第17章:「屋敷の幽霊」
森の中を進みながら、ノコにパーティーの自己紹介をした。
「ギルドの冒険者よ」マヤは剣の柄を調整しながら言った。「私は炎の剣技が専門」
「わあ、かっこいいニャ!」ノコの耳がぴくんと跳ねた。
ザラは腕を組む。
「私は雷を操る」
「すごいニャー!」ノコは祭り初めの子供のように目を輝かせた。
俺は黙って視線を逸らし、質問を避けようとしたが――
「ノコは?」ザラが尋ねた。「あのキノコイド・キングへの氷の矢、見事だったわ」
ノコは胸を張った。
「自然の精霊様の祝福を受けてるニャ! 風で速く動けて、水で氷の矢を作れるの! 森で菌獣相手には凍らせるのが一番ニャ!」
「へえ……」俺は感心して呟いた。
ザラは思索にふける。
「祝福を持つ者は珍しい……つまり、あなたは特別なのね」そう言うと、続けた。「ところで、ノコはレンも祝福を受けてると言ってたわね」
「あ! 見ろ! 屋敷だ!」俺は即座に話題をそらし、興奮気味に指差した。
屋敷に到着した。広大だが手入れされていない庭が広がっている。
「まあまあの買い物だったみたいね」マヤが言った。
「まぁ、値段は格安だったからな」
ザラが曇り始めた空を見上げる。
「雨が降りそうだ。早く中に入りましょう」
「雨?! 今すぐ中に入るニャ!」マヤが慌てて叫んだ。
「どうしたの?」ザラが訝しむ。
「何でもない!」マヤは俺に飛びつき、口を塞いだ。「早く行くのよ!」
ぽつりと雨粒が落ち始めると、マヤはノコが待つ玄関へ猛ダッシュした。
「みんな、鍵が開いてるニャ!」
屋敷に入ると、冷たい空気が迎えた。
「何か……変だな」俺は腕をこすった。
「ええ……この寒さは幽霊の存在のせいよ」ザラが頷く。
「光よ!」ノコが手を上げ、浮かぶ炎を召喚して玄関を照らした。
「おお、ノコ、それ便利だな」
「ふふん、ノコはできる子ニャ!」彼女はくるりと回った。
探索を進めるうちに、影が生きているように蠢き、俺はきしむ音ごとに飛び上がった。元の世界では映画でしか見ない光景だ。
マヤとザラは冷静を装っていたが、無意識にノコとその炎に寄り添っていた。
ノコは笑いながら、影を追いかけ回す。
突然、床から幽霊が現れ、俺に襲いかかった。
「退散ニャ!」ノコが閃光を放ち、幽霊を消し飛ばす。
「すごい……」
「ノコ、今ので?」ザラが聞いた。
「うん! 光の精霊様の力で幽霊を浄化できるニャ!」
外の激しい雨音に震えながら、マヤは無言で歩いていた。すると、新たな幽霊が現れ、彼女に襲いかかる。
「マヤ、危ない!」
考える間もなく、俺は手を伸ばした。掌から金色の光が迸り、幽霊を消滅させた。
「今のは……?」
その瞬間、プリンの声が頭に響いた。
「その魔法は『パリファイ』よ! 光の魔法で、使える者は限られているの。あなたは特別だから使えるの!」
パリファイ、か……。
一同は呆然と俺を見つめた。
「あ、ありがとう……レン」マヤがかすかに笑った。
「レン、今のは『パリファイ』だったの?」ザラが真剣な面持ちで聞く。
「えーっと……」俺は苦笑いでごまかした。「もっと先を探索しよう!」