6話 日々の労い
「うぅ、Zzz」保野華は枕を抱き枕にして爆睡している。一足先に目覚めた伊織は時計を確認して、(6時か…)残っていた仕事を春樹に送り。保野華が隣に寝ていることに気づかず、執務室に戻った。
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「しゃぁぁぁぁ!!!!!」
両手を伸ばして体に入っていた力を一気に抜く。ようやく仕事が一段落終わることが出来た。
「久しぶりに、寝れるぞ〜」体の力を一気に抜き机に倒れる。
(保野華には悪い事したな…。まさかあそこで気を失うとは)
と机に倒れ込みながら置いてあった、参考書を見つめる。
「……」
(あの戦争さえ無ければな……)
心の中でここエレミヤに来る前の事を思い出す。全てが最悪だった。何もかも信じられなかった。(
そう言えば ▓ ▓は元気だろうか)ふと昔拾った子どもの事を思い出す。
「AM特殊学園から要請、来てたな」
そう呟きPCを開けてメールを確認する。
「……面倒な案件だな」
メールを一通り読み終えて静かにPCを閉じる。しばらく天井を見上げて内容を整理して仕事の優先順位をある程度決める。ただ、俺の一人でどうにかなる問題ではないから春樹……或いは深雪……誰かが帰ってきてくれたら充分楽する事は出来るのだけど。
そう思い冷蔵庫の方向に向かい、無意識にエナドリを手に取り時計を確認する。時刻は8時少し、夕飯の時間はとっくに過ぎている。
「……一旦仮眠室に戻るか」
取り出したエナドリを一気飲みし空になった缶を机の上に置く。羽織っていた黒色の上着を脱いで椅子に掛ける。
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「……⁉」自分がさっきまで寝ていたであろうベッドの上に保野華が大の字にしかも、俺が使っていた枕を抱き枕にして寝ていた。
「……保野華、起きろ、もう夜だぞ~」冷静でいる為に保野華を揺さぶって起こす。
別に寝てることは問題ないのだけど‥‥寝方が可愛い……別に下心はないけどもこのままだと何か良くない気がする。
「ぅぅ……もう少し」
「ダメだ、8時だ。早く起きろ」優しく体を揺さぶって保野華を起こす。
「ぅ……せ、せえあ、伊織先生‼」
「おはようで合ってるかな、そう言ってまた無意識に保野華の頭を撫でる。
「お、おはよう、ございます///」
顔を赤くして保野華は少し俺を見つめた後、
「い、今、何時ですか?」
「8時、15分だな」
「8時⁈、門限過ぎてる」
「門限?寮のか?」
「はい……」絶望した顔で保野華は下向く。もう死にたそうな顔をしているのは明白である。これはもう、死んでるな。そう保野華を見つめて伊織は
「取り敢えず、ご飯でもするか」
そう言って仮眠室の電気を付ける。
「ご飯……」
「食べてないだろ?」
「食べてないですけど……」
「門限の事は後で考えよう、今は取り敢えず夕食だ」
明るくそう言い保野華を元気づける。これでいいのかはあまり分からないが少しでも保野華の気持ちを落ち着かせる事が出来ればと最善の策を出した。
「はい‼」
元気よく挨拶した保野華を見て内心ホッとした。
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時刻は8時45分。執務室、
「ほいっと、お待たせシチューだ」クリームの様な色のスープの中に赤緑黄色の色とりどりの野菜が沢山入っている。匂いはベースの牛乳の甘さとそれぞれの野菜が出す、少し苦味がある匂い。
「美味しそう……」保野華はそうポツリ呟く。それを見て伊織は内心ホッとする。今できる最大限の力で料理したのだけど、かっこつけた割にダメだったら、大人として尊厳が破壊される。
「飲み物は何がいい?」グラスを机に置き、冷蔵庫に戻る前に保野華に聞く。
「お水で大丈夫です」
「わかったオレンジジュ―スな?」←元からオレンジジュースを出す予定の人。
(先生、耳大丈夫かな?)そう心配されているのを置いといてオレンジジュースのペットボトルと炭酸水を持って来る。
流石に子ども……生徒の前でお酒類は飲めない。
「いいですか?こんな豪華で」
その意味は理由を聞かなくても分かる。仕事の間、興味本位でヴァルキュリア警察学校・特別機動隊を調べて分かった。
ヴァルキュリア警察学校・特別機動隊
ヴァルキュリア警察学校全生徒(1400人)中選ばれた120人の小隊。存在もほぼ極秘情報である。謎に包まれている組織。任務内容は危険度が高く、任務の度に死傷者が出る。ルールに厳格であり、AM特殊学園と変わりないと言っても差し支えない。だからシチューは兎も角、ジュースなんてそうそう飲めるものではない。
子どもを軍に投入しているのと同じくらいである。それを知って今日は保野華を存分に労う事にした。
「あぁ、いつものご褒美だ」
良い子の皆はエナドリを一気飲みしたらダメだよ。




