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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

追放された聖女ですが、勇者に助けられました。勇者は最強なので、私を消そうとしても無駄です。

作者: 山口瑛史

「聖女、いや、異世界人ミュール。お前を聖都から追放する。」

この世界に転移して数ヶ月立った頃、

私を召喚したという枢機卿のジブル卿からそう告げられた。聖女って言って、言い直すところがなんかヤダな。

「私は、聖女としての務めを果たしてきたはずです。なぜでしょうか?」

「魔族を保護したいなどと、聖女としては失格である。また獣人を治療したと聞いたが?」

確か、召喚時のレクチャーで人族にだけ聖女の力を使うように言ってたっけ。その時は、動物には使えないんだって思って、魔族や獣人に使っちゃダメっておもってなかったな。だから特に問題ないと思い、獣人や魔族たちを治療したことを報告したんだった。


「はい。それがなにか?」

「聖女としての禁忌に触れる行為。赦されないものだ。極刑のところ、これまでの聖女としての功績を鑑みて追放とするのだ。」

また、それと同時に魔族や獣人と仲良くしたいと言ったことが原因のようだ。人族至上主義のイリアス聖教では、魔族や獣人を人とは認めず迫害の対象としていたから。

これまで聖女として頑張ってきたので、民衆からの人気も高く極刑には出来なかったと言うことかな。

闇落ちした聖女を、寛大な処罰で済ませ、教会って慈悲深ーい。ってことかな。ま、そもそも人族至上主義のこの国の法律では、人族の死刑は認められていないんだっけか。


そして、身の回りの最低限のものを持たされ、街の外に放り出された。文字通り追放というやつらしい。


…。

私が、召喚された経緯やこれまでの事。少し話すね。


人魔大戦。後にそう呼ばれた人族と魔族の戦争において、人族側について、戦っている国。それがイリアス聖教の国、イリアス聖国だった。


私の名前は、小笠原 美海。普通?まぁちょっとだけBL専門の同人作家なんかやってるごく普通の主婦だったんだけどね。あるコミケの帰りに、突然現れた魔法陣に引き込まれてこの世界に転移した。


転移陣で聖女召喚を行ったのが、このイリアス聖教だった。

「おぉ、聖女様。よくぞいらっしゃいました。」

丁寧に説明をしてくれた神父さんには好感が持てた。

名前をミウって言ったのに、ミュールって変換されたのは、ちょっとぉ。って思ったけど。

履物じゃ無いんだけどな…。


魔族との戦いが激しさを増す中、傷ついた兵士を癒やす役目を聖女として担うことになった。


魔族がいかに悪かを教えられ、癒やしの術を習得した。平和な日本で暮らしてきた主婦としては、戦うのは難しかったが、傷ついた兵士を癒やすってのは、特に抵抗なかった。また、役に立っている感じがあり、直接感謝もされるし、やりがいもあった。


ファンタジー世界も書いたことのある同人作家としても、魔法を使うって言う経験は、何と言うか、楽しかった。


「聖女さま。ありがとうございます。」

先週、運び込まれた兵士のレグスさん。瀕死の重傷だったけど、聖女の術のおかげもあり回復し動けるようになってきたみたい。

「あ、だいぶ良くなりましたね。良かった。」

微笑みかける。

召喚された時に、平均的な日本人のオバサンだった私は、綺麗な水色の髪に超美形の顔付き、そしてナイスなバディ、十代後半くらいの女の子の姿になっている。

こんなコに微笑みかけられたら、まぁ、年頃の男子としては堪らないよね。男子って言ってもレグスさんは、年はまだ20過ぎだけど歴戦の戦士って感じで、凄く強いらしいのね。


レグスさんは、前線には戻らずに私の護衛になってくれた。このヒト他の兵士と話すときなんか、ちょっとBLの気があって、何か良いのよね。

オカマっぽいって訳じゃなくて、何か想像してしまうというか、なんというか。まぁイイじゃないの。


聖女としての癒やしの力は、かなり効果があり膠着していた戦況が、少しずつ有利になってきたらしい。

死にかけた兵士が1週間位で再び前線に戻るんだから、敵からしたら脅威だよね。

聖女の有用性が認められだして、また負傷者が増えてきて、次第に前線に出るようになった。そんな時だった。


「こんな戦いは無意味だ。双方引けぇ!」

そんな事を言って戦争に介入して、圧倒的な力を見せつけて戦意を喪失させ、戦いを終わらせている集団がいた。終わらせていると言っても局地戦をとりあえず退却させるだけだったんだけど。


とある戦場で、彼らに出くわした。

彼らの中でも勇者と聖騎士、魔導師の3人が特に強くて、勇者と聖騎士は人族の男性だけど、魔導師は魔族の女性だった。この3人は、ほとんど死人を出さない戦い方をしていた。


戦死者が減り、負傷者が増えて忙しかったのは、この人たちが原因だったみたい。


「あなた達を傷付けるつもりはない。引きなさい。」

かの魔導師の女性は、幼さの残る可憐で小柄な女の子だった。彼女は、もの凄い魔力を見せつけながら言った。魔力による威圧、強大な魔法を使えるのに使わない。

彼女は魔族なのに、理性がある。教会で聞いていた魔族の姿とは違う。日本であった昔のRPG、勇者が魔王を倒す物語。その魔王側が魔族だと思ってたんだけど。世界を滅ぼす存在ってヤツね。そんな風に思ってたんだけど。


今までよくみていなかった魔族側の陣営を見る。勇者に蹴散らされている魔族達もこちらと同じく戸惑い、また恐怖等の感情があるように思う。圧倒的な力を見せつけられ戦意を喪失している両軍に対して、勇者も魔導師も無駄な殺生はしていないようだった。



軍の撤退ってのは、あまり快適なものでは無い。敗走途中ですぐに軍の主力とはぐれてしまい、野盗なんかに怯えながらの敗走になった。とうとうレグスさんと二人になったが、彼は噂通りとても強くて、優秀な護衛だった。私を守りながらも、とある避難民の村に辿り着いた。


避難民達は、様々な人種が寄り添って助け合い暮らしていた。魔族やケモノ耳の獣人達、そして人族もいた。争いなどなく優しい村だった。

村長のモルドさんは、人族側の私達を暖かく迎えて、家に泊めてくれた。レグスさんも体力的に限界だったし、本当に助かった。


モルドさんは、人族と魔族のハーフらしくて迫害にあい、亡命のような形で避難している。避難民達をまとめて、何とか生き長らえてると言っていた。


「戦争とか近くであるけど、大丈夫なんですか?」

「まぁ、嫁さんは、戦争に巻き込まれてな、うん…。」

モルドさんの奥さんは、小さな娘さんを守る為に犠牲になったそうだ。

「それは、何と言って良いか…。」

こういった時に何て言うのが正しいのか、平和な世界で育った日本人には、少し、いやかなり難しい。

「今は、勇者さん達が、守ってくれているから大丈夫だよ。」

モルドさんに笑顔が戻る。小さな女の子がやって来て、

「エイトさんだよ。勇者の名前」

モルドさんの娘さん。まだ小さいのにお母さんがいなくて、でも明るく振る舞ってる。村の皆が、この娘の笑顔に救われている。

「すごくカッコいいんだー。私ね、勇者のお嫁さんになるのー。」

カワイイなぁ、もうっ。私も、親戚のお兄ちゃんのお嫁さんになるって言ってた時期があったなぁ。



魔族の血が入ってるからって、この人たちが悪い訳ない。いや、この人たちこそ幸せにならないと…。


村には、何人もケガ人がいたので治療させてもらった。軽い病気なんかも、治しておいた。聖女の魔力は凄いのよ。ってね。

治療費は一宿一飯の礼があるし、何よりも獣人さんたちには、モフモフさせてもらってそれでヨシとした。


「戻らない方が良いよ。ウチも助かるし。」

って言われたけど、イリアス聖教が間違ってるんなら、言って方針変えさせないとね。

私の所属はイリアス聖教で、なんにせよ一度戻らないとってのは、日本人の発想だろうか?


で、レグスさんの助けもあり、何とか聖都に戻り教会で、魔族も救うように訴えたんだけど。


......。

村での出来事を報告して、魔族や獣人達も治療する様に進言した。また、高額なお布施制度や、余り環境の良くない孤児院の改善など、出来るだけの教会改革を提案した。すると、それまで優しかった教会の神父さんや枢機卿が豹変した。


個室に幽閉され、枢機卿からなんか魔法を掛けられたり、恐らく何度か洗脳を試したんだろうけど、聖女の能力が上がった私には耐性ができていたみたい。


極刑としたかったんだろうけど、人族至上主義のイリアス聖教は人族の死刑を禁止している。

人族に対する刑は、聖都追放が一番重かった。聖都の周りは村や民家も無くて魔物もいるので、追放されると装備も無ければ生き残れない。


つまり処刑同様と言うことね。


聖都を追い出されアテもなく歩いていると

ヒュン。

矢が飛んできた。掠っただけだったので、すぐに回復させたんだけど、

「ち、外したか。まあ良い。確実に仕留める」

後で判ったんだけど、召喚できる聖女は一度に一人だけなので、私を消さないと新しく聖女が喚べない。だから狙われた。確実に消すために…。


剣を構えた兵士が近づいてくる。逃げないと。

何とか逃げようとするが、違う方向にも兵士が。

ー囲まれている?


これせ終わりかなぁ?

ゲームオーバーで日本に帰れたら良いんだけど、ダメなんだろうなぁ。


なんて思ってたんだけど。兵士が突然倒れた。

キンー、ボフッ、ズサッ。

黒い影が兵士たちをやっつけていく。黒い影の動きが一度止まり、こちらの様子を伺ってきた。


あ、あの人、勇者だ。

戦場で見た勇者エイトだ。


兵士を追い払った勇者はこちらに顔を向け

「大丈夫ですか?」

日本人のような黒い髪に、黒い目。こちらでは珍しい。彼も転移者なのかな?


「あ、はい」

手を差し伸べてくる。その手をとった。大きな手、優しく支えてくれる。

ドキッ。


ん?なんだろ。

「聖女ミュールさまですよね。モルドさんから聞いています」

「はい。追放されてしまったのでもう聖女じゃないかもしれませんが。」

「とりあえずモルドさんの村まで行きましょう。話はそれから。」

「良いのでしょうか?私は敵側だったのですし。」

「俺達は、どちら側でもありませんよ。」

と言うわけで、モルドさんの村まで行くことになった。


モルドさんは、イリアス聖教に私が何らかの罰を受ける事がわかっていたそうで、勇者エイトに聖女の救出をお願いしていた。勇者は、私の聖女の力の気配を頼りに私を助けに来てくれた。


そばに繋いでいた馬に2人乗りしたりして、密着するのがまたドキドキしたりして。


勇者もこの豊満な胸元をチラチラ見てくるので、満更では無いのだろうし。


途中、レグスさんとも合流できた。レグスさんも、監禁されていたそうだが、何とか逃げ延びたらしい。


それから村に着くまでの間、イリアス聖教の追手に数回襲われた

勇者エイトと背中合わせの戦士レグス。良い、凄く良い。


「あいつらの狙いは私だから貴方には関係が無いのに…。」

何度も危ない目にあってしまっている。レグスさんは以前治療した時に、私を守る事に命をかけると約束してくれていたけど、エイトさんについては特に貸しも無い。流石に申し訳なさすぎる。

「心配いらないよ。俺、勇者だし、最強だからね」

笑うエイトさん。胸がキュンってなる。頼りになるから?この気持ち、恋なんだろうか?


村に付いてから、エイトさんから、戦争を終わらせたい思いを聞いて、勇者達の仲間になることにした。レグスさんも、賛成してくれた。

レグスさんって私の言う事、否定した事無いよね。今は恩返しって気持ちが強いから良いと思うけど、いつか自分のために生きる事を選んで欲しいな。


聖騎士リチャードさんとも会った。あ、エイトくんは、リチャードさんとも合う。なんて思ったり。


エイトくんって?

うん。呼び方変えたの。だってねぇ。まぁ、そういうことよ。


…。この身体、はじめてだったらしく。血ぃでて、凄く痛かった。ってそんな話は良いか。

エイトくんも初めてだったのかな。かなり緊張して、ぎこちなかったな。ってそれこそどうでも良いか。


戦争は、結局双方の魔王と王様を直接倒す事で終了させた。聖女としては、王都のリベルト国教っていう教会を復活させて活動することにした。


魔族との共存を是としたリベルト国教は、自分で言うのも何だけど、聖女の人気で勢力をあっという間に拡大した。そしてリベルト国の魔族共存政策も味方して、イリアス聖教を世界的に抑え込み、北のイリアス聖国だけのローカルな教会にすることができた。


神父さんは優しかったけど、あの枢機卿はいけ好かなかったし、私に刺客送ったりしてヤナ奴だった。

ま、これで世界への影響力も無くなって、お布施の収入も激減したはず。なんかせいせいした感じだよ。今頃、ハンカチ噛んで悔しがってると良いんだけどね。


結局、勇者のエイトとは、リベルト国の王都で恋人としてマッタリ暮らしてたんだけど。


エイトのこと好きなんだけど、愛してるんだけど。相性もすごく良いんだけど。何か物足りない日々。

あ、私って

「BLでNTRの腐女子だった。」

ミュールではなく、美海として譲れないものがある。


そして、私には、私の言う事何でも聞いてくれるレグスさんがいる。

更に私は、2刀流レグスさんが実はエイトのことが好きなこと知ってる。


ふふふふ。ふははははっー。なんかモンモンとします。


あぁ、吐きそうなほど楽しみだなぁ。ドキドキしてきたよ。

読んでいただきありがとうございます。

評価つけてくださるとメッチャ嬉しいです。


連載中の作品の登場人物たちの少し過去の話でした。こちらも良かったら読んでやってください。よろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2694hf/

「勇者である俺を暗殺にきた幼女を娘にした。暗殺を企てた教団よ、この娘を帰せと言われてももう遅い。パパ大好きな娘になったので。。」


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