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お前は誰だと叫びたい

作者: 桐原

高校生の頃になんとなく書いてみたものです。

カーテンの隙間からのぞく光に目を二・三度瞬いてから、枕元にあるだろう携帯電話を手先の感覚だけで探し当てる。パワーボタンを何度も連打し、部屋にしつこく鳴り続けるアラーム音を止めた。眉間に皺を寄せつつも、うっすらと目を開き、光る液晶画面の右上端に表示されているデジタル時計で時間を確認する。


(……二度寝しよう。)


そう思い、ごろごろと幾度と寝返りを打つも、暑さの所為でなかなか寝付くことが出来ず、少しの苛立ちを覚える。仕方が無いと諦めた私は、いつもと同じ様に布団からのそりと起き上がり、大きな欠伸を一つ。ぐうっと伸びをした後、顔を洗う為に洗面所へ向かった。

洗面所のライトのスイッチを入れ蛇口を上げると、流水が排水溝に飲み込まれていった。それを二・三秒ほどぼーっと眺めてから、思い出したように手のひらでひんやりとした水を掬い上げた。

くそおっ、昨日携帯の電源切っておけば良かった…!と、無駄に早く起きてしまったことに顔を洗いながら心中で悪態を吐く。顔にパシャパシャと冷水をかけると、水が飛び散り髪の毛を濡らした。雫が毛先をすべり、頬に張り付く。それを鬱陶しく思いつつ、顔をタオルにうずめ、はあ、と大きな溜め息を吐いた。


(最悪だ……。)


タオルから顔を上げれば、鏡の中の仏頂面と対面した。先ほどまで明るかった洗面所の蛍光灯がチカチカと点滅を繰り返している。

せっかくの夏休みなのに、こんな朝早い時間に起きることはなかったじゃないか…まったく、体に染み付いた習慣とは恐ろしい……。普段と変わらない時間に起きたことに、これが溜め息を吐かずに居られるかってんだ…!と、半ば躍起になり、持っていたタオルを適度に丸めると、洗濯機の方へ放り投げた。


学業や部活動に勤しむことが学生の本分だが、部活は夏休み前に引退したし、今日はバイトのシフトも入っていない。ううん……暇だ…。何をしようかと今日の予定を考えるも、どれもいまいちに感じられた。買い物にでも出かけようか…。確かあの店は今日からセールだった気がするが、でも、と後々のことを麦茶をグラスに注ぎながら思案をめぐらせる。

悲しいことに、学生には課題という名の大きな壁が立ち塞がっている。早い内にこれを片付けておかないと、最終的にはケツカッチンになり、泣きを見るこになると過去の経験で身をもって知っていた。

小学生のころ、余裕ぶっこいて課題を後に先伸ばしにしていたお陰で、寝る間も惜しんで読書感想文やらワークやらをひいひい言いながら終わらせたことがあった。鉛筆の持ちすぎで親指の付け根やペンだこは、まるでテープでガチガチに固定されたように動かないし痛い。それにメンタル面がズタボロになる。こんなのもう嫌だ……!と、半べそかきながら課題を終わらせたのは今では良い思い出です…。

結露したグラスを掴んで注がれた麦茶をいっきに飲み干すと、ふう、と息がこぼれた。


冷蔵庫に麦茶をしまいながら考えた結果、やっぱり今日は課題を一つ消化することにした。

それが全部終わったら夢のグータラ生活を満喫してやるっ…!

「よし、」と鼻息荒く、自身に気合いを入れ自室のドアノブに手をかけた。


ガチャ、ドアノブを傾け一歩。自室へ踏み出した私を多大な違和感に襲われた。

部屋に入って真っ先に目に入るのは、先程まで自分がぬくぬくと眠っていた布団。だが、何故かそれに膨らみがあり、緩やかに、しかし規則正しく上下に動いているのだ。

目をこれでもかと言うほど見開いた私は思わず息を呑んだ。肺に送り込む為の空気が喉の辺りで留まり、ドックンドックンという速い脈拍が直接脳内に響いてくる。


(うわあ!やべえよ何これ?!)


夜、ゴキブリを目の前にしたときのように体が硬直して動かない。声に出して叫びたいという強い衝迫を抑え、喉元に留まっていた息をゆっくり静かに吐き出した。心拍は変わらずドックンドックンとうるさい。

洗面所に行ってる間にいったい何があったんだ……。布団から目を逸らすことなく深呼吸を繰り返す。動かない体に心の中で叱咤し、ようやく動くようになった足を後退する。足音を忍ばせ布団へ近付き恐る恐る掛布団に手を伸ばすも、引っ込める。

正直、この布団を捲りたくない。だが、そう拒絶ばかりも言ってはいられない。

私は意を決して掛布団をそっと捲った。すると、其処には知らない女の子が私の布団で気持ち良さそうに寝息をたてて眠っていたのだ。彼女は息苦しかったのか、もぞもぞと頭を布団から出し、更にごろん、と寝返りを打った。


えええ?!何これ。

これ、何てドッキリ…?

命の危険性は感じられないが、ドクドクドクドク、先程よりも大きい自分の心音が脳内に響いて聞こえた。


あれ可笑しいな幻覚かな、夏の暑さに頭が可笑しくなっちゃったのかな。

はは、やだなあ私ったら。


ピクピク、と目元が痙攣を起こす。

私は慎重に音を立てない様に扉へ近付く。ゆっくりと扉を閉めて一人廊下の壁に持たれると、私は彼女が起きなかった事への安心からか、深い溜め息を吐いたのだった。


……駄目だ。

思考回路はショート寸前♪なんて、某美少女戦士のオープニングテーマが頭の中で流れ、更に自分を混乱に追いやる。


どうしよう、どうしようどうしようどうしよう…!?

焦りと混乱の所為で一人まごつく。混乱してはいけない。ひとまず落ち着かなくては。と繰り返し自分に言い聞かせ、何が起こったのかを整理しようと頭を働かせる。


起きて顔を洗う為に退室。予定を考えながら部屋に戻り、扉を開けるとそこには布団に膨らみがあったので、不思議に思い捲ってみたらばあら不思議、知らない美少女がぐっすり眠っていた。


簡潔に纏めるとこんな感じだが、いったい何処から彼女はこの部屋へ侵入したのだろうか。

しかもほんの数分の間に。

そもそも、何故この家をチョイスしたし…!うーん、と頭を捻ってみるも私の脳から答えを導ける筈もなく、脱線していた方へと思考を戻す。


これは警察に通報するべき、だよね…?あれ、それよりも先に両親に不法侵入者が居ることを知らせないといけないのか?

ぐるぐるぐるぐる、同じ事ばかりが頭を巡る。

自分の所為じゃないのに、自分が悪い事をしてしまった気分だ。

こういう時、どんな顔をしたらいいのか分からないの。

いやホントにこれマジで。


でも、いつまでも廊下で突っ立っていてもどうにも仕様がない。それに、今、この状況を両親が見たらどう思うだろうか。自分の部屋の前で部屋に入ろうとしない、なんて明らかに不審に思われるだけだ。

私は腹を固め、ドアノブを傾ける。音を立てない様扉を開け、サッと部屋に入った。


「ですよね~…」


つい声に出してしまったが、やはり幻覚ではなかったらしい。

現実でしたよド畜生。

夢落ちなんて所詮私の願望ですよ、ええ。


美少女は未だに人の布団でぐっすり眠っているようだ。

つーか良く見たらこの子、フルフロンタルでは…?ギリギリセーフで隠さなきゃイカン場所は隠れているが、何故に裸だし?!……あれか、この子は寝るときに開放的に眠りたいとかそんな感じなのかそうなのか。

とりあえず彼女に服を着せる為、タンスの中からごそごそ、とジャージを引っ張り出してみた。

起きたら即着て頂いて、即刻お引き取り願おうか。

展開としては更に発展していき、恋愛ものになるんですが百合ではありませんので悪しからず。黒歴史としてあげておきます。

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