第8章: 「予期せぬ報酬」
テレポートの光が収まり、三人は広場の真ん中に立っていた。周囲から驚きの声が上がる。
「“琥珀の炎”じゃないか!?」「あの男、新顔のSランクだよな?」「赤髪の女は誰だ?」「いきなり現れた!?」
頭を撫でる。空から落ちてきた植木鉢の痛みが残っていた。プリンは明らかに怒っている。なんで俺ばかりこんな目に…
「計算ミスったみたいね」ザラがマントを整えながら言った。
「巻物のせいよ!」マヤが抗議する。
ため息をつく。
「人目を気にする前に、さっさとギルドに行こう」
三人は急いでギルドへ向かった。
――ルミスギルド――
入ると同時に、受付嬢がペンを落とした。
「生きてたんですか!?」駆け寄りながら叫ぶ。「委員会が“氷蝕”と判明して任務を撤回したんです!心配で…死なせてしまうかと」
「ああ、何度か死ぬかと思ったよ」
受付嬢は“氷蝕”の特性と危険性を説明した。すると、テーブルが軋むほどの袋をドンと置く。
「不可能任務でしたが、達成されました。委員会は総額5000ゴールドの報酬を認めました」
マヤの顔が青ざめる。
「五、五千…?」声が震えた。「家が2、3軒買える…まだ余るわ」
最高だ!これでやっと穏やかな生活が…!
黙って見ていたザラにも当然分け前がある。彼女がいなければ成功しなかった。
「報酬は三等分だ」俺が提案する。
マヤが頷く。
「そうね。公平よ」
ザラは瞬きして驚いた様子。
「……感謝する」一瞬、赤い瞳が輝いた。「でも、いいのよ」
「いや、当然だ!お前がいなきゃ死んでた」
「認めたくないけど、あなたは優秀だったわ」マヤも付け加える。
「でも――」ザラが言いかけると、
マヤが遮った。
「その分け前で、そのみすぼらしいマントも買い換えなさいよ!」
ザラはマヤの発言に眉をひそめたが、結局感謝の表情に戻った。
「…わかった。受け取る」
外はもう夕暮れだった。
「ザラ」俺が声をかける。「ルミスで用事があるんだったよな?」
「ええ、明日までだから。今日は休む」じっと見つめてくる。「ところで――」
突然、マヤが割り込んだ。
「わ、私帰るわよ!」背を向けて、「煉…臨時パーティは解散ね。もしも…また任務とかするなら…」
何が言いたいんだ?
「忘れて!じゃあ!」走り去っていく。
ザラは考え込むように俯いた。
「さっきの話だけど」急に切り出す。「私と同じ雷を操れる理由、まだ教えてくれないわね」
「あーあ、疲れた!」ごまかす。「ザラ、楽しかったよ。明日の用事、うまくいくといいな!またな!」
質問を無視して逃げる。怒らせてないといいが…能力の秘密は明かせない
ザラ一人が通りに取り残され、呆然と二人の背中を見送った。
ようやく宿に戻る。ベッドに倒れこむのがこんなに懐かしいとは!疲労がどっと出た。
「レン!」プリンの声が頭に響く。
神域に引き込まれた。プリンは頬を膨らませて浮かんでいる。
「あの二人と手を繋いだのは何!?」
「プリン!あれは転移の条件で――」
「関係ないわ!どうしてそんなことするの!?」涙目だ。「それにマヤは相変わらず失礼だし、ザラなんて…平然と近づいてくる危険人物よ!」
「ザラが危険?」
「そうよ!私たちの愛を脅かす存在!」
「僕たちの愛?」本当に婚約だと思ってるのか?
「そうよ!前も言ったでしょ?」プリンは顔を赤らめて近寄る。「あなたをこの世界に呼んだ時、祝福と共に婚約者になったの」
「は!?聞いてないよ!?」
プリンの表情が曇る。
「…私と一緒になりたくないの?」
「い、いや、そうじゃなくて…急すぎて」
「よぉし!レンは嫌じゃないって!」ぎゅっと抱きつく。「今回は許してあげる。ドラゴン戦もかっこよかったし」耳元で囁く。「でもあの二人は監視するからね」
もう大変だ…
「心配するな。マヤとはパーティ解散だし、ザラは一時的な協力者だった。彼女には用事があるらしい」
「ふん!ならいいわ」空間が薄れ始める。「じゃあね、レン。あなたの成長が楽しみ。これからも応援してるわ!」
白い光に包まれ、宿の部屋に戻された。
予想以上に波乱だったが、無事終わった。ザラもマヤも…複雑だし、プリンの嫉妬はすごい。でも、これでようやく穏やかに暮らせる
窓の外、ルミスに月が昇る。
――別の宿屋で――
それぞれの部屋で:
マヤはコインを数え直しながら、どうやって煉を次の任務に誘おうか考えていた。
ザラは天井を見上げ、煉が放った雷でドラゴンから救われた時の彼の顔を思い出し、かすかに笑った。