ……? アリャが遠ざかっていった、巨人が左手側の森を見ている……?
「これは、加速……しておるのか?」
たっ、確かに、足音の間隔からして歩行の速さが上がっているっ……?
「ど、どうするっ?」
「まずいぞ、降りる準備をしておくのだっ!」
だが揺れがっ、急に大きくなった……し! すでに降りるなんて状態にないっ……風が、風圧が強い! 振動が大き過ぎるっ、いつの間にか鳥たちが俺に集っている、緩衝の役割を果たしてくれている……って、まさかっ、まだ加速するのかっ? ヤバいぞっ、景色が! まともな形をしていないっ! かなりの速度が出ているっ……!
「ぬううっ! それ見たことかっ……!」
「こいつっ……何を急いでいやがるっ?」
「レクさん、もっとこちらへ!」
なっ……? どういうことだっ? 巨人の手が肩に、部分的に覆い被さっている、エリを保護しているように見えるがっ?
「ウホホーイ!」
アリャは無事かっ、嬉しそうな叫び声が聞こえるっ、お前こんな事態でも楽しそうだなぁっ? エリがしきりに呼んでいるがっ、鳥たちが向こうへと引っ張ろうとしているがっ……下手に動くと多分ヤバいっ! そのまま吹き飛ぶ可能性があるっ! だがこのままでもそうは保たんかっ……! 依然として速度は落ちそうにないっ、こいついったいどこへと向かっていやがるんだっ……って、おおおぉっ? 急に! 負荷の方向が変わった! おそらく左へと曲がったっ? 凄まじい、枝をへし折っていく音がっ、木の葉の嵐だっ、森へと入ったか……!
「みんなっ! 無事かぁああっ?」
「レクさんっ、こちらへっ……!」
「ぬぅううぅっ!」
「ニェエェーイ!」
ああっ、そろそろマジでヤバいっ……! いつ落っこちてもおかしくないっ……が? あれっ、徐々に……振動が収まってきた……ような? そうだ、間違いない、よかった、速度が落ちてきている……! 枝をへし折る音もなくなった……って、何だこれはっ? いつの間にか広大な草原にいるっ……? 森の中にこれほどだだっ広い場所が、平地があるとは……!
しかも、先に巨大な建造物が見える……! その周辺にも、巨人らしき姿がいくつか……。
「速度が落ちた、今のうちに降りるのだっ……!」
おおっと鳥たちに運ばれっ……降りていきぃい……! 無事に着地……できたぁ……! よかった、地面に着くと落ち着くなぁ……! 安全だろうと分かっていても空中はこぇーよ、マジで……!
しかし、何だったんだいったい……? 巨人はそのまま遠くの建造物へと向かって行ったが……あそこに用事があるのか?
「ムゥー? ナンカ、コワレテル」
……本当だ? 建造物の左側が崩れているようだな? 他の巨人たちが集まっている場所もそこだが……。
「もしかして、修繕しに来たのでしょうか……?」
エリが呟くようにいう。確かに、そうらしいな……。
「ううむ……ここだと反響が弱く状況が把握しにくい。いったいどうなっておるのかね?」
「ここはだだっ広い草原で、その奥にでかい建造物があるんだ。でもその一部は崩れていて、巨人たちがそこへと集まっているみたいな状況だよ」
「むう……」
「アソコ、イッテミル! イブツ、サガス!」
「ううむ……」
俺たちの目的からして行かないという選択はないだろう。ワルドはあまり賛成したい様子ではなさそうだが……。
「ここまで来てしまったんだ、行ってみようか」
「ぬう、気を抜くな……」
しかし本当にだだっ広い草原だな。建物まで歩いて五分はかかりそうなほどに広い、ここだけすっぽり何もないというのは実際、奇妙ではある……。
それにあの馬鹿でかい建造物は何だ? 高さは十メートルには収まらないだろう、幅はざっと数百メートルはありそうだ、やや黄色っぽい、あるいは神殿や大教会? それにしては外観の意匠が簡素で特徴的なシンボルもなさそうだが……。
「スゲー!」
正面に幅広い階段、アリャが駆け上がっていく、しかしなんだか妙だなこの黄色っぽい建物、表層が毛羽立っている? 階段も踏めば少し足跡が付くな、土埃というわけではなさそうだが……って、なんか臭わねぇ? 血の匂いのような……。
「アレッ、ヤバイ!」
アリャが指差した方向……に、何だあれはっ? とんでもなくでかい、牛のような? 獣が二頭、倒れている……! しかも、どちらも胴体が見事にまっぷたつ、周囲は血の池だ……! 臓物が嫌な感じで顔を覗かせている……! 匂いの原因はあれか……!
「あれは……キングブル、でしょうか……」
「両断されている……のか?」
しかも、断面に沿って一直線に草原が剥げてやがる、あんな破壊力を出せるものとは……。
「むう、血の匂いがするな。やられているのがキングブルなのかね?」
「ああ、二頭いてどちらも真っ二つだ。他に獣の姿はない」
「なるほど、それらが争い、その弾みでこの建造物を破壊し、報復で両者とも倒されたと推察できるな。そして改修をしに巨人たちがやってきたと」
「でもいったい何が牛たちを……?」
「巨人たちかシン・ガードであろう。あるいは強力な魔術師か」
シン・ガードなら納得だが……巨人たちや魔術師にだって可能なのか、あんな芸当が……。
「……何事かと思いましたけれど、つまりは修繕のために急いでいらっしゃったのですね。やはり心優しい方々のようです」
「あやつらが穏やかであると?」
おっと、なにやら怒気が……。
「ひとつ間違えれば我々などひとたまりもない状況であったのだぞ、その辺り、分かっておるのかね?」
「えっ……いえ、その……」
エリはしゅんとしてしまった……。
でも、あんなに明るい顔は初めて見たような気がするな。とても、楽しそうだった……。
「まあまあワルド……」
「アリャもだ、なぜに先走った行動に出たのかね?」
「ムゥー!」
「まあまあ、ひとまず無事だったんだし……」
「君もだ、レク!」
「えっ!」
「君は自身においては驕らず慎重やもしれんが……いや、ほぼ生身で獣とやりあったことがあったな」
いやあの、その話はあまり蒸し返さないでくれ……。
「ともかく、いまひとつ彼女らに甘いところがあるのではないかね? あるいは遠慮でもしておるのか? しかしな……」
「い、いや、そんなことはないよ……?」
「本当かね? 声音の調子からしてその場しのぎの……」
ああ、ワルドの説教が始まっちゃった……。うーん、これはちょっと止められそうにない感じだなぁ……。まあ実際、危なかったのは事実だし……。
「……分かるかね、このハイロードでは我々など塵に等しいのだ。軽率な行動が即、命に関わることを忘れてはならん。まったく……いかに優秀といえども、いや優秀だからこそか、物事を楽観視してしまい、自らのみならず、仲間の命をも危険に……」
けっこう長引きそうだなぁ……。なんか巨人がちらちらこっちを見ているような気がするが……。
「……セイントバードは確かに心強い。そもそもあれは高等魔術であり、おぬしように気軽に扱える者はほとんどおらん。そういう意味においておぬしは際立って才覚のある魔術師といえるであろう。だが、それが先も述べたように驕りに繋がり……」
まだ続くのか……。しかもワルドは同じようなくだりを繰り返しちゃう系だね、こういうのは辛いんだよなぁ……。
エリは粛々と説教を聞き入れているが……アリャは立ったまま寝ていないか? こいつ相当に場馴れしていやがるな……!
しかし、長いなぁ……。さすがにそろそろ動きたいんだけれど……というか、あの巨人たち、やっぱりこっちを見ているな……。
「……も、もういいだろう? 二人とも反省しているようだし、俺だって同様さ……。それに、さっきから巨人がこっちを見ているような……」
「むう、本当かね……? あまりよい気分ではないな」
よし、説教が中断した、このまま畳みかける!
「さあ、せっかく来たんだ、ちょっと中を調べてみようよ、掘り出し物があるかもよ。それにあまり一箇所に留まっていると……だろ?」
「ぬう……」
だが正面入り口も黄色いもので覆われているな、擦ると剥がれ落ちるが、それでも開きそうにない感じ……。
「この表皮みたいなのを剥がしたところで……取っ手とかなさそうなんだよな、どうやって開けるんだ?」
「ムコウ、コワレテル。ハイレル、カモ」
巨人たちがいる方向か……。
「ぬう、危険であろう」
「ナカ、イブツ、アルカモ」
そうなんだよな、あまり冒険者が立ち入らなさそうな場所だし、簡単には諦めたくないところではある。
「ワルド、ここは冒険者たちにとって周知の場所なのかい?」
「いいや……普通、ここまで道を外れることはないからな」
「荒らされていないなら危険を冒す意味はあるかもしれないよ?」
「むう……しかし」
あの巨人たちの方へと向かって大丈夫かという点については……まあ、これまで敵意を感じていないしな、おそらくはいけると思うんだが……。
「大丈夫でしょう」
「ダイジョーブ!」
アリャはともかく、エリの楽観視は少し不思議だな、彼女にしては慎重さに欠けるというか……。
だがまあ先ほどは守られていたからな、そういう認識になってもおかしくないところではある、か……。
「エリ……先ほど君は、巨人に守られていたな?」
「はい、心優しい方々なのだと思います」
しかしそれはエリだけの話……いや、あるいは単純に可動域の問題か? 俺がいた場所、肩の内側までは手が届かなかったとか?
なんともいえないな、相手が相手だし、敵対は絶対に避けたいところだが……って、おおいっ!
「ヨー!」
「すみません、通ります」
二人がさっさと行ってしまった……! が、とくに変わった動きは見せないな、坦々と崩壊した部分の瓦礫を片付けているだけだ……。
「襲っては、こないようだな……」
「気を抜いてはいかんぞ……!」
しかしけっこうな規模の穴だな、外壁に直径十メートルほどのそれが空いている、入れるか……?
「よし、入ってみよう……」
……って、巨人が叫んだぁあっ……?
「うおおっ?」
どど、どうしたっ、仕掛けてくるかっ……! と思ったが、いや……別に襲いかかってはこない、か……?
「大丈夫ですよ」
エリはやはり平然としているが……さすがに危機感なさ過ぎじゃねぇ……? 相手は生物かすら分からないんだぞ……?
「サッサト、イク!」
お、押すな押すな、ああ中へと……入っちゃったよ、無事に入れたな、巨人たちに動きはないが……じゃあなんで叫んだんだよ……!
はあ、中は暗いが……あまり大きくない部屋か? 奥の方がうっすらと光っている? エリが鳥を辺りに飛ばした、室内が一気に明るくなったな、とはいえがらんどうだ、何もない部屋……。
「ぬう」ワルドは壁に手を触れる「以前にも触れたことのある感触だ……ここより遥かに深部にあった不可解な建造物と同様に思えるが……」
「調度品は見受けられませんね……出入り口も?」
確かに一見して見当たらないな、しかし、
「エリ、悪いが鳥を戻してくれないか? さっき、奥の方がぼんやりと輝いていた気がするんだ」
「はい」
やはりだ、一部が四角く……ちょうど出入り口くらいの大きさだ、かすかに光っている……って、破れたっ? 少し押しただけだが、指が突き抜けたぞ……!
「これはっ……?」
たやすく破くことができるな、穴を大きくすると先に……空間があるぞ! もっと破こう、頭が入った、先は……。
「通路、廊下だ……!」
ここはわりと明るいな、四隅が緑色に輝いている、なるほどこの光が漏れていたのか。
「通り抜けできるぞ……!」
破き出た先は長い通路だ、二方向へと続いている、ドアなどは見当たらないが……あるいは同様に塞がれていて見えないだけかもしれない。
「えいっ」
エリが出てきた、
「ニエィッ!」
次いでアリャも、
「やれやれ……」
といいながらワルドがひときわ大きく破って出てきたな。
「ホホー……ココ、ナニ?」
「俺が知っていると思うか?」
「この明かりは……?」
見たことのない明かりの形式だな、四隅がぼんやりと輝き、四つの光の線が平行に廊下をはしっている。
「さて、どちらへと……」
……うっ? 何だ、この気配はっ?
廊下の先、奥からだっ……?
……いる! いつの間にか人影、何者だっ……?
「よく来たな」
言葉が……分かる、冒険者か?
「今日は客人の多い日だ。言葉は通じるか?」
「あ、ああ……何者だ?」
「魔物だよ」
魔物、だと……? 人影の笑声が小さく聞こえた、あざ笑うかのような……。
魔物……と、うそぶく何者か、冒険者ではない? 言葉は通じるが……。
「ま、まさかグラトニー7、とやらか……?」
ふと、影が揺れた……?
「ほう? 賢いな、よく推察できたものだ」
「いや、なんとなくいってみただけだ……」
俺にはあの図鑑の情報しかないしな……。
しかし、グラトニー7だと?
「……まだその呼び名が使われているとはな。くだらんことをしたものだ」
まだ……? 今は違うのか?
「じゃあ、あんたは……?」
「我が名はオ・ヴー。貴様は?」
「レクテリオル・ローミューン……」
「珍客の上にレクテリオンとはな。愉快な日だ」
なにっ……?
「なぜ、そんなことを知っているっ?」
人影は、答えない……。
待っても、答えるつもりはないらしい……。
「……ここは何だ?」
「多目的施設だよ」
「多目的……」
「色々さ」
「例えば?」
「そろそろ昼餐の時間だ。食堂に集まれ」
「なに?」
「昼食だ。案ずるな、席はまだある」
「な、なぜ……俺たちを……?」
「食事を前に追い返すなどさもしいからな。さあ、ついて来るがいい」
影は奥へと消えた、か……。
ワルドがうなる……。
「……まずいな、すぐさまここを離れるとしよう」
「ですが……お話には興味があります」
「……正気かね? 論外であろう」
「モノスゴク、ヤバイ、ヨカン……!」
確かに……奥からかなりの存在感を覚える、が……。
しかし……。
「俺は、行く」
「何だと……! いかん、ここは蜘蛛の巣であるぞ……!」
「私も、ゆきます」
「どうした……なぜ分からんのだ、どう見てもこれは……」
「危険なのは百も承知だが……俺は、行ってみたいんだ……」
「理由になっておらん」
「……会話が、できたからさ」
ワルドはまた、うなる……。
「俺たちとは違う人種だからって敵とは限らないだろう……?」
そうだ、異人種すべてが敵とは信じたくないし、俺の名前についての造詣もあるようだ。ここでおめおめ逃げ帰るなんて……できないさ。
「私も、情報を得る努力を怠ることはできません」
「ウゥー……ム!」
アリャは腕を組み、なにやら難しい顔をしてみせる。
「……シカタナイ、ワタシ、イッテヤル!」
「おぬしら……」
ワルドは大きくため息をつき、
「どうやら……説教が足りんようだな。後で……覚悟せい!」
おっとワルドが先陣を切って行った……!
「カクゴセーイ!」
アリャも続く……!
悪いな二人とも、わがままに付き合わせてしまって……。
「……よし、行こうか!」
「はいっ!」
さて、鬼が出るか蛇が出るか……!