第10章: 「ライバル」
「あなたと組む。パーティを結成しましょう」ザラが宣言した。
私は瞬きして呆然とした。
「え、ちょっと待って…なんで急に?」
ザラは赤い瞳でじっと見つめてくる。
「あなたは面白い。私の魔法を理解してくれた…それにプリンもくれた」
「いや、それだけの理由で――」
「それに」遮るように続けた。「あなたが穏やかな生活を望んでるのは知ってる。私も同じよ」
「は?」
「私の夢は一日中ベッドでお菓子を食べること。でもギルドの規則で、一定期間任務をこなさないと除籍されるの」
「待てよ…じゃあ、ミッションを受けないと登録抹消されるってこと?」
ザラが頷く。
「その通り。Sランクは任務を受けるのに、もう一人のSランクが必要でしょ?私もSランクだから、お互い都合がいい」
確かに。単独で任務は取れない――マヤと臨時パーティを組んだのもそのためだ。
空を見上げながら考える。プリン、これは気に入らないだろうな…
「わかった、組もう。でも…俺みたいなやつで本当にいいのか?」
「もちろん。あなたほど適任者はいないわ」
少し顔が熱くなるが、平静を装う。過剰に反応すると、プリンの怒りが倍増するぞ
「よし。ついでに今すぐパーティ登録しちゃうか?明日予定があるから、忘れそうで」
「構わないわ」
ギルドへ向かう。
入ると、何人かの冒険者に挨拶される。ドラゴン討伐で有名になったらしい。しかし、隅の方で見覚えのある人物が机に突っ伏している――マヤだ。腕に顔を埋め、ぶつぶつ呟いている。
受付嬢がこっそり耳打ちした。
「一日中あの状態です。誰も近づけませんが…あなたなら」
「俺?でも――!」
容赦なく押し出される。
マヤの呟き:「『どうやって煉を誘おう…チャンスを逃した』」
「マヤ…大丈夫か?」
「あっち行け!誰とも話したく――煉?!」
私からザラへと視線が跳ぶ。
「あ、あんたまで?何しに来たの?」
「パーティを組むことにした」
「なんだってェ――?!」
「その…ギルド登録を維持するには任務が必要で…」
「で、このチビを選んだってわけ?!」
「ご存じないようですが、私はあなたより強いわ」
「何ですってェ?!」
「やめろ!」間に割って入る。二人の戦いになれば建物が吹き飛ぶ。
受付嬢が悪戯っぽく手を叩いた。
「提案があります!三人でパーティを組んでは?『氷蝕』を倒した実績もあるし、相性は証明済みです」
「「ありえない!」」マヤとザラが同時に叫ぶ。
「このガキと一緒に戦うつもりはないわ」マヤが唸る。
「この金切り声ゴリラとはごめんだ」ザラも応戦。
受付嬢はウィンクした。
「そう?もし煉さんが三人を望んでたら?」
「え?」声が裏返る。
二人の視線が集中する。圧迫感が半端ない――どこかでプリンが隕石に私の名前を刻んでいそうだ。
「ま、まあ、彼女の言う通りだ。三人でドラゴンも倒したし、お互いの戦い方も知ってる。三人パーティでもいいよ」
「…仕方ない。戦力としては認めるわ」マヤが渋々承諾。
「いいわ。煉が望むなら」ザラも折れる。
「では手続きを!」受付嬢が笑顔で案内する。
書類にサインした後、外の空気を吸いにでた。最悪の混乱だった…
「二人は続きを済ませてくれ。俺は外で待ってる」
マヤとザラが用紙を提出する。
「これで正式にパーティ登録されました」受付嬢が告げる。「煉さんとの…頑張ってね」ウィンク付きで。
「な、何よ?!」マヤの顔が真っ赤になる。
ザラが横目で見る。
「あなたには負けないわ」
「ザラ…まさか」
中に戻って様子をうかがう。
「行くか?」
二人の間に火花が散る。
「「ええ」」同時に返事が返った。