09 仕事中に抱き合っていた?編
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【あらまし】
市民からクレームの手紙が市役所に届いた。
『美浦市役所の職員が、昼間から女性を抱いていた。しかもその女性は大泣きしていた。お宅の職員は、何をしているんだ』という内容だった。
どうやら先日、速水爽香が丹沢純也の胸に顔をうずめて泣いていた件らしい。
丹沢純也はピンチに陥った。
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【主な登場人物】
●登場人物
速水爽香 20歳女 女子ボートレーサー
市原和子 70歳女 ハッピーハイツ、速水爽香の隣の住人
鬼塚厳司 55歳男 美浦市役所住民課長
丹沢純也 30歳男 美浦市役所住民課主事
明石春菜 34歳女 美浦市役所住民課主任
千葉洋市 56歳男 美浦市役所秘書課長
中牧輝義 41歳男 美浦市役所秘書課係長
岩渕弥生 42歳女 美浦市役所秘書課主任
篠田真治 33歳男 美浦市役所秘書課主任
大高正法 53歳男 美浦市役所人事課長
立浪雅文 45歳男 美浦市役所人事課係長
鈴木英記 33歳男 美浦市役所人事課主任
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 市民からクレームが! 「昼間から男と女が抱き合っていた」
6月下旬、美浦市役所秘書課。
岩渕弥生(いわぶち・やよい・42歳)は、市長秘書である。この日、市長あてに届いた数通の「市長への手紙」を読んでいた。
『市長への手紙』とは、住民の意見・提案を市政に反映させようとするもので、市長が直接、その手紙を見ることになっている。この市民サービスは、多くの市町村で取り入れられている。
その手紙の内容を簡潔にまとめて、市長に報告するのが秘書の日常業務となっていた。
弥生「さて、今日届いた『市長への手紙』は、と」
弥生「なになに『美浦市役所の職員が、昼間から女性を抱いていた。しかもその女性は大泣きしていた。お宅の職員は、何をしているんだ』ですって」
隣に座っている中牧輝義(なかまき・てるよし・41歳)秘書課係長が、
中牧「そんなことあり得るんですかねぇ?」
弥生「私もそう思います」
中牧「差出人の住所と名前は、書いてありますか?」
弥生「あります」
中牧「単なるデマとか誹謗中傷だと困りますので、私と篠田さんで差出人の所へ行ってきます」
篠田とは、篠田真治(しのだ・しんじ・33歳)、秘書課の主任である。
中牧と篠田がハッピーハイツに着いた。二人は階段で二階に上がると、
篠田「ここですね」
202号室の前で篠田が言った。中牧がドアをノックした。しばらくして中から、70歳ぐらいの女性の声がした。
女性「どちら様ですか?」
中牧「美浦市役所の者ですが」
女性の名前は、市原和子(いちはら・かずこ70歳)、ひとりで暮らしていた。
中牧「お宅様から『市長への手紙』を頂戴しましたので、そのことで」
和子「まぁ、どうぞ中へ。隣に聞かれても困りますから」
和子は、二人を部屋の中へ招き入れた。中牧と篠田は和子の指示に従った。
3人は、4人用の食卓テーブルに座ると、すぐに和子がしゃべり始めた。
和子「いえね、お隣さんのことなんだけれどね」、
中牧「はい、」
和子「この間、この間って言っても1週間ぐらい前かしらねぇ、お宅の職員2人が来て、私に『お隣は、住んでますか?』って聞くから、『わからない』って答えたのよ」
中牧「はい、」
和子「だってお隣さん、昼間は静かだし、夜になっても明かりがつかないし、」
中牧「そうですね。それじゃ住んでいるかどうか、わからないですよね」
和子「でしょう?」
中牧「訪ねて来たふたりは、美浦市役所の職員で間違いないですか?」
和子「そりゃぁ間違いないわよ。だって男の方が『美浦市役所の者なのですが』って言ってたもの」
中牧「それなら、間違いないですね」
和子「そして、その数日後だったわ。今度は男性3人が来て、ドアをノックする音が聞こえたの」
中牧「隣の部屋をノックしていたんですね」
和子「そうよ。でも、うちかと思って窓から覗いたの」
中牧「男性3人ですか?」
和子「そうよ。車で来たみたい。エンジンの音がしたから」
中牧「はい、」
和子「しばらくして、またエンジンの音がしたから、私はてっきり3人とも帰ったと思ったのよね」
中牧「そうですね」
和子「そしたら、隣から女性の泣き声が聞こえて来るじゃない、」
中牧「お隣、住んでいたんですね」
和子「それも、大きな声で泣いているのよ」
中牧「はい、」
和子「それで、私は『なんだろう?』と思って外へ出た訳、」
中牧「なるほど」
和子「私が外へ出て隣を見たら、珍しく隣のドアが開けっぱなしだったから『あれっ!』と思ったのよ」
中牧「不思議ですよね。男性3人は帰ったはずだし、」
和子「それで、気味が悪いからちょっと首を出して隣の部屋を覗き込んだのよ。決して悪気があったわけじゃないのよ」
中牧「わかります。当然の行動だと思います。治安という観点からも」
篠田「強盗とか、多いですからね」
今度は篠田がフォローした。
和子「で、覗き込んだら、男と女が抱き合っているじゃないの!」
中牧「二人は部屋の中で、寝ていたんですか?」
和子「いえ、立ってだけど」
中牧「で、女性は立って泣いていたんですね?」
和子「そうよ。泣きながら男に抱きついていたわ。男も女の背中に手を回していたわよ!」
中牧「なんででしょう?」
和子「なんでだったんだか、こっちが聞きたいわよ!」
中牧「その男性は、美浦市役所の職員だったんですか?」
和子「そうよ。最初と2度目と両方来た男よ!」
中牧「それで、その後は?」
和子「わからないわ。男女が抱き合っているのを見て、私は、慌てて自分の部屋に戻ったから」
篠田「今のお話を伺った限りでは、住民課の調査みたいですね」
篠田が口を挟み、自分の考えを述べた。
中牧「そうだな。あとで、住民課長に聞いてみよう」
秘書課中牧係長が美浦市役所に戻ると、すぐに鬼塚住民課長に電話を入れた。
中牧「ちょっとお伺いしますが、ハッピーハイツに市民が住んでいるかどうか調査されました?」
鬼塚「ええ、しましたけれど。それが何か?」
中牧「二回調査に行った男性職員がいると聞いたのですが誰だかわかりますか?」
鬼塚「それなら丹沢です。何かありましたか?」
中牧「いえ、こちらもまだ調査中なので、何も言えないんですが、また何かありましたらご協力をお願いいたします」
鬼塚「わかりました」
電話を切ると中牧係長が篠田主任に言った。
中牧「ハッピーハイツで女性と抱き合っていた職員が分かったよ」
篠田「誰ですか?」
中牧「住民課の丹沢だ」
篠田「丹沢ですか」
中牧「この案件、私から市長に報告しておくので、篠田さんは人事課に経緯を報告書として上げてくれないかな?」
篠田「承知いたしました」
【02】 人事課ヒアリング『勤務時間中に、女性と抱き合っていた件』
数日後の午前中、人事課で。
秘書課長千葉洋市(ちば・よういち56歳)と人事課長大高正法(おおたか・まさのり53歳)の両課長が話をしていた。
千葉「篠田の方から丹沢君に関する報告書が来てるかと思いますが、読まれましたか?」
大高「ええ、読みました」
千葉「いかがいたしましょう?」
大高「報告書を見る限り、当然『美浦市倫理条例』に抵触しますので、なんらかの処分が必要ですね」
そう言うと、大高はパソコン画面で、『美浦市倫理条例』を千葉に見せた。
【パソコン画面】
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『美浦市倫理条例』
(目的)
『第1条 この条例は、職員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、行政の中立性及び職務の執行の公正さに対する市民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する市民の信頼を確保することを目的とする』
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千葉「なるほど。『市民の疑惑や不信を招く』とはっきりうたってありますね」
大高「ですから、この件は完全にアウトでしょう」
千葉「やむを得ませんなぁ」
大高「午後、本人に、倫理ヒアリングをしましょう。課長は出席できますか?」
千葉「大丈夫です」
その日の午後、会議室で人事課による倫理ヒアリングが丹沢に対して行われた。事務局として、人事係長の立浪雅文(たつなみ・まさふみ・45歳)が進行を行った。
立浪「では、ただいまより倫理ヒアリングを始めます。本件につきましては、一般市民から『市長への手紙』が届き、市の男性職員が勤務時間中に、女性と抱き合っていた。という目撃情報によるものです」
出席者一同が、静かに聞いていた。出席者は、聴取者として大高人事課長と千葉秘書課長の2名、説明員として中牧秘書係長、進行役の立浪人事係長、事務局記録係の鈴木主任(鈴木英記・33歳)を含め、合計5名であった。
立浪「このことに基づき、秘書課で調査しましたところ、その該当職員が判明しましたことから、該当職員を召喚し、事情ヒアリングを行うものであります。では、丹沢さん前にあるテーブルの方にお座りください」
丹沢は、ひとつポツンとおかれた机と椅子の所まで行って座った。
立浪「では、丹沢さんにお伺いします。この『市長への手紙』をもとに、秘書課で状況調査をしましたところ、去る6月18日、午前9時半過ぎに、美浦市美女来にある共同住宅、ハッピーハイツ203号室において、そこの住人の女性と抱き合っていた、」
千葉秘書課長「ほぉーっ」
大高人事課長「うーん」
立浪「丹沢さん、ここまで間違いないですか? それとも相違があれば、どうぞ発言してください」
丹沢(うーん『抱き合っていた』のか、それとも『抱きつかれた』のか?)
丹沢は、言った方が良いのか、言わない方が良いのか考えてしまった。
人事課長「なに、黙ってるんだ! 聞かれたことに、早く答えろ!」
丹沢「あ、あっ、はい」
立浪「なにか、違うところがありますか?」
丹沢「はい、しいて言えば、『抱き合っていた』のではなく、『抱きつかれた』という表現の方が正しいかと」
立浪「向こうが勝手に抱きついて来たということですか?」
丹沢「まぁ、はい」
人事課長「お前は、相手が勝手に抱きついて来た。だから、相手のせいだ。と、言いたいんだな」
丹沢「いえ、そこまでは、」
人事課長「自分は悪くない。だから、倫理条例に違反してないってかぁ、」
人事課長の声が、段々声が大きくなった。
丹沢「……」
人事課長「お前、相手のせいにして、この場から逃げようとしているんじゃないのか?」
丹沢「そんな。とんでもございません」
人事課長「じゃぁ聞くが、抱きつかれたという証拠は、どこにあるんだ?」
丹沢「ありません」
人事課長「ほら、見ろ! でたらめ言ってんじゃないよ! 抱きつかれたのなら逃げればいいじゃないか。お互いで抱き合ってイチャイチャしてたんだろう、昼間っから」
丹沢「それは、違います。イチャイチャなんかしてません!!」
人事課長「なんだぁー、その言い方は。上司に向かって」
人事課長が丹沢をにらみつけた。
秘書課長「まぁまぁまぁ」
人事課長「こいつが嘘を言うから、つい」
秘書課長「二人で『抱き合っていた』のか? 一方的に『抱きつかれた』のか? ここは、重要なところじゃないですか。それによって、処分だって変わるかも知れない。そうでしょう、人事係長」
秘書課長は、口論している二人以外の者に話を振った。
立浪「そうですね。処分の軽重に関わりますね」
秘書課長「丹沢さんとその女性は、以前からの知り合いなの? それともうひとつ、どういう関係なの?」
立浪「丹沢さん、今の二つの質問に答えてください」
丹沢「はい、お答えいたします。ひとつ目の質問につきましては、以前に二度ほどお会いしました。そして、二つ目につきましては、住民課窓口でのお客様と窓口担当職員という関係です」
立浪「『以前に二度ほどお会いしました』というのは、二度とも住民課の窓口で会ったということでいいですか?」
丹沢「そうです」
立浪「では、いわゆる『友達とか、恋人とか、そう言う関係ではなかった』と」
丹沢「はい」
立浪「その女性は、住民票でも取りに来たのですか?」
丹沢「いえ、一度目は転入の手続きに見えました。しかし転出証明書をお持ちでありませんでしたので、帰っていただきました。二度目は転出証明書を持って見えましたので、転入の受付をさせていただきました」
人事課長「意義あり! それも証拠がない」
立浪「誰かそのことを証明できる人がいますか?」
丹沢「二度とも、同じ職場の明石さんが見ています」
立浪「住民課の明石さんが?」
丹沢「そうです」
秘書課長「では、明石さんをちょっとここに呼んで」
事務局記録係の鈴木主任が内線電話で、明石春菜を呼び出した。
鈴木「明石さん、ちょっと502会議室まで来てくれますか?」
数分後、明石がやって来た。
立浪「その女性が『二度、転入手続きのために住民課を訪れた』ことに間違いはないですか?」
春菜「はい、間違いございません。近くで見ておりましたので」
立浪「課長から何か聞くことはありませんか?」
人事課長「ない!」
秘書課長「なし」
立浪「では、明石さん職場に戻られて結構です。ありがとうございました」
人事課長の分が悪くなった
人事課長「しかし、おかしいじゃないか!」
立浪「はい?」
人事課長「中牧秘書係長、もう一度、『市長への手紙』の『抱いている』部分をゆっくりと読んでもらえる?」
中牧「わかりました」
中牧は『市長への手紙』を手に取り、読み始めた。
中牧「『美浦市役所の職員が、昼間から女性を抱いていた。しかもその女性は大泣きしていた。』」
人事課長「もういい。ありがとう。ほら、『職員が、昼間から女性を抱いていた』と、あるじゃないか。丹沢君は、『抱きつかれた』といっているが、覗き込んだ隣のおばさんは、『抱いていた』と、言っているんだよ。過去に2回しか会っていない、というのを認めたとしても、3度目で仲良くなって『抱き合っていた』ということもあるだろうし、ここで、はっきり私がおかしいと思うのは『相手の女性は大泣きしていた』という点だよ。
私が思うに、恐らく丹沢君がだね、無理やり抱きついたんだと思うよ。だから相手は泣いたんだよ。しかも相手はひとり暮らしだったんじゃないのか? 丹沢君は、誰にも見られず、自分の性的欲求を満たそうと抱きつき、部屋の中へ押し込もうとした。そこにちょうど、隣のおばさんが来た。そう言うことだろう」
丹沢は、あきれて口を開けて上を向いた。
秘書課長「うーん」
秘書課長は唸っていた。
立浪「丹沢さん、今の人事課長の意見に対して、何かありますか?」
丹沢「まったく違います。お門違いもいいところです。すべて人事課長の作り話です」
人事課長「じゃぁ、なぜ泣いてたんだよ、お前!!!」
人事課長が激しく大声を上げた。
会場が静まり返った。
丹沢は何もしゃべらなかった。
人事課長「中牧君、さっきの住民課の明石さんに電話して、相手女性の住民票がひとり世帯かどうか、確認してくれ」
中牧「かしこまりました」
中牧は、すぐに住民課の明石春菜に内線電話した。
中牧「……ひとり世帯ですか?」
春菜「ひとり世帯です」
中牧「ありがとうございました」
中牧が電話を切った。
中牧「ひとり世帯だそうです」
人事課長「やっぱりな。丹沢は、それを知っていて、最初からその女性を襲うつもりだったんだよ。ところが隣のおばさんに見られたので、途中で、つまり未遂で市役所に戻って来たんだよ。図星だろ」
今度は丹沢の分が悪くなった。
立浪「丹沢さん、今の人事課長の話で間違いはありませんか?」
丹沢「まったくの言いがかりです」
人事課長「なんだと!」
丹沢「私がその女性を襲おうと思う根拠もなければ、証拠もありません。人事課長の勝手な妄想に過ぎません」
人事課長「襲う気がなかった、という証拠もないだろ」
丹沢「相手の女性に聞いたらどうですか?」
人事課長「そんなもん、相手の女性は、お前が怖くて言えないだろ」
秘書課長「これまた、平行線ですな」
立浪「ええ」
秘書課長「私もひとつ引っ掛かる点があるんです」
立浪「はい、なんでしょうか?」
秘書課長「相手の女性宅には、職員3人で行ったんですよね?」
中牧「隣の女性が、そう言ってました。そのことは、私がはっきりと聞いてきました」
秘書課長「では、どうして3人で行って、帰るときは、丹沢君を残してニ人で帰ったのですか? みなさん、そう思いませんか? これって不自然ですよね」
中牧「なるほど」
立浪「丹沢さん、この点については、どうなんですか?」
丹沢「わかりません。私が置いてけぼりを食ったんですかね。私とその女性とが、話している間に他の二人は帰ってしまいました」
人事課長「そんな馬鹿な!」
立浪「では、丹沢さんが『ここに残りたい』と言ったわけではないんですね?」
丹沢「はい、言ってません」
人事課長「嘘だ! お前が『どうしてもここに残りたいから、二人とも先に帰ってください』と、言ったんだよ」
秘書課長「他の二人の職員とは誰なんですか?」
中牧「それについては、私が調べました。住民課長と住民課の戸部主任でした」
秘書課長「じゃぁ、住民課長にお越し願って、証言してもらいましょう」
立浪「はい、わかりました」
立浪が内線電話で住民課長を呼び出した。
しばらくして鬼塚住民課長が502会議室にやって来た。
立浪「お忙しいところ誠にすみません。ちょっと確認したいことがありますので、証言していただけますか?」
鬼塚「はい、わかりました」
立浪「ハッピーハイツには、職員3人で行ったんですよね」
鬼塚「はい」
立浪「その3人とは、誰ですか?」
鬼塚「私と戸部と丹沢です」
立浪「帰るときは、課長と戸部さんの2人で帰ったんですね」
鬼塚「はい、その通りです」
立浪「なぜ、帰るときは2人だったのですか?」
鬼塚「丹沢が『私は少し残ります。課長と戸部さんは先にお帰りください』と言ったからです」
丹沢「嘘だ!」咄嗟に出た。
立浪「丹沢さんは、黙っててください。今は、住民課長に聞いているのです。住民課長、間違いないですね」
鬼塚「間違いございません」
人事課長「やっぱりな」
人事課長がニヤリと笑った。
立浪「鬼塚課長、ありがとうございました。職場に戻られて結構です」
鬼塚住民課長が退室した。
秘書課長「証人も出ましたね。『故意に残りたい』ということが判明しましたね」
立浪「そうですね」
丹沢「そんなぁ」
秘書課長「女性を襲おうと思ったかはどうかとして『上司を帰し勤務中に女性と2人きりで相手の部屋に居た』ということだけでも処分の対象にはなるんじゃないですか?」
立浪「人事課長、何かありますか?」
人事課長「あとは、私たち課長同士で、ということで、丹沢君はもういいだろう」
立浪「わかりました。丹沢さん、もういいです。退室して結構です」
丹沢は、納得のいかないまま中途半端で退室させられた。
人事課長「処分の内容ですが?」
秘書課長「そうですね、どうしましょう?」
人事課長「退職では?」
秘書課長「それは無理でしょう」
人事課長「降格させる、と言っても、彼は役職に就いているわけでもないし、これ以上落ちませんな。ははははは」
秘書課長「……」
人事課長「では、停職?」
秘書課長「減給というのもありますよ」
人事課長「立浪君、例規上はどうなんだ?」
立浪「はっきりと例規にはうたってありませんが、減給ですかね。あとは、その減額割合と月数の問題ですね」
人事課長「月給の全額支給停止と半年ですかね」
秘書課長「それは、ちょっと重すぎるでしょう。3割カットで1か月では」
人事課長「ちょっと甘いですね。それでは市民の理解が得られないでしょう」
秘書課長「3割カットで3か月では」
人事課長「まぁ、甘いですが、妥協しましょう。じゃぁそれで、鈴木君、後で起案書、上げておいて」
秘書課長「管理者としての住民課長、住民係長も処分が必要ではないですか?」
人事課長「あぁ、そうか。では、3割カット1か月で」
秘書課長「そうですね」
鈴木「わかりました」
人事課長「それと、決裁が下りたら、掲示板に載せておくんだぞ」
鈴木「わかりました」
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【後書き】
たくさんの作品の中から本編をお読みいただきありがとうございました。m(__)m
まだまだ未熟ではありますが、皆様に愛される作品となりますよう努力を重ねていく所存です。m(__)m
重ね重ね御礼申し上げます。本当にありがとうございました。m(__)m
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