第十一話 死闘1
遅れてすいません。
お待たせしました。
本来なら、13日、遅くても14日には投稿できるはずだったのですが……。
遅れた理由については、活報をご覧ください。
それでは、第十一話 死闘1、どうぞ!
蝿が機敏な動きで紫音達に迫って来る。
ついに、その複眼に紫音達が映った。彼には紫音達はどう映っているのか。
「f33333333333333!!」
蝿が、吠える。人間には理解不可能な言語。
その叫びと共に、蝿の翅が一層速く動く。
限界をぶち破るように速さを増していく翅。そこから発生する音は、すでに人間の可聴域を超え、紫音達には聞こえない。
次の瞬間、パァン! という音と共に見えない何かが射出された。轟音を撒き散らし、蝿の周りの石畳が破壊される。
「音速を超えやがった……。どんだけ規格外なんだよ……」
紫音が、バックステップで蝿と距離をとりながら呟く。
沙耶は幸を抱いて、紫音より若干早く蝿と距離を取っていた。
「紫音君! どうする!?」
「取り敢えず、幸と一緒に離脱してくれ! 助けを呼びに行ってくれると助かる!」
蝿が今まで以上に素早く紫音に向かって接近する。紫音はコンビクションを抜き出し、発砲した。
タァン! タァン!
異様に静かな参道に銃声が響き渡る。
翅の付け根と前足の付け根に銃弾が当たり、僅かに外殻が凹むが、蝿は意にも介さず追撃の手を緩めない。
「紫音君! でも……!」
沙耶が何か言っているが、紫音には対応している余裕はない。
「いいから! 早く! 俺は自力でなんとかする!」
半ば投げやり気味に怒鳴る紫音。
「わ、分かった! すぐ戻って来るから、それまで持ちこたえて!」
そう言うと、沙耶は幸を背負って何処かへ走って行った。
「風よ風よ、雷となりて、我が身体に雷電の如き速さを与えよ 『雷の衣』。風よ、千里を見通し、電光すらも捉える目となり、我を助けよ 『千里眼』」
一息で詠唱を二つ唱える。
魔力を掌握し、魔術を発動。
次の瞬間、世界がスローモーションになる。
今までは見えなかった蝿の翅の動きが、今では鮮明に見える。
「シッ!」
短く呼気を吐き出すと、蝿までの距離を5秒以下で詰めた。
目の前数十センチまで、その巨体が迫る。
常人はおろか、退魔師でも目を凝らして集中しなければ見えないほどの速さ。
だが、蝿はまるで余裕だというように紫音めがけて前足を振るった。紫音の速さより、数段上だろう。
細い腕が、まるで鞭のように撓り、紫音を襲う。途中、音速を超えたのか、またもやパァン! という、高い音が響き渡る。
「――ッ!」
上昇した動体視力が、辛うじてそれを捉えた。
ブリッジをするように、身体を後ろに倒し、なんとか紙一重でかわす。
そのまま、勢いよく倒立、手だけの力で後ろに後退した。
「流石に見切られているか……。なら、これでどうだっ!」
紫音は、今度も同じように蝿へと走り出す。ただし、詠唱をしながら。
「――闇よ、闇よ。そなたの主の友がここに命ずる。そこは闇の王が君臨する世界。何人たりとも王に抗うことが許されぬ独裁の地。太陽の輝きが大いなる闇に紛れし時、我が魔力を糧として、常夜の世界を作り出せ! 『明けない夜』」
膨大な魔力が身体の中から消費される。
薄暗い夕闇の中で、闇が蠢いた。まるで、黒い虫が何千匹もいるかのように、闇が明確な意志を持って紫音を中心に辺りに広がっていく。
紫音は、それを無視して蝿まで到達。
その無防備な翅に向かって、残りの5発をすべて撃ちこんだ。
あまりの早撃ちに、銃声が重なる。
すべての弾丸が狙い通り翅に命中した。薄い翅を切り裂いて、弾丸が空へと飛んで行く。
だが、血が出ることも無く、蝿はまるで気にしていないように宙に浮かんでいた。
その間にも、闇は新たな動きを始めた。
闇が広がるのを止め、上へ、上へと、まるで壁を作るかのように上昇していく。
「f@hfzp9」
そんな光景を尻目に、蝿が意味不明な言葉を発した瞬間。
ドゴンと、足元から何かが爆発したような音が響いた。
そして、なぜか紫音は錐揉み状態で吹っ飛んでいた。
「――――え?」
目まぐるしく変わる景色。
紫音は、状況理解が追い着かないまま、闇の壁に激突した。
「カッ、ハッ……!」
激突の衝撃により、肺の中の空気が押し出される。
その息には、赤い液体が混ざっていた。
「グッ! ペッ!」
身体の中から逆流してきた血液が、喉を塞ぐ。それらを吐き出すと、漸く呼吸ができるようになった。
「――はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。い、一体どうなってるんだ……?」
紫音には理解できていなかった。
なぜこうなった? 何が起きた?
頭の中を疑問が埋め尽くす。
それらを振り払い、立ち上がろうとした時、形容しがたいほどの激痛が紫音を襲った。
「グォァ!」
獣じみた声をあげて蹲ろうとするが、今度は胸からの激痛で蹲ることさえ許されない。
「ガァハッ……ハッ、ハッ……。足が折れてるのか……? それに肋骨も……」
一度、冷静になり、客観的に状況を分析する。自身の体に神経を研ぎ澄まし、ダメージの度合いを確認していく。
「――肋骨が何本か逝ってるな……。両足は複雑骨折ってとこか。内臓もこの調子じゃ傷ついてるな……。痛覚がぶっ飛んだのか知らんが、痛みを感じないのはありがたい。左手の親指と、小指、薬指も折れてるな……。右手の銃を手放さなくて良かったぜ……。まあ、骨盤か、背骨が折れていないのは不幸中の幸いだな。それにしても、いったい何が起こったんだ……?」
闇は、まるでドームのように空を覆い始めた。
蝿――ベルゼブブは、紫音が向かってくるまで戦うつもりはないのか、先ほどの場所から動いていない。
その前方、わずか3メートルほどの所に、大きなクレーターができていた。
「あれが、俺のいたところだから……。あの音を考えると、爆発か。だけど、魔法陣の展開も無かったし、魔力の流れも感じられなかった。どうなってやがる?」
丁度、紫音が呟いた時、辺りから光が失われた。
闇が完全に空を覆っていて、僅かな光さえ侵入を許さない。
光が無いということは、つまり、何も見えないことを意味する。
だが、紫音にはベルゼブブの姿が良く見えた。
闇属性最上級特殊種族魔術、『明けない夜』。
術者を中心としたドーム状のフィールドを展開し、その範囲内に居る、術者以外の者の五感すべて奪う効果を持つ。
この魔術は、夜の一族――つまりバンパイアか、バンパイアに許可を得たものでないと行使できない。そのため、バンパイア達にとって、最終兵器であり、最強の必殺技である。しかも、魔力を始めに消費するだけで、その後の維持に魔力は必要ない。魔力が比較的低いものでも、扱えるのである。
さらに言うなら、この魔術は、バンパイアでないものが使ったことは、有史以来でたったの5回だけである。そのため、研究が進んでおらず、どういった仕組みなのか、どうして許可を得れば使えるようになるのか、などはいまだに解明されていない。
「――発動したか……! これからは俺のターンだぞ……!」
紫音は、血塗れの震える手でポケットから小さな瓶を取り出した。淡い青色の液体が中に入っている。
四苦八苦しながらも、瓶を開け、中身を一気に飲んだ。
相当まずいのか、顔を顰めながら口に含んだそれを飲み下す。
と、同時に紫音の身体中から、ピキッ、とか、パキッ、とか、グジュッ、とか言う気味の悪い音が聞こえてきた。
痛みを伴うのか、紫音は顔を顰めたまま微動だにしない。
ようやくその音が鳴りやんだとき、紫音は顰めっ面を和らげた。
「グゥゥ……。凄まじい痛みだな……。だけど、よく効く。もう、あらかた傷が治ってやがる……。しかも、血まで補ってくれるとは……。流石だな」
確かに、正視に堪えなかった両足は、ズボンが血塗れなことを除いては元に戻っていたし、上半身もシャツが血塗れなことを除けば怪我一つない。
勿論、治っていく最中が一番正視に堪えなかったことは言うまでも無いが。
「――アリカに感謝しないとな……。これが無かったら、ヤバかった……」
紫音は立ち上がると、恐らく、五感を奪われて動けないでいるであろう、と予想したベルゼブブへと目を向けて――――驚愕した。
半分だけ、紫音の予想は当たった。
確かに、ベルゼブブは動いていない。
だが、翅を小刻みに動かして、宙に浮かんでいた。
五感――それも触覚を奪われたものは、平衡感覚を失い立っていられなくる。それが空を飛ぶ者ならなおさらのことだ。
宙に浮かんでいる。
それはつまり、魔術がみじんも効果を発揮していない証拠だった。
「じょ、冗談だろ……。この魔術は、最上級魔術だぞ……。本当に打つ手がないじゃないか……!」
この魔術が効いていないということは、相手が自分の意思で動いて、追撃してこなかったということ。
それはつまり、まるで師匠と弟子が手合わせをするかのように、手加減しているということだ。
それに、相手は魔界の王と呼ばれる大悪魔である。賢王としても名高く、魔法を使うことにかけては、最強とも呼ばれるほど。それほどの存在が、なぜ、魔法や魔術を使わない?
今の力で本気の10分の1以下、もしくは、もっと下かも知れない。
「だけど、諦められるか……! 1パーセント以下の確率でも、勝てる確率があるなら、挑むまで!」
俺には、一つの信念がある。それを捻じ曲げることは絶対にしない!
思わず、口を突いて出てきたその言葉を、高らかに宣言すると、再び、ベルゼブブに挑んでいった。
絶望的な状況。勝てる見込みはゼロに近い。だが、それでも紫音は挑んでいく。
戦いの第1ラウンドが終わり、第2ラウンドが幕を開ける。
第2ラウンドは、光の無い世界の中で、生還と言う名の光を掴み取るための戦い。
その試合開始を告げるゴングが今、鳴り響いた。
走る、走る、走る、走る。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
沙耶は、助けを呼ぶべく、境内に向かって走っていた。
霊力を足に集中させ、脚力を強化しており、そのスピードは、車にも引けを取らないほどだ。
霊力。
大まかに木、火、土、金、水、の属性があり、それを細分化する陰陽の区別が加わり、計10の属性がある。それぞれ陽、陰順に、『甲』、『乙』、『丙』、『丁』、『戊』、『己』、『庚』、『辛』、『壬』、『癸』となる。
これらの属性は、それぞれ特性を持っており、単体で使用したり、込み合わせたりすることで、様々な効果を発揮する。
また、霊力は、水剋火、火剋金、金剋木、木剋土、土剋水の五行相剋の関係――つまり、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ、という互いに弱め合う関係を持つが、一方で五行相生――木生火、火生土、土生金、金生水、水生木、という、たがい生じ合う関係も持つ。他にも、比和、相侮、相乗、等の関係がある。
五行とは互いに弱め合い、生じ合う。陽と陰は複雑に絡まり合い、どちらか一方が無ければ成立しない、。
そして、両方を同時に満たす属性を『両義』と言う。
両義は全てを司る太極から生まれたとされ、それを二分して明確にしたのが陰と陽である。
故に、すべての属性の特徴を備えている。
沙耶が現在足に纏わせているのは、火の陽である『丙』の霊力で、身体能力を向上させる効果を持つ。
だが、沙耶は『丙』は得意ではなく、それほど身体能力の向上は見られない。
本来なら、車どころではなく、F1並のスピードになるはずなのだ。
「――後、もう少し……」
この神社は、参道が長い事で有名で、その全長は1キロ以上あるといわれている。
そんな、長かった参道も終わりが見え、後、300メートルほどで境内に到達しようかと言うとき、何処からともなくあの男――キリファの声が聞こえてきた。
「Might always think letting go surely. Mimicry that proves information that I am concealing myself in this city will be not able to be done. However, relieve. It doesn't kill. It is only forgotten to have met me. (まさか、逃がすとは思っていないだろうな? 私がこの市に潜伏しているという情報を裏付けするような真似は出来ないに決まっている。だが、安心しろ。殺しはしない。私と会ったことを忘れてもらうだけだ。)」
木々に反響して、何処に居るのか特定ができない。
「どこに居るのっ!」
沙耶が怒鳴るように、返事をする。
依然として足は動かし続ける。何処からともなく、詠唱の様なものが聞こえてきたような気がしたが、無視して走った。
もうすぐで境内だ。爆走する沙耶の目に、神社の本殿が迫る。
そして、両脇の木々が無くなり、視界が一気に開けた瞬間――――。
鋭い頭痛が頭を襲い、思考が一瞬真っ白になった。
次の瞬間、目に飛び込んできたのは、先ほどまでと何ら変わりない参道だった。
「なっ! どう、して……」
神社の境内に着くはずだった。
先ほどまで、神社が見えていたではないか!
どうして? どうして?
疑問が沙耶の頭を支配していく。
「何をしたっ!」
沙耶の前方、10メートルほどの所に立っている男――キリファに怒鳴る。
その、敵意と殺気を孕んだ目線を軽くいなし、キリファは答えた。
「It is easy. I am a summons master. Then, there must not be mystery even if the gramary in the metastasis system is skillful. --Ah this moppet was not to have understood English. (簡単なことだ。私は召喚師。ならば、転移系統の魔術を得意としていても何ら不思議はないはずだ。――ああ、このお嬢ちゃんは英語が分からないのだったな。)」
英語で答えようとするが、沙耶が英語が分からないのを思い出したのだろう、今度は日本語で喋り始めた。
「――召喚師が、転移を得意とするのは当たり前だろう? 君の気が緩んだ一瞬を狙って、転移させただけのこと。簡単なことだ」
外国人とは思えない流暢な日本語。独特のイントネーションもない。その、深いバスの声は、俗に言う美声と呼ばれるものだろう。容姿も相まって、さぞかし女性にもてるだろう、と言わざるを得ない。
沙耶も一瞬、顔を赤らめるが、これは敵、これは敵、とキリファを倒すことだけに集中する。
「ここが参道なら、幸君はどこへやったのっ!?」
そう。
沙耶の背中には、先ほどまでいた幸の姿はなかった。まだほんのりと暖かく、幸が居なくなってそれほど時間がたっていないことを沙耶に知らせてくれる。
「まあ、流石に分かるか……。どうせ記憶を失うのだから、この際本当のことを話そうか。ここは私の精神世界だ。幸君とやらには悪いが、君だけを対象にさせてもらった。安心しろ。君たちの命は奪わない。記憶を少々弄らせてもらうだけだ。あの少年や、幸君とやらも例外ではない」
キリファは諭すように沙耶に語りかける。
だが、沙耶はそれを無視して、キリファに跳びかかった。それほど強化されていないといっても、生身で車並みのスピードを出すのだ。その力を溜めて、一気に開放すれば、凄まじい瞬発力が出るに決まっている。
まるで、虎の様な跳躍。力強く、それでいて流れるように優雅。
沙耶の戦闘スタイルは、徒手空拳である。
四肢に霊力を纏わせ、キリファ強烈な一撃を見舞う……はずだった。
次の瞬間、キリファの姿が掻き消え、沙耶はバランスを崩す。
だが、沙耶は空中で一回転すると、無難に着地した。
「どこに……そこかっ!」
沙耶の丁度真後ろ、10メートルほどの所にキリファは立っていた。
弾かれた様に振り返ると、そのまま大きく跳躍。
地を這う様にして、跳ぶ。
紫音の動きよりも数段速いそれは、あっという間に両者の距離を詰め、ゼロにした。
「はぁっ!!」
裂帛の気合と共に、下から救いあげるようにアッパーを繰り出す。
惚れ惚れするほど美しいフォームから放たれた拳はしかし、キリファにあたることはなかった。
またしても、当たる直前に、姿が掻き消えたのだ。
「くっ、そっ!」
2回連続で攻撃をかわされた事に苛立つ沙耶。
そんな沙耶に声が掛けられる。
「無駄だ。ここは精神世界だからな。私の思い通りになる。ほら、たとえばこんなことも」
そういうと、キリファの姿が6つに分裂した。
「「「「「「――まあ、こんなことができるのは私自身に関してだけだがな。それに私は召喚師だから、自分自身の攻撃力はないに等しい」」」」」」
6つの口が同時に喋るので、耳がおかしくなりそうだ。
「信用すると思う?」
そんなことをおくびにも出さず、沙耶が言う。
「「「「「「まさか。まあ、信用しようが、信用しまいがどちらでも構わない。私はただ君を倒せばいいだけだからな。ああ、それと、私を倒せばこの異界から――精神世界から抜け出せる。信用するか信用しないかは君次第だ」」」」」」
それだけ言うと、口々に詠唱を始めた。
「「「「「「Son of stormy god Typhon and Echidna. (嵐の神テューポーンとエキドナの息子。)」」」」」」
「「「――Watchdog that protects hell. (地獄を守護する番犬よ。)」」」
「「「――Watchdog of bull of Geryon. (ゲーリュオーンの雄牛の番犬よ。)」」」
「「「――Excellent watchdog that doesn't let the dead who run away even people how many pass. (何人たりとも逃げ出す亡者を通しはしない優秀な番犬よ。)」」」
「「「――Pitiful watchdog killed foolishly with speed at which it cannot catch up in everyone. (何者にも追いつけない速さを持ちながら、愚直故に殺された哀れな番犬よ。)」」」
「「「「「「――Watchdog's brother. Appear in compliance with my calling! (番犬の兄弟よ。我が呼びかけに応え、姿を現せ!)」」」」」」
「「「「「「――Summons! (召喚!)」」」」」」
「「「――'Cerberus' (『三連頭の番犬』)」」」
「「「――'Orthrus' (『神速の双頭犬』)」」」
キリファの前に魔法陣が2つ現れる。
それぞれ中心には、2つの頭を持つ犬と、3つの頭を持つ犬が描かれている。
沙耶は本能的に危険と感じ、無意識のうちに大きく距離を取っていた。
視線が下に固定されているように、上に向かない。
「――――えっ?」
沙耶は自分の行為に愕然とした。
自分が気圧された?
まだ本体すら出て来ていないのに?
ありえない。そんなこと。
あってはならない。
パァン! という音が響いた。
それは、沙耶の頬を叩いた音。沙耶自身が頬を叩いたのだ。
「しっかりしろ! あたし! こんなのに負けてたら、みんなに顔向けできないじゃないか!」
今度は、しっかりと前を――キリファを見据える。
魔法陣から、闇が――否、漆黒の色をしたナニカが盛り上がるようにして出てくる。
次の瞬間、思わず膝をつきそうになるほど強い重圧が、沙耶を襲った。
「ぐっ……」
だが、沙耶はそれに屈しなかった。
膝が若干震えているものの、しっかりと前を見据え、その視線には揺らぎは無い。
「――負けるもんか……。負けてたまるか……!」
震えを取り払うかのように、大きく足踏みをする。
再び前方を睨みつけるのと、漆黒のナニカが出てくるのは同時だった。
「「「グロォォォォォォォ!!!」」」
三連頭の犬が吠える。
「「ラオォォォォォグ!!」」
双頭の犬が吠える。
戦いが始まった。
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消えた分も合わせると、計1万5千文字以上書いてることになります。
よくやった私! と自分を褒めたい。
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