あの人は君よりも優秀です
何かするのならば今しかない。これが最後のチャンスなのかもしれない。そう思うタイミングや時期というのがあって、例えば長期休暇なんかがまさしくそれなんだけれど。
「だからと言って大学最後の春休みに日本一周なんてのは馬鹿だよ」あたしは言った。
「その馬鹿が出来るのが大学生だろ」彼女が言った。
彼女の横にはバイトをして買ったスクーターがある。カブだと言っていた。
「就活しなきゃじゃないの」あたしは言った。
「着いた所でするさ」彼女は言った。
「自分探しの旅?」
「いっしょに来る?」
「行くわけないじゃん、ばーか」
「ばーかばーか」
「ちゃんと無事に帰ってきなよ馬鹿」
「馬鹿やろう、気をつけて行ってくるんだよ」彼女は言った。
彼女はカブに跨がりエンジンをかける。出発する。
「お土産買ってこいよ」あたしが言った。
彼女は返事をする代わりに頭を左右に振り子みたいに揺らした。