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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
13/149

青い空と緑の絨毯

 大きなものは、賢く思えます。

 大きなものは、優しく思えます。

 大きなものは、偉大に思えます。

 大きなものに愛されたく思うのは自然なことです。

 だからこそ、大きなものに見放されること、軽んじられること、いっそ憎まれること……これは本質的な恐怖なのです。



 ハイロードはすぐ側に見えたままだが……まだ戻るべきではないだろうか? 凶賊の残党がいるかもしれないしな……。

 しかし、草木の生い茂る中を掻き分けながら進むというのは……これは笹類なのか? 茎が固く密集している、いちいち足が取られてややキツいな。アリャは身軽に枝から枝へと飛び移っているが、俺たちには難しい芸当だろう。

「……どうかな、少し休まないか?」

 現状では目的地が明白ではないし、時間に追われているわけでもない、無理をする必要はまるでないだろう。

「うむ、常に戦闘を想定し体力を維持しなくてはな」

 とはいえ腰を下ろすにしても適当な場所がないな、せり出した樹木の根に座るくらいしかないか。

「……エリ、体力的に大丈夫かい?」

「はい……問題ありません」

「キツいなら遠慮なくいってくれよ、君のペースを基本にしたいからね」

「は、はい……」

 彼女は謙遜しているがその能力はかなり貴重だ、すでに何度もお世話になっている俺がいうことじゃないが……本来ならばこんなところにいるべき人材ではない。例えば都会で医院を開けば……いったいどれほどの人数を助けられることだろう、大金を稼ぐのも容易になるだろうし、ならば孤児院だって……。

 エリがそのことに気がついていないはずがない。……だからこそだ、俺には分かるぞ、君がなぜこの地へと辿り着いたのか……。

「……狂気的です」ふと、エリがぼそりと呟いた「どうしてあのように争い狂えるのでしょう……」

 あの凶賊たち、そしてスクラトのことだな……。

「強者にとっては楽しい事なんだろうさ」

「あんなもの、強さではありません……!」

 ……吐き捨てるような言い方だ、エリとしては珍しいな。

「あ、いえ……すみません……」

「いいさ、もっともだとも思うよ」

 だがスクラトか……。

「あいつ……ああいうのは普通じゃないんだよな? 戦いの才能があるとかそういう次元とも思えない、あの数の敵を壊滅させるなんて常軌を逸しているぜ……」

「肉体を活性、強化させる魔術やもしれん」ワルドだ「具体的にはフレンジィバトラーやエグゾーストが知られているが……少なくとも呪文は唱えておらんかったな」

「あるいは薬とか……?」

「いわゆる麻薬かね。なるほど秘薬と称して膂力や反応速度を飛躍的に向上させるものは出回っておるが……」

 なにやら大剣を折られて激昂していたしな、あれは情緒不安定のきらいがあるといえるだろうし……いや、待てよ?

「あるいは……そうだ、前に読んだ図鑑だ、竜の血がどうとかあったよな」

「しかし、あれはのべ数万を犠牲にしてすら成功には至らなかったとされる代物であるぞ、可能性は低いであろうな」

「す、数万だって……?」

「帝国時代の暗部であるな。当時、弱小の国は吸収されるか滅ぼされるかの選択を迫られていたというが、なかでも竜にまつわる伝承のあるユジルーン王国の悲劇は有名であろう」

「ユジルーンの悲劇……ああ、昔、何かの文献で読んだことがあるな。確か……民を守るため争いを避けようと早々に降伏したというのに虐殺されたとか……」

「当時の国王、イジグヤットは傑人であったそうだ。その影響力を取り込むことは帝国にとっても危険とされたのであろう」

「だからまるごと始末するって? ひどく小心な話じゃないか」

「うむ、自らの器を傷つける愚行であるな。そしてその殺戮の陰で人体実験が行われていたと聞く」

「実験だって?」話からして「……竜の血の?」

「それをも含む、多様な秘薬の人体実験場であったという」

 まさか……そんな馬鹿げたことを? まあ、俺とて世界史に詳しいわけではないが……そんな大規模な悪行など聞いたことがないぞ……。

「やがて皇帝の血族はみな暗殺されてしまったそうだが、それも必然であろうな」

 非情なことを繰り返していたとしたら……そうなってもおかしくはないだろうが、なんだか憐れな話だな。

「しかし、帝国が完全に潰えたわけではない。臣下たちが帝都を中心に復興したとされるのが現在のホーリーンであるが、それはつまり、あの国が帝国そのものだということでもある。ゆえに、当時の技術が残存しておる……どころか、今も研究は続けられておっても不思議はないな」

 ……ホーリーンが帝国そのものというのも……初耳だな。しかし、そんな不穏な国が今度はセルフィンに対して侵攻を仕掛けているというのは……一体、何を目的としているのか……。

「さて、そろそろハイロードに戻るとしないかね?」

「ああ……そうだな」

 あれからそこそこ経ったしな、おそらく大丈夫だろう。慎重に坂を下りて……よし、林道へと戻ったぞ、ああ、快適だ……! 厄介な固い草がない、突如として足が埋まることもない、地面が明確というのは本当にありがたいことだな……!

「そういや、ワルドは道とか覚えているのかい? けっきょくハイロードの地図を買っていないが……」

 図書館に複数種類あって、どれがいいかと相談したらワルドに「いらん」と一蹴されたからな。

「以前にもいったが、あれはない方がよい。的外れな事は書かれていないが信頼するには心細いという、絶妙に厄介な代物であるからな。ハイロードの状況は刻一刻と変化する、臨機応変に対応するしかないのだ」

 うーん、先入観は危険ってことかね……。

「ミズ、オト、キコエル!」

 頭上からアリャの声、ああ……確かにそうだな? 水の音が聞こえてくる、石造りの古びた橋も現れたな。

「ところどころ崩れかかってはいるが……渡るには問題なさそうかな」

「そのようですね。見てください、綺麗な川です」

 おっ……本当だ、差した日光で水面が輝いている。川底まで見えるし、小さくない魚もけっこういるな……。

「オオ、サカナー」アリャが橋から身を乗り出す「ウマソウ、クイタイ、ツリスル?」

「いかん。川辺にはよく魔物も集まる、あまり長居はできんのだ」

「ムゥー……!」

「それにしても綺麗なもんだな。勝手な想像だが、濁った川ばかりかと思っていたよ」

「川に限らず、この地そのものが生命力に満ちています」

 エリ、どこを見ている……と、視線の先に……人影? があるな、遠目でよく見えないが冒険者だろうか? あるいは……。

「……何かいるな」例え冒険者でも味方とは限らないからな「寄って来られても面倒だ、行こうか」

 ……と、聞いてもエリは反応しない、じっと向こうを見つめているが……?

「どうした、エリ?」

「……どうにも、水遊びをしているようです。それに彼らは……」

 ああ、よく見るとなるほど、それらしい動きをしているが……だが、あれは……? もしかして凶賊たちと同じ人種、グラトニーズとやらじゃないか……?

「……まあ、水遊びくらいするさ……行こう」

「ええ……」

 エリは何やら思い耽っている様子だな、いつもの事といえばそうなんだが……。

「オオー! ハナ、ハナ!」

 ああ、いつの間にか……ちらほら花々が顔を出し始めたな。見たことのない形のものばかりだ、林道が色とりどりに彩られていく……どころか、どんどん花だらけになってきているような? 異様にでかい花も散見できるし……と、妙な炸裂音が聞こえるな?

「これは……とても奇麗ですね」

「キレー!」

 急に視界が開けたぞ、右手が一面、花畑だっ? だがこの花々のでかさは異様だ、どれもが俺の腰ほどもあるし、なかには俺より背の高いものもある、しかも断続的に聞こえてくる炸裂音、まさか……?

「音がするな」ワルドだ「ガンフラワーであろう、気をつけるのだ。我々を狙ってくるわけではないが……流れ弾で即死する者もいるのでな」

 図鑑にあった奴だな、花粉の弾を発射するんだったか。

「花の多い場所には蜂やカマキリの魔物もよくいるものだ、景色に見とれて気を緩めてはならんぞ」

 漂う芳香……とて過ぎれば強烈な匂いだな、それにこれは蔓なのか? 道も植物に侵食され歩き難くなってきた、妙な気配もかなり多いぞ、光の鳥が飛んだ……!

「やはり、ヤバいのか?」

「はい、たくさんの気配を感じます。ですが、どれも薄くてどこにいるかまでは……」

「植物や昆虫の魔物は気配が薄いという。注意を怠ってはならんぞ」

 左手は依然として樹々の並ぶ森林だ、どこから襲撃があってもおかしくない……とか思っている間に妙なものがいやがるぞ、でかい緑の球体だ、枝からぶら下がっている、果実? いや蔦なのか? 樹木に巻きついているものが……って、上下に裂けた? でかい口になったっ……?

「なにぃっ?」

 噛まれるっ! いやっ、エリの鳥が突撃! 大口が仰け反った、その反動か大きく揺れ動いている、何だこいつは、あるいは食虫……いや、肉食植物の類か……!

「くらえよっ!」

 シューターを撃つっ……と、奴の口内に刃がめり込んだ! もがき暴れている……!

「ウワーッ!」

 なにっ? 周囲のでかい花々が崩れ落ちたっ……先に巨大な、カマキリッ……? エリの鳥に翻弄され、両手の鎌を振り回しているっ……!

「アリャッ、無事かっ……?」

「ダイジョーブ、ニェッ!」

 うおっ? 切られた花のひとつが炸裂っ? 何だっ、宙に向けて何かを発射しているっ? 飛翔体が空を切っているっ……! まさかこれが、同じようなのが奥にもたくさん見えるぞ、あのでかいひまわりのようなやつすべてがガンフラワーッ?

「おおい、ヤバくないかっ?」

 刻まれて地面に落ちたガンフラワーが次々と炸裂、花粉弾を発射している……って、緑の口がまたも噛みついてきたぁあっ……? がっ、急にぐったりした……力尽きたか、というかなんか寒いっ? おっ、ワルドだ、なんか地面を凍らせているっ? くそデカい……あれは蟻かっ? 猫くらいあるぞっ、複数やって来ていたらしい、凍りついている……!

「ニエェー!」

 おおいっ? アリャが落ちたガンフラワーを手にしている! 花粉弾の銃撃で巨大カマキリをズタボロにしているっ! だが大丈夫かっ? そのまま後ろの花々までまとめてなぎ倒している……つーかっ、奥に黒くてでかい塊が見えるぞっ? あれは図鑑で見たやつのようなっ?

「待てっ、あの黒い塊に攻撃するなっ!」

 ……とかいっている側からっ! たっ、大量の黒いものがっ……飛び出してきたぁああっ! 羽音からしてあいつはっ……!

「ボッ、ボムビーだっ? 逃げろっ!」

 ヤバ過ぎる、すぐにここから離れないと……って、うわっ! 地面が滑る、凍った蟻に躓いちまった、あいてて、エリが助け起こしてくれる、背後から爆発音が連続で聞こえてくるっ……! おいおい自爆するには気が早くないか、自分の命を何だと思っている……って、火炎! が辺りに降っているっ? 引火したのかっ、花々が燃えている、燃え広がるのが早いっ! ガンフラワーが一斉に乱射を始めているっ、でか過ぎる甲虫たちが大量に飛び出しっ、混乱しているのかっ? 樹木に駆け上がり互いに激突しているっ……!

「スラッシャーです! 気をつけて!」

 別の巨大カマキリかっ? 大炎上に混乱しているのか鎌を振り回して辺りを切り刻んだらまた何かの火種にっ……うおっ? 今度は何だ! 上からでかいのが落ちて、みの虫っ? それより背後から誰か走ってくるぞっ? 凶賊たち、じゃないなっ? 白い服ではない、グラトニーズたち、二人組だ、逃げ惑っている、左手の森の中へと姿を消したか……!

「おいおい、ヤバ過ぎないかっ?」

「前方にも注意するのだ!」

 ワルドが何か唱え、光の刃? を複数発射! 前方を阻む棘だらけの黒い蔓を切り刻んだ、無事に通過できるか、いやっ? 蔓が追ってくるだとっ? あいつか! 樹々の奥にすげぇでかい真っ赤な花、中央に牙の生えた口! 絶叫が聞こえる……!

「ああくそ、めちゃくちゃだよっ……!」

 走る、走らなければっ……! また樹々の奥、でかい犬みたいなものが数匹、俺たちを追い越していく……うっ、後ろは火の海だっ……! 空が黒い、煙と、異常な数のボムビー、あの数はひとつの巣から出たものじゃないだろう……!

 カマキリたちが狂乱し、火のついたレッドソー? のようなものが炎の渦をつくっている、ああ、花畑が途端に地獄絵図だよ……!

 しかしようやくか、爆発音が小さくなっていく、炎の狂乱が遠ざかっていく……!

 そろそろいいだろう、さすがにバックパックを背負いながらの全力疾走はキツい……! 一旦は休まないと……!

「ちょっと、待った……! そろそろ、いいんじゃないかっ……?」

「う、うむ……! そう、だな……!」

「ああ、驚きました……!」

「ヤバカッター!」

 だがまだ警戒を、息を整えないと何かあったときに……気配っ? うおっ? 木陰からまたカマキリッ……! 鎌がっ……顎の先を……かすめたっ……! 反撃しないと……いやっ忘れた、再装填! カマキリ、振りかぶっている、二撃目がくるっ……が! 光の鳥が阻む、矢が奴の頭部に入った、と同時に光の刃が胴を切り裂く……!

「ああっ……なんてこと、気づきませんでした……!」

「ニェー! アイツ、キライ!」

「ぬう、気を休める暇もないか!」

 ……ああ、危なかった……気配を感じ取れたからいいものの、下手をすれば終わっていた、まさかあんなタイミングで襲われると思うかよ、というか俺の首、繋がっているよな……? 都度ヤバ過ぎてとっくに死んでいるんじゃないかと疑いそうになるぜ……。

 遠目ではまだ炎が、黒煙が舞っている……。まったく、とんでもないことになったな……。

「ウウ……ワタシ、ワルカッタ……」

 ……アリャがしょんぼりしているな、ガンフラワーのあれが引き金になったのを気にしているのか?

「あんなところにボムビーの巣があるとはな……まあ、ツイていなかったのさ」

「私も、申し訳ありません……。セイントバードを解除してしまって……」

「問題ないさ、あんな一撃なんかくらわないよ」

 ……とかいって、めちゃくちゃヤバかったけれどな! 正直、足がまだ震えているし……!

 というか……何かおかしいような? そう、挿絵だが図鑑で見たんだ、ガンフラワーはひまわりのような形状ではなかったと思う、あれは亜種か何かか……?

 それにボムビーだって樹々の間に巣をつくるとかあったような、だがさっきのは花畑の真ん中にドンと巣を構えていたぞ、あれもまた亜種か何かなのか?

 ……もし、違うとしたら? ワルドの言う通りかもしれない、あそこにある情報は……たぶん、あまり正しくないのかも……。

「反省は後だ」ワルドだ「すぐに動くぞ、あまり一箇所に長居をしてはいかん」

 そうさな、だいぶ息が整ってきた、動いた方がいい……って思った矢先に今度は何だ……? 音が、地鳴りのような、だがこのリズムは……。

「ムゥー? デカイヤツ、イル!」

「この足音は……巨人であるな」

 巨人……また巨人っ?

「おいおい、ヤバくないかっ?」

「いや、あれとは違うものであろう。そこまで警戒せずともよいはずだ」

 ええ、本当にぃ……? と、エリがなぜか瞳を輝かせている……。

「もしや、あの図鑑にあった岩の巨人でしょうか……?」

「ど、どうなんだろう?」

「チョット、ミテミル」アリャがスルスルと樹に上っていく「ホホー! デカイヤツ、イル! アルイテル!」

「これっ、あまり大声を出すでないっ……」

「アッ! コッチクル!」

 ええ、マジかよ、足音が大きくなってくる……。

「巨人って、安易に接触して大丈夫なものなのか……?」

「ううむ……手を出さねば、おそらくな……」

 足音がさらに大きくなってくる……! 振動が伝わってくる、近いぞ……左手、森の中からだ、来たっ……!

 器用に樹木の間をぬって現れた、巨人だっ、こちらは図鑑にあった姿そっくりだな、体が岩? で覆われているような風体だ……!

「道を譲るのだ、足元をうろつくと踏み潰されるぞ」

 もちろん、頼まれたって近づきたくないぜ……!

「エリッ、もう少し離れよう!」

「ヨー! ヨー!」

 アリャッ? なんか……巨人に語りかけているっ……?

「ムコー! イキタイ!」

 お前、そんなこといったって……いやっ? 巨人がっ? 音を、声を発したっ……?

 あるいは牛のそれに似ているが声量が桁違いだ、つーかおいっ? アリャあいつ巨人の肩に飛び移ったぞっ? しかもそのまま巨人が林道を歩き始めた! まさか、本当に運んでくれるっていうのかっ?

「ウホー!」

 あいつ、楽しそうだが……。

「すごい! 私も乗せていただきたいです!」

 えっ……あっ? エリが鳥をたくさん出した、しかもそれらをまとめて巨大化まで……!

「エリッ! 無闇に消耗するでない!」

「いえっ、好機です! 戦いを避けつつ移動し、あるいは文明的な場所へと案内していただけるかもしれません! さあ、レクさんもつかまって!」

「いや、しかしっ……?」

「早く、行ってしまいます!」

 くっ、確かに巨人は歩幅がでかいがゆえに足が速い! 追いかけるにしても骨が折れるだろう……!

「ええい、仕方ないな……!」

 エリの後ろに乗った途端、飛び立った……! 一気にこんな高さまで、つーかこの鳥いやに滑らかな肌触りだ、つるりと落ちたりしないよなっ? ちょっと、エリにつかまらせてもらおう……って、バランスを崩したぁあああああっ……?

「うおおおおっ……?」

 落ちぃいっ……しぬぅう! かと思ったがっ? ああ……すぐに水平へと戻った……し、いつの間にか巨人の肩へと降り立っている……って、うおおお……マッ、マジでビビッたわ……! ちびるかと思った……!

「どっ、どうした今の……!」

「えっ……ええ、すみません、少し、驚いてしまって……」

 そっ、それは俺の台詞なんだがっ……? なに、肩につかまったのがいけなかったっ? それはそれで悪かったが、墜落しなくてもよくねぇっ……?

 エリは鳥から巨人の肩へと降り立つが、大丈夫なのか……?

「そこ揺れるだろっ、危なくないかっ……?」

「大丈夫ですよ……はい」

 エリの手を取り、降りたはいいが……やっぱり怖くねぇっ? 思ったより揺れてはいないが、揺れていなくはない程度には揺れているぞっ……?

 ああ駄目だ、とてもじゃないが立ってはいられない、幸い体を預けやすい凹凸がたくさんあるからしがみつこう……。

「まったく、何をしておるのかね……!」ワルドも沢山の鳥に運ばれながら追いついてきた「後によく話し合わねばならんな……!」

 ああ、説教の予約ができちゃったぞ……。だがアリャはもちろんエリも相当に嬉しそうだ、目が、瞳が、陽の光で黄金のように輝いている……。

「……本当に、このまま行けるのかっ……?」

「はい、きっと!」

「突如として気が変わらんとも限らんぞ! 気を抜くなっ!」

 いやほんと、体についた虫を払うように吹っ飛ばされたら終わるぜマジで……! 軽く二、三回は死ねる高さだ……!

「……にしても、よく怖くないなっ? 君もアリャもさっ!」

「こんな光景そうそう見れませんよっ。ほらレクさん、あまり俯いていないでっ……」

「あっ、ああ……」

 ああ……本当だ、彼方までも青い空……そして緑が続いている……。まるでこの二つだけで世界が成り立っているかのように……。

「おお……! すごい、なぁ……!」

 といった途端に巨人が吼えるぅっ? 何だよ、びっくりするわ!

 ……でもあれだな、運んでくれるんだもんな、礼は必要か。

「……なあ巨人さんよ! ありがとうな! 乗せてくれて!」

 巨人がまた吼える! うるせぇえ……がっ? もしかして返事をしたのかっ……? 意思疎通ができている……?

 ……そうか、そういうこともあるかもな。まるで別種の存在だし気は抜けないが、気のいい奴はどこにでもいるもんだ。

「……それじゃあ、遺物のあるところまで頼むよ! なるべく近場のさ……!」

 ……なんてな。またも巨人が呼応するが、まあ、そんな美味い話があるわけもない。道中それらしい遺跡とか見つかるだけでもありがたいってもんだ。

 さあ巨人さんよ、どこへと連れて行ってくれるんだ……?

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