第18章:「雨に潜む恐怖」
屋敷の探索を続けながら、ノコが興奮して手を叩いた。
「わあ! レンは次々に驚かせるニャ!」
マヤは疑いと感心の入り混じった視線を俺に向ける。
「一体、他にどれだけ隠し玉を持ってるのよ?」
ザラは黙ったまま、鋭い分析眼で俺を観察していた。「雷魔法にマナコア、そして今度は神聖魔法……?」
ガラガラッ!
突然の激しい雨音に一同が飛び上がる。マヤは明らかに震えた。
俺はそっと近づいた。
「大丈夫か?」
「ザラに絶対言うなよ!」マヤは爪を俺の腕に食い込ませながら呟いた。
「わかってる」傷んだ腕をさすりながら約束する。
ザラは興味深そうにマヤを観察していた。「雨の話で動揺してたわね……そして今も……」
ゴロゴロッ!
雷鳴が屋敷を揺らす。マヤは驚いて猫のように跳び、俺にしがみついた。
「マ、マヤ……?」彼女の震える体温を感じながら、俺は声を詰まらせた。
気づくと、マヤは飛び退き、顔を真っ赤にした。
「何でもない! ただ……滑っただけ」
ノコがクスクス笑う。
「あー、わかったニャ!」
ザラがノコに耳打ち。
「ねえ、ノコもマヤが……」
「うん! 間違いないニャ!」ノコは耳をぴくぴくさせた。
ザラは悪戯っぽく微笑み、指を鳴らして小さな雷をマヤの近くで炸裂させた。
「きゃあっ!」
「ザラ! 何するのよ!?」
「琥珀の炎が雷に怯えるなんて信じられないわ」ザラは楽しげにからかった。
「雷じゃない! 雨が……苦手なだけ」マヤは子供のように腕を組んで言い張った。
ザラが理由を聞こうとした瞬間、ノコが割り込む。
「心配しないでマヤ! 誰にだって怖いものはあるニャ! 例えば私はしっぽを触られると……」
「にゃあっ!?」
ノコは針で刺されたように跳び上がり、再び俺の背中に飛びついた。
「誰が私のしっぽを触ったニャ!?」
ザラは無罪をアピール。
「ごめん、ただ確かめたくて」
ノコはザラにタックルを仕掛け、二人は猫のじゃれ合いのような小競り合いを始めた。マヤはその様子を見て、かすかに微笑んだ。
「仲がいいのか……」パーティーが衝突せずに済んで安心する。
「さあ、先に進もう」俺はノコとザラを引き離し、「もうすぐ終わりだ」
探索を再開し、裏庭に近づくにつれ、全員に悪寒が走った。
突然、ノコが跳ねる。
「またしっぽを触られたニャ! ザラ、やめて!」
「私じゃないわ!」
マヤが指差す。
「みんな……あれを見て」
青白いオーラが裏庭へと誘導するように漂っていた。
「導いてる……のか?」
ザラが頷く。
「そうね。屋敷内の幽霊はもういない。行きましょう」
ノコの尾の毛が逆立つ。
「何か悪いものがいる気がするニャ……」
四人は顔を見合わせた。雨の音が止む中、屋敷の裏庭へと足を進めた。