1 いつもの日常
誤字、感想などジャンジャン書き込んでください!
一人一人の意見をぜひ、参考にさせてください(^^;)
私は十五年間、「恋心」というものを抱いた事がない。
男の子とは、普通に話していれば楽しかったので、それ以上の関係を求めた事がなかったからなのか?
男の子に特別な感情を抱いた事がない。
なのに、なぜだろう?
あの男の子から目が離せない、いつまでも見続けていたいと願うこの気持ちはなに?
心の奥底から感じた事のない感情が湧き上がってきて、あの男の子が笑うと爆発しそうだ。
これはなんだろう?
神様、教えてください――。
私は太田沙織。クラスは三年三組。今年で十五歳の受験生だ。今まではテニス部での部活に励んでいたが、もう引退してしまい、今度は勉強に励む時期。
「沙織~。休み時間くらいお話しようよ? 受験生なのは分かってるけど――」
「悠里は少しくらい焦った方がいいよ。勉強しなさ過ぎ、昨日何時間勉強した?」
「……一時間」
「ほら、受験生にもなって一時間は少ないよ」
今話しているのは、私の親友の金沢悠里。同じ三年三組で、同じテニス部だった。テニスは強いくせに勉強にはめっぽう弱い。もっとも、勉強時間が短いからだと思うが。
「沙織ってば、この頃全然かまってくれないよね。寂しいな、前までは部活の話であんなに盛り上がってたのに……。部活を引退すると、こんなに変わっちゃうの?」
「どうしたの、悠里。なんか、急にしんみりしちゃって。だって部活はもう引退しちゃったんだから、高校まではできないんだよ? 話したって、前みたいには楽しめないよ」
「そうかもしれないけどさ、思い出に浸ってみるのもよくない?」
悠里は本当に焦る事を知らない。テスト三日前までは提出物にも手をつけないほどで、前日に泣きながら私に助けを求めていたな――。これも一つの思い出だな。
「沙織ちゃん~。また悠ちゃんを泣かせてるの?」
「智樹。ってか、またってなによ、またって!」
「だって、沙織ちゃんのイメージはそんなもんだし……」
「イメージで決めるの、やめてもらっていいかな? 腹が立つかな」
「冗談だって、怒らないでよ~」
こいつは長谷智樹。同じクラスでバスケ部だった。とんだお調子者で、女子にはとてもなれなれしい態度で寄ってくる。こういう男子は本当に苦手だ。でも部活は真剣だったみたいで、部長をやっていた。誰からも頼りにされていた、部活の時だけ。悠里にしょっちゅう絡んでくるので、もしかしたら悠里の事が好きなのかもしれない。女の勘ってやつだ。悠里は、智樹の事気になっている存在らしい。早くこの二人がくっついて、どっかへ行ってくれたら多少気が楽になる。
「沙織。勉強に集中するのは構わないけど、ちょっとは悠里の事も気にしてやれよ」
「健斗? 健斗までそんな事言うの?」
「うん。だって、さっきまでのやり取り見てたら沙織の態度が素っ気なかったから。ま、悠里も沙織の邪魔はしちゃいけないな。集中してる時には」
なんでちょっと笑ってるの? なにを楽しんでいるのかさっぱり分からない。ちなみに、こいつは松谷健斗。同じクラスで、陸上部。学校一足が速いので、女子にモテる。さらに、性格がいい上にムードメーカーなので、男子にもモテる。だから、近くに来られると女子の視線が痛いほど感じる。私は、うっとうしくなった栗色の長髪を、紺色のゴムでポニーテールに縛った。同時に、気合も入れた。でないと、この三人に存在を支配されると思ったからだ。
私達四人は、幼稚園からの幼なじみ。同じ小学校に行き、同じ中学校へ通っている。毎日毎日顔を見合わせるのも、さすがに疲れてくる。私だけかも知れないが。
「沙織? なに、ボーっとしてんの? 大丈夫?」
「大丈夫よ。今日はいい天気だったから、外を見てたの。ありがと、健斗」
「いや、あの二人がいい雰囲気だったから沙織しか話し相手がいない」
「私は忙しいの。他の女子とでも話してくれば?」
「やっぱ冷たいな。勉強の疲れがたまってるんじゃないの?」
健斗は本当に優しい。ただ、その優しさが時々面倒くさい。私はそんなに冷たいだろうか?
今日の空は雲一つない快晴。まるで、悩みなんて一つも感じさせない笑顔のようだ。私の心も、あの空のように澄みきっていたらよかったのに……。
ふと周りを見た。健斗は女子ではなく、男子と話していた。智樹と悠里は盛り上がっていて、とても楽しそうな雰囲気。健斗の言うとおりだ。今あの二人の間に入ってはいけない気がする。
『キーンコーンカーンコーン』
授業が始まるチャイムだ。皆が、慌てた様子で自分の席に座る。
「おし、数学やるぞー。教科書の……」
いつもと変わらない授業がまた始まる――。
このような感じで、更新していきたいと思っています。
どうか、ご声援のほどお願い致します。