ニートの高尚美学
〝何も起きない、何も起こさない〟
初投稿です。
少し拗らせたニートの美学が詰まった一作です。
鼻で笑って頂けると幸いです。読んで頂けると本当に嬉しいです。
やれやれ。また僕は射精を寸止めした。
BeatlesのCome Togetherのような最高潮のクライマックスなど、無くていい。
押し寄せるような胸の高まりを味わうのが、大人の嗜みだと思う。
発散したらダメなんだ。 マスターベーションの続きは時計の針が縦に垂直になってからとしよう。 それまでは紀伊国屋で買った「夜は短し歩けよ乙女」でも読むか。
そうして僕はアメリカの輸入雑貨に囲まれてる書斎の椅子に座る、雑貨はほぼビレバンで揃えた。壁の中央には「桃月なし子」のポスター。
今月だけで積読本が8冊もたまっている。でも本は平気だ。放置しても腐ることはないし、いちごのショートケーキのように保管場所にうるさいわけでもない。 いつまでも静かに、僕によって読まれる日を待ってくれる。本とだけは付かず離れずの良い関係を保てている。ま、本の気持ちは知る由もないんだけれど。 でも僕の本棚にずっといるってことは、そういうことなんだと思う。
ーピンポーンー インターホンが鳴った。多分、母が買い物から帰ってきたんだ。晩ご飯はなんだろう、カレーライスの予感がする。母も驚くほど僕の予想はよく当たるんだ。
僕は玄関にいる母の元へ駆け寄り、今晩の予想を述べた。
「夜ご飯はカレーライスだろう?」
「いいから台所もってて」 母は玄関に腰掛け、痛む膝を労りながら言った。
やれやれ。重い買い物袋を台所へ運ぶ。
ふと、大事な事を思い出した。 「予想より早く帰ってきたから、マスターベーションの続きができない…」
やれやれ。しかし僕は悲観しなかった。
これこそが大人の美学だからだ。
我慢の先の快楽を知っている。 日頃から両親は、「ハロワークに行け!行かないならインディードとかで探せ!」と口酸っぱく叱りつけてる。そのたびに〝お前らの狭い物差しで僕を測るな!〟と思う。
両親はまだ知らないのだ。 我慢の先の快楽を、本当の大人の嗜みってやつを。
あと2週間で、僕は27歳になる。 誕生日ケーキはコージーコーナーか不二家が良い。 コレは譲れない。
まさか…最後まで読んで頂いた方なんていらっしゃるのでしょうか…?いいんですか?貴方の貴重な時間をこんな小説に…。
本当に本当に感謝です。もし良ければコメント宜しくお願いします。辛口コメントでもなんでもお待ちしております。2話もぜひ。