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「青ちゃんは僕が守る」    ゴイサギ君とアオサギちゃんの恋

作者: よしあき
掲載日:2025/11/11


「青ちゃんは僕が守る」

僕は青ちゃんとその兄姉達の間に飛び降りた。




僕は生まれて1年。

羽の色が茶褐色で白いまだら模様があるので、ホシゴイと呼ばれている。

半年以上前に巣立ちして、一羽で何とか頑張ってるけど、まだまだ大人になれないゴイサギ。


この日も人が持って来た魚を、アオサギさんやシュバシコウさんの隙をついて確保して縄張りに持って帰るところ。

縄張りは草むらの中に低い木がありその一つ上の枝で、雨や風から守ってくれて大きな鳥も入り辛い場所。


そんな縄張りに戻る途中、「バサ、ドサ、グギャー」上から何か落ちてきた。

あれ、確かこの上はアオサギ達の巣がある場所のはず。

近付いてよく見ると、おそらくアオサギの雛。なんかちょっと見窄らしい。

僕には関係無いなと通り過ぎようとしたら、


「ぐすぅ、お腹すいた、ご飯......食べたい」

泣きそうな声がする。


「あ、お魚、お魚、ぐすぅ、美味しそう」

僕の咥える魚をみて、そして僕の目を見て、

お腹が「ぐーー」て鳴いた。

歩き出そうとするとまた「ぐーーー」と鳴いた。


「お魚」

「ぐーー」

「お魚」

「グーー」

右足を前に出すと「お魚」、左足だと「グーー」、右足「お魚」、左足「グーー」


ちょっと涙目になってきたアオサギ雛に、取ってきた魚をクチバシの前に置く。

僕のまだオレンジ色な目と魚を交互に見ながら様子をうかがっている。

クチバシをちょいと前に動かすと、

「お魚ぁー」大きなクチバシで咥えるとそのまま口の中に


「アグ、アグ、ア、ウ、え、え、えぐぅ」

大きすぎて飲み込めず苦しそうにしている。


「一回吐き出しな、大きすぎるだろ」

翼で頭の後ろをポンと叩いて吐き出させた。

「お魚ぁー」情け無い声で鳴くアオサギ雛。

魚をクチバシで咥えてペシペシ地面に叩きつけ、柔らかくなった所を足で押さえて引っ張り半分に千切った。

硬い頭も落として雛の前に置くと、今度は半身になった魚をヒョイッと口の中に飲み込んだ。


「美味しい、美味しい、美味しい」

涙声で鳴きながら食べている、

もう大丈夫かなと思い、「全部食べていいよ」と鳴いた。


そして、あぁもう今日は魚は無いだろうな、縄張りに帰って寝ようかな、ちょっといい事したから明日はきっといい日になるよね。

そんな事を思いながらアオサギ雛から離れようとすると


「え、え、え、え、ちょっと待って、僕も連れてって」

そんな声が聞こえてきたけど構わず歩き出した。

「早く巣に帰ろうね」と鳴きながら。


「お家に帰れない、また帰ったら巣から落とされる」

アオサギ雛が、泣きながら鳴きながら僕の後に着いてくる。


「親が待ってるだろ」

「落ちたんじゃない、落とされた、ご飯が足りないからって」

聞くと4羽兄妹だそうだ。

ここは楽園だけど魚を確保出来る量は限られてる。

4羽育てるのは確かに大変そうだ。


「ゴイサギさんはご飯くれた、良い鳥、大きくなったら魚いっぱい取る、だから一緒にいさせて、お願い」

うーん、どうしよう、この子多分ほっといたら死んじゃうような気がする。

でも魚確保するのは大変、今の2倍は取らないと


「ねえ、お願い、助けて」

そんな悲痛な鳴き声がして


「仕方ない、一緒に来るか? その代わり大きくなったらちゃんと返せよ」

「ありがとう、絶対返す、ありがとう、大好き」

最後の言葉は無視して、僕は歩き出した。

後ろからアオサギ雛が着いて来る。


「これから一緒に暮らすけど、お互いなんて呼べば良いかな、僕はゴイサギだからゴイで良いよ」

「ゴイさんですね、私はアオサギなので青でお願いします」

「青ちゃんだね、これからよろしくね」


青ちゃんはちょっと目を見開いて恥ずかしそうに

小さな声で「青ちゃんて呼んでくれた」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」


こうして僕と青ちゃんとの生活が始まった。


食べ盛りな僕と青ちゃん。

一日2回のご飯の時間、今までの二倍魚を取ってこないとお腹が空いちゃう。

人が小さなエビをカゴいっぱいに持って来た、ちょっとでもお腹の足しになるならとカモさん達と競い合って食べる。

そして口の中にエビをいっぱい詰め込んで大急ぎで縄張りに持って帰り青ちゃんの口の中に入れる。


「あむ、あむ、あむ、ゴックン、、ゴイさんありがとう」


次は魚、出来たら3尾ずつ食べたい。

人は怖いけど他の鳥が来ないうちに取らないと、そして魚を入れたカゴを持った人がやって来た。

まだ他の鳥は怖くて近づかない、僕も怖いけどなんとしても早く魚が欲しい。

恐る恐る後ろから近づいてカゴを下ろしたその瞬間に勢いよく飛び出した。

びっくりした顔が少し見えたけどカゴから魚をくわえてそのまま飲みこむ。

まだ他の鳥は来ない。

今度は真正面から、今度は人も気付いたのかカゴをもう一度持とうとしてなんか言ってる。

人の言葉は分からないけどちょっと困った表情。

しゃがんで下を向いた隙に、カゴと顔の間に潜り込み魚をくわえて反対側にそして素早く飲み込んだ。

次は青ちゃんの分、近づこうとしたら手で追い払われた。

人が魚を持って池に投げ込む。

カワウ達がやって来て競うように食べる。

水辺ではカワウたちには敵わない、足を噛まれてくわえられ水の中に引きずりこまれる、陸上では負けないけどね。

しばらくすると投げ込むのはやめ、カゴをいつもの場所に置いて離れていった。

ここからはみんなとの競争、大きなシュバシコウさん、アオサギ、コサギ、そして僕たちゴイサギ。

シュバシコウさんには絶対勝てないのでなるべく離れた場所から狙う。

アオサギが魚をくわえて飛んだ後にすかさず入って魚をくわえて飛び立つ。

後ろからゴイサギが追いかけてくるけどぐるっと回り込んで、人の集団がいる通路みたいな所を通りなんとか巻いて、青ちゃんのいる縄張りまで魚を持って帰る。

すぐに地面に叩きつけて半分に折り柔らかくして青ちゃんに渡す。


「ゴイさんありがとう」


そんな声も聞こえた気がするが僕は次の魚を取りに戻る。

カゴの近くは鳥達が沢山、他の鳥を警戒しながら気の弱そうなゴイサギを威嚇して少しずつ近づく。

アオサギが近づいてきたら止まり、ゴイサギには負けないように堂々と、コサギはほぼ勝てるけど一羽だけ危ないやつがいるので注意。

魚の近くまで来たらヒョイと首を伸ばして何とか確保、すぐさま下がって走り出し枝の上に飛び乗り一直線で青ちゃんの元へ


「ゴイさんお帰りなさい」


また魚を食べやすいようにして青ちゃんに渡し

「もう一匹取ってくるね」


戻ってみるとカゴの近くにはもう誰もいない。

カゴの中に魚はもう無い。

周りを見渡しても魚は無い。

僕は歩きだして岩の間や草の影も探してみる。

最後は池の中、周りを警戒してまずは岸辺からギリギリ足が届く所で下を見るとちょっと小さいけど魚がある。

カワウに警戒しながら何気ないそぶりで水中に頭から突っ込み魚をくわえた。

バシャバシャバシャ、翼をはためかせ足を動かし岸に上がる

そのまま濡れた身体で青ちゃんの元に戻る。


「取ってきたよ」

「ゴイさん濡れてる、大丈夫?」


「これくらい大丈夫」とちょっと離れてバサバサバサと水をはじき飛ばした。


「ほら、食べなよ」

「ゴイさんは食べたの?」

「沢山食べたから青ちゃんが食べな」


「ちょっと身体乾かしてくるから」そう言ってまた池の近くに戻った。

もう一度池の中を探したけど魚は見つからない。

小さなエビが石の隙間にあるのをくちばしでほじくり食べる。

陸に上がり乾かしながら干からびたエビを見つけて食べる。

最後はカモ達が食べている野菜を少し食べてお腹を満たす。まだ乾かない、翼を広げて飛び立ちぐるっと一周する、もう少しかな、三周くらい回って身体が軽くなったので乾いたみたい。

もう大丈夫と青ちゃんの元に戻り


「やっと乾いた、青ちゃんお魚食べた?」

「お帰りゴイさん、うん美味しかったありがとう」


満足そうな青ちゃんを見て

「ちょっと寝るね、お休み」


そうして僕は青ちゃんの横でくちばしをお腹の中に入れて眠りに落ちる。


出会いから一年近くお互い大きくなり、

僕は「青ちゃん」と呼び、

青ちゃんは「ゴイ君」と呼ぶ。

僕たちはペアになった。

まだまだ成鳥にはなっていないけどそろそろ恋の季節がやって来る。

みんなの真似をして僕たちも巣作りを始めた。

お互い枝や葉っぱを集めて周りから見えないように慎重に作る。

いい感じに出来たら丁度ご飯の時間


「青ちゃん、魚取りに行こう」

「ゴイ君行こう」


僕たちはいつも一緒に魚を取りに行く。

二羽で協力すると簡単に取れる。

でも最近はアオサギ達が邪魔をするようになった。

どうも青ちゃんの兄妹とその仲間のようだ。


「おい、お前、何ゴイサギなんかとくっついてる、

恥ずかしく無いのか」

「お前はアオサギ、こいつはゴイサギ」

「一緒になれる訳無いだろ」

「ゴイサギなんかほっといて俺たちと遊ぼうぜ」

「ギャハハハ」


そんな声を無視して僕たちは魚を取る。

僕が大きく膨らんで周りを威嚇し、その隙に青ちゃんが魚を確保する。

一尾二尾と飲み込んで今度は僕の番。

青ちゃんが大きく羽根を広げて羽ばたいて周りの目を集めた隙に僕も一尾二尾、もう一つとって三尾目は青ちゃんに、


「青ちゃん食べて」

「ゴイ君は?」

「僕の身体は小さいから大丈夫、青ちゃんはもっと大きくならないと」

ちょっと小さ目な青ちゃん、ちゃんと食べようね。

一緒に魚を食べて、周りのエビを探しながら食べながら青ちゃんを前にして僕たちは巣に戻る。


「ゴイちゃん、巣が」

青ちゃんの声を聞いて僕たちは走り出した。


「あー、巣が、何で、どうして?」

辿り着くと巣材が抜かれ葉っぱは落とされ見る影もない。

僕たちの巣がボロボロになってる。

遠くで笑い声が聞こえる。


「あれで巣のつもり?、アハハハハ」

「いい巣材が手に入った、あんな所にたくさんあるなんてラッキー」

「誰もいないから持って行ってもいいよね、カワウ達も持って行ってたし」


青ちゃんの兄妹達だ。

またアイツらか、なんで邪魔するのかな、ほっといてくれたらいいのに。


そしてまた僕たちは場所を変え巣作りを始める。

今度は交代で巣を守りながら、順番に魚を獲りに行く。

でも青ちゃんはまだちょっと気が弱いから上手く一羽で魚が取れない、僕が頑張らないと。


僕が魚を獲りに行く番だ、青ちゃんも頑張って獲ってきた

僕も沢山獲って来る。


3往復目の帰り、青ちゃんの為の魚をくわえて急ぎ足で巣に戻ろうとしたら、


「ぎゃあ、ゴイちゃーん助けて!」

巣の方向から青ちゃんの悲鳴が聞こえる。


僕は葉っぱや草をかき分け、木の上に飛び乗り僕は急いで青ちゃんの元に走る。

するとアオサギ一羽が青ちゃんを牽制して、もう一羽が巣を壊している。

確か前に来た青ちゃんの兄弟たちだ。


「青ちゃんは僕が守る」

僕は青ちゃんとその兄弟たちの間に飛び降りた。


身体を大きく膨らませ、翼を少し前よりに広げて、くちばしを大きく開け大きな声で威嚇する。


「ギャア、ギャア、ガァー! あっち行けー」


アオサギは、

「チッ、ゴイサギが戻って来やがった、この枝はもらっていくぜ」

アオサギたちは巣をぐちゃぐちゃにして、その中から枝をくわえて飛んで行った。


僕たちは壊れた巣を見て、泣きそうになりながら、


「青ちゃん、大丈夫だった?」

「うん、ゴイちゃんが来てくれたから大丈夫、ありがとう。

でも巣が壊されちゃった、ごめんなさい」

「青ちゃんが無事で良かった、巣はあいつらが悪いから仕方ないよ。

でももう巣作りは今年は無理かな、また来年考えよう」

「うん、わかった。でもこれからどうしよう?」

「とりあえず寝床だけ確保して一緒に行動しよう」


それから毎日一緒に寝て、一緒に魚を獲って、一緒に食べた。

季節が秋になり、冬になり、そしてそろそろ春になる頃にも僕たちは一緒にいた。


そして僕は大人のゴイサギに成長した、身体は濃い青と白のツートンカラーに、目の虹彩も赤色に変わった。


「青ちゃん、ここから出よう」

「え、なんで?」

「ここにいたらアイツらに邪魔されて巣作り出来ない。外の世界は先が見えないくらい広いから、きっと僕達が巣作り出来る場所があるはず」

「どうやって出るの、網で囲まれて出れないよ」

「ずっと観察してたけど、人が入って来る所と出ていく所があって、出ていく所は人が前に立つと扉が開くみたい。ただ奥にも同じ扉があってそこも通らないと出れない」

「うん」

「人がたくさん通る時は扉が手前も奥も開きっぱなしになるから、そのタイミングで外に出る。きっと上手くいく、失敗しても何回でもチャンスはある」


少し暖かくなると人も増えてきた。

小さい人もたくさんいて賑やかだ。

向こうから大きな人や小さい人の集団が近づいて来る。


「青ちゃん」

「ゴイ君」

 後少し。

上から吊るした鎖をかき分け手前の扉が開いた。

4人5人と進むと奥の扉も開く。


「今だ!」

僕は青ちゃんに合図し地面スレスレに鎖の下に潜り込み、そのまま滑るように前の扉を抜ける。

青ちゃんも横に付いている、大丈夫行ける。

一列になって人の間を走って抜ける。

後ろの扉まであと少し、翼が人に当たったけど構うものか、驚いて動けない人で扉は開きっぱなしだ。


「青ちゃん、出るよ!」

僕は扉をすり抜けた、後ろから青ちゃんも付いてきてる。

僕と青ちゃんは外の世界へと飛び立った。


上空に上がり、元の世界を上から見る。

外から見ると凄く小さな世界。でも僕たちは今、どこまでも続く世界に羽ばたいた。


「青ちゃん、あの遠くに見える大きな池に行こう。きっとたくさんの食べ物があるよ」

「うん、美味しい物をいっぱい食べて巣作りしよう」



危険の少ない小さな世界から、危険はあるけど大きな世界に羽ばたいたゴイサギとアオサギ。

太陽の光を浴びて自由で残酷な世界に旅立つ。




それから20年ほど経ったある動物園


閉園時間後の夕暮れ、大きなバードケージの横にある木の下に、老鳥になった一羽のゴイサギと一羽のアオサギが助け合うように降り立った。


「青ちゃん」

「ゴイ君」

「「ありがとう」」

寄り添いながらお互いの翼で守るように、ボロボロの羽になった姿を見つめ合う。

そしてゆっくり目を閉じる。


静かに、二羽の時間が止まった。



終わり

読んでくれた方、ありがとうございます。

ゴイサギが好きすぎて短編小説に挑戦しました。


平家物語の中で醍醐天皇より正五位を与えられた為、五位鷺ゴイサギと呼ばれるようになりました。

そんな由緒あるゴイサギの物語です。


誤字脱字チェックにChatGPTを使用しました。

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